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【挨拶】第87回信託大会における挨拶

日本銀行総裁 白川 方明
2012年4月16日

目次

はじめに

本日は、第87回信託大会にお招きいただき、誠にありがとうございます。信託業務に携わる皆様方におかれましては、日頃から、企業や家計の様々なニーズに応え、きめ細かな金融サービスの提供に努めておられ、これを通じて日本経済の発展に貢献されています。こうしたご努力に対し、日本銀行を代表して、心より敬意を表したいと思います。また、皆様方には、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を賜っています。この席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

私からは、最近の経済物価情勢や日本銀行の政策運営、金融システム面の動向などについて、日本銀行の考えをお話しします。

経済物価情勢と金融政策運営

まず、最近の経済物価情勢と日本銀行の金融政策運営についてお話しします。わが国経済を取り巻く海外経済は、全体としてなお減速した状態から脱していませんが、米国経済では緩やかな改善の動きが続いています。欧州債務問題についても、欧州中央銀行による大量の資金供給やギリシャに対する第2次支援策等を背景に、グローバル金融市場で大きな混乱が起こるリスクは後退しています。こうしたもとで、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっています。

この間、わが国の経済は、なお横ばい圏内ではありますが、持ち直しに向かう動きがみられています。輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっていますが、設備投資は先般の短観でも示されたように緩やかな増加基調にあるほか、個人消費は底堅さを増しており、住宅投資も持ち直し傾向にあります。公共投資については、復興関連需要を背景に、ここにきて増加に転じています。生産は現状なお横ばい圏内ではありますが、こうした内外需要を反映して、持ち直しに向かう動きがみられています。先行きについては、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。

物価面については、基調としての動きが重要ですが、この面では2009年夏をボトムに下落幅は着実に縮小の方向に向かっており、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、現在概ねゼロ%となっています。

日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識しています。そうした認識のもと、2月には、「中長期的な物価安定の目途」の導入などにより政策姿勢を明確化するとともに、金融緩和を一段と強化しました。このように、デフレからの脱却のために日本銀行は最大限の努力をしています。それと同時に、デフレから脱却するには、成長力強化の努力が不可欠であることを明確に認識し、積極的な取組みを進めていく必要があります。成長力を高めるには、企業が現在の緩和的な金融環境を活用して前向きの取組みを行うとともに、金融機関の皆様にも企業の取り組みをしっかり支えて頂くことが不可欠です。さらに、民間が潜在的な力を伸ばしやすい環境を政府が整備していくことも重要です。日本銀行としても、中央銀行の立場で、民間金融機関の取り組みを支援する観点から、3月と4月に、成長基盤強化を支援するための資金供給の拡充策を決定しました。日本銀行は、こうした一連の施策を通じて、中央銀行としての貢献をしっかりと果たしていく方針です。

金融システムの動向

次に、金融システム面の動向について申し上げます。わが国の金融システムは、全体として安定性を維持していますが、欧州情勢がわが国に波及するリスクなど、金融機関を取り巻くリスク要因には引き続き注意が必要です。

こうしたもとで、信託業界の皆様方にお願いしたい点や期待している点を2点申し上げます。

第1は、いつの時代にも変わるものではありませんが、適切なリスク管理です。この点、欧州債務問題を巡り先行き不透明感の高い状況が続いていることや、内外市場の連関が強まっていることを踏まえると、とりわけ市場リスク管理や流動性リスク管理が重要です。

第2は、信託という機能を通じた経済成長への貢献です。委託者や受益者からの信頼をベースに、受託者が高度な専門性を発揮するという信託の仕組みは、多様な金融ニーズに対応し得る柔軟性と使いやすさを兼ね備えています。高齢化のもとで一層重要性が増している年金信託をはじめ、環境問題への対応の一環として取り組みが始まっている排出権信託や、企業の資金調達の多様化の観点から期待される知的財産権信託など、様々な信託機能の発揮を通じて、わが国の成長力の強化に貢献されることを期待しています。

おわりに

最後になりますが、皆様方のますますのご発展を祈念し、私のご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。