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【挨拶】全国信用金庫大会における挨拶

日本銀行総裁 白川 方明
2012年6月20日

目次

はじめに

本日は全国信用金庫大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。信用金庫業界には日頃より日本銀行の政策や業務運営にご協力頂いていることに対し、日本銀行を代表してお礼の言葉を申し述べたいと思います。それと同時に、信用金庫業界の皆様が地域に密着した金融機関として、地域経済や中小企業の発展に貢献されていることに対し、改めて深い敬意を表します。

本日は、現在、世界経済や日本経済の最大のリスク要因となっている欧州債務問題についてお話しした後、日本経済の動向と日本銀行の金融政策運営についてお話しし、最後に、信用金庫業界に対する要望を申し上げます。

欧州債務問題

最初に、欧州債務問題です。この問題を巡っては、国際金融資本市場では、ギリシャの再度の総選挙を控え、神経質な動きが続いたことはご承知の通りです。週末の選挙結果を受けて、取り敢えず大きな混乱こそ回避されましたが、ギリシャは、大幅なマイナス成長が続く中で、財政再建や構造改革の着実な実施を求められており、厳しい状況に直面していることには変わりはありません。また、スペインについても、財政、金融システム、実体経済の負の相乗作用が働く状態になっており、目が離せない状況となっています。リーマン・ショックの経験が示すように、経済活動の大きな落ち込みを回避するためには、銀行間の資金市場の安定が鍵を握りますが、この点については、これまでのところ総じて安定しています。いずれにせよ、欧州の財政・経済構造改革や金融システム面の対応を巡っては、不透明感の高い状況が続いておりますので、国際金融資本市場の状況を当面十分注意してみていく必要があると考えています。日本銀行としては、万が一にもわが国の金融システムの安定が脅かされることのないよう、万全を期して参ります。

日本経済の動向と日本銀行の金融政策運営

次に、日本経済の動向をみますと、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、景気は横ばいの状態から、緩やかに持ち直しつつあります。公共投資は増加しており、設備投資も緩やかな増加基調にあります。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加えて、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けています。輸出にも、持ち直しの動きがみられます。こうした内外需要を反映して、生産は緩やかに持ち直しつつあります。先行きについては、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。もっとも、先程述べた欧州債務問題をはじめ、海外経済の動向を巡っては不確実性が非常に大きいため、日本銀行として注意深く状況を点検しています。

この間、物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられます。

こうした状況下、日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると考えています。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しの双方が相まって初めて実現するものです。金融面からの後押しという点では、日本銀行は資産買入等の基金の残高を、現在の51兆円程度から来年6月末には70兆円程度と、あと19兆円程度積み増していきますので、金融緩和の効果は今後とも強まっていくと考えられます。

また、成長力の強化という点では、成長基盤強化のための資金供給という、中央銀行としては異例の措置を実施しています。本年3月には、小口投融資や外貨建て投融資を対象とした新たな貸付枠を設けたところです。

このように、日本銀行は、デフレ脱却に向けて、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進しています。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めて参ります。

金融システム面の課題

続いて、信用金庫業界に対する要望を申し上げます。信用金庫は地域に密着した金融機関として、急速な高齢化や人口減少による問題をはじめ、様々な経営課題に取り組まれていますが、本席では、実効性あるリスク管理の確保という課題に絞ってお話し申し上げます。

この点で、当面の重要な課題は、中小企業金融円滑化法のもとで条件緩和を行った企業にかかる今後の対応です。まず、これらの企業の経営改善計画の進捗を適切に見極め、企業の再生可能性をしっかり評価することが求められます。そのうえで、金融機関としては、企業の経営改善に向けた取り組みを促進し、販路の拡大等の支援を通じて企業再生の実効性を向上させていくという、積極的な働きかけが必要です。この点、信用金庫業界が4月から実施されている新3か年計画では、「課題解決型金融」の強化等が掲げられており、大変心強く感じております。一方、再生可能性が乏しい場合には、債務者区分や引当ての見直しなど、信用リスク管理面で適切な対応を講じることが求められます。

市場リスク面でも、多くの地域金融機関が、有価証券投資を拡大している中で、その管理が一層重要となっています。内外市場の連関が高まっていることを踏まえ、市場環境の変化に機動的に対応できる体制を強化することを要望します。

おわりに

最後になりますが、信用金庫業界が、これまで培ってこられた顧客や地域社会との緊密な関係や業界の皆さんが掲げられている「つなぐ力」をベースに、中小企業の経営改善はもとより、成長性のある企業・事業の発掘・支援や地域活性化への取り組みを通じて、今後とも日本経済の発展に貢献されることを期待しています。ご清聴、ありがとうございました。