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【挨拶】全国信用組合大会における挨拶

日本銀行総裁 白川 方明
2012年10月19日

目次

はじめに

本日は、全国信用組合大会にお招き頂き、誠に有難うございます。

信用組合業界の皆様におかれましては、常日頃より、地域・業域・職域における中小零細企業や家計に対する金融サービスの提供を通じて、日本経済の発展の実現に貢献されています。こうしたご努力に対し、日本銀行を代表して、心より敬意を表します。また、本日、永年の信用組合活動および社会貢献活動に対し、表彰を受けられた信用組合、信用組合協会および役職員の方々には、心からお祝いの言葉を申し上げます。

さて、本日は、最近の金融経済情勢と日本銀行の金融政策運営に ついてお話しした後、信用組合の経営面の課題についてお話しさせ て頂きます。

最近の金融経済情勢と日本銀行の政策運営

まず、金融経済情勢についてお話しします。

海外経済をみますと、減速した状態がやや強まっています。

欧州経済については、債務問題の悪影響が周縁国からコア国へ波及するもとで、景気は緩やかに後退しています。投資家のリスク回避姿勢は、欧州中央銀行が支援要請国に対し厳しい条件を付けたうえで国債を買入れるスキームを新たに整備したこともあって、やや後退した状態が続いていますが、欧州債務問題が悪化し、国際金融資本市場の動揺、ひいては世界経済の一段の下振れにつながるリスクについては、引き続き強く意識しておくべきと考えています。

中国経済については、ウエイトの高い欧州向けの輸出が落ち込んでいることに加え、素材産業など幅広い分野で在庫調整圧力が増していることなどから、減速感が強い状況が長引いています。インフラ投資や不動産販売など内需の一部で改善の兆しがみられ始めていますが、過剰設備の問題を克服し持続可能な成長経路に順調に移行できるかどうか引き続き注視していく必要があります。

米国経済は、全体として緩やかな回復基調を続けていますが、いわゆる「財政の崖(fiscal cliff)」の問題など財政政策の先行き不透明感が強い状態が続いており、その回復力に注意が必要です。

次に、わが国の景気ですが、「横ばい圏内の動きとなっている」と判断しています。

輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっています。一方、国内需要を全体としてみると、復興関連需要などから底堅く推移しています。すなわち、公共投資は増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にあります。個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移しています。設備投資は、企業収益が総じて改善するもとで、緩やかな増加基調にあります。もっとも、企業の業況感は、海外経済の減速の影響などを背景に幾分慎重化しているだけに、今後投資見送りの動きが出てくることがないか注意してみていく必要があります。

わが国経済の先行きについては、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられますが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。

物価面については、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっており、先行きも、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられます。

日本銀行は、9月の金融政策決定会合において、日本経済が「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という軌道を踏み外さないようにするため、資産買入等の基金を10兆円程度と大幅に増額するとともに、資産買入れを着実に進めるための措置を講じました。資産買入等の基金は、2010年10月に35兆円程度で開始しましたが、累次にわたる増額によって、80兆円程度にまで拡大してきています。日本銀行としては、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識しています。この課題は、幅広い主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しの両方が揃って初めて実現されていくものです。こうした認識のもとで、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進しています。

信用組合の経営面の課題について

次に、信用組合の経営面の課題についてお話しします。

足もとの企業の資金繰り面をみますと、全体としては改善した状態にありますが、信用組合の主な取引先である中小零細企業については、厳しい経営状況が続くもとで、苦しいとする先も少なくないと認識しています。こうした中、信用組合の皆様方におかれては、相互扶助の理念を踏まえ、中小零細企業の資金繰りをしっかりと支えられていると同時に、経営相談などのコンサルティング機能を通じて、取引先の経営基盤の強化にも努められています。

本年に入ってからも、信用組合業界では、新たに「しんくみ創業塾」を開設し、商工団体とも連携しつつ、創業資金の供与と創業ノウハウに関するアドバイスをセットで提供し、地域社会における創業の支援に積極的に取り組まれており、私どもとしても心強く感じています。また、全国の取引先をオンラインで繋ぎ、ビジネスマッチングを行う「しんくみネット」の一層の利用促進にも引き続き取り組まれていると伺っています。こうした取り組みは、企業間ネットワークの構築を通じて、地域の活力発揮の基盤を作るうえで大変重要であると思います。

この間、制度面の動向をみますと、中小企業金融円滑化法や、信 用保証協会が100%保証を行うセーフティネット保証など、リーマンショックを受けて講じられた各種の一時的な危機対応措置が徐々に終了・縮小していく方向にあります。こうした中、中小企業金融円滑化法のもとで条件緩和を行った先を中心に、債務者企業の経営改善に向けた取り組みを強化し、企業再生の実効性を向上させることが求められます。また、企業の再生可能性の評価に応じて、債務者区分や引当の見直しなど、信用リスク管理面で適切な対応を図ることも重要です。

地域経済の活性化を通じたわが国経済の発展のためには、様々な顧客ニーズに応じた、きめ細やかなサービスの提供が欠かせません。また、そのためにも、皆様方自身の経営基盤の確保が不可欠であり、今後とも、収益力の向上やリスク管理の充実を通じて、経営体力を一層強化していかれることが重要です。

おわりに

最後になりますが、今後とも、信用組合業界が中小零細企業や家計のニーズに適切に応え、地域経済の発展に貢献されることを祈念いたしまして、私からの挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。