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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書

衆議院財務金融委員会における概要説明

日本銀行総裁 黒田 東彦
2013年6月19日

目次

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。最近では、本年6月14日に、平成24年度下期の報告書を提出いたしました。今回、わが国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

わが国の経済金融情勢

最初に、わが国の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

わが国の景気は、国内需要が底堅く推移する中で、輸出や鉱工業生産で改善の動きが続いていることから、持ち直しています。海外経済は、製造業部門に緩慢な動きもみられていますが、全体としては徐々に持ち直しに向かっています。そうしたもとで、輸出は持ち直しつつあります。設備投資は、非製造業が底堅く推移する中、全体としても下げ止まりつつあります。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にあります。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、底堅く推移しています。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直しています。

先行きについては、金融緩和や各種経済対策の効果もあって国内需要が底堅さを増し、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。

この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にあります。マネタリーベースは、日本銀行による資産買入れの進捗を反映して大幅に増加しており、企業の資金調達コストは低水準で推移しています。銀行貸出残高は、運転資金や企業買収関連を中心に、前年比2%程度で増加しています。CP・社債市場の発行環境も、総じてみれば、良好な状態が続いています。

金融市場では、5月下旬以降、海外市場の動きなどを受けて、やや不安定な動きがみられています。もっとも、わが国経済は順調に回復への道筋を辿っており、こうした実体経済の前向きな動きを反映して、次第に落ち着きを取り戻していくとみています。

物価面では、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっています。予想物価上昇率については、マーケットの指標などで上昇が一服しているものもありますが、家計やエコノミストに対する調査など全体としては上昇を示唆する指標がみられています。東京の消費者物価の5月分は4年2か月ぶりに前年比プラスに転じており、先行き、全国の消費者物価の前年比も次第にプラスに転じていくと見込まれます。

もとより、欧州債務問題の今後の展開、米国経済や新興国・資源国経済の成長力など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい情勢です。金融市場の動向を含め今後の展開には十分注意していく必要があると考えています。

金融政策運営

次に、日本銀行の金融政策運営について、ご説明申し上げます。

日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため、本年4月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。「量的・質的金融緩和」は、量的にみても、質的にみても、これまでとは次元の違う金融緩和政策です。具体的には、第1に、量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、従来の無担保コールレート・オーバーナイト物から、マネタリーベースに変更しました。そのうえで、マネタリーベースを2年間で2倍に拡大します。第2に長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行います。これにより長期国債の保有残高も2年間で2倍となる見込みです。また、長期国債買入れの平均残存期間を従来の3年弱から7年程度に延長しました。第3に、ETFおよびJ-REITの保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れを行います。これらの措置からなる「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行います。

「量的・質的金融緩和」の波及経路としては、第1に、資産買入れにより、長期金利や、資産価格のプレミアムに働きかける効果があります。第2に、金融機関や機関投資家の投資行動が変化し、貸出やリスク性の資産にシフトする、いわゆるポートフォリオ・リバランス効果が考えられます。第3に、「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束し、これを裏打ちする大規模な資産の買入れを継続することで、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できます。これらを通じて、民間需要を刺激するとともに、マクロ的な需給バランスの改善と予想物価上昇率の上昇により、物価の押し上げに寄与すると考えられます。

このような日本銀行の金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えています。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めて参ります。

ありがとうございました。