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【挨拶】全国信用金庫大会における挨拶

日本銀行総裁 黒田 東彦
2013年6月21日

目次

はじめに

本日は、全国信用金庫大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。信用金庫業界の皆様方には、日頃より、日本銀行の政策や業務運営に多大なご協力を頂いています。日本銀行を代表してお礼の言葉を申し上げます。また、信用金庫業界が、地域に根ざした金融機関として、地域経済の活性化や中小企業の発展に貢献されていることに対して、改めて敬意を表したいと思います。

本日は、はじめに最近の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営についてお話しし、次に金融システム面の課題について申し上げたいと思います。

最近の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営

わが国経済は、国内需要が底堅く推移する中で、輸出や鉱工業生産で改善の動きが続いていることから、持ち直しています。海外経済は、製造業部門に緩慢な動きもみられていますが、全体としては徐々に持ち直しに向かっています。そうしたもとで、輸出は、為替相場の動きも下支えとなって、持ち直しつつあります。設備投資は、非製造業が底堅く推移する中、全体としても下げ止まりつつあります。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にあります。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、底堅く推移しています。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直しています。先行きについては、金融緩和や各種経済対策の効果もあって国内需要が底堅さを増し、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。

金融市場では、5月下旬以降、海外市場の動きなどを受けて、やや不安定な動きがみられています。もっとも、わが国経済は順調に回復への道筋を辿っており、こうした実体経済の前向きな動きを反映して、次第に落ち着きを取り戻していくとみています。

物価面では、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっています。予想物価上昇率については、マーケットの指標などで上昇が一服しているものもありますが、家計やエコノミストに対する調査など全体としては上昇を示唆する指標がみられています。東京の消費者物価の5月分は4年2か月ぶりに前年比プラスに転じており、先行き、全国の消費者物価の前年比も次第にプラスに転じていくと見込まれます。

リスク要因をみますと、欧州債務問題の今後の展開、米国経済や新興国・資源国経済の成長力など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい情勢です。金融市場の動向を含め今後の展開には注意していく必要があると考えています。

日本銀行は、4月初の金融政策決定会合において、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため、「量的・質的金融緩和」を導入しました。「量的・質的金融緩和」では、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行っています。「量的・質的金融緩和」は、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できます。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を引き続き点検し、必要な調整を行います。

このような日本銀行の金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えています。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めて参ります。

金融システム面の課題

次に、金融システム面の課題について、お話しします。

わが国の金融システムは、安定性、基礎体力の面では、現在、大きな問題を抱えていません。しかし、金融機関の安定した収益基盤の確保という点では、引き続き厳しい状況にあります。昨年度の金融機関の決算をみても、有価証券関係損益の後押しによって、最終利益は増加しているものの、貸出利ざやの縮小を主因に、基礎的な収益力は、なお低下傾向にあります。

もちろん、こうした課題の解決に近道がある訳ではありません。成長が見込まれる事業分野や企業を掘り起こし、支援していくという地道な取り組みを続けていくことが基本となります。その際には、地域の実情や顧客ニーズを踏まえたうえで、経営改善計画の策定・管理、財務相談、業務提携や販路開拓面の事業支援など、金融仲介の付加価値を高めていく取り組みが求められます。また、ABLなど、新たな融資手法の活用も重要です。こうした取り組みは、企業活動を支えていくとともに、自らの営業基盤や収益力の向上にも繋がっていくと考えられます。

この点、信用金庫業界は、本年2月に「中小企業等の金融円滑化への取組みについて」と題する方針を発表され、貸出先の抱えている課題解決に向けたきめ細かい対応と円滑な資金供給に努め、地域経済の活性化に取り組んでいくこととされています。こうした皆様方の取り組みは、金融仲介機能を通じて、企業や家計の前向きな取り組みを後押しし、わが国の成長力強化に繋がっていくものと、大変心強く感じています。

日本銀行も、成長基盤強化支援や貸出増加支援の資金供給などを通じて、金融機関の貸出を支援しています。貸出増加支援の資金供給については、今月18日に第1回目の貸付が行われましたが、70先に対して約3.1兆円実施するなど、金融機関の大変積極的な利用がみられています。また、日々のモニタリングや考査、あるいは金融高度化セミナーにおいては、金融仲介機能を発揮するうえで必要となるリスク管理体制の高度化に加えて、企業再生支援の体制や新たな融資手法に関する意見交換・助言にも力を入れてきています。今後も皆様との色々なチャネルを通じて、金融仲介力の向上に貢献していきたいと考えています。

おわりに

最後に、信用金庫業界が、今後とも、中小企業の活動や地域活性化への貢献を通じて、ますます発展していかれることを祈念いたしまして、私からのご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。