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【挨拶】全国信用組合大会における挨拶

日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年10月16日

目次

はじめに

本日は、全国信用組合大会にお招き頂き、誠に有難うございます。

信用組合業界は、平素より、相互扶助の理念に基づく協同組合組織の金融機関として、地域・業域・職域で活動する中小企業や個人に対して金融サービスを提供し、わが国経済の発展に貢献されています。こうしたご努力に対して、日本銀行を代表し、心より敬意を表したいと思います。

本日は、最初に、最近の金融経済情勢と日本銀行の金融政策運営についてご説明し、次に、金融システムを巡る話題についてお話しします。

最近の金融経済情勢と日本銀行の金融政策運営

このところの金融経済情勢をみますと、金融市場では、夏場以降の中国株価の下落などを背景に、グローバルに振れの大きな展開となりました。また、海外経済については、中国を始めとする新興国経済が減速しています。もっとも、先進国経済は堅調に推移しており、世界経済全体としては、緩やかな成長が続いています。わが国経済については、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかな回復を続けています。企業部門については、今月初めに公表した短観をみますと、製造業の一部にやや慎重な動きもみられますが、業況感は総じて良好な水準が維持されています。また、史上最高水準の企業収益が予想されるもとで、設備投資計画が上方修正されるなど、積極的な設備投資スタンスが維持されています。家計部門でも、労働需給の引き締まり傾向が続き、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、家計支出は底堅く推移しています。個人消費は、各種の統計で7〜8月は4〜6月対比で増加しており、天候不順の影響などによるひと頃の弱さから脱しつつあります。

先行き、輸出は、当面横ばい圏内の動きを続けた後、新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかに増加していくとみられます。また、国内の企業部門・家計部門については、今申し上げたように、前向きの循環メカニズムがしっかりと働いており、内需は増加基調を辿ると考えられます。このため、わが国の景気は緩やかな回復を続けていくとみています。

物価情勢をみますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、0%程度となっています。昨年度後半以降、上昇率が低下している背景には、エネルギー価格の大幅な下落があります。もっとも、エネルギー価格の影響を除いたベースでみますと、生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価の前年比は1%を上回る水準まで上昇するなど、物価の基調は着実に改善しています。先行き、物価の基調が着実に高まり、エネルギー価格下落の影響が剥落するに伴い、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。

金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、今後も2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していきます。その際、これまでも申し上げているとおり、経済・物価情勢については上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていく方針です。

金融システムを巡る話題

次に、金融システムを巡る話題についてお話しします。

わが国の金融システムは、安定性を維持しつつ、機能度を高めてきています。金融機関の貸出は、企業向けを中心に緩やかな増加を続けており、企業規模、業種、地域のいずれの面でも広がりが出てきています。信用組合の貸出も、前年比2%台の伸び率で推移しています。また、金融機関や機関投資家等の有価証券投資の面でも、運用の多様化を進めつつ、リスク・テイクを進める動きがみられています。

他方、地域経済の先行きを展望しますと、人口減少や高齢化といった構造的な要因が引き続き逆風として働くことが予想されます。地域経済に顧客基盤を持つ信用組合にとって、厳しい経営環境であることは確かですが、そうした中でも、信用組合が、地域の活力を高めるために果たし得る役割は大きいと考えています。

地域の企業は、地域資源の活用や、域外・海外の需要の開拓、高齢化のもとで必要とされる財やサービスの提供などを通じて成長できます。そうした企業の育成や支援は、地域に深く根差して活動している信用組合が強みを発揮できる分野です。また、地方創生に向けて、信用組合が、これまで蓄積してきた地域の情報や知見を活かしつつ、地方自治体等の取組みに積極的に関与していくことも期待されています。地域の活力向上は、信用組合自身の経営基盤の強化にもつながっていくと考えられます。

既に各信用組合におかれては、創業や事業再生支援、ビジネスマッチングなど、地域に密着した金融サービスの提供に積極的に取り組んでおられます。また、最近では、全信組連や他業態の金融機関と連携して、地域活性化に資する事業支援を目的としたファンドを設立する取組みもみられています。さらに、業界全体として、全国の組合員をつなぐ「しんくみネット」の推進やビジネス交流事業の支援などの取引先支援活動にも力を入れておられます。地域の活力向上に向けて、こうした皆様の取組みが、今後さらなる成果を上げていかれることを強く期待しています。

日本銀行では、本年3月、「貸出増加を支援するための資金供給」および「成長基盤強化を支援するための資金供給」について、信用組合が全信組連を通じて制度を利用できる仕組みを導入しました。日本銀行としても、こうした制度の提供を含め、様々な形で皆様の取組みを支援させて頂きたいと考えています。

おわりに

最後に、今後、信用組合業界が、ますます発展していかれることを祈念いたしまして、私からのご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。