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【挨拶】わが国の経済・金融情勢と金融政策徳島県金融経済懇談会における挨拶要旨

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日本銀行政策委員会審議委員 佐藤 健裕
2017年3月1日

目次

1.はじめに

本日は、徳島県の政治・経済・金融界を代表する皆様方にお集まり頂き感謝する。皆様には、日頃より日本銀行高松支店や徳島事務所の様々な業務運営にご協力を頂いている。この場をお借りして、厚く御礼申し上げる。

本日の懇談会では、まず私から国内外の経済・金融情勢と最近の日本銀行の金融政策についてお話しさせて頂いたうえで、徳島県経済について若干触れさせて頂きたい。その後、皆様方から、当地実情に関するお話や日本銀行の政策運営に対するご意見などをお伺いしたい。

2.内外経済・金融情勢

(1)国際金融市場と世界経済の動向

昨年は英国のEU離脱を巡る国民投票や米国の大統領選挙が大方の市場参加者の予想と異なる結果となり、国際金融市場は大きく変動した。とりわけ、米大統領選以降は、財政刺激策への期待などから主要国の株価は上昇した。

足許の市場は、保護主義的な動きなどへの警戒感もあり一時の熱狂は薄れているものの、米国株式市場が依然高値圏で推移するなど、余熱は残っている。

金融政策面では、米労働市場のslackが大幅に縮小、ないしは消滅したとの見方もあるなか、FRBは財政拡張による景気過熱への警戒感から、昨年12月のFOMC以降、財政政策の中身次第で利上げペースの加速を示唆する趣旨の情報発信を増やしている。

こうしたなか、先行きのリスク要因は、米金融政策がもたらす国際金融市場の資金フローの変化、なかんずく新興国からの資金流出の可能性である。過去の米金融緩和期に積みあがった新興国債務の問題は、足許あまり注目されないが、いわば慢性疾患であり解決に時間を要する。また、中国は各種経済対策の効果発現により安定成長に向かっているとはいえ、国内の過剰債務問題などの構造問題には引き続き留意する必要がある。なお、昨年は政治情勢が市場の攪乱要因となっただけに、本年も、とりわけ欧州の政治情勢をリスク要因と認識している。

(2)国内経済の動向

国内経済は、昨年前半頃までは国際金融市場の混乱や新興国の減速などを映じ、踊り場的状況にあったが、年末にかけては新興国経済の持ち直しとともに、上向きに転じた。輸出は、携帯電話部品などIT関連や部品も含む自動車関連を中心に持ち直し、在庫調整の進捗とともに生産も上向いている。消費はこのところ幾分底堅さを増しつつも力強さには欠けるが、堅調な雇用・所得環境のもとで家計・企業マインドも総じて持ち直していること、また株価も堅調に推移していることから、先行き緩やかな増加を続けていくことが期待される。先の補正予算による財政刺激策の効果も勘案すると2017年度の日本経済は2016年度に続き+1%台半ばの成長ペースを維持する見通しである。

国内経済の論点は多岐にわたるが、ここでは後述する物価との関連で、最近の雇用情勢と賃金との関係に着目したい。

全国的に人手不足が深刻化し、雇用情勢は逼迫度合いを強めている。ただし、地方の雇用逼迫には人口動態の影響もあるとみられる。例えば、地域別の有効求人倍率に着目すると、2000年代以前は、好況時は地域のバラツキが大きく、好調な地域では倍率が大きく上昇したが、雇用情勢の不芳な地域では倍率が低位のままであった。これに対し、今回の局面ではそうしたバラツキが縮小し、もともと低位であった地域も倍率が上昇しており、好調な地域とそうでない地域の差があまりみられなくなっている。実際、昨年は全国47都道府県で有効求人倍率が初めて1倍を超えた。こうした地方における求人倍率の底上げは、人口移動による求職者数減少の影響もあるとみられ、単純に経済情勢の改善によると解釈するのはやや違和感がある。

こうしたなかで職種別の有効求人倍率に着目すると、逼迫度合いのバラつきは大きい。例えば、介護関連、建設などでは同倍率が3倍を超えているのに対し、一般事務の職業では0.3倍台にとどまる。とりわけ事務系正社員の倍率は低い。すなわち、特殊な技能を持つ建設労働者や運輸業におけるドライバーなど、あるいは政策的に賃金が抑えられ供給の恒常的に不足する介護関連で需給が逼迫する一方、事務系の職業は引き続き供給余剰である。

以上、業種によるバラつきはあるものの、雇用情勢逼迫を映じて非正規雇用の時間当たり賃金は前年比+2%程度の伸びとなる一方、正社員の基本給は雇用余剰感を映じて上がりにくい。また、非正規雇用の賃金や雇用者所得は、正社員より低いので、Composition効果もあり、マクロ全体の時間当たり賃金や雇用者所得を押し上げるには力不足となっている。このことが以下に述べる物価の上がりにくさの一因であることで大方の見方は一致している。

経営者の視点でも、事務系正社員に余剰感があったり、生産性に見合わない賃金が支払われているとすれば、固定費である正社員の基本給引き上げのハードルはやはり高いと見ざるを得ない。

この問題は、後に述べる労働市場のあり方そのものと関わる課題であり、各方面のコンセンサス形成を急ぐ必要があると感じている。

(3)物価面の動向

12月の消費者物価(全国)は除く生鮮・エネルギーで前年同月比+0.1%と引き続きゼロ%程度で弱めの動きとなっている。昨年前半の市場の混乱などから人々のマインドが慎重化し、消費の足取りが重くなるなか、家計の安値志向や節約志向が再燃し、企業もそれに呼応して価格設定行動を慎重化させたことが主因と考えられる。

足許は、市場環境が好転するなかで人々のマインドも改善し、消費は幾分底堅さを増している。基調的な物価の動きは消費動向を敏感に反映するとみられるだけに、昨年来弱めの動きが続いた消費者物価の基調に、早ければこの1~3月期にも転機が訪れることを期待感をもって見守っている。また、エネルギーを含む消費者物価(除く生鮮)の前年比上昇率はエネルギー価格のマイナス寄与がやはりこの1~3月期に剥落し、次第にプラス寄与に転じるとみられることから、基調的な物価の動きと相まって先行き一段と持ち直すことが期待される。原油価格と為替相場の前提次第だが、年度後半にかけては前年比上昇率+1%超えを展望できないわけではない。

今のところ、市場の物価観はそこまで強気化しているようには見受けられないが、仮にコンセンサスを上回るペースで消費者物価の前年比上昇率が伸びるサプライズとなる場合、本行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」によりゼロ%近傍に張り付く長期金利への上昇圧力が強まる可能性があり、丹念にモニタリングを行っていきたい。

ところで、「量的・質的金融緩和」実施以来4年間の経験知として、長引くデフレのもとで人々の中長期的な予想物価上昇率が一旦低下すると、大規模な非伝統的金融政策をもってしても、その回復を図ることは容易ではないことがわかった。昨年9月の「総括的な検証」で指摘のとおり、人々の中長期的な予想物価上昇率の形成に際し、日本では過去の消費者物価上昇率の影響が大きい、すなわち適合的な期待形成の要素が強いとみられる。

人々の物価観が保守化すると価格改定頻度が低下し、公共料金に代表されるように、とりわけサービス価格は粘着的となる。サービスの対価である価格が低廉に抑えられる結果、サービス提供側の賃金も抑えられる悪循環が生じるのは、人々の中長期的な予想物価上昇率、言い換えれば物価に対する規範(norm)が過度に保守的になり、変化しにくいことに因ると思われる。

このような適合的、かつ粘着的な期待形成メカニズムから、一旦低下してしまった予想物価上昇率を押し上げるには、実際の消費者物価が、需要ショック・供給ショックいずれの要因にせよ、ある程度上昇することが必要条件の一つであろう。足許のエネルギー価格などの持ち直しは、物価の基調的な動きに転機が訪れると見込まれるなかで、予想物価上昇率を幾分高める方向に働くと考えられる。しかし、その時々の外的環境に左右される面があることは否めない。

より本源的には、労働市場における賃金決定メカニズムの変革を通じ、欧米のようなフォワード・ルッキングな期待形成に移行することが望ましいと考えている。すなわち、賃金交渉過程において過去の消費者物価の実績値を参照するこれまでの慣行に代わり、先行き数年間、あるいはより中長期的な物価のパスの認識を労使間でシェアしたうえでの賃金交渉となること、しかも中央銀行の物価目標がそうした中長期的な物価のパスの考え方のベースとなることが理想である。そのためには、中央銀行の物価目標、あるいは金融政策が人々に十分に信認される必要があろう。

3.当面の金融政策運営

(1)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について

私は、一旦低下した人々の中長期的な予想物価上昇率を引き上げ、デフレ脱却を完遂するには中長期的な息の長い取り組みが必要であり、そのためには、短期決戦型でいわばショック療法的なかつての「量的・質的金融緩和」をより柔軟で持続的な枠組みに作り替えていく必要性を以前から主張してきた。昨年9月に「総括的な検証」を経て決定に至った「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は私の従来からの主張に沿うもので、私はこの枠組み自体には大筋で同意している。もっとも、政策金利を-0.1%、10年金利の操作目標をゼロ%程度とする現行の金利誘導目標は、期間10年までの金利をマイナス圏で固定することにつながり兼ねない。とりわけ、期間3~5年までの中短期ゾーンは現行のディレクティブではマイナス圏で推移し続ける可能性が高く、そうした状況が、金融システムの安定性維持という日本銀行のもう一つのマンデートに資するとは考えにくいとの理由から誘導目標水準には反対票を投じてきた。

ただし、この枠組みは1950年代まで米国が採用した長期金利ペッグと異なり、毎回の会合において次回会合までの操作目標水準を都度決定する柔軟な仕組みである。その下で、長期金利操作についてはその時々の経済・物価・金融情勢やそれらの変化のモメンタムを勘案しながら、最適なイールドカーブの形状を政策委員会で判断している。もっとも、最適なイールドカーブの形状に関しては、テイラールールから算出される最適な政策金利水準にかなりの幅があるのと同様、あるいはそれ以上に解釈の幅があり、最新の経済学の知見をもってしても景気中立的な均衡イールドカーブの形状が一義的にピンポイントで定まるわけではない。また、長期金利操作に関する政策実務上のプラクティスが必ずしも確立しているとは言い切れない現状では、操作のタイミングや幅などは、無論、政策委員会の判断事項ではあるが、操作に先立っては市場との入念な対話によりサプライズを避けるなどの周到な配慮も必要と私は考える。

以上の考え方のもとで、長期金利操作の政策反応関数について私なりの考えを示せば、仮に経済・物価情勢が望ましい方向に変化し、また市場がそれに応じて、ないしはそれを先取りして変化しているという認識に政策委員会が至れば、市場の動きを追認する形で操作目標水準を柔軟に調整していくことが適当と思う。例えば、この政策が奏効し、人々の予想物価上昇率が高まれば、債券市場ではインフレのリスクプレミアムが認識され、名目金利に上昇圧力がかかると考えるのが自然である。その場合、私の見方からすると、通常の国債買入れで日本銀行が名目金利をゼロ%程度で抑え続けることができるかどうかは不確実性がある。仮にできるとしても長く抑えすぎると、その間に金融不均衡の蓄積を招く恐れがあり好ましくない。さらに、指値方式の無制限買入れは、市場を制御するのに短期的には効果的かもしれないが、実施することにより中央銀行が特定の金利水準にコミットする強いメッセージを発することになるため、その後の政策運営を縛り、市場との対話に支障をきたすなどの影響が出かねないと私は考えている。その点、指値での買入れなどはあくまでも非常時のツールキットという位置付けと理解している。ビハインド・ザ・カーブであれ、市場の状況に応じて柔軟かつ緩やかに操作目標を調整してゆくのがプルーデントな政策運営のあり方であると思う。

なお、私としては、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状は適度にスティープであるべきと考えている。イールドカーブが過度にフラット化し、先行き金利が低下し続けるという予想が支配的になると、企業や家計の資金調達のタイミングの先送り傾向が強まり、投資や消費の先送り、すなわち需要の後ずれに繋がりやすい。その点、適度なスティープニングは健全な経済活動を刺激する上でむしろ有用であり、併せて社会保障制度の持続性を高め、人々のコンフィデンス安定に資するであろう。一方、スティープニングのマイナス影響については、20~30年といった超長期のタームで資金調達する国以外の経済主体はもともとキャッシュフローが潤沢で安定した企業に限られるため、マクロの設備投資への抑制効果はほとんどないと私はみている。

(2)マネタリーベース目標から金利目標への転換

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」への政策変更のポイントの一つは、金融調節方針における操作目標をそれまでのマネタリーベース目標から伝統的な金利目標としたことである。その点、マネタリーベース増額の柱であった年間約80兆円ペースの国債買入れ目標も現行の枠組みでは「めど」となり、金融市場調節方針を強く縛るものではなくなった。したがって、長期国債買入れでもなおマネタリーベース目標を埋めきれないことに備え、補完的に実施してきた短期国債の買入れも本来的には不要であると私は考えている。短期金融市場への影響を見極めつつ残高を更に圧縮していくことが望ましいと思う。

もっとも、長期金利操作の前提として、年間約80兆円かどうかはともかく、相応の量の国債買入れを続けることも必要である。その場合の長期金利への影響だが、買入れ継続により中央銀行の資産サイドに国債が蓄積するにつれ、ストック効果から長期金利には低下圧力がかかると考えるのが自然である。理論的には量と金利を同時に目標とすることはできないし、実際の政策の枠組みもそのようにはなっていないので、仮に長期金利操作目標をゼロ%程度とすることを相応の期間継続する場合、長期国債の買入れ額は次第に減少に向かうと考えることもまた自然であると思う。

その場合、約80兆円の「めど」との関係が問題になりうるが、私としては「めど」はあくまでめどであるので、あまり縛られる必要もないと考える。ゼロ%程度という長期金利を実現するのに必要にして十分な国債買入れ額が、理論的には次第に減少に向かうということは、やや長い目でみてデフレ脱却後の望ましい出口のあり方を考えると、金融政策のスムーズな正常化を促す重要な要素になると考える。

(3)財政・構造政策との関係

昨年2月の上海G20で金融政策だけでなく財政政策を含むあらゆる政策を総動員する必要性への認識が共有されて以降、拡張的な財政政策とそれを側面から支える金融政策の役割が各方面で論じられている。中央銀行による恒久的な財政ファイナンスを原資とする財政拡張を訴えるヘリコプター・マネーはその極端な一例であるし、昨年8月のジャクソン・ホールでの会合を契機に、より頑健な理論的枠組みを持つ「物価水準の財政理論」(FTPL)も、日本では再び注目されている。

前者のヘリコプター・マネーの定義は論者により区々だが、日本ではそもそも中央銀行による直接的な財政ファイナンスは法律で禁じられている。また、ヘリコプター・マネー論者がしばしば言及する無利子永久国債の中央銀行による引き受けは、たとえ法律上の問題をクリアできても、経済的に無価値、あるいはそれに近いものを資産計上する発想自体、実務上、現実的でない。

後者の「物価水準の財政理論」については、仮に財政拡張によりインフレが起こることで政府債務が事後的にファイナンスされるにせよ、実証的な研究蓄積はまだ不十分であるため、政策策定のためのマクロ経済予測には使いづらい。経済政策はさまざまな経済主体の利害得失を超える重い判断で実施されるが、インフレはいつか必ず起こる、しかしいつ起こるかはわからない、という経済モデルでステークホルダーを説得することは困難だからである。マクロ政策が法律上、会計上、実務上、ひいては議会の同意の必要性というさまざまな制約のもとで運営され、政策当局がそうした制約を強く意識せざるを得ない以上、現実の政策運営はプルーデントなものにならざるを得ない。

非伝統的金融政策の限界から政界・学界で財政拡張に改めて焦点が当たっていることについては、そもそも日本では未曾有の強力な金融緩和でもなかなか景気回復が実感されにくく、また欧州でもソブリン債務危機などから財政政策の限界が強く意識され金融政策への期待が過度に高まったことの反動と認識している。特に2008年の世界的な金融危機をさまざまな非伝統的手段で乗り切ったことで金融政策があたかも万能であるかのような誤解(only game in town)が広がった。その点、最近の財政発動への期待の広がりには、歴史は繰り返す、という教訓を感じる。

ともあれ、財政政策と金融政策の協調で循環的に景気を下支えすることで時間を稼ぎ、その間に構造政策で潜在成長力を強化するというオーソドックスな戦略が日本のみならず、世界的に一定の支持を得るようになってきたことについては、安倍政権発足当初の「三本の矢」の発想に通じるものがあり、私としてもシンパシーを感じる。

こうしたなか、中央銀行の役割は、緩和的な金融環境を維持することで財政政策と構造政策の効果を最大限に引き出していくことに尽きると思う。そのなかで日本銀行が長短金利操作という前例のない政策運営を行っているわけだが、長期金利操作のそもそもの前提は、持続的な財政基盤確立に向けた政府の努力により国債市場の信認の維持が図られることである。この点、仮に、日本銀行が長期金利をゼロ%程度に誘導することで財政規律が弱まる方向となると、財政への信認に影響し、日本銀行は長期金利操作のために一段の国債買入れ拡大を余儀なくされる可能性がある。また、財政への信認が低下して長期金利が上昇する場合、日本銀行の買入れでリスクプレミアムの拡大を抑えることができるかどうかは不確実である。こうしたもとで、この政策は財政政策スタンス次第で財政従属となるリスクがあることを念頭に置く必要があると私は考えている。

国債発行のかなりの部分を日本銀行が買い入れているが、国債買入れはデフレ脱却と「物価安定の目標」達成の観点から行っているのであって、財政ファイナンス目的ではないことを改めて明確にしておきたい。

4.おわりに~徳島県経済の現状と課題~

最後に、徳島県の経済について話したい。

当地は、瀬戸内海と太平洋に面し、県面積の約8割を占める山々や吉野川をはじめとする大小の河川、鳴門のうず潮など自然資源に恵まれた土地であるほか、阿波おどりや四国八十八ヶ所霊場など歴史や文化が多く残る地域である。かつて藍産業や製塩業で栄えた当地の現在の産業構造をみると、化学や電気機械を中心とする製造業のウェイトが特に高いほか、第1次産業のウェイトも全国比高めで、農業では京阪神に近いという地理的優位性を活かし、全国トップシェアを誇る品目が多数生産されている。また、観光資源も豊富で、毎年8月に行われる阿波踊りは毎年100万人超の動員を誇る、全国有数の夏祭りである。

当地の最近の景気は、緩やかな回復を続けている。設備投資は増勢が一服しているが、引き続き高めの水準で推移している。個人消費は持ち直しを続けているほか、住宅投資は、振れを伴いつつも持ち直しており、高水準となっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。企業の生産動向は、振れを伴いつつも緩やかに持ち直しており、高水準で推移している。

もっとも、当地でも人口減少と高齢化の課題に直面している。こうした中で、全国有数のブロードバンド環境を活かしたIT企業等のサテライトオフィスの進出や高齢者が主体となった「葉っぱビジネス」、秘境の景観と古民家の活用を通じた集落再生の取組み等が全国から注目を集めているほか、最近では県が「vs東京『とくしま回帰』総合戦略」を策定し、具体的な取り組みに着手するなど、「挙県一致」で、これまで以上に踏み込んだ取り組みが進められている。製造業関連では、LED関連企業の積極的な誘致・支援が引き続き進められており、関連企業数はすでに100社超に上っている。市街地活性化に向けた取り組みに関しては、こだわりの農産物や加工商品の販売イベントとして「とくしまマルシェ」が毎月開催され、多くの来場者が訪れているほか、昨年12月に開催された「徳島LEDアートフェスティバル」は、来場者が前回を大幅に上回るなど成功裡に終了した、と聞いている。このほか、観光面では、大塚国際美術館や祖谷のかずら橋などでは、県外観光客に加え、外国人観光客が増加している。

今後も、こうした幅広い取り組みが奏効し、徳島県経済が一層活性化していくことを期待したい。