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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書参議院財政金融委員会における概要説明

日本銀行総裁 黒田 東彦
2020年11月24日

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

経済金融情勢

まず、最近の経済金融情勢についてご説明いたします。

海外経済は、大きく落ち込んだ状態から、持ち直しています。先行きも改善を続けるとみていますが、新型コロナウイルス感染症の影響が残るもとで、その動きは緩やかと予想されます。

わが国経済も、感染症の影響から引き続き厳しい状態にありますが、経済活動が再開するもとで、持ち直しています。輸出や鉱工業生産は、海外経済の動きを映じて、増加しています。個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費は依然として低水準となっていますが、全体として徐々に持ち直しています。一方、企業収益の悪化を背景に、設備投資は減少傾向にあります。先行きのわが国経済は、経済活動が再開し、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿るとみています。もっとも、感染症への警戒感が残るなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられます。

物価面をみると、消費者物価の前年比は、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などにより、当面、マイナスで推移するとみられます。その後は、原油価格下落などの影響が剥落し、経済が改善するもとで、消費者物価の前年比はプラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えています。

金融政策運営

次に、金融政策運営について、ご説明申し上げます。

日本銀行では、感染症への対応として、金融緩和を強化しています。具体的には、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)潤沢な資金供給を通じた金融市場の安定確保、(3)ETF等の積極的な買入れの3つの措置を講じています。こうした対応は、政府の施策や金融機関の積極的な取り組みとも相俟って、効果を発揮しています。内外の金融市場は、なお神経質な状況ですが、ひと頃の緊張は緩和しています。企業の資金繰りには厳しさがみられますが、CP・社債発行や銀行借入といった外部資金の調達環境は、緩和的な状態が維持されています。

もっとも、先行きの経済・物価見通しは、不確実性が高く、下振れリスクが大きいと認識しています。世界的に感染拡大が収まっておらず、感染症の帰趨やそれが内外経済に及ぼす影響については大きな不透明感があります。また、感染症の影響が収束するまで、成長期待は大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されると考えていますが、これらの点にも不確実性があります。さらに、やや長い目でみた金融面のリスクとしては、低金利の長期化や人口減少などの従来からの環境に加え、今般の感染症の影響もあって、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かう惧れがあります。一方、こうした環境のもとでは、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあります。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断していますが、先行きの動向を注視していく必要があると考えています。

こうした認識のもと、日本銀行としては、引き続き、現在の金融緩和措置をしっかりと実施し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてまいります。また、当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる方針です。

ありがとうございました。