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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書参議院財政金融委員会における概要説明

日本銀行総裁 黒田 東彦
2021年5月13日

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

経済金融情勢

まず、最近の経済金融情勢について、ご説明致します。

このところ、新型コロナウイルス感染症が、変異株の増加を伴いつつ拡大するなか、一部の地域における緊急事態宣言をはじめ、公衆衛生上の措置がとられ、飲食・宿泊等の対面型サービス部門を中心に、経済活動は下押しされています。一方で、海外経済が総じて回復するもとで、輸出や生産は増加を続け、企業収益の改善から、設備投資は持ち直しています。わが国経済は、感染症の影響から引き続き厳しい状態にありますが、基調としては持ち直しています。先行きは、当面、対面型サービス部門を中心に、経済活動の水準は感染拡大前に比べて低めで推移するものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、わが国経済は回復していくとみています。

物価面をみると、消費者物価の前年比は、小幅のマイナスとなっており、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響などを受けて、当面、そうした状況が続くとみられます。もっとも、物価の前年比は、一時的な下押し要因を除けば小幅のプラスで推移しています。先行き、経済の改善が続き、一時的な下押し要因が剥落するもとで、物価の前年比はプラスに転じ、徐々に上昇率を高めていくと考えています。

こうした先行きの経済・物価見通しについては、当面、下振れリスクが大きいと考えています。感染症の帰趨やその経済への影響には不透明感があります。また、成長期待は大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されるとみていますが、これらの点にも不確実性があります。さらに、より長期的な金融面のリスクとしては、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かう惧れがあります。一方、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあり、先行きの動向を注視する必要があります。

金融政策運営

次に、金融政策運営について、ご説明申し上げます。

日本銀行は、3月に「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」を行いました。その結果、2%の「物価安定の目標」を実現するため、持続的な形で金融緩和を継続していくとともに、情勢変化に対して、機動的かつ効果的に対応していくことが重要と判断し、主に3つの政策対応を決定しました。

第1に、金融仲介機能に配慮しつつ、機動的に長短金利の引き下げを行うため、「貸出促進付利制度」を創設しました。第2に、イールドカーブ・コントロールについて、平素は柔軟な運営を行うため、「ゼロ%程度」という10年物国債金利の操作目標について、変動幅が±0.25%程度であることを明確化しました。同時に、必要な場合に強力に金利の上限を画すため「連続指値オペ制度」を導入しました。第3に、ETF買入れについて、感染症の影響への対応の臨時措置として決定した約12兆円の年間増加ペースの上限を、感染症収束後も継続し、その上限のもとで、市場の状況を見極めながら、必要に応じて、買入れを行うこととしました。

日本銀行は、こうした対応により持続性と機動性を増した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、強力な金融緩和を粘り強く続けていく考えです。

そのうえで、当面は感染症の影響への対応が重要であり、引き続き、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムなどの金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めて参ります。

ありがとうございました。