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第10回決済システムフォーラムの議事の概要

2006年 1月16日
日本銀行

(開催要領)

  1. I.開催日時:2005年12月21日(15:00~17:00)
  2. II.場所:日本銀行本店
  3. III.出席者:別添参照

(議題)

  1. I.各決済システムにおける最近の話題
  2. II.日本銀行当座預金決済における次世代RTGSの展開について
  3. III.決済における情報セキュリティ向上の現状と課題
  4. IV.業務継続の体制整備を巡る動向

I. 各決済システムにおける最近の話題

1.東京銀行協会(佐方外国為替円決済制度管理室長)からの説明

 東京銀行協会が運営する外国為替円決済制度(外為円決済システム)および内国為替制度(全銀システム)における時点ネット決済に係るリスク管理策を巡る動向について紹介したい。

 外為円決済システムでは、不払い発生時には、サバイバーズ・ペイの原則に基づき、残存銀行が決済完了分担金を拠出することにより当日の決済を完了することとしているが、指定の時間までに決済完了分担金を支払えない場合には、予め選定した流動性供給銀行から当該残存銀行の差入担保を見合いに資金を借り入れ、当日の決済を完了する。2005年度は、流動性供給銀行を10行、資金供給限度額の総額を8,000億円とし、上位2行が同時に破綻した場合にも対応できることとしている(「ランファルシー・プラス」基準の達成)。2006年1月の東京三菱銀行とUFJ銀行の合併後も、「ランファルシー・プラス」基準を維持するため、流動性供給銀行を2行補充し、11行合計で8,000億円の資金供給限度額を維持することとしている。

 全銀システムでは、不払い発生時には、デフォルターズ・ペイの原則により当日の決済を完了させることとしている。各銀行は仕向超過限度額を設定のうえ、同限度額に見合う担保を差入れることとし、不払い発生時には、当該不払銀行の差入担保を見合いに予め選定した流動性供給銀行から資金を借り入れ、当日の決済を完了する。流動性供給銀行には当該担保を処分して資金返済する。2005年度は、仕向超過限度額の上限を8,000億円とし、25行合計で2兆4,621億円の資金供給限度額としている。東京三菱銀行とUFJ銀行の合併後は、月末日等の為替取扱高ピーク日に限って、合併行の仕向超過限度額を1兆円まで設定可能としている。この場合、資金供給限度額の総額は変更しないこととしているため、当該特定日には「ランファルシー・プラス」基準が求める仕向超過限度額の上位2行の債務不履行に対応できなくなる。2006年度のリスク管理策においては「ランファルシー・プラス」を再び充足すべく現在検討を進めている。

 なお、2006年2月には、両決済制度における不払い発生時の対応訓練を実施することとしている。

2.債券決済ネットワーク(吉田業務部長)からの説明

 債券決済ネットワークは、1996年11月に、(1)登録済証の廃止、(2)登録請求のオンライン化、(3)DVP決済の実現、(4)ローリング決済への移行等、一般債決済制度の改善を目的に、登録債決済のネットワークの中継機関として設立された。しかしながら、現在、一般債の決済制度は社債等登録制度を中心とする現行制度から振替決済制度への移行が予定されており、具体的には、証券保管振替機構において2006年1月からは新発債を対象とした振替債の取扱が、同年4月からは既発現物債の振替債への移行が、同年11月からは既発登録債の振替債への一括移行が、それぞれ開始されることとなる。こうした事業環境の下、現行の社債等登録制度を基盤とする当社業務は、将来的に制度移行が進展し、その社会的使命を全うするに至ったものと判断される時点をもって終了とさせて頂くこととなる。業務終了の具体的な時期は、新制度への移行が相当程度進むと目される既発登録債の一括移行処理(メイン期間)終了時点(2007年4月末を予定)を目処としているが、今後、関係者との間で検討を深め確定していきたい。なお、当社としては、新制度の開始以降も、業務終了までの間は業務の堅確な遂行に万全を期す所存である。

3.証券保管振替機構(齊藤企画部長)からの説明

 一般債振替制度の開始予定と株券電子化への取組み状況について報告する。

 一般債振替制度については、2005年10月22日から、口座管理機関などの利用先システムと5回に亘り一連の業務処理に係る総合運用試験を実施した。日本銀行とのDVP決済、適格担保差入の業務テストも併せて実施し、テスト参加者を含め特段の問題は認められなかったことから、予定通り2006年1月10日から制度を開始する予定。発行者からの同意については、事業債、地方債、サムライ債など公募債発行者のほとんど(本年12月20日現在で1,370社)から取得済である。今後は、既発債について、税制上の経過措置が2008年初に切れることから、2007年末までに振替制度への移行が完了できるよう、まずは2006年3月までに既発債の銘柄情報を振替制度のシステムに登録する予定。この間、短期社債振替制度については、2005年3月末に手形CPに対する印紙税の優遇措置が終了したことから、その後電子CPへの急速な移行が進み、最近は20兆円を超える発行残高で推移している。一般債についても、振替制度への円滑な移行と早期の定着が実現できるよう、関係者の一層のご協力をお願いする。

 株券電子化については、現在、当社の株券電子化小委員会において実務上の検討を行っているところだが、2005年10月3日に、それまでの一連の検討結果を「株券等の電子化に係る制度要綱(中間とりまとめ)」として公表した。その後、関連する業界団体の協力を得て全国10都市で説明会を開催したが、やや基礎的なご質問が多く、全国各地の担当者までは法律や制度要綱について十分な情報が伝わっていないようにも見受けられ、今後、一段の啓発活動を推進する必要性を改めて痛感した。なお、当社への発行済株式の預託率は本年11月末時点で75%を超え、証券保管振替機構外での株券不所持制度利用分も勘案すると実質的な非預託株券は全体の2割を切ったと思われるが、それでもまだ700~800億株程度に上る圧倒的な物量の株式が市中に存在している。このうち金融機関との関係では、第三者保管を含む自己保有株券や法人・個人からの受入担保株券の形で非預託となっている140億株余りの株券を、如何に新制度に円滑に移行させるかが大きな課題。株券電子化小委員会での検討作業は、来年3月の正式な制度要綱の策定に向けて佳境にさしかかってきているが、関係各業態の皆様方には引き続きご協力をお願いしたい。

4.日本国債清算機関(沖津社長)からの説明

 前回(第9回)の本フォーラムでは、開業直前ということで最終段階の準備状況を報告したところであるが、その後2005年5月2日に無事開業し、約半年が経過した。まずは参加先の各社、関係諸機関の皆様に改めて感謝したい。また、昨日12月20日は3ヶ月に一度の決済集中日であったが、往復ベースで18兆円強の大量の決済が無事完了したことを併せてご報告する。

 さて、清算機関の機能は、(1)債務を引受けることにより決済の履行を保証する、(2)引受けた債務をネッティングすることにより事務コスト、リスク量の軽減を図ることにあるが、本日は、これらを具体的に計数でご紹介したい。本年11月の債務引受は15万件、852兆円(額面ベース)、同期間のDVP決済は6.3万件、193兆円(額面ベース)となっている。これは、1日あたりで約40兆円を引受けて、これを約10兆円の決済にまでネッティングしている計算であり、決済金額の約3/4がネットアウトされていることとなる。因みに上記の計数についてマーケット全体と比較すると、市場全体の取引高に占める当社の債務引受高は売買取引で54%、レポ取引で38%となっているほか、日本銀行での国債DVP決済全体に占める当社の決済件数の割合は33%となっている。なお、これらの割合は、開業以来、月をおって上昇してきている。このように、当社の業務は概ね順調に推移してきているが、今後は取扱額の一段の増大を図るとともにリスク管理に努め、引き続き円滑かつ安定した国債決済に貢献していく所存であるので、関係各位の一層のご協力をお願いしたい。

II. 日本銀行当座預金決済における次世代RTGSの展開について

1.日本銀行決済機構局より説明

 日本銀行は、11月29日、「日本銀行当座預金決済における次世代RTGSの展開」を公表し、2006年1月18日を期限として市中協議を開始した。本日は簡略版を用いてご説明するが、より詳細な内容は日本銀行ホームページに掲載の上記公表文および参考資料(PDF 405KB)をご参照頂きたい。

 次世代RTGS構想では、(1)日銀当預RTGSに流動性節約機能を導入するとともに、(2)現在、民間決済システムを通じて1日1回の時点ネット決済で処理されている大口資金取引を、日銀当預RTGSで日中即時に処理できるようにすることがポイント。これら2つのサブ・プロジェクトを一体として推進することで、民間決済システムを含むわが国の大口資金決済システム全体の安全性と効率性をさらに向上させることを目指しており、2011年頃を目処にプロジェクト全体を完成させることを展望している。

 日銀当預決済は、2001年初のRTGS化によりその安全性は大きく向上した。しかしながら、RTGSの下では、受払いの差額のみを一括決済する時点ネット決済よりも多額の決済資金が必要となるため、参加者はいわば安全性の対価として以前よりも高い資金調達コストを負担せねばならなくなった。また、こうしたコストを少しでも抑制しようとして、他の参加者からの資金振替で決済資金を充当するために、自分の支払分の決済を先送りするような決済行動をとる参加者が増えると、互いに資金を受け取るまでは支払いを行わないという、いわゆる「すくみ」の状態に陥る可能性を内包することとなるなど、RTGSに特有の新たな課題に取り組む必要が生じてきた。

 今回導入を考えている流動性節約機能の基本的な枠組みでは、日銀当預のオンライン取引先のうち同機能の利用を希望する先(ただし、1法人につき1店舗に限る)に対し、従来の当座勘定とは別に、同機能専用の当座勘定を設けて提供することを考えている。専用口座では、(1)日銀との取引のほか、金融機関間取引のうち集中決済尻や国債DVP代金など一部の取引を除いた日銀当預取引、(2)外為円取引、(3)内為取引のうち一部の大口分を決済可能とする。

 流動性節約機能は「待ち行列機能」と「複数指図同時決済機能」により実現する。「待ち行列機能」は、支払指図を受け付けた時点で、資金不足のため直ちに決済ができない場合、日銀ネット内に当該指図を待機させておく機能であり、次に説明する複数指図同時決済機能の導入に必要なものである。一方、「複数指図同時決済機能」とは、新規に送信された支払指図や待機指図の中から、取引相手からの受取予定資金も支払の原資に含めることとすれば、取引相手からの資金振替と同時に支払を実行することで決済が可能となる複数の指図の組み合わせをシステムが自動的に探し出す機能のことで、そうした組み合わせが見つかる都度、それらの決済を同時に行う。流動性節約機能が次々と決済可能な組合せを探索し同時に決済していくことで、単に決済資金を節約するだけではなく、「すくみ」を効果的に抑制しながら決済を進めていくことが、また、全体の決済資金が同額であっても、現行RTGSよりも高い決済進捗を達成する、といった効果が達成できると考えている。

 今回の次世代RTGS構想では、全国銀行協会など関係者と連携して、民間決済システムにおいて時点ネット決済で処理されている大口資金取引を流動性節約機能付RTGSの直接の対象とすることを計画している。これにより、大口資金決済全体の安全性を一段と向上させるとともに、より効率的な決済資金の繰り回しと、決済の早期化が可能となると考えている。これは、日本の大口資金決済システムを再編成するという、全国銀行協会が2004年3月に取り纏めた提案にも合致するものであり、この措置が実現することで、日本国内の大口の円資金決済の安全性・効率性の水準は、先進各国に比べても遜色ないものとなるとみている。日本銀行では、このような複数の決済制度・システムに跨る幅広い対応を同時に行う場合の関係者の負担やリスクを考慮し、段階的な対応を行うことを考えている。

 ところで、流動性節約機能付RTGSであっても、RTGS特有の課題を完全に解消することはできない。すなわち、決済に必要な流動性の量こそ削減されるものの、依然、参加者による適正な流動性の確保や決済進捗の管理は重要であり、こうした能動的な決済行動を怠れば決済全体の進捗が滞ることになりかねない。このため、現行RTGSの円滑な運営、とくに取引相手からの資金振替を待つ「すくみ」の回避に大きく貢献している、決済のタイミングなどに関する市場慣行の枠組みは、流動性節約機能付RTGSの下でも引き続き有益であると考えている。市中協議の結果、本件を実施していくこととなれば、市場関係者の皆様には、現行の市場慣行をベースに流動性節約機能の有効活用や円滑な事務処理の観点から、これを修正する必要があるかどうかを検討して頂くことが出発点となるのではないかと思われる。また、かなり複雑な処理を行うシステムの安定運行を確保するためには、支払指図の日銀ネットへの投入が短時間に極度に集中したり、待機指図が過度に滞留する事態を避ける必要があるのではないかと考えている。このような点については、日本銀行における更なる検討や実際の決済の動向等も踏まえ、市場関係者の皆様にご相談、ご協力をお願いしていきたいと考えているので、その際は宜しくお願いしたい。

2.三井住友銀行<全国銀行協会事務委員会委員長行>(久保事務統括部手続企画グループ長)からのコメント

 全国銀行協会では、2004年3月に「大口決済システムの構築等資金決済システムの再編について」と題する提言をとりまとめ、日本銀行に対し、日銀ネットによる大口決済システムを実現するよう協力をお願いしてきたところ。本件の内容は、全国銀行協会の提言が大筋盛り込まれたものであると評価しており、歓迎している。市中協議の結果、日本銀行として本件を推進していくことが決定されれば、今後はより実務的な観点から仕様面の詳細等を検討していくことになると思われるが、その際も引き続き協力していく所存である。また、他の市場参加者とも協力しながら、本件稼動後の市場慣行等についても検討を深めていきたいと考えている。

III. 決済における情報セキュリティ向上の現状と課題

1.日本銀行決済機構局より説明

 本日は、キャッシュカード偽造等の問題や、インターネットバンキングを巡る問題についてお話させて頂きたい。

 まずキャッシュカード偽造等の問題については、預金者保護法の成立(2005年8月)・施行(2006年2月)により、偽造・盗難カードに関しては預金者に故意・重過失がない場合には金融機関が補償するとのルールが明確化され、これが金融機関等の情報セキュリティ対策の促進、一定の方向付けに寄与してきたことを指摘できる。例えば、新法成立を受けて、全国銀行協会はカード規定試案(約款)を改定し、預金者保護法に定められた補償ルール等を明記するとともに、過失や重過失の具体例を提示することとした。キャッシュカード犯罪について法整備を含むこうした措置・展開が必要となった背景には、キャッシュカード犯罪は特定の預金者への成り済まし行為である点でクレジットカード犯罪に類似しているが、不正利用による損害が補償されず、一般の預金者が直接の被害者となったことが社会問題化した点を挙げることができよう。

 次に金融機関サイドの対応であるが、たとえばICキャッシュカードや生体認証の導入、利用限度額の引き下げといった措置が中心となっている。他にも様々な対応があると思われるが、重要なことは、リスクを完全にゼロにするといった、実際には不可能とも思われる目標に挑戦することではなく、管理可能な範囲にまでリスクを削減する手立てを講じることである。ただし、その場合、個別行の対応だけでは限界がある点にも留意すべきである。例えば、個別行が偽造リスクに強みを持つICカードおよびICカード対応ATMを導入し、従来の磁気ストライプカードとの間で利用限度額に差を設けることは一つの効果的な対応である。しかしながら、ICカード非対応のATMあるいは他行のICカード対応ATMでは、折角のICカードも磁気ストライプカードとして取り扱われてしまうため、効果が減殺されることとなる。このため、生体認証機能付ICカードも含めて、ICカード対応ATMの相互運用性を確保することが重要な課題であると考えられる。現在、業界レベルでもこうした方向で検討が進んでいるものと認識しているが、これにより、個別行レベルでのICカード導入のインセンティブが高まり、金融機関全体としてのICカード普及が図られていくことも期待できる。

 さて、インターネットバンキングを巡る問題については、まず、キーロガー、スパイウェア、あるいはフィッシングといった犯罪事案が増加しつつあることを指摘したい。これらは、例えば米国では被害額合計が年間9.3億ドルに上るとの推計もみられているほか、英、ニュージーランドなどではアカウント情報を詐取した犯罪者からのアクセスを防ぐためオンライン・バンキングを一時閉鎖する例もみられたなど、被害額・被害範囲の面で大きな問題になりつつある。日本でも、今後、こうした犯罪の社会問題化が進展する可能性は否定できない。インターネットバンキングには、(1)利用者のパソコンを取引端末としているため、金融機関が行える情報セキュリティ対策に限界があること、(2)フィッシング自体を取り締まる法律が未整備であること、(3)全預金者向けの標準サービスではなく、利用者の意思に基づいて提供されるサービスであること、といった特殊性があるため、この点をよく認識して、セキュリティ対策を手当てしていく必要があろう。これまでの金融機関の対応例をみると、利用者の啓蒙、認証の強化、不正の早期検知、振込み限度額の引き下げなどが主なメニューとなっているが、その一方でハードウェアキーロガーなどの新たな手口なども出て来ており、こうした犯罪の高度化にも十分留意していく必要があると思われる。

2.質疑応答

(質問)インターネット技術を用いた決済システム構築の可能性、あるいは現実性についてどう考えるか。

(回答)インターネット技術という面では、事実上の標準技術であり、汎用的な製品を使用してシステムを安価に構築することができることから、これを採用するという流れにあることは誰にも否定できないと思う。一方、インターネット回線という面では、現時点では採用は難しいと考える。いくつか理由があるが、特に問題となるのは、可用性の観点である。インターネットは、元来は、簡単には切断されない可用性を実現する軍事技術として開発されたものであり、経験的にも、災害時等に強いということは確認されているところである。しかしながら、故意に負荷を集中させる、悪意を持ったDDOS攻撃(分散型サービス不能攻撃)のようなものに対しては決定的な対策が存在せず、現実的に実現できる可用性のレベルには限界がある。したがって、現時点では、滞ることによってマーケットが混乱するような重要な決済を行うシステムのインフラとして採用することは、適切ではないということになろう。

3.日本電子決済推進機構(竹内事務局長)からのコメント

 まず、これまで本フォーラムに出席していた日本デビットカード推進協議会は、2005年4月から、日本ICカード推進協議会、日本インターネット決済推進協議会と統合し、日本電子決済推進機構として活動を行っていくこととなったことをお知らせする。

 さて、当機構が推進しているJ-Debit(ジェイデビット)に関し、偽造・盗難キャッシュカード問題の受止め方などを申し述べたい。まず、J-Debitの加盟金融機関のキャッシュカードはデビットカードとして利用されているが、利用加盟店の店頭で偽造・盗難キャッシュカードがデビットカードとして使われた結果、カード名義人である預金者に被害が発生した場合については、2006年2月施行予定の預金者保護法の補償の対象外となっている。このため、デビットカード取引に対する補償等の対応は最終的には金融機関の個別判断に委ねられている。ただし、これまでのところ、デビットカードは店頭での対面取引で利用されることもあって、J-Debit において偽造・盗難カードの被害事例は報告されていない。

 しかしながら、当機構としても、J-Debitにおける具体的な被害が発生する危険性については引き続き注視しつつ、より安全なICキャッシュカード対応のデビットカード端末の普及など、導入コストとの兼ね合いはあるもののセキュリティ向上の施策を図り、今後ともデビットカード取引に対する消費者の信頼の向上に努めていきたいと考えている。

IV. 業務継続の体制整備を巡る動向

1.全国銀行協会(鶴見業務部次長)からの説明

 全国銀行協会では、2004年4月より、短期金融市場取引活性化研究会での検討を引き継ぐ形で、短期金融市場が被災時においてもその機能を極力維持する、あるいは早期復旧できるよう、主にコール取引を対象とした銀行界のBCP体制を早期に構築することを目指して検討を行ってきている。具体的には、被災時の通信手段について、各銀行の市場部門に災害時優先電話や衛星電話の設置を推奨するほか、被災時には、専用ウェブサイトを通じて、各銀行の状況のほか、日銀ネット等の決済インフラの稼動状況や金融当局からの情報等を集約・還元する方向で検討を進めている。

 こうした検討内容は、前回(第9回)の本フォーラムでもご紹介したところであるが、このうち専用ウェブサイトの現在の検討状況等は次の通りである。

  • ウェブサイト構築にかかる業者の選定を終え、2006年4月の稼動に向けて細かな要件面の検討に入っている。
  • 全国銀行協会会員銀行のほかコール取引の市場参加者に参加希望を募ったところ、会員銀行133先、その他32先の合計165先から参加したいとの要望があった。
  • 今後は、2006年4月の稼働開始に間に合うよう、規則やマニュアル類の整備を行っていく。

2.日本銀行金融市場局より説明

 2001年9月の米国同時多発テロ事件の教訓は、(1)被災時には業務処理能力が低下するため、取引・決済が滞る、(2)被災時にも最低限の市場取引(資金繰り、ポジション・クローズ等)や決済を行うニーズはある、(3)金融市場の機能を維持するには、個々の金融機関・決済インフラのBCPの整備に加えて、市場あるいは金融機関間のネットワークを如何に維持していくかが重要、というものであった。この「被災時における市場のネットワークの維持」が市場レベルBCPのポイントである。

 こうした教訓を踏まえ、英米では、第一に、正確な情報の伝達・共有のため、日頃から関係者間で人的ネットワークが形成されている。こうしたネットワークには、英米とも、金融機関のみならず取引所、決済機関等も参加している。また、被災時には電話等が繋がり難いことを踏まえ、代替的な情報伝達手段として、英ではBCP専用のウェブサイト、米では通話やインターネット利用等が可能な携帯情報端末とウェブサイトが確保されている。第二に、被災時の混乱回避のため市場取引方法(取引時間、決済タイミング等)の変更に関する推奨(レコメンデーション)が業界団体から機動的に発出されることが想定され、日頃からそのおおよそのメニューと意思決定プロセスが共有されている。第三に、被災時を想定し、関係者間の円滑な情報共有や意思決定等を確認する目的で、市場横断的な共同訓練が行われている。

 一方、わが国でも、短期金融市場では、先ほど全国銀行協会・鶴見業務部次長からお話があったように、短期金融市場取引活性化研究会・全国銀行協会が中心となり、被災時の情報の伝達・共有を目的として、BCP専用のウェブサイトの稼動(06年4月予定)に向けた準備が進められており、日本銀行もこれに参加する予定である。また、外為市場では、東京外国為替市場委員会において市場レベルBCPの検討が行われている。06年1月には、広く外為市場参加者への理解浸透を図るべく、同委員会・日本銀行の共催により、BCPに関するセミナーが開催される。証券市場でも、05年10月から日本証券業協会の「証券市場全体の事業継続計画に関する検討ワーキング」で本格的検討が開始されている。大規模自然災害やテロが明日にも起こりかねないことを踏まえれば、わが国でも市場レベルBCPの一層の充実が早急に図られていくことが重要である。

 日本銀行では、本年3月に公表した「中期経営戦略」(2005~2009年度)において、「災害時の業務継続体制の充実」を日本銀行が取り組むべき8つの戦略分野の1つとして位置付けており、市場レベルBCPについても、引き続き市場参加者の取り組みを積極的に支援していきたい。

3.日本銀行決済機構局より説明

 前回(第9回)の本フォーラム以降の、業務継続の体制整備に関する政府の動向と日本銀行の対応をご紹介する。

 まず政府の動向として、中央防災会議が「首都直下地震対策大綱」を本年9月27日に公表した。首都地域で大規模な地震が発生した場合には、災害応急対策に不可欠な政治・行政機能や、被災地の復興・復旧など国民生活において重要な役割を担う経済機能といった首都中枢機能が甚大な被害を受けることも予想される。このため同大綱では、わが国全体の国民生活・経済活動への影響が極力生じないよう、首都中枢機能を担う主体(首都中枢機関)について、災害発生直後から特に3日間程度の応急対策活動においても、その機能を途絶することなく継続することが求められている。特に経済機能を担う首都中枢機関——私ども中央銀行と、本フォーラムご出席の方々を始めとする主要な金融機関および決済システム——について具体的にみると、重要な金融決済機能を当日中に復旧させる体制をとれるようにすること、金融決済に関わる重要なアナウンスを国内外に発信し、日本の金融決済機能に対する信用不安を軽減する役割を果たすようにすることが求められている。我々は、金融界の一員として災害発生時の国民生活の安定のため各々が重要な責務を担うとの認識に基づき、電算センター・オフィスのバックアップ機能の充実や緊急参集要員・非常用電源の確保などの対策を図る必要がある。また、決済システムはネットワークとして機能するという特性を持つため、決済システムの運営主体のみならず、その参加者も含めた各々の業務継続体制の向上が引き続き重要である。

 この間、日本銀行では、本年3月に公表した「中期経営戦略」(2005~2009年度)において「災害時の業務継続体制の充実」を戦略分野として位置付けるとともに、これを具現化するための今年度の主要施策(平成17年度の業務運営方針)を掲げ、鋭意取り組んできた。具体的には、首都直下地震対策大綱の公表も念頭に、首都直下地震を想定した業務継続訓練を既に実施したほか、緊急時の参集要員制度の見直しや帰宅困難者への対応など、さらなる検討を進めてきている。また、日本銀行本店の建物が使用不能になった場合を想定した代替業務拠点の整備・充実を図るとともに、来年3月の公表に向けて、武力攻撃事態等や大規模テロを想定した、国民保護法に基づく国民保護業務計画の策定にも着手している。

4.日本銀行金融機構局より説明

 日本時間の本年12月20日午後8時に、ジョイント・フォーラム(1996年に、バーゼル銀行監督委員会、証券監督者国際機構、保険監督者国際機構によって、業態を跨る課題について国際準則等を検討するために設置された、共同協議機関)から「業務継続のための基本原則」(原題:High-level principles for business continuity(外部サイトへのリンク))という文書が公表され、その内容についての市中協議が開始された。

 本文書は、前文で、策定の経緯と、効果的な業務継続体制のあり方、幅広い金融関係者を読者として想定していることを述べ、本文で、業務継続において基本的と考えられる7つの原則を大掴みに示している。

原則1は、金融関係機関と金融当局が、効果的・包括的な業務継続体制を構築しておくこと、取締役会と上級管理職は、業務継続に共同責任を有すべきことを定めている。

原則2は、金融関係機関と金融当局は、重大な業務中断を想定して業務継続体制を構築すべきこと、金融当局の業務継続体制に、所管分野における重大な業務中断への対応も含めるべきことを定めている。

原則3は、金融関係機関が、自らが金融システムの運営に対し与えるリスクに応じて復旧目標を設定すべきこと、目標は金融当局と協議の上で、または金融当局によって設定されることも有り得ることを述べている。

原則4は、金融関係機関と金融当局が、重大な業務中断の場合の組織内や関係外部先との連絡体制を構築しておくべきことを定めている。

原則5は、金融関係機関と金融当局が、国境を越えて影響が波及し得る重大な業務中断の際に、他国の金融当局と連絡をとることも想定しておくべきことを定めている。

原則6は、金融関係機関と金融当局が、業務継続計画に基づき訓練を行い、実効性を検証し、業務継続体制を更新しておくべきことを定めている。

原則7は、金融当局は、所管先のモニター内容に業務継続体制の審査も含めるべきことを定めている。

 原則1~6は、決済システムや金融機関、金融当局を含む幅広い金融関係者に向けられており、原則7のみが金融当局向けとなっている。潜在的な脅威となる災害の種類など、各国・各業態の事情がそれぞれ異なることに配意して、細かい枠組の提示は避け、国際的に共通な基本原則を示すに止めている。このほか、これら基本原則は、(1)業務上の重要性やリスクの程度に応じた業務継続体制の整備を慫慂し、(2)業務継続の伝統的な考え方に立脚し、(3)今日の金融システムにおける相互依存の深化を反映して、各国間の連絡を円滑に行うべきことを強調しているところが特徴である。こうした準則によって、世界的に業務継続体制の整備を一層推進して、災害等のショックに対する金融システムの回復力を、世界的に高めていこうと企図している。

 また、抽象的記述となる基本原則を補足し、ともすれば薄れがちな災害の記憶と教訓を、生きたものとして参照できるように、北米大停電、SARS、新潟中越地震、ロンドンの爆破テロという、2003年以降の3年間で発生した5つの事例にかかるケース・スタディを巻末に添付している。

 これらの原則を含む本文書全体の市中協議は、来年3月10日が締切りとなっている。また、市中との意見交換会やコンファレンスも実施の方向で検討されている。市中協議終了後、6月頃に最終版を公表することを想定している。

以上


別添

第10回 決済システムフォーラム出席者(敬称略)

  • 荒井 亮二
    農林中央金庫(全国農協貯金ネットサービス運営) 市場業務管理部長
  • 大竹 祐司
    全国地方銀行協会(ACS運営) 業務部副部長
  • 沖津 正恒
    日本国債清算機関 代表取締役社長
  • 久保 宏一郎
    三井住友銀行(全国銀行協会事務委員会委員長行)
    事務統括部手続企画グループ長
  • 斎藤 英之
    全国信用協同組合連合会(SANCS運営) 決済業務部長
  • 齊藤 宗孝
    証券保管振替機構 企画部長
  • 佐方  裕
    東京銀行協会 外国為替円決済制度管理室長
  • (座長)
    白川 方明
    日本銀行理事
  • 杉山 順之
    東京証券取引所 決済管理部調査役
  • 鈴木 慶一
    あおぞら銀行(LONGS運営会長行) IT統括部調査役
  • 鈴木 伸治
    ほふりクリアリング 業務管理部長
  • 滝澤 和宏
    三菱UFJ信託銀行(信託協会<SOCS運営>会長行)システム企画部調査役
  • 竹内 一正
    日本電子決済推進機構 事務局長
  • 津金 雅二
    東京銀行協会 CDセンター所長
  • 鶴見 誠一
    全国銀行協会 業務部次長
  • 冨田 信篤
    第二地方銀行協会(SCS運営) 業務部次長
  • 中西 紀之
    日本マルチペイメントネットワーク運営機構 事務局次長
  • 服部 秀樹
    信金中央金庫(しんきんネットキャッシュサービス運営) 決済業務部長
  • 東  能章
    労働金庫連合会(ROCS運営) 事務企画部長
  • 福知  真
    東京金融先物取引所 業務部次長
  • 牧田  隆
    日本証券クリアリング機構 企画業務グループ業務企画担当課長
  • 牧野 郁雄
    みずほ銀行(全国銀行協会会長行) 全銀協会長行室参事役
  • 宮原 智彦
    みずほ銀行(全国銀行協会市場国際委員会委員長行) 総合資金部参事役
  • 諸節  潔
    CLS 東京事務所代表
  • 矢部  伸
    東京銀行協会 東京手形交換所長
  • 吉田 哲明
    債券決済ネットワーク 業務部長
  • 和田 耕志
    東京銀行協会 事務システム部長

日本銀行 決済機構局(事務局)
金融機構局
金融市場局