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金融機関の流動性リスク管理に関する日本銀行の取り組み

2009年6月26日
日本銀行

要旨

2007年夏以降の国際金融資本市場の動揺は、金融機関のリスク管理における流動性リスクの重要性を改めて浮き彫りにした。本稿では、わが国金融機関のリスク管理のさらなる高度化と流動性リスク管理のあり方に関する国際的な議論に貢献することを狙いに、金融機関の流動性リスクと中央銀行の政策・業務運営の関係を整理したうえで、金融機関の流動性リスク管理に関する日本銀行の取り組みを紹介する。

金融機関の流動性リスク管理の難しさは、リスクの所在や規模が必ずしも実際のバランスシートに表れている計数だけでは評価できないことである。流動性リスク顕在化の引き金となる要因は、金融機関経営のあらゆる分野に潜在しており、その出方や大きさはビジネスモデルや取り巻く環境によって大きく異なりうる。このため、流動性リスクを考えるうえでは、流動性に関わる広範な要素を踏まえて検討する必要がある。

わが国銀行の円貨にかかる流動性リスクの状況をみると、(1)安定的な調達手段としての預金の割合が高い、(2)売却や担保差入によって資金化可能な有価証券を大量に保有している、(3)偶発債務等の規模が小さいといった特徴があり、全体として、流動性リスクに対し頑健な資産・負債構造(オフ・バランスを含む)を有していると評価される。一方、外貨については運用・調達のギャップが高水準で推移しているが、短期の外貨ポジションは全体として保守的に運営されていると判断される。

日本銀行は、マクロ的な観点から金融市場や金融システムにおける流動性全般の動向を把握・分析するのと並行して、個別金融機関の流動性の状況についても日々きめ細かくモニタリングし、必要に応じ金融機関に対し指導・助言を行っている。

日本銀行による個別金融機関に対する流動性モニタリングには、ヒアリングや定期的な情報収集により継続的に調査を行う「オフサイト・モニタリング」と、一定の周期をおいて金融機関に立ち入って調査を行う「考査」とがある。日本銀行は、この2つのチャネルを一体的に運営しており、たとえば、金融機関の資金運用・調達にかかる方針や財務データ、資金繰りは主にオフサイト・モニタリングで、また、内部管理体制やコンティンジェンシー・プランの整備状況は主に考査による立入調査で、把握・確認に努めている。

オフサイト・モニタリング部署では、銀行、証券会社、外国金融機関の在日拠点等、すべての取引先金融機関に対し担当者を配置し、毎日、資金繰り状況を把握するとともに、日常的に財務担当者と意見交換を行っており、これが日本銀行の流動性モニタリングの大きな特徴となっている。また、近年の金融機関業務の多様化、グローバル化を踏まえ、各国中央銀行や内外監督当局との間で一段と密接なコミュニケーションを図っている。

金融機関の流動性リスクを評価する際、日本銀行は、単一の財務指標で評価するのではなく、複数の指標と金融機関から得られる定性的な情報を加味して総合的に判断している。具体的には、以下のような項目に沿って、各金融機関の流動性リスクの状況を細かく確認し、指導・助言を行っている。

  • 流動性リスク・プロファイルや管理体制
  • バランスシート運営
  • 日々の資金繰り
  • 緊急時における対応

金融機関の流動性リスクの態様や大きさは、今後も、金融機関の業務展開や金融機関を取り巻く環境の変化に応じて大きく変わりうる。金融機関は、その時々における自らの流動性リスク・プロファイルを的確に把握し、十分な流動性リスク管理を行っていくことが重要である。日本銀行としても、今後とも、こうした金融機関の取り組みが適切に行われていることを確認し、必要に応じて改善を促していく考えである。そのうえで、日本銀行は、金融機関間の円滑な資金決済の確保に努め、これを通じて、金融システムの安定に一層貢献していく考えである。

以上