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金融経済月報(基本的見解1)(1999年 4月)2

  1. 本「基本的見解」は、4月 9日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、4月 9日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

1999年 4月13日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9904.pdf 637KB)から入手できます。


 景気は、足許、下げ止まりの様相を呈している。

 最終需要面をみると、設備投資は減少を続けており、個人消費についても、全体として回復感に乏しい状態が続いている。また、純輸出(輸出−輸入)は横這い圏内の推移となっている。しかし、住宅投資は、このところ持ち直しつつあり、公共投資の発注は、足許大幅に増加している。

 以上のような最終需要の動向や在庫調整の進捗を背景に、鉱工業生産は下げ止まっている。これらに加えて、金融システム不安が和らいでいることなどもあって、企業・消費者心理の悪化には歯止めがかかっているように窺われる。ただし、企業収益は引き続き低迷しているほか、家計の雇用・所得環境も悪化を続けている。また、企業金融面でも、先行きの資金繰りに対する不安感は、徐々に薄らいできているものの、なお払拭し切れてはいない模様である。

 今後の経済情勢については、在庫調整の観点からは生産回復の条件が次第に整いつつある中で、政府の経済対策や日本銀行による金融緩和措置などが、下支え効果を発揮することが見込まれる。また、金融機関に対する公的資本投入などを背景に金融システムへの不安感が和らぎ、一頃に比べ株価が持ち直しているといった、金融面での環境の改善も、景気に対して徐々に好影響を及ぼしていくことが期待される。しかし他方で、企業行動をみると、収益低迷が続き、バランスシート改善の必要性が強く意識されるもとで、リストラの動きが本格化しつつある。こうした企業リストラは、生産性向上につながると期待される一方、短期的には、設備投資の抑制に働くほか、雇用・所得環境の悪化などを通じて家計支出にもマイナスの影響を及ぼす可能性がある。これらを踏まえると、民間需要の速やかな自律的回復は依然期待し難い状況にある。今後は、このような点に留意しつつ、経済情勢全般の動向を注意深くみていくとともに、経済の中期的な成長力確保に向けて、構造改革が円滑に進み得るよう、環境を整備していくことが重要と考えられる。

 物価面をみると、大幅な需給ギャップなどを背景に、国内卸売物価が下落傾向を続け、企業向けサービス価格も軟化している。また、消費者物価も弱含みで推移している。今後の物価を取り巻く環境についてみると、足許の景気は下げ止まりの様相を呈しているとしても、当面、需給ギャップが明確に縮小するとは見込み難い。また、賃金の軟化が続いていることなども、物価の低下要因として作用すると考えられる。これらを踏まえると、物価は、今後も、下落基調を続けるものとみられる。

 金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物金利がゼロ%に近い水準で推移するもとで、金融機関の流動性確保に対する懸念は急速に後退している。さらに公的資本の投入もあって、ジャパン・プレミアムがほぼ解消された状態にあるほか、ターム物金利も低水準で推移している。

 この間、コール市場残高は、期末に一時その規模を回復したものの、新年度入り後は、機関投資家による普通預金等への資金シフトから、再び縮小傾向を辿っている。これまでのところ資金決済面で支障が生じるといった事態はみられていないが、今後ともその動向を注視していく必要がある。

 長期金利は、民間の資金需要の低迷などを反映して、緩やかに低下している。一方、株価は、企業の経営合理化効果などに対する期待や、米国株価の堅調を背景に、底固い動きを示している。

 金融の量的側面に関連して、企業の資金需要面をみると、設備投資などの実体経済活動に伴う資金需要は低迷を続けている。また、資金調達の厳しさを意識した企業の手許資金積み上げの動きも、このところ収まってきている。

 一方、民間銀行の融資姿勢をみると、企業業績の悪化を踏まえて、基本的に慎重な姿勢が維持されている。ただ、金融機関の資金繰り面や自己資本面からの制約は緩和されてきている。こうしたもとで、民間銀行も信用リスクの小さい融資案件を手はじめに、徐々に積極的な取り組み姿勢を示し始めているように窺われる。

 これらの結果、企業金融を巡る逼迫感は和らいできている。ただ、格付けが低めの企業などでは依然厳しい資金調達環境にある先も少なくなく、引き続き注意が必要である。また、民間銀行の融資態度の変化が今後さらにどの程度進み、これが企業の投資意欲などにどのような影響を与えていくことになるか、注目していく必要がある。

以上