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金融経済月報(基本的見解1)(2001年10月)2

  1. 本「基本的見解」は、10月11日、12日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、10月11日、12日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2001年10月15日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0110.pdf 712KB)から入手できます。


 わが国の景気をみると、生産の大幅な減少の影響が雇用・所得面にも拡がっており、調整は厳しさを増している。加えて、米国における同時多発テロ事件の発生を契機として、景気の先行きに対する不透明感が一段と高まっている。

 最終需要面をみると、純輸出(実質輸出−実質輸入)は海外経済の減速、とりわけ情報関連財の需要低迷を背景に、減少が続いている。輸出環境の悪化が続く中で、設備投資の減少も明確化している。住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。この間、個人消費は、総じてみればなお横這い圏内にあるが、このところやや弱めの指標が増えている。

 こうした最終需要の動向に加え、電子部品や素材で在庫過剰感が強いこともあって、鉱工業生産は大幅な減少が続いている。企業収益は製造業を中心に減少が明確になっており、家計の所得形成も徐々に弱まっている。

 さらに、米国における同時多発テロ事件を契機に、海外経済の一段の減速が避けられないとの認識が拡がるもとで、輸出関連企業では先行きに対する警戒感を強めている。

 今後の経済情勢についてみると、まず輸出環境の面では、世界同時的な情報関連財の在庫調整は、当面続くとみられるが、来春辺りまでには概ね一巡するとの見方が多い。しかし、テロ事件の影響等から米国個人消費の不振が長引けば、わが国においても消費財等の輸出減少を起点に新たな調整が誘発される惧れがあるなど、先行きの不確実性はむしろ強まっている。一方、国内需要の面では、設備投資は、企業収益の減少が続くもとで、情報関連分野を中心に投資計画の下方修正が相次いでいることからみて、減少傾向を辿るとみられる。個人消費も、雇用・所得環境が悪化していくにつれて、次第に弱まっていく可能性が高い。このように、企業収益から雇用・賃金に向かう所得形成メカニズムがマイナス方向に働き始めている中で、政府支出も減少基調を続けると見込まれている。このため、情報関連財の生産減少にはいずれ歯止めが掛かるとしても、生産活動が全体として下げ止まるまでには、かなりの時間を要すると考えられる。

 以上を総合すると、わが国の景気は、年初来の輸出の減少を起点とする景気の調整が徐々に内需面に拡がっていくことは避けられず、同時に、輸出の一段の減少が景気を下押しする懸念も強まっている。また、景気の脆弱な地合いが続く中で、内外資本市場の動きが企業や家計の心理面などを通じて実体経済に悪影響を及ぼすリスクにも、引き続き留意が必要である。

 物価面をみると、輸入物価は、国際商品市況の軟化などを反映して下落している。国内卸売物価は、電気機器や素材等の下落が続くもとで、既往の原油高や為替円安の影響が一巡したことから、下落幅がやや拡大している。消費者物価は、輸入製品やその競合品の価格低下を主因に、弱含んでいる。企業向けサービス価格は、下落が続いている。

 物価を巡る環境をみると、景気の調整が長引くもとで、国内需給バランス面から、物価に対する低下圧力が徐々に働いていくとみられる。このほか、技術進歩を背景とする機械類の趨勢的な下落に加え、規制緩和や流通合理化に伴う財・サービスの価格低下が引き続き下落方向に作用するとみられる。これらを総じてみれば、当面、物価は緩やかな下落傾向を辿るものと考えられる。また、今後の景気動向には不透明な要素が多いだけに、需要の弱さに起因する物価低下圧力がさらに強まる可能性にも留意が必要である。

 金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物金利は、9月18日の金融政策決定会合で金融市場調節方針が変更され、日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として潤沢な資金供給が行なわれたこと等を受けて、ゼロ近辺で推移している。

 ターム物金利は、総じてみれば横這い圏内で推移している。ジャパン・プレミアムは、ほぼ解消された状態が続いている。

 長期国債流通利回りは、最近では1.3%台後半で推移している。国債と民間債(金融債、社債)の流通利回りスプレッドは、高格付債が概ね横這い圏内で推移している一方、低格付債では幾分拡大する動きがみられている。

 株価は、最近では幾分持ち直しに転じている。

 円の対米ドル相場は、最近では120〜121円台で推移している。

 資金仲介活動をみると、民間銀行は、融資先の信用力を慎重に見きわめつつ、優良企業向けを中心に貸出を増加させようとする姿勢を続けている。しかし、中小企業からみた金融機関の貸出態度は幾分慎重化している。社債、CPなど市場を通じた企業の資金調達環境は、概ね良好な地合いが続いている。

 資金需要面では、企業の借入金圧縮スタンスが維持されている中で、設備投資が減少していることなどから、民間の資金需要はこのところ減少傾向を強めている。

 こうした中で、民間銀行貸出は減少傾向が続いている。社債の発行残高は、前年比2%程度の伸びとなっている。一方、CPの発行残高は、良好な発行環境を反映して、前年を大幅に上回る高水準で推移している。

 9月のマネーサプライ(M2+CD)前年比は、前月に比べて伸びを高めた。

 企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。

 以上のように、最近のわが国の金融環境をみると、金融市場における緩和感の浸透、金利水準の低位安定、マネー指標の伸長、社債・CP市場の概ね良好な環境などの点で、きわめて緩和的な状況が続いている。しかし、企業業績の悪化や金融機関の貸出態度の慎重化などを背景に、中小企業では、資金繰りの厳しさが一段と強まる傾向も窺われている。このため、今後の金融機関行動や企業金融の動向には、十分注意していく必要がある。

 また、米国における同時多発テロ事件の影響についても、今後の情勢展開が内外の金融資本市場や実体経済活動にどのような影響を与えるか、引き続き慎重に見守っていく必要がある。

以上