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金融経済月報(基本的見解1)(2002年 7月)2

  1. 本「基本的見解」は、7月15日、16日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、7月15日、16日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2002年 7月17日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0207.pdf 807KB)から入手できます。


 わが国の経済情勢をみると、国内需要は依然弱いものの、輸出や生産面の明るさが増し、企業の収益や業況感も改善するなど、全体としてほぼ下げ止まっている。

 最終需要面をみると、設備投資は引き続き減少しており、個人消費も一部には底固さが窺われるものの全体として弱めの動きが続いている。また、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少傾向にある。一方、純輸出(実質輸出−実質輸入)は、海外における景気の回復や情報関連財を中心とした在庫復元の動きを背景に、大幅に増加している。

 こうした輸出の増加や在庫調整の一巡を反映して、鉱工業生産ははっきりと持ち直している。そうしたもとで、企業収益は回復に転じつつあるとみられ、企業の業況感も改善している。雇用面でも、所定外労働時間やパートを中心とした新規求人など、限界的な部分での改善の動きが続いている。ただし、企業の人件費削減姿勢が根強いことから、雇用者所得は明確な減少が続いており、家計の雇用・所得環境は、全体として引き続き厳しい状況にある。

 今後の経済情勢についてみると、輸出は、海外における在庫復元の力が弱まるにつれて、増勢が鈍化するとみられるが、海外景気の緩やかな回復を背景に増加基調自体は続くと考えられる。そのもとで、鉱工業生産も、テンポの振れを伴いつつも、基調的には緩やかな増加傾向を辿るとみられる。

 一方、国内需要については、公共投資が減少を続けると見込まれるほか、民間需要も、当面弱い動きを続ける可能性が高い。ただ、上記のように輸出や生産の増加が続いていけば、企業収益の回復が明確となり、その好影響が、国内民間需要へも次第に及んでいくと期待される。実際、設備投資の先行指標には、一部に下げ止まりの動きがみられる。

 以上を総合すると、今後わが国の景気は、輸出や生産の増加が企業収益の回復を通じて、国内民間需要を下支えしていくことにより、下げ止まりが明確になっていくものと考えられる。ただし、過剰雇用や過剰債務の調整圧力が根強いことなどを踏まえると、景気は暫くの間、自律的な回復力に乏しい展開となる可能性が高い。また、情報関連分野を中心とする輸出環境については、米国をはじめとする世界的な株安やドル安の動きにみられるように、このところ不透明感が幾分増している。そうしたもとで、為替市場を含め内外の金融・資本市場で不安定な動きが増大するような場合、実体経済にその悪影響が及びやすいという点には注意が必要である。

 物価面をみると、輸入物価は、春以降のドル安・円高の影響から、このところ弱含みに転じている。国内卸売物価については、これまでの輸入物価上昇や在庫調整一巡の影響と、機械類の下落や電力料金の引き下げなどが相殺し合い、ほぼ横這いの動きとなっている。一方、消費者物価は引き続き緩やかな下落傾向にあり、企業向けサービス価格も下落が続いている。

 物価を取り巻く環境をみると、需給バランスの面では、在庫調整の一巡がある程度下支え要因として働くものの、国内需要の弱さが当面続く中で、物価に対する低下圧力はなお掛かり続けていくとみられる。また、機械類における趨勢的な技術進歩や、規制緩和、流通合理化といった要因も引き続き物価を押し下げる方向に作用するとみられる。こうした中で、輸入物価が下落に転じつつあることを踏まえると、その影響を受けやすい国内卸売物価は、横這いから再び弱含みへと向かう公算が大きい。一方、消費者物価については、消費財輸入の増勢鈍化が、価格低下圧力をなにがしか緩和する要因として働くとみられる反面、賃金の低下幅の拡大傾向は、サービス価格を中心に価格低下を促す可能性もあり、当面、現状程度の緩やかな下落傾向を辿るものと考えられる。

 金融面をみると、短期金融市場では、日本銀行が潤沢な資金供給を続けるもとで、日本銀行当座預金残高は、最近では15兆円程度で推移している。

 こうしたもとで、オーバーナイト物金利は、引き続きゼロ%近辺で推移している。また、ターム物金利も、落ち着いた動きを続けている。

 長期国債流通利回りは、株価の下落をきっかけに小幅低下し、最近では1.2%台で推移している。また、民間債(銀行債、事業債)と国債との流通利回りスプレッドは、6月半ば以降、今年度入り後の縮小傾向が一服した。

 株価は、6月中、米国株価の動きにつれるかたちで下落したが、その後は幾分持ち直し、最近は10千円台半ばでのもみ合いとなっている。

 円の対米ドル相場は、米ドルの全般的な軟化傾向を反映して引き続き上昇し、最近は115~117円程度で推移している。

 資金仲介活動をみると、民間銀行は、優良企業に対しては貸出を増加させようとする姿勢を続ける一方で、信用力の低い先に対しては貸出姿勢を慎重化させている。企業からみた金融機関の貸出態度も引き続き厳しい。社債、CPなど市場を通じた企業の資金調達環境をみると、低格付け企業の発行環境はなお厳しい状況にあるが、高格付け企業では、改善傾向にある。

 資金需要面では、企業の借入金圧縮スタンスが維持されている中で、設備投資が減少していることなどから、民間の資金需要は引き続き減少傾向を辿っている。

 こうした中で、民間銀行貸出は前年比2%台の減少が続いている。社債の発行残高は、前年比伸び率が低下している。CPの発行残高は、前年を上回って推移しているものの、前年比伸び率は鈍化傾向にある。

 マネタリーベースは、伸び率が幾分鈍化しているが、前年比2割台の大幅な伸びとなっている。マネーサプライは、前年比3%台半ばの伸びとなっている。

 企業の資金調達コストは、総じてみれば、きわめて低い水準で推移している。

 以上のように、最近のわが国の金融環境は、金融市場の状況を総じてみれば、きわめて緩和的な状況が続いている。また、企業の資金繰りも、悪化傾向に歯止めが掛かりつつある。しかし、信用力の低い企業に対する投資家の姿勢は依然として厳しいほか、民間銀行の貸出姿勢も引き続き慎重化している。このため、金融機関行動や企業金融の動向には、引き続き十分注意していく必要がある。

以上