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金融経済月報(基本的見解1)(2003年 6月)2

  1. 本「基本的見解」は、6月10日、11日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、6月10日、11日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2003年 6月12日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0306.pdf 744KB)から入手できます。


 わが国の景気は、足許の輸出にやや弱さがみられるが、全体として横這い圏内の動きを続けている。

 最終需要面をみると、設備投資は、振れを伴いつつも緩やかな持ち直し基調にある。一方、個人消費は弱めの動きを続けているほか、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。また、純輸出は、基調的には引き続き横這い圏内とみられるが、足許やや弱い動きとなっている。

 以上の最終需要の動向を反映し、鉱工業生産は、横這い圏内の動きを続けている。こうしたもとで、企業収益は、改善傾向ながらそのテンポは緩やかになってきている。雇用面では、臨時雇用等を広く含む雇用者数は下げ止まり傾向にあるとみられるが、所定外労働時間や新規求人の増加は一服している。また、企業の人件費削減姿勢が根強い中で、賃金が引き続き低下するなど、雇用者所得は減少を続けており、家計の雇用・所得環境は、全体として引き続き厳しい状況にある。

 今後の経済情勢を考えると、まず海外経済については、イラク情勢を巡る不確実性の低下などを背景に、本年後半には米国を中心に成長率が高まるとの見方が一般的である。しかし、米国経済の回復テンポが当面はごく緩やかなものにとどまると予想されるうえ、東アジア経済についても、韓国の内需減速や新型肺炎問題の影響等から、足許の成長率は少なくとも一時的に鈍化している可能性が高い。これらを踏まえると、当面、輸出は弱含みないし横這いの動きにとどまり、鉱工業生産も、横這い圏内の動きが続くと考えられる。

 一方、国内需要については、公共投資が減少傾向を辿ると見込まれるほか、個人消費も、厳しい雇用・所得環境のもとで、当面、弱めの動きを続ける可能性が高い。設備投資は、輸出や生産が再びはっきりと増加すれば、回復傾向が明確になっていくと考えられるが、当面はごく緩やかな増加にとどまるとみられる。

 以上を総合すると、今後わが国の景気は、海外経済の成長率が本年後半に高まることを前提とすれば、いずれは輸出や生産が増加基調に復することを通じて、前向きの循環が働き始めると考えられる。ただし、過剰雇用や過剰債務の調整圧力が根強い中で、生産が当面横這い圏内で推移するとみられることなどを念頭に置くと、しばらくの間、国内需要の自律的な回復力が高まることは展望しにくい。また、輸出環境の先行きについては、欧米経済の先行きや、わが国と密接な連関を有する東アジア域内での新型肺炎問題の影響などを巡って、不透明感の強い状態が続いている。国内面でも、金融システム情勢や、それが株価や企業金融、ひいては実体経済に及ぼす影響について、引き続き注視していく必要がある。

 物価面をみると、輸入物価や国内企業物価は、春先の原油価格反落などを反映して下落に転じている。企業向けサービス価格は、価格改定期に当たる4月は下落幅が拡大した一方、消費者物価は、医療制度改革に伴う診療代の上昇等から下落幅が縮小した。

 物価を取り巻く環境をみると、輸入物価は、春先の原油価格反落の影響がなお残ることなどから、目先、下落が続くとみられる。国内面でも、マクロの需給バランスや機械類における趨勢的な技術進歩、流通合理化といった要因が、引き続き物価を押し下げる方向に作用するとみられる。加えて、素材の商品市況も頭打ちになっていることなどを踏まえると、国内企業物価は、下落が続く可能性が高い。この間、消費者物価については、石油製品の価格がピークアウトしつつある一方、企業の低価格戦略と関係の深い消費財輸入にかつての勢いがみられないことなどからみて、前年比で現状程度の小幅下落が続くと予想される。

 金融面をみると、5月20日の金融政策決定会合において決定された金融市場調節方針に沿って、日本銀行が一層潤沢な資金供給を行うもとで、日本銀行当座預金は、最近では28~29兆円程度で推移している。

 こうしたもとで、オーバーナイト物金利は、引き続きゼロ%近辺で推移している。また、ターム物金利も、低水準で安定した動きを続けている。

 長期国債流通利回りは、銀行や機関投資家による国債投資が引き続き活発なことから、0.4%台まで低下している。また、民間債(銀行債、事業債)と国債との流通利回りスプレッドは、既往ボトム圏で推移している。

 株価は、欧米株価に連れるかたちで上昇し、最近では日経平均株価は8千円台後半で推移している。

 円の対米ドル相場は、市場で介入警戒感が高まったことや、米国景気指標の一部改善などから下落し、最近では117~118円台で推移している。

 資金仲介活動をみると、民間銀行は、優良企業に対して貸出を増加させようとする一方で信用力の低い先に対しては慎重な貸出姿勢を維持しているが、このところ利鞘設定などの面で貸出姿勢を幾分緩和する動きも窺われている。この間、企業からみた金融機関の貸出態度は中小企業等ではなお厳しい。社債、CPなど市場を通じた企業の資金調達環境をみると、高格付け企業は引き続き緩和的であるほか、相対的に格付けの低い企業でも持ち直しの動きが続いている。

 資金需要面では、企業の借入金圧縮スタンスが維持されている中で、設備投資が低水準にあることなどから、民間の資金需要は引き続き減少傾向を辿っている。

 こうした中で、民間銀行貸出は前年比2%台前半の減少が続いている。CP・社債の発行残高は、概ね前年並みの水準で推移している。

 この間、企業の資金繰り判断は、幾分改善の動きもみられるが、中小企業等ではなお厳しい状況が続いている。

 マネタリーベースは、伸びをやや高め、前年比1割台半ばとなっている。マネーサプライは、前年比1%台半ばの伸びで推移している。

 企業の資金調達コストは、全体としてきわめて低い水準で推移している。

 以上を踏まえて、金融面の動きを総合的に判断すると、金融市場では、日本銀行による追加緩和措置もあり、きわめて緩和的な状況が維持されている。長期金利もさらに低下しているほか、株価もこのところ持ち直している。マネーサプライやマネタリーベースは、経済活動との対比でみれば高めの伸びを維持している。企業金融面では、CP・社債の発行環境などに幾分改善の動きがみられるものの、信用力の低い企業を中心に資金調達環境は総じて厳しいという基本的な状況に大きな変化はない。このため、金融資本市場の動向や金融機関行動、企業金融の状況については、引き続き十分注意してみていく必要がある。

以上