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金融経済月報(基本的見解1)(2003年 7月)2

  1. 本「基本的見解」は、7月14日、15日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、7月14日、15日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2003年 7月16日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0307.pdf 769KB)から入手できます。


 わが国の景気は、横這い圏内の動きを続けている。

 最終需要面をみると、設備投資は、振れを伴いつつも緩やかな持ち直し基調にある。一方、個人消費は弱めの動きを続けているほか、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。また、純輸出は、横這い圏内で推移している。

 以上の最終需要の動向を反映し、鉱工業生産は、横這い圏内の動きを続けている。また、企業収益は、増益テンポが緩やかになりつつも改善傾向をたどっている。こうした中で、先行きの不透明感も幾分後退しつつあり、企業の業況感は、製造業大企業を中心にやや改善している。雇用面では、臨時雇用等を広く含む雇用者数は下げ止まり傾向にあるが、所定外労働時間や新規求人の増加は一服している。また、企業の人件費削減姿勢が根強い中で、賃金が緩やかながらも低下基調にあるなど、雇用者所得はなお減少を続けており、家計の雇用・所得環境は、全体として引き続き厳しい状況にある。

 今後の経済情勢を考えると、まず海外経済については、地政学的なリスクの後退などを背景に、本年後半には米国を中心に成長率が高まるとの見方が一般的である。しかし、米国経済の回復テンポが当面はごく緩やかなものにとどまると予想されるうえ、東アジア経済についても、韓国の内需減速や新型肺炎(SARS)問題の影響もあって、足もとの経済活動は勢いが鈍化している。これらを踏まえると、当面、輸出は横這い圏内の動きにとどまり、鉱工業生産も、横這い圏内の動きが続くと考えられる。

 国内需要については、公共投資が減少傾向をたどると見込まれるほか、個人消費も、厳しい雇用・所得環境のもとで、当面、弱めの動きを続ける可能性が高い。一方、設備投資は、収益改善にもかかわらず大幅に抑制されてきた製造業大企業を中心に、今後は回復傾向が次第に明確化していくと予想される。ただ、輸出や生産の増勢回復に不透明感が残る間、設備投資全体の伸びは、緩やかなものにとどまる可能性が高い。

 以上を総合すると、今後わが国の景気は、海外経済の成長率が本年後半に高まることを前提とすれば、次第に輸出や生産が増加基調に復することを通じて、前向きの循環が働き始めると考えられる。ただし、過剰雇用や過剰債務の調整圧力が根強い中で、生産が当面横這い圏内で推移するとみられることなどを念頭に置くと、しばらくの間、国内需要の自律的な回復力が高まることは展望しにくい。また、輸出環境の先行きについては、SARS感染の終息により下振れのリスクは幾分和らいだが、米国経済の回復力などを巡って、なお不透明感の強い状態が続いている。国内面では、株価の持ち直しは一つの好材料であるが、金融システムの脆弱性を考えると、長期金利がさらに急上昇する可能性やその場合の影響などについて、注意が必要である。

 物価面をみると、輸入物価や国内企業物価は、春先の原油価格反落などを反映して下落している。企業向けサービス価格は、価格改定期に当たる4月に下落幅が拡大した後、前年比1%強の下落が続いている。消費者物価は、医療制度改革に伴う診療代の上昇等から4月に下落幅が縮小した後、同程度の下落が続いている。

 物価を取り巻く環境をみると、輸入物価は、目先なお下落が続くが、春先に反落した原油価格がその後は底固く推移していることなどから、ほどなく下げ止まる可能性が高い。一方、国内面では、マクロの需給バランスや機械類における趨勢的な技術進歩、流通合理化といった要因が、引き続き物価を押し下げる方向に作用するとみられる。加えて、素材の商品市況も頭打ちになっていることなどを踏まえると、国内企業物価は、下落が続く可能性が高い。この間、消費者物価は、前年比で現状程度の小幅下落が続くと予想される。

 金融面をみると、日本銀行が潤沢な資金供給を行った結果、日本銀行当座預金は29兆円前後で推移している。

 こうしたもとで、オーバーナイト物金利は、総じてみると引き続きゼロ%近辺で推移している。また、ターム物金利も、低水準で安定した動きを続けている。

 長期国債流通利回りは、6月央までは投資家の積極的な投資姿勢から一段と低下した。その後、利益確定等を目的とした売却が嵩み、金利は急上昇し、最近では1.0%前後で推移している。こうした中、民間債(銀行債、事業債)と国債との流通利回りスプレッドは、引き続き低水準で推移している。

 株価は、先行きのわが国経済に対する見方が一部で改善しつつあることや、海外投資家が積極的な投資姿勢を維持していることなどから、最近では日経平均株価は9千円台後半まで回復している。

 円の対米ドル相場は、米国景気指標の一部改善などを受けて、月末にかけて下落したが、その後は、海外投資家による対内株式投資の活発化などを受けて反発し、最近では117~118円台で推移している。

 資金仲介活動をみると、民間銀行は、優良企業に対して貸出を増加させようとする一方で信用力の低い先に対しては慎重な貸出姿勢を維持しているが、利鞘設定などの面で貸出姿勢を幾分緩和する動きも窺われている。この間、企業からみた金融機関の貸出態度は幾分改善しているが、中小企業等ではなお厳しい状況にある。社債、CPなど市場を通じた企業の資金調達環境をみると、長期金利の上昇を眺めて社債発行市場で様子見姿勢が幾分窺われるが、高格付け企業を中心に総じて良好な状況が続いている。

 資金需要面では、企業の借入金圧縮スタンスが維持されている中で、設備投資が低水準にあることなどから、民間の資金需要は引き続き減少傾向を辿っている。

 こうした中で、民間銀行貸出は前年比2%台前半の減少が続いている。CP・社債の発行残高は、前年を若干上回る水準となっている。

 この間、企業の資金繰り判断は、中小企業等ではなお厳しい状況にあるが、幾分改善している。

 マネタリーベースは伸びを高め、前年比2割程度となっている。マネーサプライは、前年比2%弱の伸びで推移している。

 企業の資金調達コストは、全体としてきわめて低い水準で推移している。

 以上を踏まえて、金融面の動きを総合的に判断すると、金融市場ではきわめて緩和的な状況が維持されている。この間、長期金利は上昇しているが、株価は引き続き回復している。マネーサプライやマネタリーベースは、経済活動との対比でみれば高めの伸びを維持している。企業金融面では、CP・社債の発行環境は高格付け企業を中心に良好な状況が続いているものの、信用力の低い企業を中心に資金調達環境は総じて厳しいという基本的な状況に大きな変化はない。このため、金融資本市場の動向や金融機関行動、企業金融の状況については、引き続き十分注意してみていく必要がある。

以上