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金融経済月報(基本的見解1)(2003年11月)2

  1. 本「基本的見解」は、11月20日、21日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、11月20日、21日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2003年11月21日
日本銀行

 わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。

 住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。また、個人消費は弱めの動きを続けている。しかし、輸出が増加しているほか、設備投資も緩やかな回復を続けている。こうした最終需要動向のもとで、鉱工業生産も横ばいから増加に転じている。この間、雇用者所得は、徐々に下げ止まってきている。

 先行きについては、景気は回復を続けるが、そのテンポは緩やかなものにとどまると考えられる。

 すなわち、海外経済が高めの成長を続けると予想されるもとで、輸出や生産は増加を続け、設備投資も回復傾向がより明確化していくと予想される。もっとも、過剰債務などの構造的な要因が根強いことを踏まえると、設備投資の増勢は力強さを欠くものにとどまると考えられる。また、個人消費は、雇用・所得環境に目立った改善が期待しにくいもとで、当面、弱めないし横ばい圏内の動きを続ける可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。

 物価面をみると、国内企業物価は、機械類の下落と米価の上昇が概ね相殺し、横ばい圏内の動きが続いている。一方、消費者物価は、医療費自己負担やたばこ税の引き上げといった一時的要因がかなり影響して、下落幅が縮小しており、9月の前年比は−0.1%となった。先行きについては、国内企業物価は、当面、引き続き横ばい圏内で推移する可能性が高い。消費者物価は、米価上昇の影響などにより、前年比が一時的にゼロ%以上となる可能性も考えられるが、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況のもとで、基調的には緩やかな下落を続けると予想される。

 金融面をみると、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、短期金融市場ではきわめて緩和的な状況が続いている。為替・資本市場では、円の対ドル相場や株価がやや不安定な動きを示している。この間、長期金利は低下している。企業金融を巡る環境は、信用力の低い企業についてはなお厳しい状況にあるが、総じてみればやや緩和される方向にある。CP・社債の発行環境は高格付け企業を中心に総じて良好な状況にあるほか、民間銀行は条件設定などの面で貸出姿勢を幾分緩和している。こうしたもとで、CP・社債の発行残高は引き続き前年を上回って推移しており、民間銀行貸出は減少幅が僅かながら縮小してきている。この間、マネーサプライは、前年比1%台の伸びとなっている。

以上