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当面の金融政策運営について

2020年6月16日
日本銀行

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする1
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. [1]ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う2
      2. [2]CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年3月末までの間、それぞれ7.5兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。
  2. わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある。海外経済は、感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にある。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は大幅に減少している。企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は増勢の鈍化が明確となっている。感染症の影響が続くなかで、雇用・所得環境には弱めの動きがみられており、個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。住宅投資は緩やかに減少している。この間、公共投資は緩やかに増加している。わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。
  3. 先行きのわが国経済は、経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続くと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとみられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
  4. リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きい。さらに、感染症の影響が収束するまで、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。
  5. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
    引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。
    当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員。反対:片岡委員。片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。 本文に戻る

  1. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。 本文に戻る
  2. ETFおよびJ-REITの原則的な買入れ方針としては、引き続き、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行い、その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。 本文に戻る

(参考)

開催時間
6月15日(月) 14:00~15:11
6月16日(火) 9:00~11:26
出席委員
議長 黒田 東彦(総裁)
雨宮 正佳(副総裁)
若田部昌澄( 副総裁 )
布野 幸利(審議委員)
櫻井 眞 ( 審議委員 )
政井 貴子( 審議委員 )
鈴木 人司( 審議委員 )
片岡 剛士( 審議委員 )
安達 誠司( 審議委員 )

上記のほか、

6月15日
財務省  神田 眞人 大臣官房総括審議官(14:00~15:11)
内閣府  田和 宏  内閣府審議官(14:00~15:11)
6月16日
財務省  遠山 清彦 財務副大臣(9:00~11:09、11:19~11:26)
内閣府  田和 宏  内閣府審議官(9:00~11:09、11:19~11:26)

が出席。

公表日時
当面の金融政策運営について――6月16日(火)11:33
主な意見――6月24日(水)8:50予定
議事要旨――7月20日(月)8:50予定

以上