金融政策

ホーム > 金融政策 > 金融政策決定会合の運営 > 金融政策決定会合議事要旨 2001年 > 金融政策決定会合議事要旨(2001年 9月18日開催分)

金融政策決定会合議事要旨

(2001年 9月18日開催分)*

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2001年10月29日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2001年11月 1日
日本銀行

開催要領

1.開催日時
2001年9月18日(14:00~18:48)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 速水 優(総裁)
  • 藤原作弥(副総裁)
  • 山口 泰(副総裁)
  • 三木利夫(審議委員)
  • 中原伸之(審議委員)
  • 植田和男(審議委員)
  • 田谷禎三(審議委員)
  • 須田美矢子(審議委員)
  • 中原 眞(審議委員)
4.政府からの出席者
  • 内閣府 竹中 平蔵 経済財政政策担当大臣
  • 財務省 村上誠一郎 財務副大臣

(執行部からの報告者)

  • 理事松島正之
  • 理事増渕 稔
  • 理事永田俊一
  • 企画室審議役白川方明
  • 企画室参事役雨宮正佳
  • 金融市場局長山下 泉
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局企画役吉田知生
  • 国際局長平野英治

(事務局)

  • 政策委員会室長横田 格
  • 政策委員会室審議役中山泰男
  • 政策委員会室調査役斧渕裕史
  • 企画室参事役和田哲郎(16:40~18:48)
  • 企画室企画第2課長梅森 徹(16:40~18:48)
  • 企画室調査役山岡浩巳
  • 企画室調査役長井滋人

I.議事運営についての議長提案

 冒頭、議長から今回の会合の議事運営について以下の提案がなされ、委員の了承を得た。また、本件については直ちに対外公表することとされた。

 「米国のテロ事件発生や金融市場の情勢などに鑑みると、日本銀行として出来るだけ速やかに金融政策運営方針を決定し、公表する必要があると考えられる。このため、今回の会合については、本日中に金融市場調節方針の決定、公表を行うことを目指して、議事運営を進めることとしたい。」

II.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節については、前回会合(8月13、14日)で決定された金融市場調節方針1にしたがって、9月11日までは、日本銀行当座預金残高が6兆円程度となるような調節を行った。米国テロ事件発生後の12日以降は、調節方針の「なお書き」(「なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う」)に従って、資金決済の円滑と金融市場の安定を確保するため、一段と大量の資金供給を実施した。このため当座預金残高は8兆円程度で推移している。こうした潤沢な資金供給の結果、金融市場の取引や決済面で大きな混乱は回避されている。また、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、12日に一時的に0.11%まで強含んだものの、その後は0.01%以下の水準で安定的に推移している。

  1. 「日本銀行当座預金残高が6兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」

2.金融・為替市場動向

(1)国内金融資本市場

 短期金利は、前回会合で決定した金融緩和措置を受けて、9月中間期末越えの資金調達に対する安心感が拡がったことを背景に、ターム物が小幅ながら一段と低下した。

 長期金利は、前回会合で決定した金融緩和措置の後も、補正予算や国債の需給悪化に対する思惑が拡がったほか、株価下落や中間期末接近等を背景に金融機関の利益確定売りなどがみられたことから、幾分上昇した。テロ事件後は、こうした金利上昇要因と安全のために国債に資金が向かう動きが交錯しながら、揉みあう展開になっている。

 株価は、8月の金融緩和措置後も低下を続け、さらにテロ事件後は、日経平均が1万円を割る大幅な下落となった。業種別には、運輸や輸送機器などの下落が大きかった。

 なお、マイカルの経営破綻の影響については、各種信用スプレッドは総じて落ち着いた動きを示しているものの、今後、同社の社債デフォルトが低格付企業への投資家の見方を慎重化させる懸念があり、注視していく必要がある。

(2)為替市場

 円の対ドル相場は、米国景気の先行き不透明感の高まりや9月末決算に向けたわが国金融機関による外貨建て資産処分の思惑などを背景に、8月末までに118円前半まで上昇した。その後、介入警戒感などから一旦122円近辺まで反落したものの、テロ事件発生後は再度上昇しており、市場のセンチメントを示す指標もドル安方向を示している。

3.海外金融経済情勢

 前回会合時と比べて、これまで底固い動きを示してきた米国の家計部門の陰りやユーロエリアの景気減速明確化を示す指標が出てきている。米国の同時多発テロ事件の影響は現時点で見通し難いが、米国金融市場の機能回復に向けた動きは比較的早いテンポで進んでいる。

 米国の実体経済は、8月の失業率の大幅な上昇や消費者コンフィデンスの悪化といったかたちで、「IT関連を中心に企業部門の調整が進む一方で、家計部門が持ちこたえる」という従来の構図に陰りがみられ始めている。その後のテロ事件の影響も考慮すると、全体として、ダウンサイド・リスクが高まっていることは否めない。

 テロ事件の影響について、まず金融市場の機能回復状況をみると、9月17日の米国市場をみる限り、決済、市場流動性、pricingの観点からは比較的早いテンポで改善をみている。社債スプレッドの拡大や債券価格や株価のボラティリティ上昇はみられるが、予想の範囲内の動きに止まっている。この間、米国連銀は、9月17日に緊急利下げを行い、FFレートの誘導目標水準を、それまでの3.50%から3.00%へと引き下げた。先物市場では年内に更に50bpの利下げを織り込む展開となっている。

 ユーロエリアでは、輸出の伸び鈍化と設備投資の減速などから、景気の減速が明確化している。第2四半期のGDP伸び率(前期比)をみても、ドイツ、イタリアがマイナス成長に転じたほか、フランスでも成長率低下がみられるなど、景気減速はドイツから周辺国に拡がっている。物価は、既往のエネルギー価格上昇の影響が薄れてきていることから、生産者物価、消費者物価指数ともに、上昇率の低下が続いている。こうした中で、ECBは、8月30日の定例理事会で政策金利を0.25%引き下げて4.25%としたほか、テロ事件を受けて9月17日に緊急利下げを行い、政策金利を3.75%とした。

 NIEs、ASEAN諸国では、IT関連財を中心に米国、日本向け輸出の減少が続いていることを背景に、景気の減速が続いている。第2四半期のGDP伸び率(前期比)をみると、IT依存度の高い台湾、シンガポール、マレーシアなどでマイナス成長が続いたほか、香港もマイナス成長に転じた。

 この間、エマージング市場の動向をみると、テロ事件の影響もあって、緊張した状態が続いている。特に、アルゼンチンについては、8月のIMFによる追加融資決定で一度は縮小に転じた国債の対米国債スプレッドが、再び大幅に拡大している。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 わが国の景気は、輸出の落ち込みを起点とした生産の大幅減少の影響が雇用・所得面にも拡がり始めるなど、調整は厳しさを増している。

 実質輸出は、7月も情報関連を中心に大幅な減少が続いており、アジア向けに加え、欧州向けの減少も目立ってきている。世界的な情報関連財需要の動向をみても、第2四半期の出荷が、パソコンだけでなく携帯電話についてもマイナスの伸びになっており、米国におけるテロ事件の影響なども踏まえると、早期に輸出が回復するというシナリオは実現性が低くなっている。

 こうした動きを受けて、鉱工業生産は、2四半期連続で大幅に減少した後、第3四半期もかなりの減少となる見込みである。また、第4四半期も、情報関連財の調整が長引いていることに加え、資本財や建設財の減少も予想されるため、減少基調が続くことが見込まれる。こうした中、在庫調整については、電子部品に在庫減少の動きがみられるが、素材などではまだ改善の兆しがみられず、全体として調整が長引く可能性が高い。

 設備投資関連では、電気機械などの製造業を中心に減少傾向がはっきりしてきている。この間、非製造業の設備投資は、四半期毎の振れを伴いつつ、均してみれば横這い圏内で推移している。設備投資全体の先行きについては、先行指標の動きや2001年度の設備投資計画、製造業を中心とした企業収益の悪化傾向などを踏まえると、減少傾向を辿る可能性が高い。

 個人消費関連では、一部に弱めの指標もみられるが、総じてみれば引き続き横這い圏内にある。ただし、雇用・所得環境については、失業率の上昇や労働時間の減少に加え、昨年度の好業績にもかかわらず夏季賞与が前年を若干下回るなど、厳しさを増している。また、消費者コンフィデンスの悪化を示す指標も出始めており、今後も注意深くみていく必要がある。

 物価については、国内卸売物価が、技術進歩に伴う値下がりに加え、電子部品や鉄鋼等が需給緩和から軟調に推移しているほか、国際商品市況を反映した非鉄金属などの下落もあって、全体としてマイナス幅がやや拡大している。消費者物価は、輸入・同競合品の価格下落を主因に、弱含みで推移している。

(2)金融環境

 前回の会合時と比べて、実体経済の動向を反映して、資金需要の低迷がより明確化してきている。社債やCPによる資金調達は前年を上回る水準での推移を続けているが、民間銀行貸出は、前年比マイナス幅を拡大させている。

 一方、量的金融指標については、8月のマネタリーベースが、当座預金残高の大幅増加を映じて、前月に比べて一段と伸びを高めた(7月+8.0%→8月+9.0%)ほか、マネーサプライ(M2+CD)も郵便貯金等からのシフトの動きを主因に前月比幾分伸びを高めた(7月+3.3%→8月+3.4%)。

 金融環境については、量的金融指標の伸長のほか、前回会合における金融緩和措置を受けた金融市場における緩和感の強まりや短期金利の一段の低下、市場を通じた企業の資金調達環境の改善などの点で、金融緩和の効果が浸透している。しかし、企業業績の悪化や金融機関の貸出態度の慎重化などを背景に、中小企業では、資金繰りの厳しさが強まる傾向も窺われており、今後の金融機関行動や企業金融の動向を十分注意して見守っていく必要がある。

 また、米国におけるテロ事件の発生が、内外の金融資本市場やひいては実体経済活動にどのような影響を与えるかについても、十分注意して見守っていく必要がある。

III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.景気の現状

 景気の現状について、大方の委員の認識は、前回会合(8月13、14日)以降、調整が厳しさを増しているという見方で一致した。この背景としては、(1)米国を中心とする世界経済の回復の遅れとグローバルなIT関連需要の弱さが一層明らかになる中で、(2)わが国経済の企業部門の調整が設備投資の減少などのかたちで一段と深刻化し、(3)その影響が家計部門にも拡がりをみせていることが指摘された。

 こうした中、ひとりの委員は、循環的な要因に過剰雇用、過剰債務、過剰設備といった構造的な要因の圧力も加わって、景気は本格的な後退局面に入っていると評価した。この委員は、本年4~6月期の名目GDPが、95年7~9月期以来の500兆円割れとなった点に着目し、日本経済が既に縮小均衡に入っていると述べた。また、景気動向指数の急速な下落状況からみて、景気後退のスピードが第1次石油ショック後並みの急速なものになっていると述べた。

 企業部門における調整の状況について、多くの委員が、在庫調整の遅延と設備投資の減少を指摘した。ある委員は、企業の損益分岐点が2001年入り後上昇に転じていることを指摘し、効率化による固定費削減による収益寄与も一巡しつつあることで、収益環境は益々厳しくなっていると評価した。この委員は、売上げと企業収益の減少の動きを踏まえると、7~9月期に設備投資はさらに減少を続けている公算が大きいとした。

 ひとりの委員は、昨年末からの生産の減少幅が97、98年当時を上回っている一方で、非製造業の企業活動が底固く推移している点を指摘した。別の委員も、売上げや収益などからみた第3次産業の底固さを指摘した。ただし、これらの委員も含め、何人かの委員が、雇用・所得環境の悪化が続く中で、非製造業を取り巻く環境も、7~9月には厳しさを増していくとの見方を示した。

 この間、ある委員は、企業部門の調整を余儀なくさせている要因のひとつとして、中国を中心とした海外生産シフト加速の影響を挙げ、これが日本の産業構造と雇用に問題を投げかけていると指摘したうえで、中国のWTO加盟を機に為替相場を含めたフェアーな競争条件の確保が望まれると述べた。

 家計部門については、何人かの委員が、これまでのところ、個人消費が大きく落ち込む事態には至っていないとの認識を示した。しかし、これらの委員も、企業部門の調整が労働市場を通じてマイナスの影響を及ぼしていくリスクに留意する必要があると述べた。また、ある委員は、労働市場において、ここ数年離職率が入職率を上回っていることが問題であるとした。

2.景気の先行き

 景気の先行きについては、米国テロ事件の影響を判断するのは時期尚早ながら、事件発生以前の段階でも、(1)米国を始めとする世界経済の回復の遅れが明らかになっており、(2)今後、企業部門における調整が一段と進行することが予想される中で、(3)その影響が家計部門に波及していくリスクが高まっていた、との認識が大方の委員によって共有された。

 また、ある委員は、株価の動きが示すように、先行き日本経済は97~98年の局面以上に悪化する危険性があると述べた。

 まず、米国経済の先行きについては、IT関連を中心とした企業部門の調整が一段と厳しくなっており、今後の回復の時期と速度について慎重な見方をせざるを得ないとの見方が大勢を占めた。ある委員は、IT関連財の在庫率がまだ高水準にあり、調整は明年以降に持ち越されたとの見方を述べた。また、多くの委員が、こうした企業部門の調整が、労働市場を通じて家計部門に波及するリスクが高まりつつある点を指摘した。

 また、ひとりの委員は、米国以外でも、ユーロエリアの景気減速が一段と明確化し、東アジア諸国でも輸出の落ち込みが内需にも波及しつつあることに懸念を示した。さらに別の委員は、本年の世界全体のGDPの伸びが、テロ事件の勃発等により0.5%程度低下したとみられると述べた。

 わが国企業部門の調整について、ひとりの委員は、在庫調整の長期化が不可避であるとの見方を示し、IT関連産業で在庫調整の先がみえないだけでなく、鉄鋼などの素材産業の調整終了も来年度上期以降になると述べた。別の委員は、電気機械の生産財在庫の伸び率が幾分低下して減産のペースダウンが期待されたものの、テロ事件後の輸出環境の悪化で先行きは不透明になってしまったと述べた。

 家計部門への調整の波及について、ある委員は、製造業の常用労働者数や所定外給与の減少など、個人消費に対する懸念材料が増えており、年度下期には、調整圧力が家計に波及していくとの見通しを示した。また、複数の委員が、大手企業のリストラ計画発表や流通大手の破綻などのニュースが、消費マインドに与える影響に懸念を示した。

 この間、金融面の情勢について、複数の委員が、最近の株価下落が金融機関や生保の経営に与える影響や、それを通じた景気に対するマイナスのインパクトに留意する必要があると述べた。ある委員は、97~98年のような流動性の全般的逼迫という情勢にはなっていないが、金融機関の貸出態度など金融動向が景気循環を増幅させる懸念が強まっていると指摘した。

 最近の物価下落傾向について、ある委員は、高コスト体質の是正、国際価格への鞘寄せという構造的な側面と需給バランスから来る低下圧力が混在していると分析し、前者を今後の経済成長のために不可避の動きであるとした。そのうえで、この委員は、物価下落が企業収益の減少を招き、企業や政府の実質債務負担を増大させている点を強調し、景気回復のためのデフレ脱却の重要性を指摘した。別のある委員は、最近の景気動向を踏まえると、需給ギャップが拡大しており、この面からの物価下落圧力がじわじわ高まっていると述べた。

 こうしたテロ事件発生前における情勢分析を踏まえたうえで、テロ事件の今後の影響についても議論された。委員の間では、テロ事件の影響については、今後の情勢の展開に依存する面も大きく、現段階では判断し難いが、先行きの内外経済のダウンサイド・リスクを高める要因であるとの認識が概ね共有された。テロ事件の影響を考えるうえでのポイントとしては、主として、(1)米国家計部門のセンチメントへの影響、(2)世界的な株価下落がもたらす影響、(3)原油価格へ及ぼす影響、などが議論された。

 ひとりの委員は、テロ事件が、先行き、(1)米国の過剰消費時代の終焉、(2)グローバリゼーションの阻害・逆流を招きかねないという意味で、歴史的な転換点となった可能性があるとの見方を述べた。

 多くの委員が、世界経済の今後を占ううえで、これまで比較的底固い動きを示していた米国家計部門のセンチメントへの影響が重要であると指摘した。複数の委員は、テロ事件発生前の段階で、既に消費者コンフィデンスと雇用環境の悪化を示す指標が出ていた点を懸念材料として指摘した。ある委員は、湾岸戦争時と比べても、今回の事件の消費マインドへ与える影響は大きいのではないかとの懸念を示した。別の委員は、米国の消費者の抱える負債の大きさ等も勘案すると、今回の事件を契機に貯蓄率の大幅な上昇が発生する可能性があると述べ、この結果、米国の景気後退は不可避となり、来年第1四半期の回復という可能性も遠のいたとの見方を示した。

 ただし、ある委員は、復興需要の高まりや財政支出の拡大というかたちで、フローの支出が増加する面もあり、これらを含めて、もう少し時間をかけて見極めていく必要があると整理した。

 株式市場への影響については、複数の委員が、テロ事件直前に既に米国の株価が本格的な調整局面に入る段階にあったと指摘し、事件が今後の株式市況に与える影響の大きさに懸念を示した。ある委員は、米国株価の本年中の最高値更新の可能性はなくなり、98年の安値を目指す動きとなるとの見方を示した。別の委員は、わが国の株価が前回会合から2割以上も下落している背景として、テロ事件の影響とともに、企業業績への不安と不良債権問題への対応の遅れを挙げ、こうした株価下落を起点とする追加的なデフレ効果の影響について懸念を示した。

 このほか、金融市場の動向について別の委員が触れ、(1)今回は有事のドル買いは起こっていない、(2)先行き不透明感を反映して、2年物金利が50年振りの水準にまで低下する一方、30年物金利が上昇するなどリスク回避的動きがみられる、と述べた。

 原油価格への影響については、米国政府による対応など今後の展開次第の面が大きく、現時点では見極め難いとの見方が多くの委員によって共有された。ある委員は、今回の事件が中東に波及して原油価格急騰に繋がる危険性を指摘したうえで、石油価格と米国における失業率の関係を分析した論文を引用しつつ、来年秋までに米国の失業率がさらに上昇していく可能性を指摘した。

IV.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

1.当面の金融政策運営

 以上のような金融経済情勢を踏まえて、当面の金融政策運営の基本的な考え方が検討された。

 大方の委員の認識は、(1)景気の現状は、輸出の落ち込みを起点とした生産の大幅減少の影響が雇用・所得面にも拡がり始めるなど、調整は厳しさを増している、(2)先行きについては、景気の調整が徐々に内需面にも拡がり、それが調整を長期化させる可能性が高まっている、(3)そうした中で、米国テロ事件の発生が、先行きのダウンサイド・リスクと不透明性を一層高めている、というものであった。

 当面の金融政策運営に当たっての留意事項としては、(1)米国テロ事件が金融資本市場や実体経済にどのような影響を与えていくかについては引き続き細心の注意をもって見守る必要があること、(2)万が一にも資金決済の円滑や金融市場の安定が損なわれるような事態になると、これまでの思いきった金融緩和措置の効果浸透に支障をきたすおそれがあること、などの認識が概ね共有された。このため、当面は、「日本銀行当座預金残高が6兆円を上回る」ことを目標とした潤沢な資金供給の継続や公定歩合の引き下げなどによって、円滑な資金決済と金融市場の安定を確保していくことが適当との見方で大方の委員の意見一致をみた。

 ただし、ひとりの委員は、経済情勢の悪化や物価の下落、株価下落などに歯止めをかけるためには、当座預金残高8兆円という目標を明示することが適当であるとの見方を示した。

 まず、8月の金融緩和措置の効果について検討が行われた。多くの委員は、短期金利の幾分の低下を除いては、これまでのところ効果は殆どみられていないと評価した。これらの委員は、(1)株式市場において流動性相場に対する思惑は高まらず、(2)為替もドル高修正の流れの中で円相場は上昇したほか、(3)クレジット・スプレッドは、ほぼ横這いで推移し、(4)長期金利は、国債買い切りオペ増額を評価せず、むしろ財政規律へのネガティブ・インパクトを懸念する向きが市場にみられたと分析した。このほか、ある委員は、イールドカーブの形状や物価の先行きに関するアンケート調査を引用し、日銀当座預金の積み上げが人々のインフレ期待に殆ど影響を与えていないと評価した。また、複数の委員は、企業サイドに健全な資金需要が乏しく、しかも、金融機関に流動性制約がない中で、流動性の増加により金融機関の信用創造活動に影響を与えることは難しくなっていると述べた。また別の委員は、これまでの金融市場の反応は、日銀当座預金の増額自体が持つ効果の限界を認識させる結果となり、その認識は市場参加者の間にも拡がりつつあると述べた。

 同時に、これらの委員も含め、何人かの委員は、金融政策の効果が発現するには時間がかかるため、これまでの金融緩和措置の効果について判断するのは時期尚早であると述べた。これに関連して、ひとりの委員は、昨年8月のゼロ金利解除の影響が株価の下落、実体経済の悪化というかたちで現われてきているのではないかとの認識を示した。

 ただし、当面の金融政策運営については、テロ事件発生後の金融資本市場の動向や流動性需要の増加を踏まえ、何らかの対応を図ることが必要であるとの見方で一致した。まず、すべての委員が、調節方針の「なお書き」にもとづいて、執行部が事件発生直後から迅速かつ弾力的に資金供給を拡大させたことを評価した。そのうえで、当面は、(1)テロ事件の金融資本市場や実体経済への影響を見守る必要があること、(2)わが国の場合、中間期末を控えていること、などから、円滑な資金決済と金融市場の安定を確保するための措置を続けることが必要との点で意見が一致した。何人かの委員は、こうした措置は、市場の安定化だけでなく、これまでの金融緩和のより強力な効果浸透を図っていくことにも資すると位置付けた。また、複数の委員は、こうした対応は、各国中銀間の国際協調という観点からも重要であると述べた。

 具体的な政策手段としては、まず、6兆円を上回るような潤沢な資金供給を継続すべき点で意見が一致した。この場合、(1)現段階では金融市場における流動性需要がどの程度高まるか見極めがたいこと、(2)一方、市場が安定を回復すれば流動性需要が減退し、現在のような高水準の資金供給が継続できなくなる可能性があること、などを踏まえると、特定の残高目標を定めることは適当でないとの見方が多く示された。このため、金融市場調節方針としては、「6兆円を上回る」というかたちで、(1)日本銀行として潤沢な資金供給継続の決意を示すと同時に、(2)資金需要の動向に応じて弾力的に対応できるようにしておく、との方針で概ね意見の一致を見た。ただし、ひとりの委員は、8兆円というかたちで目標を明記すべきであると主張した。

 この間、国債買い切りオペの増額については、複数の委員が、資金需要が強まっていることを踏まえると、国債オペの増額を行わずとも、こうした潤沢な資金供給に支障は来さないとの認識を示した。また、別の複数の委員は、国債買い切りオペ増額の位置づけについては、8月の決定の影響や、今回増額を見送ることの影響なども含め、もう少し市場の動向を見極めたいと述べた。

 公定歩合の引き下げについては、市場の安定を確保するための対策としてある程度の効果が期待できるという認識が、大方の委員によって共有された。ただし、複数の委員は、ターム物も含めて市場金利が著しく低下している現状では、公定歩合の引き下げが金融緩和効果を持つとは考えにくく、あくまでも流動性対策としての側面に重点を置く理解を示した。これに対して、別の複数の委員は、(1)マグニチュードは小さいとしても流動性プレミアムの圧縮を通じてターム物金利に下げ圧力を加えることが出来る、(2)流動性対策を通じて市場を安定化させることは、これまでの金融緩和措置の効果浸透を促すかたちで緩和効果を持つ、と述べた。

 一方、ひとりの委員は、これ以上の公定歩合引き下げは金利の変動余地を過度に制限してしまうとして、反対した。

 なお、公定歩合の引き下げ幅については、ある委員が、9月12日にコールレートが一時的に0.11%にまで上昇したことに鑑みて、0.25%から0.15%ポイント引き下げ、0.10%とするのが適当との意見を出した。また、別の委員は、短期金融市場において、最低限の価格機能を残す観点からは、0.10%とするのがぎりぎりの線であるとした。

 また、複数の委員から、中間期末を挟んだ現在の積み期間については、補完貸付制度において公定歩合が適用される最大営業日数を5営業日から10営業日に延長することが適当であるとの意見が出された。

2.今後の金融政策運営

 今後の金融政策運営についても議論が行われた。大方の委員の間で、物価の持続的下落を回避し、日本経済を持続的な成長軌道に戻すためには、金融政策だけでは限界があり、金融システム問題の解決のほか、財政支出の内容の見直しや構造改革を通じた需給バランスの改善が不可欠であるとの認識が共有された。これと同時に、政府を中心にこうした取組みが進められていく場合に、それらを中央銀行としてサポートする方法について検討すべきであるとの意見が多くの委員から出された。

 まず、多くの委員が、デフレ阻止のためには需給バランスを改善させる必要があるとの認識を述べた。これらの委員は、不良債権問題やバランスシート調整圧力の残存などにより、日本銀行による潤沢な資金供給の効果が需要を喚起させるに至っていない事情を分析した。このうち複数の委員は、「物価変動は貨幣的な現象であり、金融政策のみで解決できる」といった主張は、経済や金融の実態を踏まえた現実的な議論ではなく、生産的でないと述べた。ある委員は、金融緩和はデフレ阻止のための必要条件ではあるが、必要十分条件ではないと述べた。

 こうした議論を踏まえ、多くの委員が、財政支出の内容の見直しや構造改革により、民間需要を引き出すことが、デフレを阻止する上で不可欠であると述べた。同時に、複数の委員は、政府債務の水準や最近の国債市場の神経質な動きをみると、財政支出を見直す際には、財政再建に対する市場の信認を確保することが必要であると述べた。別の委員は、需要政策として、乗数効果のある「質の財政出動」が必要であるとしたうえで、供給サイドの対策として、設備、雇用、債務という3つの過剰を解決するための不良債権処理・構造改革が不可欠であると述べた。その上で、民間の自助努力と財政、金融という三者合わせ技で対応を進めていくことが必要と述べた。

 金融システム問題と金融政策の関係についても多くの委員が意見を述べた。複数の委員が、金融緩和が浸透していかない背景のひとつとして、不良債権の存在や株価下落などによって金融機関のリスクテイク能力が低下している点を指摘した。ひとりの委員は、健全な資金需要が乏しい中で金融システムが健全な状態に戻るためには、金融機関の資産圧縮のプロセスが不可避であるとしたうえで、銀行のバランスシートの膨張を促すような金融拡張政策をとることには限界があるとの見方を示した。金融システム問題解決の手段としては、ひとりの委員が、整理回収機構(RCC)の融資機能を含めた機能強化と不良債権のRCC移管によるオフ・バランス化がポイントになるとの見解を示した。

 インフレーション・ターゲティングについても、こうした経済全体の問題把握との関係で多くの意見が出された。何人かの委員は、この問題に関して重要なことは、「数値目標を設定するかどうか」でなく、「目標を達成するために有効な政策手段は何か」であると述べた。このうち、ある委員は、既に日本銀行の物価安定に対するコミットメントはきわめて強いものであり、問題は、金融緩和だけで物価の下落を阻止することが難しいことであると述べた。別のある委員は、現在のコミットメントがいつまでにゼロインフレを実現するかを明示していないとの批判に対して、その実現の時期は、むしろ政府の政策運営などに依存する面が大きいと述べた。この委員は、構造改革の推進や財政再建過程で2~3年ゼロ%近辺の成長を甘受せざるを得ないとすれば、その間にデフレ退治を強力に進めることは難しいとした。また、さらに別の委員は、インフレーション・ターゲティングの採用は、経済が構造的な問題を抱えている中では適当でなく、デフレを脱却して平時になった段階で、物価目標の数値化を金融政策の透明性向上の手段として考えるべきであると述べた。

 一方、別の委員は、中央銀行がデフレから脱却するという強い意思表示を行うためには、インフレーション・ターゲティングよりもプライスレベル・ターゲティングの方が望ましいとの認識を示した。その理由として、この委員は、初年度に物価が下落した場合には、インフレーション・ターゲティングにおいては次年度以降の目標インフレ率を計算する際の分母となる物価指数自体が下方にずれてしまうことを指摘した。

 以上の議論を踏まえ、今後の金融政策運営について、何人かの委員が、(1)当面は潤沢な資金供給を続け、金融市場の安定と金融緩和の効果浸透に努めていくとともに、(2)構造改革や不良債権問題解決に向けた政府の取り組みが進められていく中で、中央銀行としてどのような政策協調が可能か検討していくことが必要であると述べた。複数の委員は、政府と日銀の協調も、構造改革に向けた様々な施策との関係で考えていくべきであるとした。なお、この問題に関連し、ある委員は、金融政策を巡る政府の発言が内外の市場参加者に混乱を与えるケースがあり、金融政策に関する意見は、あくまで日銀法の枠組みのもとで決定会合の場で承りたいと述べた。

V.政府からの出席者の発言

 会合の中では、内閣府からの出席者より、以下のような趣旨の発言があった。

  •  米国テロ事件発生後、日本銀行が当座預金の積み増し等を通じて世界の各国に先駆けて適切な対応をとったことは、政府の中でも非常に高く評価されている。
  • 構造改革の必要性が委員から指摘されたが、現内閣はまさにそのための内閣である。月末に予定されていた「改革先行プログラム」(最終とりまとめ)の発表をできるだけ前倒しすべく努力している。最後の段階で、総理のリーダーシップにもとづき、不良債権問題と特殊法人改革の2つの領域で1歩進めた措置に踏み込むべく調整しているところである。
  • 財政政策については、国債の新規発行を30兆円に抑えることは、現内閣の出発点である。一方で、需要刺激の重要性は認識しており、補正予算と来年度予算の編成方針には、雇用と需要の創出効果の大きいプロジェクトを採用するという方針が明示された。
  • 日本銀行の独立性は政府も重視しているが、政策目標の独立性と政策手段の独立性を区別して考えるという議論がある。デフレを止めることは明らかに政府全体の目標であり、金融政策だけでデフレを止めることはできないと認識している。しかし、ともすれば中央銀行に対する一方的な責任の押し付けのような議論があることは承知しており、そうならないような環境作りが政府と中央銀行の双方にとって重要である。
  • 今後は、経済財政諮問会議の中で、デフレを止めるという政府全体の目標の達成に向けて、日本銀行を含め、様々な政策を所管する部署の役割を議論していきたい。政府としても、構造改革を急いで進めているが、機動性という観点からは日本銀行に対する期待は大きく、引き続き金融面からのサポートをお願いしたい。

 財務省からの出席者は、以下のような趣旨の発言を行った。

  • 政府としては、構造改革なくしてわが国経済の再生と発展はないという決意の下、先行して決定・実施すべき施策を改革先行プログラムとして取り纏めるとともに、平成13年度補正予算の編成について準備を進めることとしている。なお、総理指示においても、適切な金融政策運営への期待が盛り込まれたところである。
  • 8月14日に金融緩和措置が講じられたが、消費者物価指数の下落は一層顕著になっている。現在の持続的な物価下落は企業活動や消費等様々な面で悪影響を与えており、日本銀行におかれては、物価下落を阻止するための政策論議を深めて頂きたい。
  • 日本銀行は、物価の継続的な下落を防止する強い決意を示しているが、依然として物価反転の兆しが見られない中においては、人々の心理面に働きかける効果をも期待しながら、より実効性のある金融緩和が必要であり、機動的に金融政策運営を行って頂きたい。また、17日にFRBおよびECBが相次いで緊急利下げを行ったように、国際的に協調して迅速な対応を行うことが求められている事情も踏まえて御判断頂きたい。
  • その際には、現在臨時で行っている金融調節の枠組みを継続すること等を含め、経済により効果のある政策を幅広くご検討頂きたい。なお、金融調節に当っては、為替介入により供給された円資金の活用を図ることもひとつの方法であると考えている。

VI.採決

 以上のような議論を踏まえ、会合では、金融市場の安定を確保するとともに、金融緩和のより強力な浸透を図る観点から、(1)当面、日銀当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う、(2)あわせて、公定歩合を0.15%引き下げ0.10%とする、(3)さらに、公定歩合によるロンバート型貸付制度の利用可能期間を、今積み期間については10日間に延長する、との方針で、概ね意見の一致をみた。

 ただし、ひとりの委員からは、景気が第1次オイルショック時並みの速さで下降している中で、株価下落や不良債権問題の深刻さを考えると、日本発の経済危機が発生することを回避する必要があるとの現状認識に基いて、3月19日に決定した金融市場調節方式を一部変更し、予め定めた時期の消費者物価指数のレベルを一定の基準に維持ないし引き上げることを目的として金融市場調節を行うことが適当であるとの考え方が示された。さらに、この委員は、国債買い切りオペの月6千億円から月8千億円への引き上げ等により、日銀当座預金残高を8兆円程度に引き上げるとともに、この円滑な実施のために保有長期国債の残高を銀行券発行残高までとする制限を外すことが必要であると述べた。

 この結果、以下の議案が採決に付されることになった。

 中原伸之委員からは、金融市場調節方式について、「2001年1~3月期平均の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)のレベル(99.1)を基準として、2003年1~3月期平均の同指数について、その基準レベル(99.1)を維持ないしはそれ以上に引き上げることを目的として、金融市場調節を行う」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対8)。

 次いで同委員から、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「日本銀行当座預金残高が8兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う」とともに、これを円滑に実施するため、「3月19日決定の金融市場調節方式のうち、『ただし、日本銀行が保有する長期国債の残高(支配玉<現先売買を調整した実質保有分>ベース)は、銀行券発行残高を上限とすること。』の部分を削除する」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対8)。

 議長からは、会合における多数意見をとりまとめるかたちで、以下の3つの議案が提出された。

議案(議長案)

1.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

 当面、日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。

2.対外公表文は別途決定すること。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、三木委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原眞委員
  • 反対:中原伸之委員

中原伸之委員は、(1)「6兆円を上回る」という表現が曖昧で、アカウンタビリティを低下させる、(2)海外経済の先行き、株価の落ち込み等、テロ事件を踏まえたうえでの経済状況に対する認識が甘く、経済情勢の悪化や物価の下落、株価下落などに歯止めをかけるためには不十分な措置である、といった理由から上記採決において反対した。

議案(議長案)

 日本銀行法第33条第1項第1号の手形の割引に係る基準となるべき割引率(以下「基準割引率」という。)および同項第2号の貸付けに係る基準となるべき貸付利率(以下「基準貸付利率」という。)を年0.15%引き下げ、下記のとおりとし、平成13年9月19日から実施すること。

 対外公表文は別途決定すること。

基準割引率および基準貸付利率 年0.10%

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、三木委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原眞委員
  • 反対:中原伸之委員

中原伸之委員は、(1)金利変動の余地が小さくなり過ぎてしまう、(2)公定歩合は、モラル・ハザードを防ぐという観点から、市場金利より十分高くあるべき、といった理由から上記採決において反対した。

議案(議長案)

1.平成13年9月16日から始まる1積み期間(準備預金制度に関する法律(昭和32年法律第135号)第7条第3項に規定する1月間をいう。)においては、臨時措置として補完貸付制度基本要領(平成13年2月28日付政委第22号別紙1.)5.(2)に定める上限日数を10営業日とすることとし、平成13年9月19日から実施すること。

2.対外公表文は別途決定すること。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、三木委員、中原伸之委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原眞委員
  • 反対:なし

VII.対外公表文の検討

 本日の決定を踏まえて、執行部が作成した対外公表文の原案をもとに、委員の間で議論が行われ、「金融市場調節方針の変更および公定歩合の引き下げ等について」(別添1)が採決に付された。採決の結果、賛成多数で決定され、同日公表されることになった。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、三木委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原眞委員
  • 反対:中原伸之委員

中原伸之委員は、今回可決された金融市場調節方針に対して反対の立場であることを理由に、対外公表文についても反対した。

VIII.金融経済月報(基本的見解)の承認

 当月の金融経済月報に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が賛成多数で決定され、それを掲載した金融経済月報を9月20日に公表することとされた。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、三木委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原眞委員
  • 反対:中原伸之委員

中原伸之委員は、(1)景気後退の深さ、速さにも言及すべき、(2)情報関連財の在庫調整時期に関する記述が楽観的に過ぎる、(3)公共事業落ち込みの地方経済に対するインパクトの大きさに関する記述がない、(4)テロの影響についての評価が不足している、(5)物価の下落についての認識が甘い、といった理由から上記採決において反対した。

IX.議事要旨の承認

 前回会合(8月13、14日)の議事要旨が全員一致で承認され、9月25日に公表することとされた。

X.先行き半年間の金融政策決定会合等の日程の承認

 最後に、2001年10月~2002年3月における金融政策決定会合等の日程が別添2のとおり承認され、即日対外公表することとされた。

以上


(別添1)

2001年9月18日
日本銀行

金融市場調節方針の変更および
公定歩合の引き下げ等について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下の措置を決定した。
    (1)金融市場調節方針の変更(賛成多数)
     当面、日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。
    (2)公定歩合の引き下げ(賛成多数)
     公定歩合を0.15%引き下げ0.10%とし、明日より実施する。
    (3)補完貸付制度の利用上限日数の引き上げ(全員一致)
     補完貸付制度(いわゆるロンバート型貸付制度)の公定歩合による利用上限日数を、今積み期間(9月16日~10月15日)について、5営業日から10営業日に引き上げる。
  2. 日本銀行は、さる9月11日の米国における同時多発テロ事件発生後の流動性需要の高まりを受けて、日本銀行当座預金残高を8兆円を上回る水準にまで大幅に拡大させるなど、資金決済の円滑と金融市場の安定の確保に向けて、万全の措置を講じてきた。
  3. 内外の金融市場をみると、主要中央銀行による潤沢な流動性供給や、市場参加者による適切な対応の結果、これまでのところ、取引や決済の混乱は回避し得ている。しかし、今回の事件が内外の金融資本市場やひいては実体経済活動にどのような影響を与えていくのか、引続き細心の注意をもって見守っていく必要がある。また、今後、万が一にも資金決済の円滑や金融市場の安定が損なわれるような事態になると、これまでの思い切った金融緩和措置の効果浸透に支障をきたすおそれがある。
  4. 日本銀行では、以上のような状況に鑑み、金融市場の安定を確保するとともに、金融緩和のより強力な効果浸透を図る観点から、今回の措置を実施することが適当と判断した。
  5. これまで繰り返し強調してきたとおり、金融緩和の効果が十分に発揮され、日本経済が安定的かつ持続的な成長軌道に復帰するためには、不良債権問題の解決をはじめ、金融システム面や経済・産業面での構造改革の進展が不可欠である。その意味から、今回の事件の影響や構造改革に伴う様々な痛みを乗り越えて、各方面における改革への取り組みが、たゆまず進められることが強く期待される。
  6. 日本銀行では、物価の継続的な下落を防止するとともに、不良債権処理に伴う問題への対応も含め、日本経済の安定的かつ持続的な成長の基盤を整備するため、今後とも中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針である。

以上


(別添2)

平成13年9月18日
日本銀行

金融政策決定会合等の日程(平成13年10月~14年3月)

表 金融政策決定会合等の日程(平成13年10月~14年3月)
  会合開催 金融経済月報公表(注) (議事要旨公表)
13年10月 10月11日(木)・12日(金)
10月29日(月)
10月15日(月)
−−
(11月21日(水))
(12月 4日(火))
11月 11月15日(木)・16日(金)
11月29日(木)
11月19日(月)
−−
(12月25日(火))
( 1月21日(月))
12月 12月18日(火)・19日(水) 12月20日(木) ( 1月21日(月))
14年 1月  1月15日(火)・16日(水)  1月17日(木) ( 3月 5日(火))
2月  2月 7日(木)・ 8日(金)
 2月28日(木)
 2月12日(火)
−−
( 3月26日(火))
未定
3月  3月19日(火)・20日(水)  3月22日(金) 未定
  • 「経済・物価の将来展望とリスク評価(2001年10月)」は、10月29日(月)の金融政策決定会合で審議・決定のうえ、10月30日(火)に公表の予定。

以上