金融政策

ホーム > 金融政策 > 金融政策決定会合の運営 > 金融政策決定会合議事要旨 2001年 > 金融政策決定会合議事要旨(2001年11月15、16日開催分)

金融政策決定会合議事要旨

(2001年11月15、16日開催分)*

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2001年12月18、19日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2001年12月25日
日本銀行

開催要領

1.開催日時
2001年11月15日(14:00~15:38)
2001年11月16日( 9:01~12:31)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 速水 優(総裁)
  • 藤原作弥(副総裁)
  • 山口 泰(副総裁)
  • 三木利夫(審議委員)
  • 中原伸之(審議委員)
  • 植田和男(審議委員)
  • 田谷禎三(審議委員)
  • 須田美矢子(審議委員)
  • 中原 眞(審議委員)
4.政府からの出席者
  • 財務省 藤井 秀人 大臣官房総括審議官
    (15日、16日<9:01~10:39>)
    竹中 平蔵 経済財政政策担当大臣
    (16日<10:40~11:55>)

(執行部からの報告者)

  • 理事松島正之
  • 理事増渕 稔
  • 理事永田俊一
  • 企画室審議役白川方明
  • 企画室参事役雨宮正佳
  • 金融市場局長山下 泉
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局企画役吉田知生
  • 国際局長平野英治

(事務局)

  • 政策委員会室長横田 格
  • 政策委員会室審議役中山泰男
  • 政策委員会室調査役斧渕裕史
  • 企画室調査役衛藤公洋
  • 企画室調査役山岡浩巳(15日)
  • 企画室調査役長井滋人(16日)

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節については、外銀による多額の超過準備保有などを背景に流動性需要の不安定な状態が続くなか、前回会合(10月29日)で決定された方針 1 にしたがって、潤沢な流動性の供給を行った。こうした調節のもとで、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.002~0.004%と、総じて安定的に推移した。このところ地銀等でも資金の放出意欲が低下している先が増えている模様であり、市場における資金需要のより的確な把握が必要な状況となっている。 1 「日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。」

2.金融・為替市場動向

(1)国内金融資本市場

 前回会合以降の市場の動きをみると、米国や欧州の株価が総じて堅調であったのと対照的に、本邦株価は軟調に推移した。この間に米国NASDAQ指数が約12%の上昇となった一方、日経平均株価は約5%下落しており、これまでの両者の連動関係が弱まっている。米国株価の堅調には、思い切った財政・金融政策の効果に対する期待のほか、ごく最近ではアフガン情勢の進展や半導体市況の反発などが寄与しているが、本邦株価はそうした米国株価上昇の効果よりも、不良債権問題などわが国固有の悪材料の方が強く意識されたかたちとなった。

 業種別株価をみると、銀行が98年のバブル後最安値を2割方下回る水準まで下落したほか、不動産、建設など不良債権処理の影響が意識された業種の下落が目立った。先行きについて、市場では横這い圏内での推移を予想する向きが多いが、下値リスクに対する警戒感は根強い。

 金利動向をみると、ターム物金利は、ほぼ横這いで格別変化は窺われない。長期金利も概ね1.3%台での推移ながら、補正予算で新規国債発行30兆円枠が取り敢えず堅持されたこと、下期入りに伴う投資家の資金流入などから、若干低下気味に推移した。もっとも、市場は、来年度予算や今年度二次補正等を巡って国債需給に神経質な状況にあり、当面は強弱両材料の交錯からもみ合う展開が続くとみられる。

 この間、クレジット・スプレッド(国債と民間債との利回り格差)は、高格付債では引続き横這い圏内にあるが、トリプルB以下の低格付債では拡大している。銀行株価の下落と軌を一にして一部銀行発行債のクレジット・スプレッドも拡大傾向にある。

(2)為替市場

 円の対米ドル相場は、本邦株価が軟調な一方、米国株価が上昇し、日米株価が正反対の動きとなったものの、海外短期筋の円売りポジション巻戻しや米国における航空機事故などもあってドル買いの動きは進まず、120~122円台のレンジ内で推移した。円の対ユーロ相場もどちらかと言えば円高気味に推移した。

3.海外金融経済情勢

 海外情勢の特徴点は、(1)米国の消費者・企業コンフィデンスと雇用の悪化、(2)各国でのインフレ圧力の大幅な低下、(3)足許の景気悪化と市場に織り込まれた先行き回復期待とのコントラスト、の3点である。

 まず、米国の7~9月期の実質GDPは、前期比年率-0.4%と8年半ぶりのマイナス成長となった。需要項目別にみると、前四半期に続き設備投資が大幅減少となったことに加え、個人消費や住宅投資のプラス寄与が大幅に低下した。なお、民間による2002年の実質成長率予測は、10月の1.5%から11月には1.1%に下方修正された。

 各種指標の動きをみると、企業部門では、生産の大幅減が続いており、在庫が減少しているものの、出荷も大きく落ち込んでいるため、在庫率は高止まりしている。こうしたなかで、10月のNAPM指数が前月比急低下するなど、企業コンフィデンスは悪化しており、企業は投資と雇用を一段と切り込んできている。雇用情勢をみると、10月の非農業部門雇用者数が前月比-42万人と、単月では約20年ぶりの大幅減少となり、失業率が上昇した。賃金の伸びも大幅に低下している。

 家計部門をみると、消費者コンフィデンスが急速に悪化している。自動車を除く10月の小売売上高は、前月比では1%程度の伸びとなったが、8月の水準を下回っており強い動きとは言えない。週間チェーンストア統計も足許落ち込んでいる。この間、10月の自動車販売はメーカー各社のゼロ金利プログラムなど販売促進策を受けて単月としては既往最高を記録したが、需要先食いによる反動減が懸念されている。クリスマス商戦についても慎重な見方が多い。この間、10月のPPIは前月比-1.6%と単月では統計開始以来最大の下落となった。

 こうしたもとで、FRBは11月6日に、政策金利の引下げ(FFレート誘導水準:2.5%→2.0%)を実施したが、引続き景気下振れ方向に警戒している。FF先物金利からみると、市場は、年末までの0.25%程度の再利下げを織り込んできている。

 欧州でも、ドイツをはじめ主要各国で生産が減少傾向を辿っており、企業収益の悪化などから設備投資も減少している。失業率の上昇など、雇用環境の悪化から消費者コンフィデンスも悪化しており、個人消費の鈍化傾向が窺われている。インフレ圧力は大きく後退してきており、こうしたなかで、ECBは11月8日に政策金利の引下げ(主要リファイナンシング・オペレート:3.75%→3.25%)を実施した。

 NIEs、ASEAN諸国では、米国、日本向けの輸出減少を起点とする景気悪化に歯止めがかかっていない。中国でも輸出がスローダウンしてきており、IT関連財に加え、繊維品などの輸出にも鈍化傾向が窺われるが、財政支出増大や高水準の対内直接投資流入等に伴う内需の好調から、高成長を維持している。

 この間、アルゼンチンでは、11月1日に政府が債務リストラ策を発表したものの、対米国債スプレッドは一段と拡大している。もっとも、足許におけるアルゼンチン情勢の緊迫化は、ブラジル、トルコなど他の累積債務国には目立った影響を及ぼしていない。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 景気の現状をみると、生産の大幅減少の影響が、雇用・所得面を通じて個人消費にまで及び始めており、調整は厳しさを増している。

 需要項目別にみると、輸出は、海外経済の減速や世界的なIT関連需要の低迷を背景に、大幅な減少が続いている。このような輸出環境や企業収益の悪化を受けて、設備投資も減少している。設備投資の先行指標となる機械受注は、7~9月に前期比-5.7%と大きく減少したあと、10~12月も若干のマイナスが予想されている。製造業の弱さが目立つ反面、非製造業が横這い圏内で推移しているため、前回調整局面の98年当時ほど急激な落込みとはなっていない。ただ、ここにきて非製造業でも建設・商社を中心に下期収益予想を大きく下方修正する動きが目立っている。

 個人消費についても、先月までに比べ弱めの指標が目立ってきた。これまで比較的堅調とされていた乗用車販売が9月、10月と減少がはっきりしてきたほか、旅行も海外を中心に大きく落ち込んでいる。消費者コンフィデンスも、さらに悪化している。この間、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も引続き減少傾向にある。

 このような最終需要動向を受けて、生産は大幅な減少を続けている。鉱工業生産は、7~9月に前期比-4.3%となったあと、10~12月も大きめの減少になるとみられる。製造業の在庫循環の状況をみると、電子部品は生産水準を大幅に切り下げてきた結果、在庫は大幅に減少しているものの、なお調整が必要な段階にある。素材は、減産本格化から漸く在庫積み上がりに歯止めがかかりつつあるが、在庫率はなお高水準にある。一方、最終財は建設財のほか、消費財・資本財でも在庫の積み上がりがみられ始めており、輸出減少を起点とした景気の調整が、内需面に及んできている姿が窺われる。

 雇用面では、有効求人倍率が緩やかな低下傾向にあるほか、常用労働者数や名目賃金も減少を続けている。こうしたなかで、9月の失業率は、それまで増加傾向にあった雇用者数が大幅減少に転じたことを主因に、5.3%と8月の5.0%から大きく上昇した。単月の統計の振れはある程度均してみる必要があるが、方向としては雇用・所得環境がさらに悪化していくリスクも念頭に置いておく必要がある。

 なお、情報関連分野の調整について、ここにきて幾分明るめの情報が見受けられる。米国をはじめ情報関連財の過剰在庫調整が着実に進んでいる。一部関連メーカーからは、受注や出荷の回復といったミクロ情報も聞かれている。7~9月の世界半導体出荷実績は10月時点の見通しを僅かながらも上回り、ごく直近では需給動向を敏感に反映するDRAMのスポット価格が反発している。しかし、IT関連最終需要はなお減少を続けている模様であり、テロ事件の影響で需要がさらに下振れる可能性もあるため、予断を持つことなく情勢を見守っていく必要がある。

 景気の先行きを展望すると、輸出は、当面、情報関連需要の不振や海外経済の低迷が続くことなどから、はっきりとした減少が続くと考えられる。国内需要面でも、個人消費は雇用者所得の減少が続くなかで、さらに弱まっていくとみられる。こうした最終需要の動向に加え、素材分野を中心に在庫調整圧力も根強いことから、鉱工業生産は、少なくとも本年度末までは減少傾向を辿ると考えられる。

 物価面をみると、輸入物価は3か月前対比でみた下落率がこのところ拡大している。これは、主として非鉄金属や原油など国際商品市況の下落を受けたものである。国内卸売物価も、(1)内外の需給緩和を背景とする電子部品や鉄鋼、非鉄金属などの下落、さらには(2)既往の原油高や円安の影響の一巡などから、3か月前対比でみた下落率がやや拡大している。この間、消費者物価は、輸入品・輸入競合品の価格下落を主因に、弱含みで推移している。先行きも、国内需給バランス面からの物価低下圧力は徐々に強まっていくと考えられ、当面、各種物価指数のマイナス幅は、横這いないし幾分拡大するとみられる。

(2)金融環境

 金融環境の特徴点は、(1)格付の低い企業を中心に、社債やCPの発行環境が厳しくなってきていること、(2)銀行の貸出態度や中小企業の資金繰りなど、間接金融面でもやや厳しさを増していること、(3)10月の倒産件数が急増したこと、の3点である。

 まず、民間銀行の貸出残高は、前年比-2%程度で大きな変化はない。ただ、銀行は優良企業には貸出を増加させようとする姿勢を続ける一方、信用力の低い先には貸出姿勢を慎重化している。主要行の下期貸出計画は、上期までとは対照的に、現状よりマイナス幅を拡大していく計画となっている。基本的には資金需要の弱さを反映したものとみられるが、従来のボリューム・スプレッド両睨みから、ボリュームのウエイトを落としつつあることの反映とも考えられる。

 貸出金利の動向をみると、スプレッド貸出におけるスプレッドは、振れを伴いながらも拡大傾向にあり、特にここ数か月は、限界的な動きではあるが長期貸出におけるスプレッドの拡大が目立っている。

 この間、中小企業からみた銀行の貸出態度をみると、9月から10月にかけて緩和感が後退した。資金繰り判断も、全般に厳しいとみる企業の割合が幾分増加している。信用不安が広範化していた98年ほど急激ではないにせよ、方向としては、中小企業金融が徐々に厳しくなってきているように窺われる。

 社債市場では、電力など高格付債の発行は引続き堅調ながら、流通大手企業の経営破綻もあって、トリプルB格以下の社債発行が困難な状況が続いており、社債発行残高の前年比伸び率は鈍化している。10月の社債発行に占めるトリプルB格のウエイトは低下した。

 CP発行残高は、引続き前年を3割方上回っており、流通大手企業の破綻の影響は、ボリューム面ではそれほど強く表れていない。ただ、低格付企業では年末越えのCP発行金利に多少影響が出ているといった情報も聞かれている。

 この間、マネタリーベースやマネーサプライといった量的金融指標は、高めの伸びを続けている。すなわち、10月のマネタリーベースは、9月に続いて前年比14%台の伸びとなった。M2+CDの前年比伸び率も3.6%と9月とほぼ同じ伸び率となった。内訳をみると、M1を構成する預金通貨が伸びを高める状況が続いている。

 10月の倒産件数は1,843件と、これまでの月1,500件前後のペースから大幅に増加した。単月の件数としては過去4番目の水準である。内訳をみると、中小・零細企業のウエイトが高まっており、特別保証制度関係の倒産件数も前月より増加した。

II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.景気の現状

 景気の現状について、大方の委員は、生産の大幅な減少の影響が雇用・所得面を通じて個人消費にも及び始めており、調整は厳しさを増している、として、先月までに比べ景気判断を慎重化させることが適当との認識を共有した。ある委員は、日本経済はデフレの状況にあるが、デフレスパイラルに陥ったとまでは言えないと述べた。もっとも、ひとりの委員は、(1)景気動向指数は、景気の急速な悪化を示している、(2)先行指数からみて少なくとも目先8~10か月は下げ止まりを期待できない、(3)現在の調整の速さと深さはオイルショック後やバブル崩壊後の局面と似ている、点を指摘したうえで、失業率の上昇、倒産件数の増大、企業金融指標の悪化等を踏まえると、景気はもう一段深刻なフェーズに入ったと述べた。

 企業部門の動向については、多くの委員が引続き悪化しており調整に歯止めがかかっていないとの認識を示した。生産・在庫の状況について、複数の委員が、電子部品や紙パなどで在庫調整の進捗がみられるが、こうした動きは一部であり、全体的には急ピッチの生産調整にもかかわらず在庫調整が遅れていると指摘した。

 何人かの委員は、構造調整の遅れによる供給過剰やグローバルな競争圧力の高まりが企業活動に及ぼす影響を指摘した。ある委員は、今年度の住宅を除く建築着工床面積が、首都圏一極集中のもとで67年の水準を下回る見込みにあると述べたうえで、(1)ゼネコンの受注価格が前年比3割近くも下落している、(2)部品業者も生産の中国シフトなどを進めざるを得ず、これを受けて素材メーカーともども価格・数量・収益減に見舞われている、との具体例を紹介した。この委員はまた、自動車生産が、国内販売の減少に加え、対米輸出も米国での販促効果の剥落から早晩息切れが見込まれるため、下方修正は必至であると述べ、波及効果の大きい自動車生産に陰りが出てきた点に懸念を表明した。別の委員は、アジア諸国と日本、中国の製造業の賃金格差を紹介し、(1)中国の低価格輸出品は日本のみならず他のアジア諸国にとっても脅威となっている、(2)そうしたなかで本邦企業は大幅な固定費圧縮、なかでも雇用削減を迫られている、と指摘した。

 こうしたなかで、設備投資についても、複数の委員が企業収益の悪化から一段と減少しているとの見方を示した。ある委員は、機械受注の落込みに触れたうえで、設備投資の減少がITメーカーからITユーザーに広がりをみている、と指摘した。

 家計部門の動向については、これまで何とか横這い圏内とみてきた個人消費も弱めに判断を修正せざるを得なくなっているとの認識が、概ね共有された。多くの委員は、失業率の上昇など雇用・所得環境の悪化と、消費者コンフィデンスの冷込みを指摘したほか、海外旅行や乗用車販売など相対的に堅調であった消費指標が減少に転じた点に注目した。ひとりの委員は、消費行動が生活防衛色を強めている点を指摘したうえで、将来の期待所得の減少が消費抑制に繋がっていると述べた。

2.景気の先行き

 景気の先行きに関しては、年初来の輸出減少を起点とする景気調整が続くもとで、内需がさらに弱まっていくのは避けられないとの認識が共有された。そのうえで、当面の注目点としては(1)米国経済を中心とする世界同時的な減速が、わが国輸出の一段の減少に繋がるリスク、(2)雇用と所得の悪化から個人消費が明確な減少に転じるリスク、(3)金融面の脆弱性が経済活動に悪影響を及ぼすリスクなどが指摘された。

 まず、海外経済の動向については、企業部門の減速に加え、これまで底固かった欧米の家計部門でも弱い材料が目立っており、同時減速傾向を強めつつあるとの認識が概ね共有された。ある委員は、OECD諸国の景気先行指数の落込みを示しつつ、世界景気はテロ事件以前から下降局面に入っていたが、テロ事件がさらに打撃を与えており、少なくとも下期中は回復が見込めないと述べた。

 複数の委員は米国経済に言及し、(1)製造業受注が大幅に落ち込んでおり生産調整はさらに長期化するとみられる、(2)テロ事件後、所得環境や消費者コンフィデンスが急速に悪化しており消費への影響が懸念される、(3)加えて堅調だった住宅価格も一部下落しており、逆資産効果と減税・利下げ効果の綱引きになっている、(4)消費が持ち堪えている間に設備投資が回復するかどうか楽観できないといった点を指摘した。

 以上のような見方に対し、ひとりの委員は、現状既に世界同時後退に近い状況となっている点を踏まえると、昨年から今年にかけて米国でみられたような急激な景気減速が再度起きるとは考えにくいのではないか、と述べた。もっとも、この委員は、9月に急上昇した貯蓄率の今後の動向や、自動車ローンの金利ゼロキャンペーンの効果の持続性など、米国経済の先行き不透明感の強さを併せて指摘した。

 また、一部の委員は、世界的なITセクターの動向に言及し、(1)アジアの電子部品メーカーの売上げ改善や、半導体スポット価格の上昇など、潮目の変化を窺わせる材料も出始めている点に着目しつつも、(2)IT最終需要には依然回復の兆しが見えておらず、米国IT産業では出荷・受注の減少が続いていることなどから、引続き厳しい状況が続くとの見方を示した。

 このような海外情勢、輸出環境を踏まえ、わが国の企業部門については、当面厳しい状況が続くとの見方が概ね共有された。ひとりの委員は、在庫水準が低下しても出荷が逃げ水のように減少しているため、在庫率が高止まりしていると述べ、生産調整の長期化は避けられないとの見通しを示した。別のある委員は、収益の回復がない限り、企業の回復プロセスは始まらないが、収益環境はむしろ下期にかけて一段と厳しさを増す、と述べた。同じ委員は、このところの株価低迷が年金給付債務の引当不足を通じ収益の下押し圧力となっている点も懸念材料として付け加えた。ある委員は、時価会計という面からも、3月末の株価が企業経営に与える影響が注目されると指摘した。

 この間、ある委員は、日本の企業セクターが抱える中長期的な問題点と、そこから生じる調整圧力の存在を指摘した。この委員は、(1)過去17年の間に、個人金融資産が3倍弱増加した一方、法人資本は毀損されており、個人と企業の所得配分に大きな歪みが生じた、(2)99年度の法人申告所得は、黒字と赤字をネットすると僅か2兆円であり、企業部門全体として収益が殆んど上がっていない、(3)このためROA引上げのためコストと資産の圧縮が必要になっている、(4)建設、サービス、不動産など官需依存度が高かったり規制に守られている生産性の低い業種の方が、他業種より製品・サービス価格の引上げ率や実質賃金上昇率が高い、といった問題点を挙げ、今後これらの是正プロセスが始まると述べた。

 こうしたなかで、雇用・所得環境の悪化が、今後の個人消費に及ぼす影響が意識された。複数の委員は、雇用調整が様々な業種に広がっている事実や、来年度にかけて所定内給与の切込みやワークシェアリングが広がるとの見解を示したうえで、雇用・所得環境はさらに悪化し、個人消費に悪影響を与える可能性が高いとの見方を述べた。

 以上のような景気情勢のもとで、物価動向については、需要の弱さに起因する物価低下圧力が強まっていく可能性が高いとの認識が共有された。ある委員はデフレスパイラルのリスクを注視すべきと述べた。加えて、複数の委員が、世界的な同時減速のもとで、グローバルな物価上昇率の低下や国際商品市況の下落もわが国の物価の押下げ要因となる点を指摘した。ひとりの委員は、(1)生産性上昇・技術革新による価格低下、高コスト体質是正を進める価格低下は不可避であり経済成長とも整合的と受け止めるべきである、(2)一方、需給バランスの崩れによる物価下落は、過当競争で企業を疲弊させ設備・雇用調整を迫るなど経済を縮小再生産に陥れる要因になっている、と整理した。この委員は、物価下落が企業収益を圧迫し実質債務負担を増加させるなど、フロー・ストック両面で企業にダメージを与えていることから、企業にとって最大の問題になっていると述べた。

3.金融面の動向

 国内金融環境については、金融市場の状況や金利水準からみれば極めて緩和的な状況が続いているが、民間銀行や投資家の信用リスク・テイク姿勢は幾分慎重化しており、信用力の低い企業などで資金調達環境が厳しくなる動きがみられる、との認識が共有された。そのうえで、先行き金融システム不安の高まりや金融機関の融資姿勢の慎重化などにより金融面から景気の脆弱性が高まるリスクをどうみるかという点を中心に、議論が行われた。

 まず、大方の委員が、銀行経営に対する市場の評価が極めて厳しくなっている点に懸念を表明した。複数の委員は、銀行株価がバブル後最安値を更新しているほか、銀行社債・劣後債の対国債スプレッドや邦銀のクレジット・デフォルト・スワップレートが中間期末を越えても高止まりしていることを指摘した。これに関連して、ある委員は、銀行株価の下落は、不良債権処理の促進と最終的な損失規模の早期確定を求める市場の警告ではないかと発言した。

 そのうえで、ひとりの委員が、銀行の健全性に対する懸念が強まると、株安で銀行経営が不安定化し、企業金融の悪化を通じて経済活動に悪影響を及ぼすリスクも排除できないと述べた。他の多くの委員も、ペイオフ解禁を控え金融システムと実体経済が連鎖的に悪化していくリスクに留意が必要との見解を述べた。このような認識を踏まえ、ある委員は、97~98年のような信用収縮は是非とも避けるべき局面であり、株価の動向、金融機関の自己資本や資金繰り・預金シフトの状況を良くモニターしていく必要があるとの認識を示した。別の委員は、日本銀行には金融庁とも協力しつつ金融システムの信認回復に取り組むことが求められている、また銀行の経営体力が維持できなくなれば公的資本注入も止むを得ないとの見解を述べた。

 こうしたなかで、大方の委員は、銀行の融資姿勢が慎重化している点を指摘した。同時に、現状は資金需要自体が弱いため、逼迫感が急に強まっている状況ではない、との見方も複数の委員から示された。これらの委員も含め、銀行は今後さらに利鞘重視、融資先選別の姿勢を強めていくとみられるため今後の動向には十分注意が必要、との認識が共有された。

 このため、企業の調達環境が二極化の傾向を徐々に強めているとの認識も、概ね共有された。ある委員は、10月の倒産件数の急増を懸念材料として挙げた。別の複数の委員は、売上げ不振とキャッシュ・フロー減少で、運転資金やリストラ資金に対する需要が高まる一方、銀行は資産査定を厳格化しつつ取引先の選別色を強めており、一部不振業種や中小企業では年末、年度末にかけ資金繰りが悪化するリスクがあると述べた。さらにこの委員は、仮にそうした事態になれば、銀行・企業・個人が一段とリスク回避指向を強め、市場全般が不安定化する惧れもある、と付け加えた。

 なお、ある委員は、金融機関の信用仲介機能に関連して「不良債権問題の存在故に緩和効果が金融システムの外側まで伝わりにくい」といった説明が良くなされている点について、中長期的には正しいが、短期的にはもう少し事情が複雑なのではないか、と指摘した。これについて同委員は、(1)銀行の融資行動をみると信用力の高い先には貸込み競争に近い状況が生じている、(2)一方で、信用力の低い先には新規貸出こそ慎重であるが、過去に行った低利鞘貸出をストックとして多く抱え続けている、(3)銀行がこのような無理な貸出行動を続けるなかで、不良債権の予備軍が増えている、(4)従って、マクロ的には不良債権の存在故に貸出が出ないのでなく、過剰な貸出の調整が整理できていないと捉えるべきである、と敷衍した。さらにこの委員は、(1)こうした認識を踏まえると、不良債権処理が進展する過程では、マクロ的な貸出残高は減るかも知れないが、同時に健全な借り手、有望なプロジェクトには十分資金が回るという状況が実現できる筈である、(2)そうしたなかでは金融機関のリザーブ需要は必ずしも増えないかも知れない、と付け加えた。

 国内の金融資本市場の動向に関しては、ひとりの委員が、株価・金利・為替いずれも、多くの不透明要因を抱え動きづらい状況である、と総括した。長期金利については、世界的なディスインフレ傾向や日銀の徹底した流動性供給から今のところ概ね安定しているが、二次補正や来年度国債発行額を巡って一部神経質な動きもみられる点が意識された。株価については、ある委員が、(1)海外の株価がテロ後ボトムから2~3割上昇しているのに対し、本邦株価の上昇は限定的である、(2)その背景は銀行株価と、建設・不動産・流通などの過大債務企業の株価低迷である、(3)こうした状況を踏まえると、株式市場は構造改革の進展、特に不良債権処理の進展と将来のビジネス・モデル構築を求めている、と指摘した。他の複数の委員も、不良債権処理の遅れが株価低迷の根本的な背景だとの見解を述べた。

 海外の金融資本市場に関しては、世界経済の同時減速傾向が意識されるなかで、足許の海外株価が比較的堅調に推移している背景を中心に議論された。

 ある委員は、(1)米国株価やドル相場の堅調は、米国経済が来年前半には回復し始めるとの市場の見方と整合的である、(2)9月末以降の韓国・台湾の株価上昇も、アジア諸国における輸出減少幅の縮小、半導体市況の底打ちなど変化の兆しが窺われることと関連している、と指摘した。一方、別のある委員は、米国株式市場は、財政出動や金融緩和の効果への期待、アフガン情勢の進展等からユーフォリア的な状況にあり、何れ反動が出るのではないかと述べた。この委員は、最近の米国長期金利の上昇について、やや長い目でみて米国が国際紛争に巻き込まれることへの懸念の反映ではないかと付け加えた。

 別の委員は米国社債市場の動向に触れ、(1)高格付け債は対国債スプレッドがテロ前の水準に復した一方、低格付け債は高止まりしており、発行額も減少している、(2)直接金融ルートが狭まるなかで、間接金融がどの程度補完できるかが米国経済の先行きを左右する、(3)この点、米銀は邦銀に比べ不良債権比率が低くコアキャピタルが厚いので下支えを期待し得るが、一方で米銀は信用モデルに債務者の株価を組み込んでいるとされており、そうだとすれば銀行信用が直接金融と連動する可能性もあり、今後の動向に注目したいと述べた。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 続いて、当面の金融政策運営について、検討が行われた。

 大方の委員は、金融市場において依然流動性需要が不安定な状況が続いていることを踏まえると、日銀当座預金の上限を定めない現在の調節方針を維持し、機動的かつ潤沢に流動性を供給していくことが適当との見解で概ね一致した。

 不安定な流動性需要が続く背景について、多くの委員は、(1)銀行株の下落等を受けた不安心理の影響から、予備的な流動性需要が高まっている可能性と、(2)超低金利下の資金放出意欲の減退やそれに伴う市場機能の低下を指摘し、当座預金需要が読みにくい状況は当面続くとの認識が共有された。

 このうち前者に関しては、複数の委員が、今後仮に金融システム不安の強まりから流動性需要が高まった場合には、現在の調節方針のもとでそうした需要に応えていく必要が出てくる事態も念頭に置いて現状維持を支持したい、と指摘した。

 後者に関しては、複数の委員が、外銀の多額の超過準備保有に加え、このところ地銀など他の業態でも運用意欲の低下が目立つ点を指摘した。また、外銀の超過準備保有については、本邦投資家の円投による外債投資が基本的な背景となっていることから、今後の外債投資の継続性や規模次第で、大きく変わり得る点が意識された。

 この間、ひとりの委員は、(1)景気は悪化の度を強めている、(2)こうしたなかで構造改革はなかなか進まず、さりとて景気対策も打たれないなど政策的な閉塞感も強い、(3)今後、デフレスパイラルに陥ったり金融システムがクリティカルな局面を迎えるリスクもある、といった点を指摘し、日本経済の深刻さを強調した。

 そのうえで、現状維持といった受け身の対応は適当でなく、デフレを食い止めるために一歩踏み込んだ対応を採るべきであるとして、前回会合と同様、(1)「物価水準ターゲット」の導入と、(2)日銀当座預金残高目標を10兆円程度とする調節方針を提案したいと述べた。さらにこの委員は、前回は保有国債残高を銀行券発行残高までとする制限を外す提案をしたが、今回は見送り、これに代えて(3)外債買入れの開始を正式に提案したいと述べた。この委員は、現在の金融環境であれば外債を買い入れなくとも前述の10兆円の残高目標は達成できるが、資金供給手段の多様化の観点から外債買入れが必要であると付け加えた。

 先行きの金融政策運営に関しては、まず、多くの委員が、ポートフォリオ・リバランスなど量的緩和策に期待された効果は今のところあまりみられないとの認識を示しつつも、現在の金融緩和の枠組みのもとで、もう少し効果を見極めたいとの見解を示した。ある委員は、現在の政策効果について、企業が極めて低金利で調達できる環境を整えている点で、重要な役割を果たしている、と述べた。また、別のある委員は、(1)日銀当座預金の潤沢な供給と時間軸という3月の金融緩和の枠組みを忠実に続けることが、市場の安定を維持していくうえで重要である、(2)こうした安定した緩和姿勢を継続することで、今後経済主体の心理的な変化や何らかの環境変化に伴って、金利以外の量的な「染み出し効果」が出てくる可能性も否定すべきではない、と述べた。

 ただ、「6兆円を上回る」という現在の調節方針のあり方を巡っては、複数の委員が、いずれは特定の当座預金残高に言及する調節方針への復帰を検討することが望ましいとの見解を示した。このうちのある委員は、(1)現在の調節方針はあくまでも一時的なものと理解している、(2)外銀の超過準備が「根雪」化しているが、市場原理に基づく合理的行動である以上、こうした状況は所与のものとして目標設定を検討していく必要がある、(3)現時点では、当座預金残高の絶対水準で金融緩和の度合いを示すのは難しく、現状追認的な残高目標を定めても効果は期待しにくいが、今後ダウンサイド・リスクが顕現化した場合に、国債の買入れ増額など他の施策とパッケージで量的目標の引上げを打ち出すのが効果的かも知れない、と述べた。別の委員も、不安定な流動性需要をもたらしている原因が当面解消されるとは考えにくく、何れかの段階ではそれを前提に調節方針のあり方を検討する必要があるとの見解を示した。

 これに対し、ある委員は、資金市場の機能が低下し、日銀当座預金残高では緩和度合いがはかりにくくなっている点に留意する必要があることを指摘した。

 このほか、多くの委員が、さらなる情勢の悪化に対応し得るよう、外債買入れも含めた資金供給方法の多様化について、効果、フィージビリティ、問題点などの観点から検討を進めておく必要があるとの見解を示した。この点に関し、ある委員は、非伝統的な資産の買入れを検討するにあたっては、今後政府が打ち出す諸政策との協調や整合性の観点が重要になるのではないか、と述べた。別のある委員も、(1)オーソドックスな金融政策が限界を迎えつつあるなかで、政府の財政政策や為替政策など経済政策の範疇に金融政策が重なっていくポリシーミックスを念頭に置きつつ、買入れ対象を検討すべき局面がくるかも知れない、(2)その際にも中央銀行としての信認、銀行券の信認維持が大前提となるが、経済は流れているものであり、ポリシーミックスの枠組みのなかであれば、金融政策単独で行う場合に比べ、それらの信認を補強できる可能性があると述べた。

 なお、外債買入れについては、複数の委員が潤沢な資金供給を続けていくうえで調節上の問題が生じている訳ではないため、現状そうした手段を導入する必要性はないと述べ、概ねその認識が共有された。この間、今回これを提案したいとした委員以外でも、一部の委員が資金供給手段としては一定のメリットがあると指摘した。ある委員は、メリットを(1)日銀当座預金との代替性が低いため資金供給力の向上に資する、(2)長期国債の買入れ増額と異なり市場の財政規律への懸念を惹起しない、(3)社債・株式等の買入れとは違い資源配分の中立性への影響が少ない、と整理した。同時にこの委員は、検討すべき論点として、(1)円滑な資金供給のための外債買入れが必要な状況であるか、(2)日銀法改正時の中央銀行研究会報告では、金融政策の目的を為替相場を含めた「通貨価値」の安定ではなく、対内的な通貨価値である「物価」の安定としたうえで為替レートに影響を与える目的で外貨を売買する介入は政府が一元的に行うとされたが、日銀の外債買入れにより、金融政策の目的が「為替相場を含めた通貨価値の安定」であるという誤解を招く惧れがあるのではないか、(3)為替相場の動向次第では、日銀が「金融調節」のために外債を買い入れる一方で、「政府の事務取扱者」として外貨売り介入を行うという相互に矛盾する事態も想定されるのではないか、(4)外債買入れを実施するためには政府を通じて諸外国の理解を得ることが不可欠になるのではないか、と指摘したうえで、最後に、外債買入れを巡り政府と日銀が対立しているかのように誤解されることがないように十分な注意が必要であると述べた。

 この委員も含め、複数の委員が外債買入れに関しては政府の為替政策との関係も1つの論点になり得る、と指摘した。この点について、ある委員の求めに応じ、財務省からの出席者は次のように意見を述べた。

  • 詳細を詰めている訳ではないが、日銀法第40条において、必要に応じて日銀は自ら外国為替の売買を行うとあり、これは、法制上は可能と解釈されていると思う。
  • ただ一方で、同条第2項において、本邦通貨の外国為替相場の安定を目的とする外国為替の売買は、日銀は財務省の指示に基づいて事務の取扱いを行う者として行うと規定されている。
  • 円安を通じて物価の安定を図ること、そのために外国為替の売買を行うことは、この第40条第2項に当たると読むのが素直と思う。従って、その場合は国の事務の取扱いをする者として行って頂くことになるのではないか。日銀法改正時の中央銀行研究会報告で、現在の国際金融システムのもとでは為替介入については政府が一元的に責任を持つべきであるとされた経緯を考えても、日銀の外債買入れについては、法律上の観点から色々検討すべき問題があるのではないかと思う。

 この発言に関し、今回外債買入れを提案したいと述べた委員は、(1)日銀法第40条の問題は十分認識しており、為替介入と一線を画すべく、毎月定額購入するなどの工夫を行うのは当然である、(2)中央銀行研究会当時とは経済状況が大きく異なるので、外債買入れについて新たに検討することには意義がある、と述べた。他の複数の委員も、円資金の円滑な供給を目的に行う外債の買入れは、日銀法第40条の規定には抵触しないのではないか、との意見を述べた。

 金融緩和効果を引き出す観点から、他の経済政策の重要性についても、何人かの委員が発言した。ある委員は、(1)物価の継続的な下落を食い止め、経済の持続的な成長を確保するためには、金融緩和だけでは限界がある、(2)この点、日本経済の最大の課題は、持続可能な形で総需要を喚起することであり、(3)そのためには、不良債権処理を通じて金融システムの機能を回復させるとともに、民間需要をうまく喚起するようなかたちで構造改革を進めることが不可欠である、との見解を示した。さらに、構造改革の面で、内外の信認が得られ、民需の持続的な拡大を引き出すような抜本的な取り組みを政府に強く期待したい、と発言した。

 また、別の委員は、景気回復とデフレ脱却のためには民間(企業および銀行)の自助努力と財政、金融の「合わせ技」が必要と強調した。この委員は、(1)短期的にはデフレ脱却が最大の課題であり、今年度補正や14年度予算を通じ、乗数効果の大きい財政支出によって民需を刺激することが重要、(2)不良債権処理の促進による金融システム健全化も、企業や家計のコンフィデンス向上に繋がる、(3)中長期的には、財政再建を念頭に置きつつ、都市再生、環境・福祉、IT関連基盤整備等に重点を置いた質の高い財政出動を図るとともに、前向きな経済活動を促す税体系や規制緩和、雇用のセーフティ・ネットなどの環境整備が重要と述べた。

IV.政府からの出席者の発言

 会合のなかでは、内閣府からの出席者から、以下のような趣旨の発言があった。

  • 小泉内閣成立から半年強が経過した。この間、この会合では、政府からデフレ阻止に向け適切かつ機動的な金融政策を求める一方で、日本銀行からは規制緩和等による需要発掘や不良債権処理の必要性が指摘されてきたが、双方その必要性を十分認識しつつも、それぞれに難しい問題を抱えるなかで現在に至っている。
  • 内閣府が先週独自試算として発表した経済見通しによれば、今年度成長率はマイナス0.9%と戦後最低になっている。外需の落込みが主因であり、個人消費がプラスに寄与することでスパイラル的な悪化を何とか阻止する前提で考えているが、先日の月例経済報告では、消費の弱含みを主因に景気判断を下方修正させており、経済運営は大変苦しくなっている。経済の悪化は甘んじて受け入れなければならない面があるが、継続的かつ加速度的な悪化に対しては思い切った対応を講じるのが政策当局の務めだと思う。
  • 本日成立の今年度補正予算は、30兆円の国債発行枠を守るという財政規律を示す一方、苦しいなかで、雇用などのセーフティ・ネットに重点を置くとともに、改革先行プログラムにも一部お金をつけている。また、補正予算が成立したことで、ゼロベースで政策を総点検する段階と認識している。様々な経済政策を原点に戻って考え直す観点から、経済財政諮問会議において集中審議を始めた次第である。
  • 特に不良債権問題については厳しい認識を有しており、ペイオフとの関係で対応を見直す、或いは強化する必要性を感じている。この問題にも関係して、日銀にはデフレへの対処で是非とも知恵を出していただきたい。
  • 政府としても新しい領域に踏み出していく覚悟であるので、日本銀行には、選択肢をできるだけ広げ、デフレ阻止に向けて適切かつ機動的な金融政策をお願いしたい。

 財務省からの出席者からは、以下のような趣旨の発言があった。

  • 本日、改革先行プログラムに基づく13年度補正予算が成立した。日本銀行は、前回会合以降概ね9兆円を上回る潤沢な資金供給を行っている。当座預金残高を増やすことは、市場に安心感を与えるという心理的な経済下支え効果があると考えられ、今後とも、経済・市場動向を十分注視しつつ、引続き潤沢な資金供給を行っていただきたい。
  • 消費者物価指数をみると、物価の下落が依然として継続している。現在の持続的な物価下落は、企業活動や消費等様々な面で悪影響を与えており、日本銀行におかれては物価下落を阻止するための政策論議を深めて頂きたいと考えている。
  • 日本銀行は、物価の継続的な下落を防止するため、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針である旨表明している。依然として物価下落に反転の兆しがみられないなかで、人々の心理にも強く働きかけ、こうした日本銀行としての強い政策態度を市場に浸透させるとともに、これを実効あらしめるため是非とも機動的に金融政策を運営して頂きたい。
  • その際、短期金利がほぼゼロという状況下では、従来の短期資産を中心とするオペの実体経済に与える効果は限定的であり、デフレ懸念払拭のため、金融調節にあたり新たな工夫を講じることを含め、経済により効果のある政策を幅広くご検討頂きたい。

V.採決

 以上のような議論を踏まえ、会合では、現状の金融市場調節方針を維持することが適当であるとの考え方が大勢となった。

 ただし、ひとりの委員は、(1)「物価水準ターゲット」を導入すること、(2)資金供給の円滑な実施のため外債買入れを開始すること、(3)日銀当座預金残高目標を10兆円程度とすること、を提案したいと述べた。

 この委員は、その理由について、(1)物価水準を目標化し、目標達成時期を明示することにより、物価を現状以下には引き下げないという日銀の強い姿勢を示すとともに、明確なかたちで日銀についての政策評価をしやすくすべきである、(2)外債買入れの開始により、資金供給手段の選択肢を広げ、供給力の向上を図るのが適当である、(3)「6兆円を上回る」という現在の調節方針は曖昧かつ不十分であり、現状概ね9兆円程度となっている当座預金残高をさらに上回る量的目標を明示すべきである、と説明した。また、外債買入れは、継続的かつ安定的に買うことを想定しており介入とは明確に一線を画したものである、具体的な買入れ方法は国債と同様に執行部に授権する、と付け加えた。

 この結果、以下の議案が採決に付されることになった。

 中原伸之委員からは、金融市場調節方式について、「2001年1~3月期平均の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)のレベル(99.1)を基準として、2003年1~3月期平均の同指数について、その基準レベル(99.1)を維持ないしはそれ以上に引き上げることを目的として、金融市場調節を行う」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対8)。

 次いで同委員から、同じく金融市場調節方式について、「日本銀行当座預金を円滑に供給するうえで必要と判断される場合には、実務体制等の準備が整い次第、外債の買入れを開始する」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対8)。

 さらに同委員から、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「日本銀行当座預金残高が10兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対8)。

 議長からは、会合における多数意見をとりまとめるかたちで、以下の議案が提出された。

議案(議長案)

 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添のとおり公表すること。

 日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、三木委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原眞委員
  • 反対:中原伸之委員

中原伸之委員は、(1)特定の当座預金残高を定めない現在の調節方針は実質的に金利ターゲット政策を意味しており、本年3月に決めた枠組みとは異なっている、(2)現在の資金供給は市場の資金需要をアコモデートしているだけで、積極的な量的緩和の姿勢からは程遠い、(3)物価の下落率が拡大している現状への危機感に欠けており、不十分である、(4)政策当局としての責任から、自ら具体的な物価目標とその達成時期を定めるべきである、といった理由から上記採決において反対した。

VI.金融経済月報「基本的見解」の検討

 当月の金融経済月報に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が賛成多数で決定され、それを掲載した金融経済月報を11月19日に公表することとされた。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、三木委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原眞委員
  • 反対:中原伸之委員

中原伸之委員は、(1)景気について、後退ピッチの速さに言及するとともに、「調整」ではなく「悪化」と表現すべきである、(2)物価についても、今後下落ペースが一段と加速していく可能性を踏まえ「緩やかな下落傾向を辿る」との表現は不十分である、(3)10月の倒産件数増加や失業率上昇にも言及すべきである、(4)公共投資の落込みで地方経済が非常に大きな影響を受けていることを記述すべきである、と述べ、上記採決において反対した。

VII.議事要旨の承認

 前々回会合(10月11、12日)の議事要旨が全員一致で承認され、11月21日に公表することとされた。

以上


(別添)

平成13年11月16日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成多数)。

日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。

以上