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金融政策決定会合議事要旨

(2001年11月29日開催分)*

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2002年1月15、16日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2002年 1月21日
日本銀行

開催要領

1.開催日時
2001年11月29日 ( 9:00〜12:21)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 速水 優 (総裁)
  • 山口 泰(副総裁)
  • 三木利夫(審議委員)
  • 中原伸之(  審議委員  )
  • 植田和男(  審議委員  )
  • 田谷禎三(  審議委員  )
  • 須田美矢子(  審議委員  )
  • 中原 眞(  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 財務省 藤井 秀人 大臣官房総括審議官
  • 内閣府 竹中 平蔵 経済財政政策担当大臣<9:00〜11:37>
    薦田 隆成 大臣官房審議官(経済財政−運営担当)<11:39〜12:21>

(執行部からの報告者)

  • 理事松島正之
  • 理事永田俊一
  • 企画室審議役白川方明
  • 企画室参事役雨宮正佳
  • 金融市場局長山下 泉
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局企画役吉田知生
  • 国際局長平野英治

(事務局)

  • 政策委員会室長横田 格
  • 政策委員会室審議役中山泰男
  • 政策委員会室調査役斧渕裕史
  • 企画室調査役山岡浩巳
  • 企画室調査役長井滋人

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節については、外銀による多額の超過準備保有などを背景に不安定な流動性需要が続くなか、前回会合(11月15、16日)で決定された方針1にしたがって、潤沢な流動性の供給を行った。こうした調節のもとで、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.002〜0.003%と、総じて安定的に推移した。年末越えの資金調達の動きについては、これまでのところ落ち着いているが、外銀の超過準備の動向も含めて、今後も慎重に見守っていきたい。

  1. 「日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。」

2.金融・為替市場動向

(1)国内金融資本市場

 前回会合以降の市場の動きをみると、本邦株価は、米国株価の持ち直しや円安進展などを背景に上昇したが、その後は持ち合い解消売りの動きが拡がったほか、上場企業の倒産が嫌気されたことなどから、下落に転じた。先行きの株価については、企業業績の下方修正はある程度織り込まれつつある一方、米国経済に関する楽観論の修正や銀行株に売り圧力が強まるリスクもあり、上値が重い展開を辿るとの見方が多い。

 金利動向をみると、ターム物の短期金利は、本行による潤沢な資金供給を受けて引き続き極めて低水準で推移している。長期金利は、第2次補正予算で国債増発が見送られる見通しとなったことが金利低下要因として意識された一方、日本国債に対する格付け引き下げの思惑などが金利上昇圧力となって、前回会合比では概ね横這い圏内で推移した。

 こうした中、信用リスクへの警戒感が次第に市場に拡がっている点には留意が必要である。すなわち、クレジット・スプレッド(国債と民間債との利回り格差)については、高格付債は引き続き横這い圏内にあるが、トリプルB以下の低格付債は、企業の信用リスクに対する見方が引き続き慎重化していることから、拡大する動きが続いている。また、CP市場では、高格付の損害保険会社の破綻を受けて、新発レートがかなり上昇する動きがみられている。

 銀行セクターについては、大手行の業績修正発表以降に株価は一旦持ち直しに転じたものの、その後は足許にかけて下落傾向が続いている。この間、一部の銀行発行債のクレジット・スプレッドも拡大している。

(2)為替市場

 円の対米ドル相場は、米国経済指標の予想比上振れやアフガニスタン情勢の進展がみられたことに加え、わが国について金融システム不安や国債格下げリスクが海外勢を中心に意識されたことなどから、121円台から124円台まで下落した。その後、足許では幾分円高方向に調整が進んでいる。

3.海外金融経済情勢

 前回会合以降、世界経済の減速、後退を示唆する指標が多くみられた。

 まず、米国については、IT関連を除く製造業で在庫調整に目途がつきつつあるように窺われるものの、最終需要は引き続き弱い状況が続いている。10月の鉱工業生産は、自動車の減少を主因に、9月に引き続き大幅に減少した。一方、家計部門では、消費者コンフィデンスや住宅着工などで弱い指標が出ており、出足が比較的順調なクリスマス商戦も今後の展開を慎重にみていく必要がある。

 こうした中、米国金融市場では、長期金利の上昇、株価のボラティリティ低下、低格付債のスプレッド縮小といった形で、これまでの「質への逃避」的な投資行動の巻き戻しがみられている。また、FF先物金利は、次回FOMC(12月11日開催予定)における0.25%程度の再利下げを織り込んでいるが、来年央以降には利上げに転じるとの見方を示している。

 欧州でも、ドイツを中心に景気後退色が強まっている。ドイツでは、設備投資の減少に加え、個人消費も減少に転じたことなどから、2四半期連続のマイナス成長になったほか、先行きを含めた景況感指数も大幅な悪化をみている。

 NIEs、ASEAN諸国では、輸出の減少を背景に、台湾、シンガポール、マレーシアなどで大幅な景気後退が続いている。一方、韓国では、積極的な公共投資や個人消費の底固い伸びが景気を下支えしている。中国でも輸出がスローダウンしてきているが、財政支出増大や高水準の対内直接投資流入等に伴う内需の好調を反映して、引き続き高成長を維持している。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 前回会合以降の経済指標をみる限り、「生産の大幅減少の影響が雇用・所得面を通じて個人消費にまで及び始めており、調整は厳しさを増している」との景気判断を変える必要はないとみている。

 需要項目別にみると、輸出入は、通関日数要因の影響もあって、10月に小幅増加したものの、全体としては減少基調が続いている。IT関連の最終需要は引き続き弱く、11月前半に急上昇したDRAMのスポット価格は中旬以降反落している。民間調査会社によると、本年第3四半期の世界の携帯電話販売台数は前期に引き続いて前年を下回った。

 個人消費については、徐々に弱まりつつあることを確認させる指標が出てきている。すなわち、10月の家電販売がパソコン販売の落ち込みを主因に弱めの動きを続けたほか、全国チェーンストア売上高も天候要因などもあって、やや大きめの減少となった。

 このような最終需要動向を受けて、生産は大幅な減少を続けており、10月の鉱工業生産も前月比▲0.3%となった。ただし、在庫率は引き続き高いものの、在庫は輸送機械や電気機械などを中心に2か月連続で減少した。一方、製造業と比べて比較的安定した動きを示していた非製造業についても、第3次産業活動指数が、通信、運輸(貨物輸送)、卸売などを中心に弱まってきており、景気調整の動きが波及してきていることがみてとれる。

 物価面では、企業向けサービス価格指数の下落が10月も続いていることが確認された。3か月前比で最近の動きをみると、通信が下げ止まり、リースの低下幅もほぼ横這いで推移する一方で、需要低迷を背景に広告や一般サービス(運輸、労働者派遣サービス等)の下落がやや目立っている。

(2)金融環境

 前回会合以降、金融環境については、新たな統計は殆どない。

 11月のマネタリーベースは、銀行券が8%程度の高い伸びを続ける中で、日銀当座預金が大幅に増加していることから、9、10月に引き続き、14〜15%程度の高い伸びとなる見通しである。銀行券の高い伸びの背景としては、(1)郵貯大量満期に伴う引き出し分の現金滞留増加に加え、最近の新しい動きとして、(2)金融機関保有現金の増加が挙げられる。

 企業の資金調達面では、9月の貸出約定平均金利(新規実行分)が、短期、長期ともに前月と比較して低下し、既往ボトムを更新した。中でも短期の低下幅が大きいが、これは経営健全化計画の達成を意識した低利での貸出積み増しの動きが9月末にかけてみられたことの影響が大きいと考えられる。こうした中、各種DIをみると、中小企業の資金繰りや中小企業からみた金融機関の貸出態度が少しずつ厳しくなる傾向が続いている。

 10月の倒産件数は、1,843件とこれまでの月1,500件前後のペースから大幅に増加し、過去4番目の水準となった。内訳をみると、中小・零細企業のウエイトが高まっており、特別保証制度関係の倒産件数も前月の402件から549件に増加した。11月についても、既に上場企業の倒産が単月で4件も発生しており、注意すべき動きとなっている。

II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.景気の動向

 景気の現状については、新たな経済指標等が多くないこともあり、前回会合時点における「生産の大幅減少の影響が雇用・所得面を通じて個人消費にまで及び始めており、調整は厳しさを増している」との景気判断を変更する必要はないとの見方が大方の委員に共有された。複数の委員は、景気調整の動きが個人消費へ一段と波及していることが窺われるものの、全体の判断を変更するには至っておらず、12月前半の法人季報、GDP、日銀短観といった統計や第2次補正予算、来年度予算の動きなどをみて改めて判断を固めたいとした。

 こうした中、ひとりの委員は、日本経済はデフレ・スパイラルの初期の段階に入っているとし、他の委員より一層厳しい認識を示した。

 景気の先行きに関しては、年初来の輸出減少を起点とする景気調整が続くもとで、内需がさらに弱まっていくことは避けられないとの認識が共有された。ある委員は、今後、失業率は7〜8%程度にまで上昇するとの見方を示した。

 先行きを占ううえで重要な海外経済の動向については、多くの委員が、米国経済に関する幾分楽観的な見通しが米国の株式・債券市場などで台頭していることを指摘した。ひとりの委員は、クリスマス商戦の事前予測や新規失業保険申請件数の減少などをみる限り、米国経済は当初懸念されていたほどは落ち込まない可能性もあるとの認識を示した。しかしながら、多くの委員は、こうした市場の楽観的な景況感について、アフガン情勢の進展を映じたムード的な面があるほか、一部消費関連指標の回復もテロ直後の急激な落ち込みの反動という要素を割り引いて考える必要があり、引き続き不確実性が高いとの認識を示した。

 複数の委員は、今後の米国経済の回復は緩やかなものに止まり、V字型の回復は望み難いとの見方を示し、このうちのひとりの委員は、展望レポートの標準シナリオで想定したような海外経済の回復を望むことは難しくなっているとした。その理由としては、(1)IT、通信部門の過剰投資の調整に時間を要すること、(2)レイオフの先送りがみられ、雇用調整が第4四半期に集中的に行われた後も続くことが予想されること、(3)世界的なディスインフレ傾向が米国家計の消費行動に関するパラダイム・シフトを招く可能性があること、(4)財政の2/3を占める地方財政について、28州が均衡財政主義に基づいて当初計画予算比の支出削減を計画・実施していること等が挙げられた。

 米国経済以外についても、ひとりの委員が、欧州景気の後退がドイツを中心にはっきりしてきていることを挙げ、世界同時不況の様相が強まっていると述べた。また、別の委員は、ITバブルの崩壊で経常黒字の急速な縮小に見舞われているアジア諸国が、国際資本市場で順便に資金調達を行うことが難しくなっていると指摘した。

 わが国の物価動向については、景気の調整が厳しさを増していく中で、継続的な物価下落と実体経済の縮小とが相互作用的に進行する、デフレ・スパイラルに陥っていくことがないか注意深く見守っていく必要があるとの認識が何人かの委員によって示された。その際の着目点としては、企業収益、個人消費、雇用・所得動向などと共に、金融システムの安定性が重要であることが指摘された。

 これに対して、ひとりの委員は、現在の日本経済は既にデフレ・スパイラルの初期の段階に入っており、今後、企業収益、雇用者所得の悪化が消費面に本格的に波及するため、2002年には物価の下落テンポは加速するとの見方を示した。

 ある委員は、原油価格の動向について、現在はOPEC加盟国と非加盟国との協調が不完全で底値を探る状況にあるが、中長期的には、中東情勢の展開に加え、カスピ海の原油生産を巡る米露協調の行方がポイントになると述べた。

2.金融面の動向

 金融面における前回会合以降の動きとしては、(1)大手銀行による中間決算における不良債権処理額の積み増し、(2)足許における倒産の増加、(3)損害保険会社の破綻や米国の大手エネルギー会社の合併交渉失敗等に伴う信用リスク懸念の高まりが指摘された。

 大方の委員は、大手銀行による中間決算における不良債権処理額の積み増しについて、不良債権処理に向けた具体的な動きとして評価しつつも、不良債権問題を巡る環境は引き続き厳しいとの見方を示した。ひとりの委員は、個々の銀行としては思い切った措置であろうが、市場を安定化させるには十分とは言えないとした。別の委員は、一部の銀行で剰余金が底をつき、法定準備金を取り崩す動きも見られる中で、今後の不良債権処理や時価会計による株式の損失計上も考えると、経営体力の強化という観点から自己資本の補強が必至となる先がでてくるとしたうえで、自助努力に限界がある場合には、公的資本注入も視野に入れざるを得ないと述べた。また、多くの委員が、先行きのリスクとして、不良債権処理に伴う企業倒産の増加、ペイオフを控えての金融システムの不安定化、それに伴なう信用収縮の動きが発生することに注意する必要があることを指摘した。

 また、今後、不良債権処理や構造改革の進展が金融政策運営にもたらす影響についても議論が行われた。金融機関が不良債権処理を進めると同時に構造改革が進捗していくプロセスでは、金融機関の貸出態度の厳格化、スプレッドの拡大が進行して、貸出残高が減少したり、倒産件数が増加したりすることも十分予想されるとの見方を多くの委員が共有した。ひとりの委員は、膨れ過ぎた資産の縮小過程が漸く本格的に進み始めているため、そうしたプロセスは数年がかりになると述べた。別の委員は、日本はオーバー・レンディングの状態にあるため、新規の貸出需要が出てきても、全体として貸出残高が減少することは不可避であるとした。

 複数の委員は、こうした環境が続く限り、金融政策の効果が目にみえて高まっていくことは期待し難く、当座預金残高増額の効果が金融システムの外側に及んでいかないという問題が残る可能性が高いとの見方を示した。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 続いて、当面の金融政策運営について、検討が行われた。

 大方の委員は、(1)前回会合以降、景気判断を変更する材料は見当たらないこと、(2)金融市場では依然として流動性需要が不安定な状況が続いていることを踏まえ、日銀当座預金の上限を定めない現在の調節方針を維持し、機動的かつ潤沢に流動性を供給していくことが適当との見解で概ね一致した。

 不安定な流動性需要の背景については、外銀による超過準備の抱え込みや金利の著しい低下による資金放出インセンティブの低下が多くの委員によって指摘された。当面の資金需要については、年末接近に伴って需要が一段と膨らむ可能性があるものの、年明け後にそうした状態が持続するかについては金融システム面での様々な動きも関係するため、非常に読み難い情勢であるとの認識が多くの委員によって共有された。これらの委員は、不安定な流動性需要を充たして緩和的な市場環境を維持していくことの重要性を指摘した。

 こうした潤沢な流動性供給の緩和効果についても、議論が行われた。

 複数の委員は、未だに検証作業が続いている段階ではあるが、これまでのところはなかなかポジティブな意味を見出すのは難しいと述べた。これらの委員は、邦銀による外債投資が一時的に増加した後に足許で急減した点について、こうした外債投資の動きを大筋で左右していたのは米国のイールドカーブに対する見方であり、量によるリバランス効果が働いていたとみるのは難しいとした。このうち、ひとりの委員は、市場関係者などの中でも、さらなる当座預金残高の増加を求める声は急速に低下していると述べた。

 これに対して、ある委員は、当座預金残高をターゲットとして徹底的な流動性供給を行うことで、中長期金利の低位安定を図るとともに、リバランスを通じた染み出し効果を待つという軸をぶらさないことが重要であると述べた。この委員は、当座預金残高について一定の目標をコミットしてその増額を図ることや、当座預金との代替性の低い資産、つまり、社債、CP、ABS、外債などを利用することも視野に入れて議論を深めるべきであると述べた。別のある委員も、日本経済はデフレ・スパイラルの初期の段階に入っているとの認識に基いて、前回会合と同様、(1)「物価水準ターゲット」の導入、(2)資金供給の円滑な実施のための外債買入れ開始、(3)日銀当座預金残高目標を10兆円程度とする調節方針を提案したいと述べた。

 この間、日本銀行による外債購入に関して、ひとりの委員の求めに応じて、財務省からの出席者は次のような意見を述べた。

  •  日銀による外債の購入に関しては、日銀法上の規定を含めて、十分議論していく必要がある。
  •  政策委員会におかれても、外債購入にどのような効果が見込まれるのか、他にも資金供給手段が考えられる中で外債購入の必要性をどうみるか、といった点について整理して頂きたい。

 これに対して、ある委員は、流動性供給によるデフレ脱却を目指すのであれば、その手段の選択は日銀に任せられるべきではないかと述べた。これに対して、財務省からの出席者は、個々の政策手段の是非ではなく、あくまで日銀法上の為替を巡る規定について、考え方を整理する必要性を指摘したものであると述べた。

 このほか、経済政策全体のあり方に関連して、11月27日の経済財政諮問会議で提出された中期経済財政展望の原案について、複数の委員がコメントを行った。ひとりの委員は、(1)同原案では、経済・財政の構造改革や不良債権処理の影響が本格化する集中調整期間において、「物価上昇率をプラスに転じさせる」という目標を掲げようとしているが、こうした集中調整期間においては物価を押し下げる圧力が働き易い、(2)したがって、構造改革の断行を最重要課題と位置付けるのであれば、ゼロ近傍の成長と同様に、ある程度の物価下落が続くことも甘受せざるを得ないのではないか、(3)そして、経済政策運営においては、物価下落というよりもデフレ・スパイラルの回避に最大限の注意を払うべきではないか、との見解を示した。

 別の複数の委員も、構造改革の論理的帰結として、短期的には成長率や物価に対してマイナスの影響を及ぼすことを念頭においておく必要があるとの趣旨の発言を行った。

 こうした議論を踏まえ、ある委員は、構造改革が需給バランスに与える影響の不確実性を踏まえると、「政府は改革に専念するので、あとはデフレ阻止は日本銀行に任せる」という役割分担には無理があると述べた。別のある委員も、集中調整期間においては、政府と日銀で政策運営の一体感を出すとしても、物価をプラスにすることではなく、デフレ・スパイラルを阻止することに重点が置かれるべきではないかと述べた。

IV.政府からの出席者の発言

 会合の中では、内閣府からの出席者から、以下のような趣旨の発言があった。

  •  11月26日の臨時閣議において、総理より緊急対応プログラムを取り纏めるよう指示を受け、13年度の第2次補正予算を編成することとなった。プログラムに盛り込むのは、骨太方針で示した構造改革の加速に資する重点7分野の中で高い経済活性化効果が期待できる事業となる。補正予算については、国債発行30兆円という方針の下で、政府の保有資金を活用して2.5兆円の無利子貸付を行うなどして、中規模の経済効果があるものにしたい。
  •  また、14年度の予算編成の基本方針を11月30日の経済財政諮問会議で了承し、翌週に閣議決定する予定であるほか、中期経済財政展望も12月を目途に纏めたいと考えている。
  •  中期経済財政展望では、成長率は平均でみればゼロ近傍の非常に低いものになるが、集中調整期間中に構造改革の効果を通じて少しずつ上昇してくると想定しており、この結果、物価も期間の後半にはプラスになっていくようにしたいとの見方を示している。そういう意味で、成長率と物価の動きは矛盾していないと考えている。
  •  11月20日の経済財政諮問会議では、デフレと不良債権問題を集中審議して、全体としてデフレ対応のための総合的な政策を議論する必要があるという認識で一致をみた。今後、実務レベルで議論した結果も踏まえて、政策のあり方を検討していきたい。日本銀行におかれても政府の経済政策の取り組みをご理解のうえ、政府と十分な意思疎通を図りつつ、デフレ阻止に向けて、適切かつ機動的な金融政策運営を宜しくお願いしたい。

 財務省からの出席者からは、以下のような趣旨の発言があった。

  •  11月20日に開催された経済財政諮問会議において、物価の継続的な下落防止への取り組みを政府の経済運営における重要政策課題と位置付け、政府、日本銀行が一体となって、断固たる姿勢で取り組んでいくこととなった。また、現在の厳しい経済の状況を踏まえ緊急対応プログラムを策定し、平成13年度第2次補正予算を編成することとした。
  •  日本銀行は、前回会合以降概ね9兆円程度の潤沢な資金供給を行っている。当座預金残高を増やすことは、市場に安心感を与えるという心理的な経済下支え効果があると考えており、今後とも、経済・市場動向を十分注視しつつ、引き続き潤沢な資金供給を行って頂きたい。
  •  消費者物価指数をみると、物価の下落が依然として継続している。現在の持続的な物価下落は、企業活動や消費等様々な面で悪影響を与えており、日本銀行におかれては物価下落を阻止するための政策論議を深めて頂きたいと考えている。
  •  日本銀行は、物価の継続的な下落を防止するため、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針である旨表明している。依然として物価下落に反転の兆しがみられない中で、人々の心理にも強く働きかけ、こうした日本銀行としての強い政策態度を市場に浸透させるとともに、これを実効あらしめるため機動的に金融政策を運営して頂きたい。
  •  その際、短期金利がほぼゼロという状況下では、従来の短期資産を中心とするオペの実体経済への効果は限定的であり、デフレ懸念払拭のため、金融調節にあたり新たな工夫を講じることを含め、経済により効果のある政策を幅広くご検討頂きたい。

V.採決

 以上のような議論を踏まえ、会合では、現状の金融市場調節方針を維持することが適当であるとの考え方が大勢となった。

 ただし、ひとりの委員は、(1)「物価水準ターゲット」を導入すること、(2)資金供給の円滑な実施のため外債の買入れを開始すること、(3)日銀当座預金残高目標を10兆円程度とすること、を提案したいと述べた。

 この委員は、その理由について、(1)物価水準を目標化し、目標達成時期を明示することで、物価を現状以下には下げないという日銀の強い姿勢を示すとともに、明確なかたちで政策評価をしやすくすべきである、(2)デフレ・スパイラルの初期段階に入ったとみられる現タイミングで、外債買入れの開始により当座預金と非代替的な資産にまで資金供給手段の選択肢を拡げ、流動性供給力の向上を図るのが適当である、(3)当座預金残高の目標については、流動性需要に対応するだけではなく、アクティブにそれを上回る量を出していくことが必要である、と説明した。また、同じ委員は、外債買入れについて、毎月定期的に2〜3千億円程度購入するならば介入との違いは明白であるほか、米国当局も反対はしていないように窺われる、との見方を示した。

 この結果、以下の議案が採決に付されることになった。

 中原伸之委員からは、金融市場調節方式について、「2001年1〜3月期平均の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)のレベル(99.1)を基準として、2003年1〜3月期平均の同指数について、その基準レベル(99.1)を維持ないしはそれ以上に引き上げることを目的として、金融市場調節を行う」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対7)。

 次いで同委員から、同じく金融市場調節方式について、「日本銀行当座預金を円滑に供給するうえで必要と判断される場合には、実務体制等の準備が整い次第、外債の買入れを開始する」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対7)。

 さらに同委員から、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「日本銀行当座預金残高が10兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対7)。

 議長からは、会合における多数意見をとりまとめるかたちで、以下の議案が提出された。

議案(議長案)

 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添のとおり公表すること。

 日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、山口委員、三木委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原眞委員
  • 反対:中原伸之委員

 中原伸之委員は、(1)わが国がデフレ・スパイラルの初期の段階にあることを踏まえると、より思い切った量的目標が必要、(2)議長案はディレクティブとして解釈の余地が大きく、執行部に過大な裁量、権限を与えている、(3)議長案は、不安定な流動性需要に対応しているに過ぎず、厳しい景気情勢に対応していない、(4)特定の当座預金残高を定めない現在の調節方針は実質的に金利ターゲット政策を意味し、本年3月に決めた枠組みとは異なっている、といった理由から上記採決において反対した。

VI.議事要旨の承認

 前々回会合(10月29日)の議事要旨が全員一致で承認され、12月4日に公表することとされた。

以上


(別添)

平成13年11月29日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成多数)。

日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。

以上