金融政策

ホーム > 金融政策 > 金融政策決定会合の運営 > 金融政策決定会合議事要旨 2005年 > 金融政策決定会合議事要旨 (2005年 7月12、13日開催分)

金融政策決定会合議事要旨

(2005年 7月12、13日開催分) *

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2005年8月8、9日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2005年 8月12日
日本銀行

(開催要領)

1.開催日時
2005年7月12日(14:00〜15:38)
7月13日( 9:00〜12:48)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 福井俊彦(総裁)
  • 武藤敏郎(副総裁)
  • 岩田一政(  副総裁  )
  • 須田美矢子(審議委員)
  • 中原 眞(  審議委員  )
  • 春 英彦(  審議委員  )
  • 福間年勝(  審議委員  )
  • 水野温氏(  審議委員  )
  • 西村清彦(  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 財務省 石井 道遠 大臣官房総括審議官(12日)
    上田 勇 財務副大臣(13日)
  • 内閣府 浜野 潤  政策統括官(経済財政運営担当)

(執行部からの報告者)

  • 理事平野英治
  • 理事白川方明
  • 理事山本 晃
  • 企画局長山口廣秀
  • 企画局企画役内田眞一
  • 金融市場局長中曽 宏
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局参事役門間一夫
  • 国際局長堀井昭成

(事務局)

  • 政策委員会室長秋山勝貞
  • 政策委員会室審議役神津多可思
  • 政策委員会室企画役村上憲司
  • 企画局企画役加藤 毅
  • 企画局企画役正木一博

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節は、前回会合(6月14、15日)で決定された方針1に従って運営した。この結果、当座預金残高は、31〜34兆円台で推移した。この間、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、資金供給オペレーションに対する「札割れ」が続いている。

  1. 「日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。」

2.金融・為替市場動向

 短期金融市場では、無担保コールレート翌日物(加重平均値)は、ゼロ%近傍で推移した。ターム物レートも、低位で安定的に推移している。

 株価は、円の対米ドル相場下落や一部経済指標の予想比上振れなどを受けて底堅く推移し、日経平均株価は足もと11千円台後半で推移している。

 長期金利は、米欧の金利の低下を背景に、1.1%台後半まで低下した。その後、米欧の金利上昇や一部経済指標の予想比上振れなどを受けて上昇し、足もとは1.2%台前半で推移している。

 為替相場をみると、円の対米ドル相場は、米国との金利差拡大見通しなどを背景としたドル買いを受けて下落し、最近では111〜112円台で推移している。

3.海外金融経済情勢

 米国では、潜在成長率近傍の着実な景気拡大が続いている。最終需要面をみると、純輸出が大きなマイナス寄与となっている一方、国内民需は、増勢が幾分鈍化しつつも堅調な増加を続けている。この間、インフレ率は緩やかながらも着実に上昇している。

 ユーロエリアは、輸出が趨勢として弱含んでいるほか、生産も振れを均してみると減少傾向にあるなど、停滞感が根強い。

 東アジアをみると、中国では、内外需とも力強い拡大が続いている。中国の輸入は、一部業種における在庫調整や景気過熱抑制策の浸透に伴う新規投資の増勢鈍化などから、伸びが大幅に鈍化している。NIEs、ASEAN諸国・地域では、緩やかな景気拡大が持続している。

 米欧の金融資本市場をみると、長期金利は、米国、欧州とも、一旦低下した後、前回会合時点の水準近くまで上昇した。株価は、米国では軟調な展開となった一方、ドイツが横ばい圏内、英国では上昇するなど、国毎に区々の動きとなった。

 エマージング金融資本市場では、原油高に伴う先行き不透明感がある中、多くの国・地域で為替相場や株価が軟調になる一方、対米国債スプレッドは縮小した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 輸出は、海外経済の拡大基調が続いているものの、中国での景気過熱抑制策の影響とみられる動きなどから、伸び悩んでいる。先行きは、海外経済が米国、東アジアを中心に拡大を続け、IT関連分野での調整圧力も引き続き和らいでいくとみられることから、次第に伸びが高まっていくと予想される。

 企業部門の動向をみると、企業収益が高水準を続ける中、業況感にも再び改善がみられ、設備投資は増加を続けている。先行きの設備投資は、内外需要の増加や高水準の企業収益が続く見込みのもとで、引き続き増加すると予想される。6月短観で2005年度の設備投資計画をみると、製造業大企業が2004年度に続き大幅に増加、非製造業大企業でも近年で最も強い計画であったほか、中小企業も現時点としてはしっかりとした計画となっている。

 生産は、IT関連分野の在庫調整が進むもとで、緩やかな増加傾向にある。4〜5月の鉱工業生産は、全体として横ばい圏内の姿となっているが、一時的に増加した鋼船・化学の反動が影響しており、均してみれば緩やかな増加傾向とみられる。先行きも、内外需要の増加や、IT関連分野の調整進展から、増加基調をたどるとみられる。

 在庫は、長い目でみれば低水準ながら、足もとは横ばいの動きとなっている。電子部品・デバイスの在庫は、4〜5月にやや増加したが、1〜3月の調整進展が大幅であったことや、短観における電気機械の在庫判断DIの改善、さらには地域経済報告等にみられるミクロ情報などをあわせてみれば、基調として在庫調整は着実に進んでいる。

 雇用・所得環境をみると、労働需給を反映する諸指標が改善傾向を続ける中で、雇用者数は増加を続けており、パート比率は緩やかに低下してきている。賃金面では、特別給与が増加傾向にあるほか、所定内給与も、パート比率の動きなどを反映して、このところ小幅ながら上昇に転じており、一人当たり名目賃金の下げ止まりは一段と明確になってきている。こうしたもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続ける可能性が高い。

 個人消費は、底堅く推移している。1〜3月に消費の持ち直しを示す指標が多くみられた後、4月以降も乗用車新車登録台数(除く軽)や家電販売、全国百貨店売上高などが底堅く推移している。先行きも、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、着実な回復を続ける可能性が高い。

 国内企業物価は、原油価格の影響などから上昇している。先行きも上昇基調を続ける可能性が高いが、当面の上昇テンポは鈍化するとみられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基調としては小幅のマイナスとなっており、先行きも、需給環境の緩やかな改善が続くとみられるものの、電気・電話料金引き下げの影響もあって、当面は小幅のマイナスで推移すると予想される。

(2)金融環境

 企業金融を巡る環境は、総じて緩和の方向にある。民間銀行の貸出姿勢は緩和してきており、企業からみた金融機関の貸出態度も、中小企業を含め、引き続き改善している。そうしたもとで、民間銀行貸出は減少幅が緩やかに縮小している。

 資本市場調達については、CP・社債とも良好な発行環境が続いており、CP・社債の発行残高は前年並みか前年をやや上回る水準で推移している。

 マネタリーベース、マネーサプライ(M2+CD)の伸び率は、前年比1%台となっている。

II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

 経済情勢について、委員は、わが国の景気は「踊り場」を脱却したとまでは言い切れないものの、「踊り場」を脱却しつつある、との認識を共有した。

 こうした認識の背景として、(1)輸出は伸び悩んでいる一方で、国内民需は、設備投資が増加を続け、個人消費も底堅く推移していること、(2)IT関連分野の調整は、着実に進捗しているが、依然として完了したと言える段階には達していないこと、が指摘された。複数の委員は、支店長会議等からも、わが国の景気が、地域間格差を伴いつつも、全体として回復を続けていることを確認できたと述べた。

 海外経済に関し、委員は、米国や東アジアを中心に拡大が続いており、今後も景気拡大を続けるとの見方を共有した。ただし、何人かの委員は、原油価格上昇の影響が米国をはじめ世界経済の成長を腰折れさせることがないか、世界的にみられる製造業の生産活動の減速が続くのかどうか、といった点は、引き続き注視していく必要があると述べた。

 米国経済について、何人かの委員は、製造業の生産活動が減速するなど、景気拡大のペースは幾分鈍化しているが、雇用者数や失業率も総じてみれば改善傾向にある等、着実な景気拡大が続いており、先行きも潜在成長率近傍の景気拡大が維持できるのではないか、との認識を示した。

 東アジア経済について、多くの委員は、中国では内外需ともに力強い拡大が続いているほか、NIEs、ASEAN諸国・地域でも、緩やかな景気拡大が持続していると述べた。多くの委員は、中国の輸入の伸びが引き続き大幅に鈍化していることを指摘し、その背景について、基本的には景気過熱抑制策など国内要因に基づく調整圧力が在庫面などに生じているものとみられると述べた。

 こうしたもとで、わが国の輸出は、中国向けを中心に伸び悩んでいるが、先行きは、海外経済が全体として拡大を続けるとみられるもとで、増加基調をたどるとの見方が概ね共有された。一人の委員は、中国の現地在庫の調整も一巡しつつあるとみられること等から、中国向け輸出も遠からず回復するとみられると述べた。ただ、回復後の輸出の伸びについて、ある委員は、世界的なIT関連需要の回復テンポが緩やかと見込まれることも考えると、昨年前半のような高いものとならない可能性が高いとの見方を示した。

 一方、国内民間需要について、委員は、4月の展望レポートの想定より、やや強めに推移しているとの見方で一致した。

 企業収益について、複数の委員は、短観の売上高経常利益率等をみても、高収益が続いていることが確認できたと述べた。ある委員は、短観には原油高が十分に織り込まれていない可能性はあるが、為替は足もとの水準より円高で想定されており、こちらは収益を支える方向に働くと述べ、両者をあわせみると収益計画は実現可能性が高いとの見方を示した。設備投資については、何人かの委員が、短観の結果にも表れているように、高収益が続き、過剰設備も概ね解消する中で、引き続き増加を続けているとの見方を述べた。複数の委員は、非製造業や中小企業の設備投資も強めであり、業種・規模の拡がりがみられると指摘した。

 企業の業況感に関し、何人かの委員は、6月短観をみると、製造業・非製造業ともに幅広い業種で改善してきていると述べた。短観の先行きの業況判断がやや悪化していることについて、ある委員は、足もとの改善と先行きの悪化を均してみると、業況感は横ばいとの評価が適切と述べた。これに対し、一人の委員は、先行きの悪化の程度は軽微であると指摘した。別の委員は、原材料価格の動向が不透明な中で、バブル期のピークを超える利益率をあげている現状をさらに上回る強気の見通しを、企業経営者は、立て難くなっているとみられると述べた。

 委員は、こうした企業部門の好調は、家計部門にも着実に波及しているとの認識を共有した。

 雇用・所得面について、複数の委員は、雇用者数が増加を続け、パート比率が低下に転じる中で賃金も下げ止まっており、雇用者所得が緩やかに増加していると述べた上で、先行きも、企業の雇用過剰感がほぼ払拭される中で、雇用者所得の増加傾向がより明確になるとの見方を述べた。

 何人かの委員は、個人消費について、雇用者所得の増加にも支えられた底堅いものとなっていると指摘した。また、一人の委員は、自動車販売や一部小売業等の好調は、供給側が消費者の嗜好を的確に捉えた結果という面もあると述べた。

 生産・在庫面について、何人かの委員は、1〜3月が高めの伸びとなった後、4月以降も、統計上は横ばいの動きとなっているが、鋼船や化学での振れを均してみると、緩やかな増加傾向にあるとみられると述べた。

 IT関連分野の調整に関して、複数の委員は、鉱工業統計上、足もと電子部品・デバイスの在庫調整がやや後戻りする姿となっていることを指摘した上で、世界の半導体販売額が伸び悩む中、日本の半導体販売額や半導体製造装置の受注の伸びもマイナスであることなどから、調整はやや遅れているとの見方を示した。これに対し、何人かの委員は、企業ヒアリングや支店長会議での報告などのミクロ情報や、短観の業種別の業況判断や在庫判断のほか、NIEs・ASEAN諸国・地域のIT関連輸出の回復等からみて、在庫調整は着実に進捗しているとみられるとの意見を述べた。また、複数の委員は、IT関連分野の調整が続く中であっても、非IT関連の製造業やサービス等の非製造業が好調を続けている点に注目していると述べた。

 物価面について、委員は、国内企業物価は、原油価格の上昇を受けて上昇しており、先行きも上昇基調を続ける可能性が高いが、当面の上昇テンポは鈍化するとの認識を示した。また、消費者物価の前年比については、石油製品価格の動向等から振れはみられるが、基調としては小幅のマイナスで推移しており、先行きについても、電気・電話料金の引き下げの影響などから、当面は、小幅のマイナスで推移するとの見方で一致した。

 その上で、複数の委員は、年末から来年初にかけて、電気・電話料金等の特殊要因が剥落する中で、消費者物価の前年比がプラスに転じる可能性もある、との見通しを示した。さらに、複数の委員は、賃金の状況に幾分変化がみられる中で、先行き、ユニット・レーバー・コストの動きなどの物価を巡る環境にどのような影響が及ぶかに注目していると述べた。

2.金融面の動向

 金融面に関して、複数の委員は、企業の資金繰り判断や企業からみた金融機関の貸出態度判断等からみて、極めて緩和的な金融環境が続いているとの認識を述べた。

 金融資本市場の動向について、複数の委員は、株価は底堅く推移しており、一旦低下していた長期金利も、短観の公表後は、再び上昇に転じていると述べた。また、何人かの委員は、ロンドンでのテロの影響について、ロンドンをはじめ海外市場が落ち着いて推移したこともあって、わが国の金融市場にも特に大きな影響はなかったとの認識を示した上で、今後、金融市場や実体経済に何らかの影響が及ぶことがないかについて、注意深く確認していく必要があると述べた。

3.中間評価

 以上のような経済・物価・金融面の情勢認識を踏まえ、4月の展望レポートで示した「経済・物価情勢の見通し」との関係では、(1)景気は、輸出が中国向けを中心にやや下振れている一方、国内民間需要がやや上振れており、全体としては、先行きも含め、概ね「見通し」に沿った動きとなる、(2)国内企業物価は2005年度は「見通し」に比べて上振れるが、2006年度は、内外の商品市況次第ではあるが、概ね「見通し」に沿ったものとなる、(3)消費者物価は、概ね「見通し」に沿って推移する、との見方が共有された。ある委員は、景気回復のメカニズムが国内民間需要中心へとシフトしていくのかは、今後しっかり確認していきたいと述べた。

 当面の注目すべきリスク要因として、多くの委員は、中国経済の動向と、原油価格上昇の経済・物価への影響について言及した。

 中国経済に関しては、多くの委員が、在庫調整の終了時期が不確実なほか、人民元切り上げを巡る思惑、電力・水をはじめとするインフラ面のボトルネック、労働争議の頻発や日本の対中投資の減速等の懸念材料を指摘し、先行き注意深くみていきたいと述べた。

 また、原油価格の上昇について、何人かの委員は、米国やBRICs等の成長という実需が背景にあるため、原油価格高が長期化する可能性もあると指摘した上で、これが長期化した場合の企業収益や個人消費への影響はどうか、インフレ懸念の高まりや、その下での長期金利の反発等が生じないかどうか、丁寧に点検していく必要があると述べた。

 こうした認識のもと、上振れ・下振れ要因については、引き続き4月の展望レポートで示した3つの要因に注目していくことが適当であるとの合意がみられた。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 当面の金融政策運営について、委員は、消費者物価の前年比が基調的には小幅のマイナスで推移するもとでは、「約束」の条件に沿って、量的緩和政策の枠組みを堅持することが引き続き重要であるという認識を共有した。

 その上で、複数の委員は、金融システム不安が後退するもとで、金融機関の流動性需要が減少し、資金余剰感が強まっている状況を踏まえるとともに、量的緩和政策をより円滑に運営するため、当座預金残高目標を減額することが適当であるとの見解を示した。

 これに対して、大方の委員は、上記の経済物価情勢の判断を踏まえ、「なお書き」を含めて、現在の金融市場調節方針を継続することが適当であるとの見解を述べた。ある委員は、当座預金残高目標の減額は、「引き締め」と受け止められる可能性があり、こうした点を踏まえ、金融経済環境を丁寧に点検していくことが必要との認識を示した。別の委員は、慎重に当座預金残高目標を減額していくことは将来の選択肢の一つと指摘しつつも、景気や物価の現状を踏まえると、現状の金融市場調節方針の継続が適当であると述べた。

 7月下旬から8月初にかけて、国債発行や税揚げ等による資金不足幅の拡大が見込まれることを念頭に置いて、何人かの委員は、調節運営についての意見を述べた。これらの委員は、市場機能への影響に配慮しながら最大限の資金供給努力を行うことを前提に、残高目標値の下限を下回ることもあり得るとの認識を示した。

 また、何人かの委員は、5月の消費者物価指数の前年比がゼロ%となるなど、物価を巡る環境に変化がみられる中で、残高目標の下限を下回った場合、金融市場に一段と思惑が強まる可能性もあると指摘した。その上で、「なお書き」の趣旨が量的緩和政策を円滑に運営していくためのものであることを丁寧に説明するとともに、現在の物価情勢を踏まえれば、(1)当面、金融政策運営の基本スタンスに変化がないこと、(2)量的緩和政策からの「出口」については、「約束」の3つの基準に即して適切に判断していくこと、(3)経済・物価情勢の変化に対しては、機動的かつ柔軟に対応していく方針であること、を情報発信していくことが重要であると述べた。この間、別の委員は、情報発信に当たっては、経済・物価の見方等を丁寧に説明することが大事であり、先行きの政策運営への思惑を生まないよう努める必要があるとの考えを述べた。

IV.政府からの出席者の発言

 会合では、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  •  わが国経済の現状をみると、景気は弱さを脱する動きがみられ、緩やかに回復しているが、デフレは依然として継続している。
      また、景気判断にあたっては、情報通信分野における在庫調整の動きや、高騰を続ける原油価格が経済に与える影響について、引き続き注意深く見極めていくことが重要である。
  •  民間需要主導の景気回復を持続的なものとするとともに、デフレから脱却することが、引き続き重要な政策課題である。
      従って、日本銀行におかれては、現在の政策内容を継続するとともに、現状の量的緩和政策を堅持する姿勢に変更がないことを、市場や国民に引き続き示して頂きたいと考えている。

 また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  •  景気の現状については、弱さを脱する動きがみられ、緩やかに回復している。金融面ではマネーサプライ(M2+CD)の伸び率が1%台で推移しており、物価動向を総合的に勘案すれば依然としてデフレ状況にある。
  •  政府は6月21日に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」を閣議決定したが、平成18年度以降、名目成長率2%程度、あるいはそれ以上の成長経路をたどると見込んだことも念頭におき、経済活力と財政健全化を両立させつつ、民間需要、雇用の拡大に力点を置いて構造改革を加速、拡大し、デフレからの脱却を確固たるものとすることとしている。
  •  日本銀行におかれては、実体経済が緩やかに回復している一方、デフレ克服には結果としてマネーサプライが増加することが不可欠であることから、政府のデフレ脱却への取り組みや経済の展望と整合的なものとなるよう、市場の動向や期待を踏まえつつ、実効性のある金融政策運営を行って頂くよう期待する。

V.採決

 以上の議論を踏まえ、多くの委員は、当面の金融市場調節方針については、当座預金残高目標を30〜35兆円程度とする現在の調節方針について、「なお書き」を含め、現状を維持することが適当である、との考え方を示した。

 これに対し、一人の委員は、当座預金残高目標を現行の「30〜35兆円程度」から「27〜32兆円程度」に引き下げる旨の議案を提出したいと述べた。また、別の委員は、当座預金残高目標を現行の「30〜35兆円程度」から「25〜30兆円程度」に引き下げる旨の議案を提出したいと述べた。

 この結果、以下の議案が採決に付されることになった。

 福間委員からは、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「日本銀行当座預金残高が27〜32兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

  • 賛成:福間委員
  • 反対:福井委員、武藤委員、岩田委員、須田委員、中原委員、春委員、水野委員、西村委員

 水野委員からは、「日本銀行当座預金残高が25〜30兆円程度となるよう金融市場調節を行う。」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

  • 賛成:水野委員
  • 反対:福井委員、武藤委員、岩田委員、須田委員、中原委員、春委員、福間委員、西村委員

 議長からは、会合における多数意見を取りまとめる形で、以下の議案が提出された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添のとおり公表すること。

 日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。

採決の結果

  • 賛成:福井委員、武藤委員、岩田委員、須田委員、中原委員、春委員、西村委員
  • 反対:福間委員、水野委員

福間委員は、(1)当座預金残高目標を引き上げてきた大きな要因である金融システム不安に伴う資金需要は後退していること、(2)巨額の当座預金残高維持は、市場機能回復の障害となるほか、金融規律の低下につながり、ひいては将来の金利変動リスクを高める可能性があること、(3)「約束」に沿ってゼロ金利を継続することにより、景気回復ひいてはデフレからの脱却をサポートすることは十分可能であること、から反対した。

水野委員は、(1)金融機関の流動性需要の減退が顕著になってきたこと、(2)当座預金残高目標の引き下げが量的緩和政策の枠組み変更とは異なることは、市場でも十分に理解されていること、(3)オペ期間の短期化を含め、金融政策運営の正常化を早期に進めなければ将来の金利変動リスクを高める可能性があること、から反対した。

VI.金融経済月報「基本的見解」の検討

 当月の金融経済月報に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が全員一致で決定された。

 この「基本的見解」は当日(7月13日)中に、また、これに背景説明を加えた「金融経済月報」は7月14日に、それぞれ公表することとされた。

VII.議事要旨の承認

 前回会合(6月14、15日)の議事要旨が全員一致で承認され、7月19日に公表することとされた。

以上


(別添)
2005年7月13日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成多数)。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。

以上