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金融政策決定会合議事要旨

(2006年2月8、9日開催分) *

2006年 3月14日
日本銀行

  

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2006年3月8、9日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

(開催要領)

1.開催日時
2006年2月8日(14:00〜15:37)
2月9日( 9:00〜12:14)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 福井俊彦(総裁)
  • 武藤敏郎(副総裁)
  • 岩田一政(  副総裁  )
  • 須田美矢子(審議委員)
  • 中原 眞(  審議委員  )
  • 春 英彦(  審議委員  )
  • 福間年勝(  審議委員  )
  • 水野温氏(  審議委員  )
  • 西村清彦(  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 財務省 杉本 和行 大臣官房総括審議官(8日)
    赤羽 一嘉 財務副大臣(9日)
  • 内閣府 中城 吉郎 内閣府審議官

(執行部からの報告者)

  • 理事平野英治
  • 理事白川方明
  • 理事山本 晃
  • 企画局長山口廣秀
  • 企画局企画役内田眞一
  • 金融市場局長中曽 宏
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局参事役門間一夫
  • 国際局長堀井昭成

(事務局)

  • 政策委員会室長中山泰男
  • 政策委員会室審議役神津多可思
  • 政策委員会室企画役村上憲司
  • 企画局企画役白塚重典
  • 企画局企画役加藤 毅

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節は、前回会合(1月19日、20日)で決定された方針 1に従って運営した。この結果、当座預金残高は、31〜34兆円台で推移した。

2.金融・為替市場動向

 短期金融市場では、無担保コールレート翌日物(加重平均値)は、ゼロ%近傍で推移している。ターム物金利も、総じて低位で安定的に推移している。

 株価は、一部企業の業績発表や景気回復期待の高まりを背景に上昇し、最近では、日経平均株価は16千円台後半で推移している。

 長期金利は、米国金利の上昇や堅調なわが国経済指標などを受けて上昇し、最近では1.5%台後半で推移している。

 円の対米ドル相場は、全般的に堅調な米国経済指標を受けた海外投資家によるドル買いなどから下落し、足許は117〜118円台で推移している。

3.海外金融経済情勢

 米国経済は、家計支出や設備投資を中心に潜在成長率近傍の着実な景気拡大が続いている。この間、既往のエネルギー高から物価は一時的に高い上昇率を示しているが、基調的なインフレ率は緩やかな上昇となっている。

 ユーロエリアでは、景気はなお停滞気味ながら、ユーロ安もあって輸出や生産が持ち直すなど、景気回復に向けた動きが徐々に強まっている。

 東アジアをみると、中国では、内外需とも力強い拡大が続いている。NIEs、ASEAN諸国・地域では、エネルギー高の影響が部分的に顕在化しているが、総じてみれば緩やかな景気拡大が続いている。

 米欧の金融資本市場をみると、長期金利は、市場予想比強めの経済指標の公表などを受けて上昇した。株価は、米国ではもみ合いの展開となったが、欧州では上昇した。エマージング金融資本市場では、ほとんどの国・地域で、通貨や株価が上昇し、対米国債スプレッドが縮小した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 輸出は、海外経済の拡大を背景に、増加を続けている。米国向けは、着実な増加を続けており、10〜12月については、自動車関連を中心に高い伸びとなっている。昨年央まで伸び悩んでいた中国向けは、7〜9月に大幅に増加した後、10〜12月も情報関連や自動車関連を中心に堅調な増加となっている。先行きの輸出についても、海外経済が米国、東アジアを中心に拡大を続けるもとで、増加を続けていくとみられる。

 企業部門の動向をみると、設備投資は引き続き増加している。先行きも、内外需要の増加や高水準の企業収益が続く見込みのもとで、引き続き増加すると予想される。

 家計部門に関し、雇用・所得環境をみると、労働需給に関する諸指標が改善傾向を続ける中、雇用と賃金の改善を反映して、雇用者所得は緩やかな増加を続けている。先行きについても、雇用不足感が出てきていることや、企業収益が高水準を続けるとみられることなどから、雇用者所得は緩やかな増加を続ける可能性が高い。

 個人消費は、指標ごとのばらつきは引き続きみられるが、全体としては底堅く推移している。乗用車の新車登録台数は、昨年後半以降弱い動きが続いてきたが、1月は小型車等を中心に反発した。また、家電販売が順調な増加を続けているほか、全国百貨店売上高も底堅い動きを続けている。一方、旅行取扱額は、均してみれば横這い圏内の動きとなっている。この間、消費者コンフィデンスは改善傾向にある。先行きの個人消費については、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、着実な回復を続ける可能性が高い。

 生産は、昨年央まで統計上の振れもあって一進一退を繰り返してきたが、秋口以降は増加が続いている。10〜12月の生産を業種別にみると、電子部品・デバイスが大幅な増加となっているほか、一般機械や輸送機械も増加している。先行きについては、海外経済の成長が続き、内需の回復基盤もしっかりしていることから、増加基調を続けると考えられる。

 在庫については、素材業種の一部等で高めとなっているが、全体としては概ね出荷とバランスしている。

 国内企業物価は、国際商品市況高や昨年後半における円安などを背景に、上昇を続けている。先行きも、当面は国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比は、10月がゼロ%となった後、11月、12月は前年比+0.1%と若干のプラスで推移している。先行きについては、需給環境の緩やかな改善が続く中、電話料金引き下げの影響が剥落していくこともあって、プラス基調になっていくと予想される。

(2)金融環境

 企業金融を巡る環境は、総じて緩和の方向にある。民間銀行の貸出姿勢は緩和してきており、企業からみた金融機関の貸出態度も引き続き改善している。また、民間の資金需要は下げ止まりつつある。こうしたもとで、民間銀行貸出は増加幅が拡大しており、CP・社債の発行残高も前年を上回る水準で推移している。

 マネタリーベースの伸び率は前年比1%台で推移しており、マネーサプライ(M2+CD)は前年比2%程度の伸びで推移している。

II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

 経済情勢について、委員は、わが国の景気は、着実に回復を続けているとの認識で一致した。多くの委員は、外需と内需、企業部門と家計部門などがバランスのとれた回復を続けており、こうした姿が先行きも続くことが期待できるとの見方を述べた。

 海外経済に関して、委員は、米国や東アジアを中心に拡大が続いており、先行きも拡大を続けるとの見方を共有した。

 米国経済について、多くの委員は、家計支出や設備投資を中心に着実な拡大を続けており、先行きも潜在成長率近傍の拡大を続ける可能性が高いとの認識を示した。何人かの委員は、10〜12月の実質GDP成長率が年率+1.1%と低めの伸びとなったことについて、前期に高い伸びとなった乗用車販売の反動減による個人消費の落ち込み、ハリケーン被害に伴うエネルギー輸入の増加などの一時的な要因や、在庫の増加が予想外に少なかったことが影響したと指摘し、足許の需要動向や雇用環境が改善を続けていることからみて、景気拡大のモメンタムに変調はないとの判断を示した。その上で、何人かの委員は、米国経済の拡大テンポをみていく上では、住宅投資の動向を注意深く確認していく必要があると付け加えた。

 米国の物価動向に関しては、何人かの委員が、食品・エネルギーを除くコア消費者物価について、需給改善や労働生産性の低下によるユニット・レーバー・コストの上昇などを背景に緩やかに上昇していると指摘した。複数の委員は、こうした経済・物価動向のもとで、1月のFOMCにおいて25bpsの利上げが行われたことに触れ、市場関係者の間でも、ほぼ中立的な金利水準に近付きつつあるとの見方が強まっており、今後の米国の金融政策運営が注目されるとの見方を示した。別の委員は、市場では、インフレ懸念がある一方、住宅投資の減退懸念もあり、先行きの金融政策運営に不透明感が広がっていると述べた。

 東アジア経済について、委員は、中国では内外需ともに力強い拡大が続いており、NIEs、ASEAN諸国・地域も総じてみれば緩やかな景気拡大が続いているとの認識を共有した。また、複数の委員は、ユーロエリアでも、ユーロ安による輸出や生産の持ち直しなどから、企業部門を中心に回復に向けた勢いが徐々に強まっていると述べた。

 この間、何人かの委員は、世界経済のリスク要因として、引き続き原油をはじめとする国際商品市況の上昇やこれに伴うインフレ心理の高まりについて注意が必要であると述べた。また、ある委員は、中長期的なリスク要因として、グローバル・インバランスの問題は引き続き注意が必要であると付け加えた。

 わが国経済について、委員は、輸出は海外経済の拡大を背景に増加を続けており、先行きも、増加を続けていく可能性が高いとの見解で一致した。何人かの委員は、昨年央まで伸び悩んでいた中国向けも、夏場に大幅に増加した後、10〜12月も着実に増加しており、増加基調が明確になっていると評価した。また、ある委員は、円の実質実効為替レートが1985年以来の円安水準となっていることも輸出の増加傾向を支えることが期待されると指摘した。

 国内民間需要について、委員は、企業部門の好調が家計部門に波及し、それが個人消費の増加を通じ企業部門に還流する前向きの循環が働いており、内需拡大による回復の自律性が高まっていることが確認できるとの認識を共有した。

 企業部門について、委員は、設備投資は業種・規模を問わず増加を続けており、先行きについても、設備の過剰感が払拭され、高水準の企業収益が続く中で、引き続き増加する可能性が高いとの見方で一致した。ある委員は、企業収益について、かつての増益はリストラ効果を中心とした減収増益であったが、ここ数年の増益の多くは増収増益であり、企業活動の活発化が窺われると敷衍した。

 雇用・所得面について、委員は、有効求人倍率が13年ぶりに1倍台を回復するなど、労働需給が改善を続け、企業に人手不足感も表れている中で、雇用者数、賃金がともに増加し、雇用者所得も緩やかに増加を続けているとの認識を共有した。何人かの委員は、冬季賞与が昨冬・昨夏並みの伸びとなり、所定内給与も一般労働者の賃金上昇を主因に緩やかに増加していることを指摘し、こうした動きが広がっていけば、企業収益の雇用者所得への波及が一段と強まっていくとみられると述べた。

 個人消費について、委員は、底堅く推移していると評価した。先行きについても、雇用・所得環境が改善を続け、消費者コンフィデンスも改善傾向にある中で、着実な回復を続ける可能性が高いとの見方で一致した。ある委員は、消費の底堅さには資産効果も働いているとの見方を示した。一人の委員は、自動車販売の動向や先行きの家計負担の増加等の影響はしっかりと確認していく必要があると付け加えた。

 生産について、委員は、内外の需要が着実に増加するもとで、増加を続けており、先行きも予測指数や企業ヒアリングなどを踏まえると、増加が続くと見込まれるとの見方を述べた。多くの委員は、生産は、これまでは一時的な要因の影響もあって、需要動向に比べて回復が遅れ気味であったが、電子部品・デバイスや輸送機械等を中心に、回復の動きが明確になってきたと付け加えた。何人かの委員は、出荷も高めの伸びとなっていることを指摘した上で、在庫も、素材関連は軽度の調整局面にあるが、電子部品・デバイスが回復局面にあるなど、鉱工業全体でみれば、概ね出荷とのバランスがとれる状況であるとの見方を示した。

 この間、何人かの委員は、米国におけるIT関連分野の労働時間の増加ペースの減速や北米半導体のBBレシオ(受注額を出荷額で割った指数)が1以下に止まっていること等を指摘し、先行きのIT関連分野の生産については、注意深くみていく必要があると指摘した。

 物価面について、多くの委員は、国際商品市況について、原油が地政学的リスクを主な背景に高値圏で推移し、非鉄金属等も上昇を続けていることを指摘した。ある委員は、国際商品市況の高騰には、世界的な過剰流動性も影響している可能性があると付け加えた。国内企業物価について、委員は、国際商品市況高や昨年後半における円安などを背景に上昇を続けており、先行きも上昇を続けるとの見方で一致した。

 消費者物価(全国、除く生鮮食品)について、多くの委員は、10月の前年比がゼロ%となった後、11月、12月は前年比+0.1%と若干のプラスが続いたことに言及した。その上で、何人かの委員は、石油製品や電気・電話料金等の特殊要因を除いたベースは、今のところ前年比ほぼゼロ%程度となっていると指摘した。また、別の委員は、コストの一部を最終財価格に転嫁する動きもみられており、消費者の予想インフレ率が高まるもとでは、こうした動きがさらに広がる可能性があると指摘した。

 先行き1〜3月の物価動向について、委員は、1月の東京の消費者物価(除く生鮮食品)が前年比+0.1%であったことから、1月の全国の前年比は、はっきりとしたプラスになると見込まれると述べ、その後も、需給環境の緩やかな改善が続く中、電話料金引き下げの影響が剥落していくこともあって、はっきりとしたプラスになるとの見方で一致した。さらに、その先の物価動向について、何人かの委員は、一時的な要因に伴う短期的な変動はあるにせよ、需給バランスが改善していくことや、賃金が上昇方向にある中でユニット・レーバー・コストからの下押し圧力が減じていくことを踏まえると、消費者物価の前年比プラス基調が定着していくとの見方を示した。この間、何人かの委員は、サービス関連の価格が下落から緩やかな上昇に転じていることを指摘した上で、今後、春の価格改定期に賃金引き上げを反映させる動きが出てくるのか注目していきたいと付け加えた。また、別の委員は、4月以降の電気料金は、燃料費調整による引き上げの影響もあって、前年を下回る可能性は低いとの見通しを示した。

 一人の委員は、不動産市場の動向に言及し、全般的に上昇しているわけではないが、一部地域では地価・マンション価格共に上昇していると述べ、その動向を注意深くみていきたいと述べた。

2.金融面の動向

 金融面に関して、委員は、極めて緩和的な金融環境が続いているとの認識を共有した。

 何人かの委員は、銀行貸出の増加幅が拡大しており、貸出の改善傾向が続いていることを指摘した。このうち一人の委員は、銀行の貸出姿勢が積極化し、貸出金利も低下基調にあることを踏まえると、量・金利の両面から企業の資金調達環境が好転しており、こうした中で、民間総資金調達がほぼ前年並みに回復し、民間の資金需要は下げ止まりつつあるとの見方を述べた。

 株価について、何人かの委員は、一部企業に対する証券取引法絡みの事件の影響から一時的に下落したが、その後16千円台まで回復していることに触れ、高水準の企業収益や景気の着実な回復という株式市場を巡る基本的な環境に変化がないことを市場が確認していることの表われとの見方を示した。

 長期金利について、複数の委員は、景気の回復に加え、米国長期金利の上昇等もあって、前回会合時に比べ上昇していると述べた。その上で、ある委員は、やや短い年限の金利のボラティリティが高まっていると付け加えた。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 当面の金融政策運営について、委員は、「約束」に沿って、量的緩和政策の枠組みを継続することが適当であるという認識を共有した。

 委員は、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比が10月以降、3ヶ月連続でゼロ%以上となったが、なお小幅のプラスであることから、「安定的にゼロ%以上」となったとは言えず、引き続き、消費者物価指数やその背後にある経済の動きを点検していく必要があるとの認識で一致した。また、枠組みの変更は、あくまで2001年3月に公表した消費者物価指数に基づく約束の基準に沿って、適切に判断していくことが改めて確認された。その上で、何人かの委員は、今後公表される消費者物価指数は、はっきりとしたプラスとなることが予想されるので、「安定的にゼロ%以上となった」と言えるかどうかの判断が、今後これまで以上に重要な局面になってくると述べた。

 こうしたもとで、大方の委員は、「なお書き」を含めて、現在の金融市場調節方針を継続することが適当であるとの見解を示した。これに対して、複数の委員は、景気回復が明確になる中、異例な金融緩和策を継続することは、資源配分に歪みを生じ実体経済に悪影響を与える可能性があることや、解除後には当座預金残高を漸進的に引き下げる方針である旨を今の段階から明確にする趣旨等から、現時点で当座預金残高目標を減額することが適当であるとの見解を示した。

 会合では、金融政策の枠組み変更後の政策運営の考え方についても議論が行われた。

 基本的な考え方としては、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していける可能性が高いとの認識が、委員の間で改めて確認された。一人の委員は、解除後も緩和的な金融環境が続くという意味で、政策は連続線上にあることの市場の理解をさらに求めていくことが大切と述べた。

 その上で、多くの委員は、枠組み変更時において、金融政策運営の透明性をどのように確保していくか、引き続き検討していく必要があると述べた。

 ある委員は、そうした検討に当たっては、望ましい物価上昇率や先行きの金融政策運営に関する基本的な考え方を示すことが考え得ると述べた。別の委員は、再びデフレに戻らない程度の物価上昇率を示すことで、経済・物価の先行き見通しにアンカーを提供することができ、市場における安定的な期待形成にも資するのではないかとの見解を示した。複数の委員は、いわゆるインフレーション・ターゲティングについて、本来は、中長期的に物価目標値の実現を目指すものであり、経済情勢等に応じて柔軟な政策運営を行うことが出来る枠組みとして位置付けられているが、この点の理解がわが国で十分浸透しているか疑問があると述べた。ある委員は、わが国では、過去の経験からも、国民の予想物価上昇率は低く、インフレに対する拒否反応が強いことを意識することが大事であると述べた。別の複数の委員は、望ましい物価上昇率について何らかの数値を示していくのであれば、その際に、政策運営の機動性と柔軟性が確保できるかどうか、という点も踏まえつつ、検討していくことが大事であると述べた。

 こうした議論を通じ、委員は、金融政策運営の透明性確保のための具体的な方法は、今後、諸外国の例も参考にしながら検討していく必要があるが、(1)基本は、金融経済情勢に関する判断と政策運営に関する考え方を丁寧に説明していくことである、(2)その上で、フォワード・ルッキングな視点を組み込んでいく、(3)その際には、透明性と柔軟性のバランスの取れたものとすることが重要である、との認識を共有した。

IV.政府からの出席者の発言

 会合では、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  •  わが国経済の現状をみると、1月27日に公表された12月の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)においても、11月に続き、極めて小幅ながら前年同月比プラスとなり、デフレ脱却に向けた改善がみられるものの、GDPデフレーターなど他の物価関連統計を含め、物価についての基調やその背景を総合的に考慮すると、デフレ状況は、緩やかながら、依然として続いているものと考えられる。
  •  景気回復を持続的なものとするとともに、デフレからの脱却を果たすことは、政府・日銀が一体となって取り組むべき最も重要な政策課題である。これを確実なものとするため、金融政策運営において、デフレ克服に向けて手を緩めることなく取り組んでいただくとともに、経済・物価情勢について総合的に考慮し、慎重な判断をしていただきたいと考えている。
  •  また、金融当局として、金融市場および金利全般に対して十分な目配りをしていただくとともに、金融政策の先行きに関する憶測で市場が不安定になることのないよう、金融政策の考え方を市場や国民に丁寧にご説明願いたいと考えている。

 また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  •  景気の現状については、緩やかに回復している。しかしながら、依然としてデフレの状況は続いており、その克服は引き続き政府・日銀一体となって取り組むべき重要政策課題である。
  •  平成18年度には、デフレ脱却の展望が開けると見込んでいるが、実際の脱却の判断は、消費者物価のみならず、GDPデフレーター等、種々の物価統計をみるとともに、原油価格の高騰等の特殊要因を除いた物価の基調や需給ギャップ等の背景を総合的に考慮して、慎重に行うことが必要である。また、中期的には民間需要主導の持続的な成長と両立するような安定的な物価上昇率を定着させることがマクロ経済財政運営の基礎となる。
  •  日本銀行におかれては、政府の経済の展望と整合性を取り、デフレ脱却の重要性に鑑み、実効性のある金融政策運営を行っていただくよう期待する。その上で、望ましい物価水準およびそこに至る通過点の考え方を含めた今後の道筋の提示をご検討いただき、市場における適切な期待形成を促進することにより、デフレからの脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長に寄与されることを期待する。

V.採決

 以上の議論を踏まえ、多くの委員は、当面の金融市場調節方針については、当座預金残高目標を30〜35兆円程度とする現在の調節方針について、「なお書き」を含め、現状を維持することが適当である、との考え方を示した。

 これに対し、二人の委員は、当座預金残高目標を現行の「30〜35兆円程度」から「27〜32兆円程度」に引き下げる旨の議案を提出したいと述べた。

 この結果、以下の議案が採決に付されることになった。

 福間委員・水野委員からは、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「日本銀行当座預金残高が27〜32兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

  • 賛成:福間委員、水野委員
  • 反対:福井委員、武藤委員、岩田委員、須田委員、中原委員、春委員、西村委員

 議長からは、会合における多数意見を取りまとめるかたちで、以下の議案が提出された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添のとおり公表すること。

 日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。

採決の結果

  • 賛成:福井委員、武藤委員、岩田委員、須田委員、中原委員、春委員、西村委員
  • 反対:福間委員、水野委員

福間委員は、(1)市場機能の回復を図るため、自由な金利形成を促す必要があること、(2)金融政策運営の機動性・柔軟性を高めるため、資金供給オペの短期化を図っていく必要があること、(3)金融政策が効果を発揮するにはある程度の時間を要すること、(4)「約束」に沿ってゼロ金利を継続することにより、物価安定のもとでの持続的な景気回復をサポートすることは十分可能であることから、量的緩和政策の枠組みの維持に支障を及ぼさない範囲で、経済金融情勢、市場の状況を見極めながら漸進的・段階的に当座預金残高目標を削減していくべきであるとして、反対した。

水野委員は、(1)量的緩和政策解除時の市場の安定を図る上では、当座預金残高を短期間で集中して引き下げるのではなく、市場の実勢に合わせて修正に着手することが適当であること、(2)解除のショックを可能な限り小さくするためには、金利を通じた市場との対話が可能な環境を整えていった方が良いこと、(3)当座預金残高目標を引き下げることにより、資産インフレのリスクに対する日本銀行の配慮を示すことが期待できること、(4)当座預金残高目標の小幅引き下げにより解除後の引き下げを漸進的に行う方針を明らかにできることから、反対した。

VI.金融経済月報「基本的見解」の検討

 当月の金融経済月報に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が全員一致で決定された。

   この「基本的見解」は当日(2月9日)中に、また、これに背景説明を加えた「金融経済月報」は2月10日に、それぞれ公表することとされた。

以上

脚注

  1. 「日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。」

(別添)

2006年2月9日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成7反対2)。

 日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。

以上