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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2018年9月18、19日開催分)

2018年11月5日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2018年10月30、31日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2018年9月18日(14:00~15:36)
 
9月19日( 9:00~11:40)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
雨宮正佳 (副総裁)
若田部昌澄(  副総裁  )
原田 泰 (審議委員)
布野幸利 (  審議委員  )
櫻井 眞 (  審議委員  )
政井貴子 (  審議委員  )
鈴木人司 (  審議委員  )
片岡剛士 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 茶谷 栄治 大臣官房総括審議官(18日)
木原 稔 財務副大臣(19日)
 
内閣府 中村 昭裕 内閣府審議官(18日)
越智 隆雄 内閣府副大臣(19日)
(執行部からの報告者)
理事 前田栄治
理事 内田眞一
理事 池田唯一
企画局長 加藤 毅
企画局審議役 中尾根康宏(18日14:45~15:36)
企画局政策企画課長 奥野聡雄
金融市場局長 清水誠一
調査統計局長 関根敏隆
調査統計局経済調査課長 一上 響
国際局長 中田勝紀
(事務局)
政策委員会室長 小野澤洋二
政策委員会室企画役 山城吉道
企画局企画調整課長 飯島浩太(18日14:45~15:36)
企画局企画役 永幡 崇
企画局企画役 東 将人

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(7月30、31日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、長期国債の買入れ等による資金供給を行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は-0.07~-0.05%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、-0.1%台半ばで概ね横ばい圏内の動きとなっている。

株価(日経平均株価)は、企業決算は総じて良好な結果となったものの、米中等の通商政策を巡る不透明感などが重石となり、概ね横ばいの動きとなった。為替相場をみると、円の対ドル相場、対ユーロ相場ともに、トルコリラが急落した局面では、幾分円高方向に振れる場面もみられたが、期間を通してみれば横ばい圏内で推移した。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。先行きについても、着実な成長を続けるとみられる。

米国経済は、拡大している。輸出は、増加基調にある。個人消費は、良好な雇用・所得環境や消費者マインドなどに支えられて増加基調にあるほか、設備投資も、企業収益や業況感の改善などを背景にしっかりと増加している。物価面をみると、総合ベースのインフレ率(PCEデフレーター)は前年比+2%台前半、コアベースは同+2%程度で推移している。先行きの米国経済は、拡張的な財政政策に支えられ、拡大を続けるとみられる。

欧州経済は、幾分減速しつつも回復を続けている。輸出は、既往のユーロ高の影響などから増勢が鈍化している。個人消費は、良好な雇用・所得環境や消費者マインドなどに支えられて増加基調にあるほか、設備投資も増加基調にある。物価面をみると、総合ベースのインフレ率(HICP)は前年比+2%程度、コアベースは同+1%程度で推移している。先行きの欧州経済は、回復を続けるとみられる。この間、英国経済は、インフレ率の落ち着きなどから、緩やかな回復傾向にある。

新興国経済をみると、中国経済は、総じて安定した成長を続けている。物価面をみると、インフレ率(CPI)は、前年比+2%程度で推移している。先行きの中国経済は、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとみられる。NIEs・ASEANでは、輸出が増加基調にあるもとで、企業・家計のマインドは改善しており、内需は底堅く推移している。ロシアやブラジルの景気は、インフレ率の落ち着きなどを背景に緩やかに回復している。インドの景気は、内需を中心に緩やかに回復している。

海外の金融市場をみると、米中等の通商政策を巡る不透明感や、トルコリラの急落を契機とした一部新興国の通貨下落などを背景に、株価を中心に幾分振れのある展開となった。もっとも、アジア新興国の通貨は総じて安定的に推移しており、新興国全体としてみた資本流出は限定的となっている。商品市場では、中東における地政学的リスクなどが意識される中、原油価格は上昇した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。先行きについても、緩やかな拡大を続けるとみられる。

輸出は、海外経済の着実な成長を背景に、増加基調にある。先進国向けは増加基調を続けているほか、新興国向けも幅広く持ち直している。先行きの輸出は、情報関連や資本財を中心に、緩やかな増加基調を続けるとみられる。

公共投資は、高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。先行きについては、2017年度補正予算やオリンピック関連工事などが下支えとなり、高めの水準を維持するとみられる。

設備投資は、企業収益や業況感が改善基調を維持する中で、増加傾向を続けている。法人企業統計で2018年4~6月の売上高経常利益率をみると、製造業大企業における一時的な営業外収益の増加を主因に大幅に上昇し、既往最高となった。こうした中、4~6月のGDPベースの実質設備投資(2次速報値)は、前期比+3.1%と7四半期連続の増加となった。先行指標である機械受注や建築着工・工事費予定額(民間非居住用)は、月々の振れを伴いつつも、増加基調を続けている。先行きの設備投資は、企業収益の改善や緩和的な金融環境などを背景に、当面、増加を続けていくとみられる。

雇用・所得環境をみると、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得もこのところ伸びを高めている。有効求人倍率はバブル期のピークを超えた高い水準で上昇しているほか、失業率も引き続き低水準で推移している。

個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。各種の販売・供給統計を合成した消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、4~6月に前期比で増加した後、7月の4~6月対比も小幅に増加した。先行きの個人消費は、雇用者所得の増加や株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとみられる。

住宅投資は、貸家系の新設住宅着工戸数が節税ニーズの需要一巡などを受けて減少傾向にある一方、持家が足もと増加に転じつつあることから、全体として横ばい圏内で推移している。

鉱工業生産は、内外需要の増加を背景に、増加基調にある。先行きについては、内外需要の増加を反映して、当面はしっかりとした増加を続けるとみられる。

物価面について、国内企業物価(夏季電力料金調整後)を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっており、除く生鮮食品・エネルギーでみた前年比は、足もと0%台前半となっている。先行きについて、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。

予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。長期金利から中長期の予想物価上昇率を差し引いた実質長期金利は、マイナスで推移している。

企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、大幅に緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。資金需要面をみると、設備投資向けなどの資金需要が増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%程度のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、高めのプラスで推移している。企業の資金繰りは、良好である。

この間、マネタリーベースは、前年比で7%程度の伸びを続けている。マネーストックの前年比は、3%程度の伸びとなっている。

II.補完当座預金制度における新規先の取扱い

1.執行部からの説明

補完当座預金制度の円滑な運営を図る観点から、2016年1月積み期以降に新たに補完当座預金制度の対象となった先に対してマクロ加算額を付与する仕組みを設けるため、「補完当座預金制度の利息の計算方法における新規先に関する特則」の制定等を行うこととしたい。

2.委員会の検討・採決

「『補完当座預金制度の利息の計算方法における新規先に関する特則』の制定等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。本件については、会合終了後、執行部より適宜の方法で公表することとされた。

III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、米中等の通商政策を巡る不透明感や、トルコリラの急落を契機とした一部新興国の通貨下落などを背景に、投資家のリスクセンチメントが悪化し、株価を中心に幾分振れのある展開がみられるとの認識を共有した。米国の通商政策について、何人かの委員は、NAFTA再交渉や欧州との交渉が進展する一方、中国との関係では双方歩み寄りの姿勢がみられず、問題が長期化する懸念があると指摘した。新興国を巡る市場の動向について、何人かの委員は、アジア諸国を中心に、多くの新興国経済のファンダメンタルズはしっかりしていることから、全体としてみれば、現時点で新興国からの資本流出は限定的であるとの認識を示した。そのうえで、複数の委員は、米国等における金融政策の正常化が進んでいく中で、トルコやアルゼンチンといった経済に脆弱性を抱える国以外にも、資本流出の動きが波及することがないかどうか、引き続き注視していく必要があると付け加えた。

海外経済について、委員は、総じてみれば着実な成長が続いているとの認識を共有した。複数の委員は、多くの国で内需が増勢を維持しているほか、世界貿易も、幾分減速しつつ回復を続けているとの見方を示した。もっとも、ある委員は、これまで先進国・新興国のバランスよい経済成長がみられてきたが、最近では、きわめて好調な米国経済と、その他の地域とのコントラストが強まってきている点には注意を要すると述べた。海外経済の先行きについて、委員は、着実な成長を続けるとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員は、保護主義的な動きの長期化や、米国金利の上昇による新興国経済への影響といった、海外経済を巡る下振れリスクは、引き続き増大しているとの認識を示した。一人の委員は、米中間の貿易摩擦問題が世界経済に及ぼす影響については、各国の貿易活動に対する直接的なインパクトのみならず、国際金融市場の動揺や企業マインドの悪化という間接的な経路を通じて増幅される可能性にも注意が必要であると付け加えた。これらに加え、何人かの委員は、いわゆるno deal Brexitとなる可能性を含めた、英国のEU離脱交渉の展開や、中東等を巡る地政学的リスクなども、海外経済を巡るリスク要因として挙げられると述べた。

経済の現状と先行きを地域毎にみると、米国経済について、委員は、拡大しているとの認識で一致した。一人の委員は、4~6月の実質GDP成長率が前期比年率4%台に加速する中、8月のISM指数が製造業・非製造業ともに上昇するなど、企業の景況感は改善し続けているとの見方を示した。米国経済の先行きについて、委員は、拡張的な財政政策にも支えられ、拡大を続けるとの見方を共有した。ある委員は、良好な雇用環境を背景に個人消費には勢いがあり、当面、経済の好調は持続するとの見通しを述べた。そのうえで、やや長い目でみれば、株式、住宅、自動車市場等の動きに目を凝らし、経済に過熱の兆候がないかどうか、しっかり点検していく必要があると述べた。

欧州経済について、委員は、幾分減速しつつも回復を続けているとの認識を共有した。ある委員は、企業の業況感改善などから設備投資が増加基調にあるほか、良好な雇用・所得環境に支えられ、個人消費も堅調を維持しているとの見方を示した。欧州経済の先行きについて、委員は、回復を続けるとの認識で一致した。一人の委員は、英国のEU離脱交渉の展開やトルコ経済の不安定な動きには注意を要するが、夏場以降、米欧間の通商交渉が進展したことは、先行きの下振れリスクを減じる明るい材料であると指摘した。別のある委員は、直近8月のサービス業PMIは持ち直しているものの、春先以降、製造業PMIは低下傾向が続いていると指摘したうえで、欧州経済に変調の兆しがないかどうか、よくみていく必要があると述べた。

新興国経済について、委員は、全体として緩やかに回復しているとの認識を共有した。中国経済について、委員は、総じて安定した成長を続けているとの見方で一致した。NIEs・ASEANについて、委員は、輸出が増加基調にあるもとで、企業・家計のマインドが改善しており、内需は底堅く推移しているとの見方で一致した。資源国経済について、委員は、インフレ率の落ち着きなどを背景に、緩やかに回復しているとの認識を共有した。先行きの新興国経済について、委員は、全体として緩やかな回復を続けるとの認識で一致した。このうち中国経済について、委員は、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとの見方を共有した。一人の委員は、米中間の貿易摩擦によって中国経済に対する下押し圧力は高まっており、状況次第では、アジア経済全体にも悪影響を及ぼす可能性もあると述べた。この点に関し、別のある委員は、米国による関税率引き上げは貿易面での懸念材料となりつつあるが、中国政府はこれに応じた景気対策を開始しており、当面、6%台後半の成長は維持し得るとの見方を示した。

以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大しているとの見方で一致した。多くの委員は、実質GDP成長率は、1~3月に一時的にマイナスとなったものの、4~6月は設備投資や個人消費などを中心に大幅なプラス成長に復しており、全体として、内需主導の拡大基調が続いているとの認識を示した。

景気の先行きについて、委員は、緩やかな拡大を続けるとの見方で一致した。このうち、国内需要について、委員は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調を辿るとの認識を共有した。この夏に相次いだ自然災害が景気に与える影響について、多くの委員は、これまでに得られた情報を踏まえると、生産やサプライチェーンに及ぼす影響は限定的である一方、観光業では、直接的な被害が軽微な地域を含め、予約のキャンセルや新規予約の減少がみられていると指摘した。そのうえで、これらの委員は、現時点で、こうした自然災害は、景気の中心的な見通しの修正につながるほどではないものの、風評被害を含め、インバウンド需要や消費者マインドに及ぼす影響については、引き続き、丁寧な情報収集等を続けていくことが大事であると述べた。この間、一人の委員は、先行き、経済の需給が適度に引き締まった状態が続く中、企業において、多様な人材の活用や省力化投資などの構造的な取り組みが進み、これが家計の所得増加や消費拡大につながっていくことが期待されるとの見解を示した。別のある委員は、効果的に経済成長を実現するためには、企業が、生産性が低く利益が上がらない仕事をやめることも必要であるとしたうえで、その際に生じる雇用の問題を軽減するためにも、金融緩和を通じて労働需給をひっ迫させることが大事であるとの意見を述べた。そのうえで、この委員は、実際、「量的・質的金融緩和」のもとで時間当たり労働生産性の上昇率が高まっていると指摘し、この間の新規雇用者の多くが、相対的に生産性が低いと考えられる勤務経験の少ない労働者等であることを踏まえると、既存の労働者の生産性上昇率は、マクロ的に観測される数値よりも高まっている可能性があると述べた。ある委員は、少子高齢化の進行などとも相まって、わが国では、先行き、潜在成長率や自然利子率に低下圧力がかかることが想定されるが、金融緩和の効果を発揮していくためにも、技術革新の一層の推進による生産性向上が必要であると述べた。

輸出の現状について、委員は、豪雨による一時的な生産減少の影響もみられるものの、海外経済の着実な成長を背景に、増加基調にあるとの認識を共有した。先行きの輸出について、委員は、海外経済の着実な成長を背景に、当面、緩やかな増加基調を続ける可能性が高いとの見方で一致した。そのうえで、複数の委員は、輸出は当面、緩やかな伸びを維持するとみられるが、米中間の貿易摩擦の影響など、先行きを巡る不透明感は一頃よりも高まっているとの見方を示した。

公共投資について、委員は、高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しているとの見解で一致した。複数の委員は、オリンピック関連工事などに加え、今夏の自然災害を受けた各種復旧工事も、先行きの公共投資を下支えしていくとの認識を示した。

設備投資について、委員は、企業収益や業況感が改善基調を維持する中で、増加傾向を続けているとの認識で一致した。このことを示す材料として、多くの委員は、4~6月期のGDP設備投資の2次速報値が1次速報値から大幅に上方修正され、製造業、非製造業ともに、前期比でみて大きく増加したことを指摘した。一人の委員は、企業収益の改善やきわめて緩和的な金融環境が維持されるもと、設備投資は、想定よりも強めの増加が続いているとの認識を示した。別のある委員は、強力な金融緩和がもたらした人手不足が、省力化・効率化投資を拡大させていると指摘した。先行きの設備投資について、委員は、企業収益の改善や緩和的な金融環境、成長期待の高まりなどを背景に、増加を続けていくとの見方で一致した。一人の委員は、先行き、設備投資の循環的な減少を極力避けるためには、企業における将来の成長期待が高まっていくことが重要であると述べた。この点に関し、ある委員は、このところ、能力増強投資や研究開発投資の伸びが高まっているが、この背景に成長期待の高まりがあるのかどうか注目していると述べた。

雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得もこのところ伸びを高めているとの認識を共有した。何人かの委員は、失業率が2%台半ばの低い水準で推移する中、有効求人倍率も、バブル期のピークを超えたレベルで上昇しているなど、労働市場は引き続きタイト化していると指摘した。複数の委員は、パートの賃金に比べ、正社員の賃金の伸び率が相対的に低いことを踏まえると、人手不足が深刻化している現場部門に比べ、間接部門では、業種によっては、なおスラックが残っている可能性があるとの見方を示した。

個人消費について、委員は、振れを伴いながらも、緩やかに増加しているとの認識を共有した。先行きの個人消費について、委員は、雇用者所得の増加や株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとの見方で一致した。何人かの委員は、実質GDPベースでみた4~6月の民間消費が、1~3月の前期比マイナスからプラスに転化したほか、消費活動指数も、4~6月に続き、7月も前期比増加となるなど、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費はこのところ堅調に推移していると述べた。この間、別のある委員は、耐久財やサービスは振れを伴いながらも増加している一方、飲食料品や衣料品などの非耐久財は低迷が続いており、依然として個人消費には脆弱性が残っているとの認識を示した。

住宅投資について、委員は、貸家系の新設住宅着工戸数が節税ニーズの需要一巡などを受けて減少傾向にある中、持家が増加に転じつつあり、横ばい圏内で推移しているとの認識を共有した。

鉱工業生産について、委員は、内外需要の増加を背景に、増加基調にあるとの認識を共有した。また、先行きについても、委員は、内外需要の増加を反映して、当面は、しっかりとした増加を続ける可能性が高いとの見方で一致した。そのうえで、複数の委員は、今夏の自然災害によって一時的に減少した生産を、年後半にしっかり挽回し切れるかどうか、現時点では見通し難い面があると述べた。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっているほか、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比も、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどを背景に、0%台前半のプラスにとどまっているとの見方で一致した。そのうえで、委員は、最近の基調的な動きを踏まえると、わが国の物価は、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べ、なお弱めの動きを続けているとの認識を共有した。

先行きについて、大方の委員は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。一人の委員は、春先までの円高効果が剥落していることもあって、足もと財価格の減速が一服していることや、夏季賞与が大幅に増加したことは、物価の改善に向けた明るい材料であると指摘した。ある委員は、労働参加率の上昇や有効な省力化投資には限界があることから、現在のような人手不足が続けば、いずれ賃金の上昇に結びつくとの認識を示した。そのうえで、この委員は、最近の統計上の賃金上昇率は過大とされているが、それを差し引いても賃金は上昇しており、雇用者の増加と合わせた雇用者所得の拡大は、需要増加とコスト上昇の両面から物価の押し上げ圧力になると指摘した。この間、複数の委員は、賃金弾力性の高い高齢者の労働供給が続けば、今後とも、賃金や物価の上昇を全体として抑制する要因になり得ると述べた。このうちの一人の委員は、インターネットやスマートフォンの普及と高齢者のITリテラシーの高まりは、情報収集能力の向上を通じて高齢者の就労を促進しており、こうした動きは一時的なものにとどまらない可能性があると付け加えた。こうした点に関連し、一人の委員は、物価上昇の遅れは、単純な需要不足が原因ではなく、人々の根強いデフレマインドに加えて、労働参加率の上昇や省力化投資による生産性向上に伴う物価抑制効果など、様々な要因によるものであることがわかってきており、先行きの物価を巡る不確実性は、一頃より高まっていると述べた。別のある委員は、わが国では適合的な期待形成メカニズムの影響が大きいことを踏まえると、消費者物価指数の中で大きなウエイトを占める公共料金や家賃、携帯電話通信料といった品目が、需給ギャップにほとんど感応しないという点も、先行きの物価動向を点検するうえで無視できないと指摘した。これらの議論を踏まえ、何人かの委員は、需給ギャップの改善を起点とする物価上昇のモメンタムは維持されているものの、それが人々の物価観を変化させ、予想物価上昇率の高まりとともに、フィリップスカーブの明確な上方シフトにつながるまでには、なお時間がかかるとの認識を示した。

この間、予想物価上昇率について、委員は、横ばい圏内で推移しているとの見方で一致した。大方の委員は、短期的な予想物価上昇率は一頃に比べて幾分上昇しているものの、現実の物価が経済・雇用情勢の改善に比べると弱めの動きを続けていることなどから、中長期的な予想物価上昇率が高まってくるまでに時間を要しているとの認識を共有した。

2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているほか、大企業、中小企業のいずれからみても、金融機関の貸出態度は引き続き積極的であるとの見方を共有した。この間、ある委員は、企業の内部留保が過去最高水準となる中、貸出市場における追加的な借入ニーズは減少しているとしたうえで、構造改革などを通じて、企業の積極的な資金需要を創出していく取り組みも重要であると指摘した。

IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。

金融政策運営にあたって、大方の委員は、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや、値上げに対する家計の慎重な見方が根強い点は注意深く点検していく必要があるが、2%に向けたモメンタムは維持されているとの認識を共有した。この背景として、大方の委員は、(1)マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスなど、物価の上昇を遅らせてきた要因の多くは次第に解消していくと考えられること、(2)中長期的な予想物価上昇率は、このところ横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、徐々に高まると考えられることを挙げた。

続いて、委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。大方の委員は、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。何人かの委員は、現在の強力な金融緩和のもとで、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く続け、2%に向けたモメンタムを途切れさせないことが、経済や金融情勢の安定を確保しつつ、「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することにつながるとの見解を示した。一人の委員は、「物価安定の目標」の実現に資するため、現在の金融政策の運営方針を継続し、経済の好循環を息長く支えていくべきであると述べた。また、別の一人の委員は、現在の強力な金融緩和の効果と副作用をきめ細かく検討しつつ、きわめて緩和的な金融環境を息長く続けていくことが重要であると指摘した。こうした意見に対し、ある委員は、金融緩和の効果は時間とともに減衰し得るため、「物価安定の目標」の早期達成のためには、長期にわたって長短金利を一定水準に誘導するのではなく、むしろ追加緩和によって、政府とともに企業や家計の前向きの行動変化を後押しすることが必要であると述べた。

委員は、7月の金融政策決定会合で決定した「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」についても議論を行った。一人の委員は、前回会合以降、株価や為替相場は総じて落ち着いており、政策金利のフォワードガイダンスを含めた今回の「枠組み強化」は、市場参加者に大きな混乱なく受け止められていると指摘した。こうした中、この委員を含む複数の委員は、市場の一部には、なお、「枠組み強化」の政策意図の分かりづらさを指摘する声もあることから、今回の措置が、金融緩和の副作用への目配りを行いつつ、強力な金融緩和を粘り強く続けるという日本銀行の政策スタンスをより明確にしたものであることを、引き続き丁寧に説明していくことが重要であると述べた。ある委員は、「枠組み強化」の一環として長期金利の変動幅を拡大したことなどを受け、国債市場では、一頃よりもボラティリティが高まっているほか、市場参加者に対するサーベイでも、市場機能度に関する評価が幾分改善していると指摘した。もっとも、この委員を含む何人かの委員は、前回会合以降、国債取引が少なくなる夏場を挟んで2か月程度しか経過していないため、「枠組み強化」が市場に与える影響については、引き続き注意深く点検していく必要があるとの見解を示した。このほか、ETFの買入れについて、ある委員は、8月から9月前半の買入れ実績を眺め、市場参加者の間では、市場の状況に応じてETFを弾力的に買入れることで、リスクプレミアムに効果的に働きかけるという日本銀行のスタンスに対する理解が進んだのではないかとの見方を示した。

この間、委員は、金融政策運営上の留意点について、議論を行った。一人の委員は、プラスの需給ギャップが維持されるような経済環境が続くのであれば、市場機能維持の観点から、現在の金融政策の枠組みを維持しつつ、その柔軟化について将来的に検討する余地があるとの見解を述べた。もっとも、この委員は、現在の物価に関する不確実性を考慮すれば、金融市場や金融システムの状況をしっかりと点検しながら、現行の政策を慎重かつ粘り強く続けることが肝要であると述べた。何人かの委員は、わが国の金融機関は充実した資本基盤を有していることもあり、現時点で金融仲介機能に支障は生じていないが、金融機関の収益動向がその経営体力に及ぼす影響は累積的なものであるため、今後とも、低金利環境の継続が金融機関収益や金融仲介機能に及ぼす影響をしっかりみていく必要があるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、今後、収益の確保を目指して金融機関が過度なリスクテイクを進め、それらのリスク性資産が不良化した場合には、資本基盤が毀損して金融仲介機能が低下し、ひいては、持続可能な経済成長を阻害するリスクも高まると述べた。そのうえで、この委員は、より長期的な視点から、金融面の不均衡の有無や先行きの動向を、慎重に点検していくことが重要であると指摘した。この点に関連し、ある委員は、大規模な金融緩和に伴う金融面での副作用を考慮すると、その長期化にも限界があると考えられるため、金融政策の時間軸について、政策委員の間で議論を深めておくべきではないか、との意見を述べた。このほか、別のある委員は、金融機関収益を改善させるために金利を引き上げるべきとの声もあるが、現状で金利だけが上昇しても、景気悪化に伴うクレジットコストの上昇により収益が悪化するリスクが高いことから、金利は物価上昇と資金需要の回復に応じて上昇することが望ましいとの見解を示した。これらの議論を踏まえ、一人の委員は、現在のように、景気は着実に拡大する一方、2%の実現には時間がかかっている複雑な状況のもとでは、様々な情勢を総合的に勘案して政策を運営することが重要であると指摘したうえで、強力な金融緩和を粘り強く続けていけるよう、政策の効果と副作用をバランスよく考慮していくことが大切であると述べた。

このほか、委員は、金融政策運営に関する情報発信のあり方についても議論を行った。一人の委員は、地方の有効求人倍率や中小企業の収益、雇用者報酬等が改善しているにもかかわらず、金融緩和の効果が地方経済や中小企業、個人に行き届いていないとの指摘があるため、引き続き、金融政策の考え方や効果を丁寧に説明していくことが必要であると述べた。また、一人の委員は、政策運営にあたっては、様々な経済・物価の下振れリスクへの備えが重要であり、特に予想物価上昇率の動向を重視していると述べたうえで、人々のインフレ予想にも効果的に働きかけられるよう、各種の学術研究も参考にしながら、情報発信の方法を常に改善していく必要があると指摘した。ある委員は、日本銀行が、あたかも物価上昇さえ達成できればよいと考えていると誤解されているケースが少なくないとしたうえで、こうした点も意識した適切なコミュニケーションを続けていくことが、金融政策に対する信認を確保し、結果として、2%の実現に向けた政策の自由度を高めることにもつながるとの見解を示した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

これに対し、ある委員は、長期金利がある程度変動しうるとすることは、政策委員会が決定する金融市場調節方針として曖昧であるため、オペの運営次第では金利が必要以上に上昇し、現在のイールドカーブ・コントロールが想定している効果を阻害するおそれがあるとの意見を述べた。別のある委員は、物価の現状等を考慮すると、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を達成するために現時点で金融緩和を強化すべきであり、10年以上の国債金利を一段と引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとすること、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持すること、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、大方の委員は、(1)2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、(2)マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、(3)政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する、(4)今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行うとの方針を共有した。

これに対し、ある委員は、政策金利については、物価目標との関係がより明確となるガイダンスを導入する方が望ましいと述べた。別の一人の委員は、オーバーシュート型コミットメントを強化し、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点からは、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には、何らかの追加緩和手段を講じるというコミットメントを追加する必要があると述べた。

V.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 今般の台風21号および北海道胆振東部地震については、政府や関係機関が一丸となって、被災者の避難生活への支援や応急復旧に努めている。また、重要インフラの早期復旧に向けて全力を挙げている。財政当局としても、関係省庁と緊密に連携し、引き続き、必要な財政措置を講じていく。
  • 平成31年度予算の概算要求を8月末に締め切り、今後、年末に向けて予算編成を行っていく。同予算は、「新経済・財政再生計画」のもとで編成する初年度の予算であり、引き続き、手を緩めることなく、本格的な歳出改革に取り組んでいく。
  • 平成31年10月の消費税率の引き上げを控え、引き上げが可能な経済状況を作っていくことが重要である。引き上げに伴う需要変動への対応等については、予算編成過程において具体策をしっかりと検討していく。
  • 日本銀行には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、引き続き経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  • わが国の景気は、緩やかに回復している。2018年4~6月期のGDP2次速報では、実質成長率は前期比+0.7%、年率換算値は+3.0%と2四半期振りのプラス成長となり、名目GDPは552.8兆円と過去最高を更新した。個人消費が2四半期振りのプラスに転じたことに加え、民間設備投資が2015年1~3月期以来の高い伸びとなるなど、民需の増加に支えられた経済成長となっている。
  • 先行きのリスクとしては、通商問題の動向が世界経済に与える影響や海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。また、相次いでいる自然災害が経済に与える影響にも十分留意する必要がある。物価動向の判断には、GDPデフレーターを含め、各種物価指標を総合的にみることが重要である。
  • 自然災害の被災者の生活支援および被災地の復旧・復興を全力で進めていく。また、潜在成長率を引き上げて、日本経済を新たな成長軌道に乗せていくため、「人づくり革命」や「生産性革命」に最優先で取り組むべく、「骨太の方針2018」および「未来投資戦略2018」に指示された具体策を、迅速かつ着実に実行していく。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて金融緩和を着実に推進していくことを期待している。

VI.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
原田委員、片岡委員

原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、物価が伸び悩む現状や今後のリスク要因を考慮すると、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する、との資産買入れ方針とすることを内容とする議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員
反対:
なし

VII.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)の検討

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、原田委員からは、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとの意見が表明された。また、片岡委員からは、(1)消費者物価の前年比について、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとの意見、および、(2)2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、長短金利維持のコミットメントではなく、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが適当であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

VIII.議事要旨の承認

議事要旨(2018年7月30、31日開催分)が全員一致で承認され、9月25日に公表することとされた。

以上


  • 「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」 本文に戻る

別紙

2018年9月19日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. (1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。
      2. (2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。
  2. わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。そうしたもとで、輸出は増加基調にある。国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が改善基調を維持するなかで、増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。
  3. 先行きのわが国経済は、緩やかな拡大を続けるとみられる。国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も、海外経済の着実な成長を背景として、基調として緩やかな増加を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる(注2)
  4. リスク要因としては、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが挙げられる。
  5. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している(注3)。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:原田委員、片岡委員。原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、物価が伸び悩む現状や今後のリスク要因を考慮すると、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、消費者物価の前年比は、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして反対した。 本文に戻る
  3. (注3)原田委員は、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。片岡委員は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、長短金利維持のコミットメントではなく、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが適当であるとして反対した。 本文に戻る

  1. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。 本文に戻る