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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2019年12月18、19日開催分)

2020年1月24日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2020年1月20、21日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2019年12月18日(14:00から16:15)
 
12月19日( 9:00から11:38)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
雨宮正佳 (副総裁)
若田部昌澄(  副総裁  )
原田 泰 (審議委員)
布野幸利 (  審議委員  )
櫻井 眞 (  審議委員  )
政井貴子 (  審議委員  )
鈴木人司 (  審議委員  )
片岡剛士 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 神田 眞人 大臣官房総括審議官(18日)
遠山 清彦 財務副大臣(19日)
 
内閣府 田和 宏 内閣府審議官(18日)
宮下 一郎 内閣府副大臣(19日)
(執行部からの報告者)
理事 前田栄治
理事 内田眞一
理事 池田唯一
企画局長 加藤 毅
企画局審議役 藤田研二(18日14:45から16:15)
企画局政策企画課長 飯島浩太
金融市場局長 清水誠一
調査統計局長 神山一成
調査統計局経済調査課長 川本卓司
国際局長 中田勝紀
(事務局)
政策委員会室長 松下 顕
政策委員会室企画役 山城吉道
企画局企画調整課長 矢野正康(18日14:45から16:15)
企画局企画役 長江真一郎
企画局企画役 稲場広記

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(10月30、31日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、長期国債の買入れ等による資金供給を行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は-0.07から-0.01%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、幾分上昇する局面もみられたが、期間を通してみれば概ね前回会合時点と同水準となっている。

株価(日経平均株価)は、海外株価上昇の動きに連れて上昇し、最近では、24千円程度で推移している。為替相場をみると、円の対ドル、対ユーロ相場は幾分円安方向の動きとなっている。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長している。先行きについては、成長ペースの持ち直しにはやや時間を要するものの、その後は、各国のマクロ経済政策の効果発現やIT関連財のグローバルな調整の進捗などを背景に成長率を高め、総じてみれば緩やかに成長していくとみられる。

米国経済は、製造業部門に弱めの動きがみられるが、緩やかに拡大している。個人消費は、良好な雇用・所得環境や消費者マインドなどに支えられて、増加している。一方、米中貿易摩擦の影響などから輸出は横ばい圏内の動きにとどまっているほか、製造業の業況感悪化などを背景に、設備投資は弱めの動きが続いている。物価面をみると、インフレ率(PCEデフレーター)は、総合ベース、コアベースともに、前年比+1%台半ばで推移している。先行きの米国経済は、米中貿易摩擦の影響が残るものの、緩和的な金融環境などに支えられ、緩やかな拡大を続けるとみられる。

欧州経済は、減速した状態が続いている。輸出は、弱めの動きが続いている。設備投資は、製造業の業況感が悪化していることなどを背景に、横ばい圏内の動きにとどまっている。個人消費は、良好な雇用・所得環境や消費者マインドなどに支えられて、総じてみれば増加基調にある。物価面をみると、インフレ率(HICP)は総合ベース、コアベースともに前年比+1%近傍で推移している。先行きの欧州経済は、製造業部門の調整進捗に伴い、次第に減速した状態から脱していくと予想される。この間、英国経済は、EU離脱を控えた動きの影響などから、弱含んでいる。

新興国経済をみると、中国経済は、総じて安定した成長を続けているものの、製造業部門では引き続き弱さもみられている。物価面をみると、インフレ率(CPI)は、前年比+4%台で推移している。先行きの中国経済は、米中貿易摩擦や当局による債務抑制政策の影響を相応に受けるものの、当局がマクロ経済政策を段階的に実施するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとみられる。NIEs・ASEANでは、輸出が中国向けを中心に弱めの動きとなっている一方、良好な消費者マインドやマクロ経済政策の効果などから、国内需要は底堅く推移している。ロシアやブラジルの景気は、インフレ率の落ち着きなどを背景に、緩やかに回復している。インドの景気は、個人消費や設備投資などが弱めの動きとなっていることから、減速が続いている。

海外の金融市場をみると、米欧の株価や長期金利は、米中通商交渉の進展や堅調な米国経済指標等を受けた市場センチメントの改善を背景に、いずれも上昇している。原油価格は、OPECにおける減産合意などを背景に上昇している。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。先行きについては、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。

輸出は、弱めの動きが続いている。情報関連が増加基調にあるものの、自動車関連ははっきりと減少しており、資本財は基調としては弱めの動きを続けている。先行きの輸出は、海外経済の成長ペースの持ち直しにやや時間を要するもとで、当面は、弱めの動きが続くと予想されるものの、その後は、海外経済の成長率の高まりに伴い、緩やかな増加基調に復していくとみられる。

公共投資は、緩やかに増加している。先行指標である公共工事請負金額や公共工事受注高は、振れを伴いつつも緩やかな増加傾向にある。先行きについては、国土強靱化関連工事やオリンピック関連工事、自然災害関連の復旧・復興工事などを中心に、緩やかな増加を続けるとみられる。

企業収益は、一部に弱めの動きがみられるものの、総じて高水準で推移している。業況感は、製造業がはっきりと慎重化している一方、非製造業は総じて良好な水準を維持している。設備投資は、増加傾向を続けている。資本財総供給は、海外経済減速の影響などから増勢が幾分鈍化している。建設工事出来高(民間非居住用)は、いったん増勢が鈍化しているが、やや長い目でみれば増加基調を続けている。先行きの設備投資は、当面、海外経済の減速の影響から製造業の機械投資を中心に幾分減速すると見込まれるが、やや長い目でみれば緩和的な金融環境などを背景に、緩やかに増加していくとみられる。

雇用・所得環境をみると、労働需給は引き締まった状態が続いており、雇用者所得も増加している。12月短観の雇用人員判断DIは、非製造業を中心に人手不足感のかなり強い状態が続いている。失業率は今次景気拡大局面のボトム近傍で推移している。有効求人倍率は、昨年末以降、海外経済の減速の影響から小幅に低下しているが、バブル期のピークを超えた高水準を維持している。

個人消費は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかに増加している。各種の販売・供給統計を合成した消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、10月は消費税率引き上げ後の需要減に加え、台風19号などの自然災害の影響もあって、大きめのマイナスとなっている。先行きの個人消費は、当面、消費税率引き上げなどの影響による下押しが続くと見込まれる。ただし、各種の家計支援策や雇用・所得環境の改善が下支えとして作用するもとで、前回の消費税率引き上げ時と比べて、落ち込みは小幅なものにとどまり、個人消費の増加基調は維持されると考えられる。

住宅投資は、横ばい圏内で推移している。新設住宅着工戸数をみると、持家は、前回の消費税率引き上げ時より小幅ながら、需要減が生じている。分譲は、大型物件による振れを伴いつつ横ばい圏内で推移している。この間、貸家は、節税・資産運用目的の需要減退や金融機関の融資姿勢の慎重化などを背景に、減少傾向を続けている。

鉱工業生産は、海外経済の減速の動きが続くもとで、自然災害などの影響もあって、足もとでは減少している。先行きについては、当面は、輸出の弱さや消費税率引き上げの影響から下押しされると予想されるものの、その後は、自然災害の影響からの挽回生産が行われるもとで、消費税率引き上げの影響が和らぎ、輸出が次第に持ち直すと考えられることから、緩やかな増加に転じていくとみられる。

物価面について、国内企業物価(夏季電力料金調整後)の3か月前比を消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、下落幅が縮小している。消費者物価の前年比は、除く生鮮食品は0%台半ば、除く生鮮食品・エネルギーは0%台後半となっている。先行きについて、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、景気の拡大基調が続くもとで、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。

予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。長期金利から中長期の予想物価上昇率を差し引いた実質長期金利は、マイナスで推移している。

企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、大幅に緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。資金需要面をみると、設備投資向けや企業買収関連などの資金需要が増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、8%台後半の高めのプラスで推移している。企業の資金繰りは、良好である。

この間、マネタリーベースは、前年比で3%台前半の伸びとなっている。マネーストックの前年比は、2%台後半の伸びとなっている。

II.ETF貸付制度の導入について

1.執行部からの説明

4月の金融政策決定会合において決定された方針に従い、強力な金融緩和の継続に資する諸措置の一つとして、ETF市場の流動性の向上を図る観点から、日本銀行が保有するETFを市場参加者に一時的に貸し付けることを可能とする制度を導入することとしたい。

2.委員会の検討・採決

上記を内容とする「『指数連動型上場投資信託受益権の貸付けに関する特則』の制定等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。本件については、会合終了後、対外公表することとされた。

III.貸出増加支援資金供給の見直しについて

1.執行部からの説明

貸出増加支援資金供給に関して、本制度のもとでこれまで貸出を増加させてきた金融機関を引き続き支援することで、強力な金融緩和の継続に資するよう、一定の条件のもとで借り換えを可能とするための基本要領の一部改正等を行うこととしたい。

2.委員会の検討・採決

上記を内容とする「『貸出支援基金の運営として行う貸出増加を支援するための資金供給基本要領』の一部改正等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。本件については、会合終了後、対外公表することとされた。

IV.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、米中通商交渉や英国のEU離脱問題の進展、米国の堅調な経済指標などを受けて、投資家のリスクセンチメントは改善しており、多くの国・地域で株価や長期金利が上昇し、為替相場は幾分円安方向で推移しているとの認識を共有した。複数の委員は、やや長い目でみて為替相場が安定的に推移していると述べた。このうち一人の委員は、今年のドル/円レートの変動幅は、変動相場制移行後の最低水準となりそうだと述べたうえで、輸出よりもドル建て比率の高い輸入や、M&Aを含む対外直接投資の増加などに伴う実需の円売りが、投機的な円買いによる為替レートの動きを抑制している可能性があるとの見方を示した。この間、ある委員は、高値圏の株価と比較的抑制された水準の長期金利が共存する状況の持続可能性については注視していく必要があると指摘した。

海外経済について、委員は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。多くの委員は、グローバルな製造業PMIが4か月連続で改善し、11月には節目の50を上回ったほか、IT関連財の受注・在庫バランスも改善するなど、好転の兆しがみられるとの認識を示した。もっとも、このうち複数の委員は、こうした底打ちの兆しはソフトデータではみられているものの、ハードデータでは、まだはっきりと回復に向かう姿はみえていないと指摘した。海外経済の先行きについて、委員は、成長ペースの持ち直しにはやや時間を要するものの、その後は、各国のマクロ経済政策の効果発現やIT関連財のグローバルな調整の進捗などを背景に成長率を高め、総じてみれば緩やかに成長していくとの認識を共有した。多くの委員は、米中通商交渉や英国のEU離脱問題を巡り、一定の進展がみられたことはポジティブな材料であると述べた。もっとも、このうちの何人かの委員は、米中通商交渉を巡っては、部分合意について両国で解釈が異なる部分や産業政策のように合意に至っていない部分があるなど、不透明感はなお残存していると述べた。そのうえで、委員は、海外経済を巡る下振れリスクは引き続き大きいとみられるとの認識を共有した。一人の委員は、下振れ方向だけでなく、上振れ方向でも、リスクプロファイルが変化しているとの見方を示した。

経済の現状と先行きを地域毎にみると、米国経済について、委員は、製造業部門に弱めの動きがみられるが、緩やかに拡大しているとの認識で一致した。複数の委員は、ISM指数は、製造業、非製造業とも市場予想を下回る内容だったが、雇用統計は労働需給の引き締まりを示しているほか、消費者マインドも良好な状態を維持しており、個人消費を中心に成長する姿が続いていると指摘した。別の複数の委員は、雇用の増加が続く中、クリスマス商戦も順調な出だしとなったようだと述べた。米国経済の先行きについて、委員は、米中貿易摩擦の影響が残るものの、緩和的な金融環境などに支えられ、緩やかな拡大を続けるとの見方を共有した。複数の委員は、これまでのFRBによる政策金利引き下げも先行きの景気拡大に寄与していくだろうと述べた。

欧州経済について、委員は、減速した状態が続いているとの認識を共有した。何人かの委員は、雇用・所得環境や消費者マインドは良好さを維持しており、非製造業の比率の大きいフランスやスペイン経済には堅調さがみられるものの、ユーロ圏の製造業PMIが50を下回り続けるなど、ドイツを中心に、生産・輸出が弱めの動きを続けており、回復の兆しはみえないと指摘した。欧州経済の先行きについて、委員は、製造業部門の調整進捗に伴い、次第に減速した状態から脱していくとの認識で一致した。ある委員は、欧州経済に占めるウエイトの大きさ、貿易依存度の高さ、中国との経済的結びつきの強さなどから、特に、ドイツの今後の動向を注視していると述べた。

中国経済について、委員は、総じて安定した成長を続けているものの、製造業部門では引き続き弱さもみられているとの見方で一致した。もっとも、何人かの委員は、製造業PMIが7か月ぶりに50を上回ったほか、工業生産も市場予想を上回る伸びとなるなど、製造業部門に底打ちの気配もみられていると指摘した。ある委員は、米中通商交渉に進展がみられたことも、こうした動きに寄与していると述べた。中国経済の先行きについて、委員は、米中貿易摩擦や当局による債務抑制政策の影響を相応に受けるものの、当局がマクロ経済政策を段階的に実施するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとの見方を共有した。何人かの委員は、米中通商交渉の進展はプラス材料としつつも、中国経済の回復は緩やかなものにとどまるのではないかと述べた。

新興国経済について、委員は、一部新興国で減速がみられているものの、総じてみれば景気の回復基調を維持しているとの認識を共有した。NIEs・ASEANについて、委員は、輸出は中国向けを中心に弱めの動きとなっているものの、良好な消費者マインドや景気刺激策の効果などから、内需は底堅く推移しているとの見方で一致した。ある委員は、韓国や台湾のIT関連財の実質輸出の前年比伸び率が復調してきており、ITサイクルの進展が指標でも示されていると述べた。一人の委員は、一部の国では、国際収支の動向等が懸念される状況であるが、多くの国で景気刺激策が打ち出されていることもあり、全体としてみればその影響は限定的であると指摘した。先行きの新興国経済について、委員は、各国のマクロ経済政策の効果発現もあって、全体として成長率が高まっていくとの認識で一致した。ある委員は、世界経済の動向と景気刺激策の効果に加え、海外からの資本流入の持続可能性が、回復の動きを左右すると述べた。

以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大しているとの認識で一致した。複数の委員は、海外経済の減速に加え、消費税率引き上げや自然災害の影響もあって、生産や消費関連を中心に、弱めの指標が増えていると指摘した。もっとも、多くの委員は、わが国の内需は底堅く、これまでのところ、海外経済減速による影響の波及は限定的であると指摘したうえで、所得から支出への前向きの循環という景気拡大の基本的なメカニズムは維持されているとの認識を示した。多くの委員は、12月短観の結果は、こうした見方を裏付けるものであったと指摘した。

景気の先行きについて、委員は、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、基調としては緩やかな拡大を続けるとの見方で一致した。このうち、国内需要について、委員は、きわめて緩和的な金融環境や積極的な政府支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調を辿るとの認識を共有した。もっとも、何人かの委員は、海外経済の減速や消費税率引き上げの影響等には引き続き注意が必要であると指摘した。このうち一人の委員は、米中通商交渉の部分合意や英国総選挙結果を受けて、目先の不透明要因が幾分剥落した一方、消費税率引き上げや自然災害による経済の下押しもあり、全体として楽観できない情勢が続いていると述べた。ある委員は、所得から支出への好循環の前提である、海外経済の改善、雇用者所得の増大に加え、消費税率引き上げにより消費性向が低下しないかを見極めることが重要となると述べた。複数の委員は、海外経済に持ち直しの兆しがみられ始めていることや、新たな経済対策が策定されたことは、ポジティブな材料であり、先行きの景気拡大をサポートしていくとの見方を示した。

輸出の現状について、委員は、弱めの動きが続いているとの認識を共有した。先行きの輸出について、委員は、海外経済の成長ペースの持ち直しにやや時間を要するもとで、当面は、弱めの動きが続くと予想されるものの、その後は、海外経済の成長率の高まりに伴い、緩やかな増加基調に復していくとの見方を共有した。複数の委員は、海外経済の回復が小幅なものにとどまったり、下振れたりするリスクを踏まえると、輸出の先行きは楽観視できず、引き続き海外経済の動向を注視する必要があると述べた。

公共投資について、委員は、緩やかに増加しているとの見解で一致した。複数の委員は、一致指標の公共工事出来高、先行指標の公共工事請負金額ともに増加するなど、公共投資を含めた内需が成長を支える姿がより鮮明になってきていると述べた。先行きの公共投資について、委員は、国土強靱化関連工事やオリンピック関連工事、自然災害関連の復旧・復興工事などを中心に、増加するとの認識を共有した。複数の委員は、政府が策定した経済対策を踏まえると、しばらくは増加が続くとの見解を示した。

設備投資について、委員は、増加傾向を続けているとの認識で一致した。多くの委員は、12月短観における2019年度の設備投資計画は、海外経済の減速の影響がこれまでのところ限定的であり、企業が引き続き省力化や研究開発等などに取り組んでいることを示す、しっかりとした内容であったと指摘した。先行きの設備投資について、委員は、当面、海外経済の減速の影響から製造業の機械投資を中心に幾分減速すると見込まれるものの、やや長い目でみれば緩和的な金融環境などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。何人かの委員は、機械受注などの先行指標がこのところ弱めである点は気がかりだと述べた。このうち、一人の委員は、先行指標の弱めの動きと堅調な短観の設備投資計画をどのように整合的に理解するかは論点であると述べた。これに対し、複数の委員は、機械受注は、企業収益が高水準を維持する中で、企業がソフトウェア投資や研究開発投資を安定的に増加させてきているという設備投資全体の基調を、必ずしも捉え切れていない可能性があると指摘した。

雇用・所得環境について、委員は、労働需給は引き締まった状態が続いており、雇用者所得も増加しているとの認識を共有した。ある委員は、失業率が幾分上昇したほか、有効求人倍率も僅かながら低下しており、労働需給に変調がないか懸念されると述べた。これに対し、複数の委員は、失業率は確かに重要な指標ではあるが、就業者数や雇用者数が増加していることや、離職者も自己都合が多いことなどを踏まえると、懸念すべき動きとまではいえないのではないかと指摘した。この間、複数の委員は、企業収益は高水準ながら、製造業を中心に減益が予想されることを踏まえ、これが冬季賞与にどのように影響するかを注視していると述べた。

個人消費について、委員は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかに増加しているとの認識を共有した。ある委員は、自然災害の影響もあって、自動車販売や百貨店売上高などの指標には弱めの動きがみられるが、個人消費を取り巻く環境をみると、雇用・所得環境は良好であるほか、消費者マインドも幾分改善しており、個人消費の底堅さに変調をきたしているとみる必要はないと述べた。もっとも、ある委員は、前回の消費税率引き上げ後、消費や短観における小売業の業況判断の持ち直しに3年程度を要したと指摘したうえで、今回も停滞の始まりの可能性もあると述べた。これに対し、別のある委員は、前回の消費税率引き上げ後に消費の停滞が長引いた点については、所謂「チャイナ・ショック」など、消費税以外のショックによって個人消費が抑制されたことも勘案して評価する必要があると指摘した。先行きの個人消費について、委員は、当面、消費税率引き上げなどの影響による下押しが続くと見込まれるものの、基調としては、各種の家計支援策や雇用者所得の増加に支えられて、緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。複数の委員は、消費税率引き上げの実質所得効果が徐々に表れてくる可能性があることも踏まえると、今後のデータを精査するとともに、ミクロ面からもしっかりと点検していく必要があると述べた。

住宅投資について、委員は、横ばい圏内で推移しているとの認識で一致した。また、委員は、住宅投資の先行指標である新設住宅着工戸数の消費税率引き上げ前後の振幅は、前回の消費税率引き上げ時との対比で抑制されており、横ばい圏内の動きが続いているとの認識を共有した。

鉱工業生産について、委員は、海外経済の減速の動きが続くもとで、自然災害などの影響もあって、足もとでは減少しているとの認識を共有した。先行きの生産について、委員は、当面は、輸出の弱さや消費税率引き上げの影響から下押しされると予想されるものの、やや長い目でみれば、海外経済の成長率の高まりなどに伴い、次第に緩やかな増加に転じていくとの見方で一致した。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっているほか、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比も、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどを背景に、0%台後半のプラスにとどまっているとの見方で一致した。そのうえで、委員は、消費者物価の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いているとの認識を共有した。何人かの委員は、市況は好転しているが、内外経済のリスクは高止まりしており、景況感も慎重化する中で、上昇・下落品目比率や刈込平均値などが幾分低下していると付け加えた。もっとも、多くの委員は、これまでのところ、景気の拡大基調が続き、プラスの需給ギャップが維持されるもとで、物価が徐々に上昇していく基本的なメカニズムは引き続き作動しているとの認識を示した。一人の委員は、需給ギャップには推計誤差があり、日本銀行の推計値と他機関の推計値の最近の動きには違いがみられる点には留意が必要だと述べた。これに対し、ある委員は、需給ギャップの推計値は、あくまで推計であり、大きな傾向をとらえることが重要であると述べた。そのうえで、この委員は、こうした推計値に加え、短観の雇用・設備判断DIや、賃金・物価が小幅ながらも上昇していることなどから総合的に判断すると、今の日本経済はある程度の需要超過にあるとみてよいとの見方を示した。一人の委員は、外食などでは、消費税率引き上げに合わせて幅広く価格を引き上げる動きがみられているほか、12月短観における消費関連業種の販売価格判断DIもプラスを維持しており、賃金コストなどの上昇圧力が強い中、企業が価格設定スタンスを徐々に積極化していく流れは続いているとの認識を示した。別のある委員は、家賃は、全国CPIに対して長い間下押し要因となっていたが、足もとでは約11年振りにマイナスがほぼ解消されており、長期的な物価の基調にも影響を与え始めているのではないかと述べた。

先行きについて、大方の委員は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。ある委員は、堅調な設備投資に伴う生産性向上効果などもあり、上昇率が抑制された状態が続いているため、生産性上昇の余地が縮小し、物価が徐々に上昇率を高めるまで、緩やかなプラスの需給ギャップを維持することが肝要であると述べた。この間、一人の委員は、消費者物価の前年比が先行き2%に向けて上昇率を高めていく可能性は低く、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが維持されているとは言いがたいと述べた。

予想物価上昇率について、委員は、横ばい圏内で推移しているとの見方で一致した。複数の委員は、家計の短期の予想インフレ率は10月以降、消費税率引き上げ要因により低下していると指摘した。このうち、一人の委員は、こうした傾向が続くと、中長期の予想インフレ率にもネガティブな影響が及ぶのではないかと懸念していると述べた。これに対し、一人の委員は、中長期のインフレ予想に大きな変化はみられておらず、企業が賃金などのコスト上昇を価格に転嫁する動きは続いているほか、家計についても、マインドの大幅な悪化や低価格志向の強まりといった動きはみられていないと指摘した。

以上の議論を踏まえ、大方の委員は、景気が基調としては緩やかに拡大するもとで、「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されており、モメンタムが損なわれる惧れについても一段と高まる状況ではないとの認識を共有した。この背景として、大方の委員は、(1)マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、(2)中長期的な予想物価上昇率は、このところ横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、徐々に高まると考えられることを挙げた。もっとも、大方の委員は、海外経済の下振れリスクは引き続き大きく、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、注意が必要な状況は続いているとの認識を共有した。このうち、ある委員は、プラスの需給ギャップが物価上昇を支えているものの、このところ需給ギャップのプラス幅が縮小したままであることには、留意が必要であると述べた。

2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているほか、大企業、中小企業のいずれからみても、金融機関の貸出態度は引き続き積極的であるとの見方を共有した。ただし、ある委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、景気悪化懸念などを背景とした金利低下を許容することで一定の景気刺激効果を持つものだと指摘したうえで、このところの金利上昇によって、こうした効果が不十分なものとなっていないかには注意が必要であると述べた。

V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。

委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。大方の委員は、経済・物価の下振れリスクには留意が必要であり、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けるもとで、2%に向けたモメンタムは維持されており、モメンタムが損なわれる惧れについても一段と高まる状況ではないことから、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。多くの委員は、プラスの需給ギャップができるだけ長く持続するよう、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、現在の政策のもとで、きわめて緩和的な金融環境を維持していくことが必要であると述べた。ある委員は、「物価安定の目標」の実現に資するため、現在の金融政策の運営方針を粘り強く続け、経済の好循環を息長く支えていくべきであると指摘した。また、別のある委員は、金融・財政のポリシーミックスのもとで、現行の緩和政策を維持し、息の長い経済成長を支えることが重要であると述べた。この間、一人の委員は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムは既に損なわれており、追加緩和措置を講じる必要があるとの意見を述べた。

そのうえで、大方の委員は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、注意が必要な情勢は続いていることから、緩和方向を意識した金融政策運営を続けていくことが望ましいとの見方を共有した。ある委員は、海外経済を取り巻く環境には高い不確実性が残存しており、引き続き予断を持たずに政策判断を行うことが求められるとの見方を示した。別のある委員は、下振れリスクの大きさを踏まえると、追加緩和の要否や景気後退リスクへの対応策の検討が必要であり、その際、財政政策や成長政策との連携という観点が重要になると述べた。また、一人の委員は、前回の消費税率引き上げ後、半年で追加緩和を行ったことに触れたうえで、消費の基調次第では今回も追加緩和が必要になる可能性に言及した。

委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。複数の委員は、金融システムは全体として安定性を維持しているが、低金利環境の長期化が金融仲介機能に与える影響など、金融緩和の副作用については、十分に点検していく必要があるとの認識を示した。このうち一人の委員は、地域金融機関の貸出の伸びが、収益の低下とともに鈍化している点は気がかりであると述べた。この点に関し、ある委員は、金融機関の貸出が増加を続けていることなどを踏まえると、わが国の金融環境は、リバーサル・レートの議論が想定するような状況にはないとの見方を示した。この間、一人の委員は、家計・企業の合計では金融資産超過であり、預金に口座維持手数料が課されることになれば、資産利回り低下の影響が借入に伴う負債コスト低下の効果を上回る可能性があるほか、株価などの動向次第では、相対的に収益率の高い株式を保有する主体がより優位となり、所得格差が拡大する可能性があると述べた。また、この委員は、法人に加え個人の大口預金にも実質的にマイナス金利を適用する動きや、口座維持手数料引き上げの動きが進んでいるドイツの状況は、注視する必要があると指摘した。これに対し、何人かの委員は、金融緩和の効果は、金融資産・負債の収支という部分的な影響だけでなく、雇用や所得の改善を含めたマクロ経済全体に及ぼす影響という観点から評価する必要があるとの認識を示した。このうち複数の委員は、金融緩和の副作用についても、特定の業界や業界の一面など個別の影響だけでなく、経済や金融システム全体の安定性という視点で考えるべきだと指摘した。

また、その他の留意点として、ある委員は、海外中銀を含めて中央銀行の政策の枠組み見直しの議論が活発化しており、日本銀行も検討自体は不断に行うべきだが、IMFが提言しているような「物価安定の目標」のレンジ化は、物価安定へのコミットメントを弱体化させる惧れがあると指摘した。この間、別のある委員は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムの評価の前提となる需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率の最新の情報を、外部に十分に示していくことが重要であると述べた。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

これに対し、ある委員は、長期金利がある程度変動しうるとすることは、政策委員会が決定する金融市場調節方針として曖昧であるため、オペの運営次第では金利が必要以上に上昇し、現在のイールドカーブ・コントロールが想定している効果を阻害する惧れがあるとの意見を述べた。別のある委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとすること、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持すること、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、大方の委員は、(1)2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、(2)マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、(3)政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している、(4)今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う、(5)特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じるとの方針を共有した。

これに対し、ある委員は、「物価安定の目標」、それに向けたモメンタム、政策判断の関係が不明瞭で、モメンタムの具体的な判断基準が不明確であるとしたうえで、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとの意見を述べた。

VI.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 今月5日、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を策定した。この経済対策や予算編成の基本方針を踏まえ、いわゆる15か月予算の考え方のもと、令和2年度予算、令和元年度補正予算の編成作業を進めてきた。令和元年度補正予算は、今月13日に概算決定をした。令和2年度予算は、明日の閣議において、概算決定することを予定しており、現在大詰めの作業を進めている。
  • 令和2年度税制改正について、日本経済の成長軌道を確かなものとし、企業の事業革新に繋がるオープンイノベーションを促進するとともに、企業マインドを変革させ、果断な経営判断を促す観点から、12日に与党税制改正大綱が取りまとめられた。政府としてはこれを踏まえ、企業の前向きな取り組みを後押ししていけるよう、しっかりと取り組んでいく所存である。
  • 日本銀行には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  • 台風19号など相次ぐ自然災害からの復旧・復興の加速、防災・減災、国土強靱化の更なる強力な推進による安全・安心の確保とともに海外発の経済の下振れリスクを確実に乗り越え、民需主導の継続的な経済成長の実現に繋げていくため、今月5日、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定した。対策の規模は、財政支出で13.2兆円程度、令和3年度までの直接的な実質GDPの押し上げ効果は1.4%程度を見込んでいる。
  • これらの経済財政運営の方針を踏まえた、令和2年度の政府経済見通しでは、総合経済対策の円滑かつ着実な実行など各種政策の効果も相俟って、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が進展する中で内需を中心とした景気回復を見込んでいる。この結果、令和2年度の実質成長率は1.4%程度、消費者物価上昇率は0.8%程度と見通している。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて金融緩和を着実に推進していくことを期待する。

VII.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
原田委員、片岡委員

原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する、との資産買入れ方針とすることを内容とする議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員
反対:
なし

VIII.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)の検討

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、(1)消費者物価の前年比について、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとの意見、および、(2)2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

IX.議事要旨の承認

議事要旨(2019年10月30、31日開催分)が全員一致で承認され、12月24日に公表することとされた。

X.金融政策決定会合の開催予定日の変更の承認

2020年7月21、22日に予定されていた金融政策決定会合の開催予定日を7月14、15日に変更することが全員一致で承認され、会合終了後、公表することとされた。

以上


  • 「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」 本文に戻る

別紙

2019年12月19日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. (1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。
      2. (2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。
  2. わが国の景気は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。海外経済は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は弱めの動きが続いており、鉱工業生産は、自然災害などの影響もあって、足もとでは減少している。一方、企業収益が総じて高水準を維持するなか、設備投資は増加傾向を続けている。個人消費は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加している。住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は緩やかに増加している。この間、労働需給は引き締まった状態が続いている。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。
  3. 先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。国内需要は、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や積極的な政府支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も、当面、弱めの動きが続くものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられる。消費者物価の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる(注2)
  4. リスク要因としては、保護主義的な動きの帰趨とその影響、中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバルな調整の進捗状況、英国のEU離脱問題の展開やその影響、地政学的リスク、こうしたもとでの国際金融市場の動向などが挙げられる。こうした海外経済を巡る下振れリスクは引き続き大きいとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある。
  5. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる(注3)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:原田委員、片岡委員。原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、消費者物価の前年比は、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして反対した。 本文に戻る
  3. (注3)片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとして反対した。 本文に戻る

  1. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。 本文に戻る