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ホーム > 金融政策 > 金融政策決定会合の運営 > 金融政策決定会合議事要旨 2020年 > 金融政策決定会合議事要旨(3月16日開催分)
2020年5月1日
日本銀行
本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2020年4月27日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。
冒頭、議長より、本日の金融政策決定会合招集の趣旨について、以下のとおり説明があった。
そのうえで、議長は、3月18、19日に開催を予定していた金融政策決定会合の日程を前倒し、本日中に会合を終了するよう議事を進めることを提案した。本提案は、全員一致で承認された。
金融市場調節は、前回会合(1月20、21日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、長期国債の買入れ等による資金供給を行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。この間、市場の動向を踏まえ、前回会合で決定された資産買入れ方針に従って、ETFやCP等を含む資産買入れを適切に実施した。
短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は-0.07~-0.01%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、低下している。
株価(日経平均株価)は、新型コロナウイルス感染症の拡大により経済の先行きに対する不透明感が強まるもとで大幅に下落しており、最近では、17千円前後で推移している。長期金利は、ゼロ%程度で推移しているが、米欧長期金利の動きにつれる形で、変動が大きめとなっている。株式市場、国債市場ともに、ボラティリティが上昇するなど、不安定な動きがみられている。為替相場をみると、円の対ドル、対ユーロ相場は、大きな振れを伴いつつ、円高方向の動きとなっている。
海外経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、このところ減速感が強い状態にある。先行きについては、当面、減速感の強い状態が続くとみられるが、その後は、新型感染症の流行が収束するにつれ、各国のマクロ経済政策の効果発現もあって、安定した成長経路に復するとみられる。もっとも、新型感染症の流行が世界経済に与える影響の大きさと期間については不確実性が大きく、感染症が大幅に拡大または流行が長期化した場合には、世界経済への影響も大きくなる。
新型コロナウイルスの感染者数は、中国においては新規感染者数に落ち着きがみられてきた一方、欧米においては増加が顕著となるなど、中国以外において感染が拡大している。こうしたもとで、経済への影響も、当初は中国において顕著であったが、次第に他国にも拡がりつつある状況である。
地域別に動きをみると、中国経済は、供給と需要の両面で下押し圧力が強い状態にある。感染防止のための厳しい移動制限により、春節明けの労働力の回復は鈍いものとなっている。2月のPMIも、製造業、非製造業ともに大幅に落ち込んでいる。もっとも、新規感染者数に落ち着きがみられる中、高頻度データをみると、足もとにかけては、経済活動が徐々に持ち直してきている様子が窺われる。
米国経済は、個人消費を中心とした緩やかな拡大が続いてきたが、新型コロナウイルス感染症の影響がみられ始めている。週次ベースの消費者信頼感指数が低下しているほか、海外航空券の予約件数やブロードウェイ興行収入が減少するなど、旅行・観光関連では既に影響がみられている。この間、2月のISM製造業指数も悪化している。
欧州経済は、製造業部門の調整が続く中、足もとでは減速感が強まっているとみられる。ユーロ圏における新規感染者数はこのところ急増している。欧州への航空券予約や欧州の民泊予約は大幅に減少している。各国の厳しい移動制限や外出制限により、個人消費への下押し圧力は強まっているとみられる。
海外の金融市場をみると、米欧の株価や長期金利は、新型コロナウイルス感染症が欧米でも拡大したことを契機に、いずれも大きく低下している。また、原油価格は、新型感染症拡大による需要減や減産協議の不調による需給悪化懸念から、大幅に下落している。幅広い市場で、リスク回避の動きに加えて、市場機能の低下がみられていることから、ボラティリティが大きく上昇している。背景としては、新型感染症拡大の帰趨やその影響に関する不確実性が極めて高いこと、各国で矢継ぎ早に打ち出されている財政・金融政策が、急激なリプライシングにつながっていること、市場参加者の取引執行体制が分散勤務体制へのシフトなどで手薄になっていることなどが考えられる。また、足もとでは、リスクセンチメントの悪化にもかかわらず、国債、金への資金流入や為替円高の動きがみられていない。これは、投資家が米国に資金を回帰させ、キャッシュ化を急ぐ動きが強まっているためであるとの指摘が市場参加者から聞かれている。こうした中、ドル資金市場の調達環境をみると、ドルのLIBOR-OISスプレッドが拡大している。また、ドル資金の手元流動性を厚めに確保する動きがみられる中で、ドル/円の為替スワップ市場におけるドル調達プレミアムも拡大している。こうした情勢のもと、本日、先進国の中央銀行が協調してドル資金供給オペの拡充を決定したところである。
わが国の景気は、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、このところ弱い動きとなっている。先行きについては、当面、新型感染症の拡大などの影響から弱い動きが続くとみられる。その後は、各国の対応などにより新型感染症拡大の影響が和らいでいけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムに支えられて、緩やかな拡大基調に復していくと考えられる。
輸出や鉱工業生産は、昨年来の海外経済の減速に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた中国を中心とする外需の減少や生産停止に伴う国際的なサプライチェーンへの影響などにより、減少している。中国の経済活動は徐々に持ち直しつつあるが、同国の製造業稼働率は、新型感染症拡大前の水準には戻っていないほか、部品不足に伴うサプライチェーン寸断の問題も解消には至っていない。インバウンド消費も落ち込んでいる。各国・地域における感染防止措置拡大の影響も、先行き顕在化してくると考えられる。
個人消費は、足もとでは、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響から弱い動きとなっている。各種の販売・供給統計を合成した消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、昨年10月は消費税率引き上げ後の需要減に加え、台風19号などの自然災害の影響もあって、大きめの前月比マイナスとなったが、本年1月にかけては、暖冬の影響などもあって緩やかではあったものの、持ち直しの動きがみられていた。2月以降は、経済指標が出揃っていない状況であるが、ヒアリング情報も踏まえると、イベントや外出自粛の動きにより、サービス分野を中心に消費支出が大きく落ち込んでいるとみられる。
物価面について、消費者物価の前年比は、除く生鮮食品、除く生鮮食品・エネルギーのいずれも0%台後半となっている。先行きについて、当面、原油価格の下落の影響もあって弱含むとみられる。その後は、経済が緩やかな拡大基調に復していけば、そのもとで徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、中小企業の資金繰りの一部などで緩和度合いが低下している。
予想物価上昇率は、やや長い目でみれば横ばい圏内で推移しているが、このところ弱めの指標もみられている。
企業の資金繰りは、全体としてみれば良好であるが、新型コロナウイルス感染症の拡大などを背景に、主に中小企業において厳しくなったとする先がみられてきている。資金需要面をみると、新型感染症の拡大などを受けた運転資金需要の高まりを示唆する動きも窺われる。この間、金融機関の貸出態度は引き続き緩和的な状態にある。CP・社債市場では、発行スプレッドはタイトな水準を維持しているが、CP発行の増加により手元資金を厚めに確保する動きがみられている。
議長は、金融市場で不安定な動きがみられているほか、中小企業などでは資金繰りに対する懸念も生じていることを踏まえると、金融政策面での対応策を検討することが適当であると述べた。その上で、議長は、執行部に対し、具体的な対応策としてどのようなものが考えられるか説明するよう指示した。
執行部は、以下のとおり説明を行った。
国際金融市場について、委員は、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、世界経済の不透明感が高まり、内外金融資本市場で不安定な動きが続いているとの認識で一致した。何人かの委員は、株式市場だけでなく、債券市場などにおいてもボラティリティが上昇し、非常に神経質な動きとなっていることは特徴的であると述べた。このうち、ある委員は、こうした動きは、現金への逃避が進んでいることを示していると指摘した。別の一人の委員は、外出禁止などにより、市場参加者が分散勤務体制にシフトする中で人手が手薄になっていることも影響していると指摘した。複数の委員は、金融市場の不安定な状況が続けば、家計のマインドや企業の投資スタンスが急速に慎重化するリスクがあると指摘した。この間、複数の委員は、需要の減退や減産協議の不調から原油価格が急落していると述べた。
海外経済について、委員は、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、このところ減速感が強い状態にあるとの認識で一致した。ある委員は、感染症拡大が経済にもたらす影響は、一般的には、短期的に大きな落ち込みをもたらした後、いずれ事態が収束するにつれて回復するというのが標準的な姿であると述べた。もっとも、この委員を含む何人かの委員は、中国では感染の収束期に入りつつあることが窺われる一方、感染が世界的に拡がっていることを踏まえると、影響が長引き、かつ大きくなる可能性があると指摘した。ある委員は、本年後半には世界経済の成長ペースが持ち直すことを期待しているが、楽観はできないと述べた。
経済の現状と先行きを地域毎にみると、中国経済について、何人かの委員は、新型コロナウイルス感染症の影響が深刻なものとなっているものの、感染者数の増加ペースが鈍化する中、工場が徐々に再開するなど、回復方向に向かっているとの見方を示した。米欧経済について、複数の委員は、非常事態宣言や国境封鎖などの措置が相次いで講じられており、感染拡大に収束の目途が立つまで、経済活動全般が下押しされる可能性が高まっていると指摘した。
以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。
わが国の景気について、委員は、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、世界経済の不透明感が高まり、内外金融資本市場で不安定な動きが続くもとで、このところ弱い動きとなっているとの見方で一致した。何人かの委員は、新型感染症の拡大の影響は、輸出やインバウンド消費の減少、サプライチェーンの毀損、イベントや外出自粛による個人消費の落ち込みなどを介して、わが国経済に深刻な影響を及ぼしつつあると指摘した。このうち、ある委員は、設備投資についても、先行きの不透明感が強まる中で手控えられる可能性が高いとの見方を示した。雇用に関しては、複数の委員が、少なくとも現時点においては、高水準の雇用が維持されていると指摘したほか、ある委員は、比較的堅調な雇用がある程度維持できれば、景気下押しへの抵抗力が高まるとの見方を示した。これに対し、一人の委員は、雇用は遅行指標であり、これまでの堅調さをもって景気の先行きを楽観視することはできないと指摘した。そのうえで、何人かの委員は、本年1~3月期の実質GDP成長率は、昨年10~12月期に続き、前期比マイナスとなる可能性が高いと述べた。
景気の先行きについて、委員は、当面、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響から弱い動きが続くとみられるとの認識で一致した。ある委員は、新型感染症が時間差で世界中に拡がっていることもあって、その影響は、今後も当面続くと述べた。そのうえで、委員は、時間はかかる可能性があるが、各国の対応などにより新型感染症拡大の影響が和らいでいけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムに支えられて、緩やかな拡大基調に復していくとの見方を共有した。ある委員は、新型感染症の拡大自体は、各国政府の対策の効果等もあって、いずれは収束すると考えられると述べた。何人かの委員は、新型感染症の拡大が収束すれば、抑制されていた需要や各種経済対策の効果が現れてくることが見込まれるとの見方を示した。
もっとも、委員は、新型コロナウイルス感染症拡大の帰趨や、それが経済へ与える影響の大きさや期間については、不確実性が大きいとの認識で一致した。ある委員は、景気の下押しの規模やその継続期間など、先行きについては極めて不確実性が高く、現時点で明確な見通しは持てないと述べた。一人の委員は、新型感染症によるショックは、リーマン・ショックや東日本大震災時の自然災害のショックとも性質は異なるが、不確実性が大きいため、影響は一時的なものにとどまらず、甚大なものになる可能性があると指摘した。ある委員は、移動制限などの各国の公衆衛生上の措置等を前提とすると、経済の落ち込みは深刻かつ長期化する可能性があるとの見方を示した。この委員は、逸失したサービス消費は挽回しにくい点を指摘した。また、複数の委員は、消費税率引き上げや自然災害の影響から、新型感染症の影響が生じる前から景気が弱めであったことを踏まえると、新型感染症の収束後、経済が力強く回復するかは不透明であると述べた。ある委員は、今回のショックにより、企業が手元流動性の重要性を改めて意識し、貯蓄を優先するようになれば、将来にわたって支出が増加しにくくなる可能性があると指摘した。
こうした議論を経て、委員は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、経済・物価の下振れリスクは高まっているとみられ、内外金融市場の動向やわが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要があるという見方で一致した。
物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっているほか、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比も、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどを背景に、0%台後半のプラスにとどまっているとの見方で一致した。予想物価上昇率について、委員は、やや長い目でみれば横ばい圏内で推移しているが、このところ弱めの指標もみられているとの見方を共有した。
先行きの物価について、委員は、当面、原油価格の下落の影響もあって弱含むとみられるとの認識で一致した。そのうえで、委員は、その後、経済が緩やかな拡大基調に復していけば、そのもとで物価は徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。もっとも、何人かの委員は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から、経済・物価の下振れリスクは高まっており、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れは高まっているとの見方を示した。ある委員は、プラスの需給ギャップが物価上昇を支えているが、新型感染症拡大の影響から、そのプラス幅が縮小する可能性が高まっていると述べた。
わが国の金融環境について、委員は、全体として緩和した状態にあるが、中小企業の資金繰りなど企業金融の一部で緩和度合いが低下しているとの認識で一致した。何人かの委員は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から、企業は業績悪化に直面しており、特に一部の業種では極端な需要減がみられると述べたうえで、資金繰りが喫緊の課題となりつつあると指摘した。このうち、一人の委員はこうした状況が長引けば、中小企業を中心に資金繰り懸念が強まりかねないと指摘したほか、別の一人の委員は、企業の業績悪化は規模を問わず急激であり、深刻であると述べた。ある委員は、こうした局面では、十分な金融仲介機能の維持が不可欠であると述べた。また、一人の委員は、銀行が目利き力を発揮して、積極的に貸出を行うことが期待されると付け加えた。
金融政策面での対応の方向性について、委員は、新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、株価が大きく変動するなど金融市場で不安定な動きがみられているほか、中小企業などでは資金繰りに対する懸念も生じていることを踏まえると、企業金融の円滑確保に万全を期すとともに、金融市場の安定を維持し、企業や家計のコンフィデンス悪化を防止する観点から、金融緩和を強化することが適当であるとの認識で一致した。ある委員は、感染拡大防止策が講じられている局面で金融政策に求められるものは、需要の刺激ではないとの見方を示した。また、複数の委員は、企業や家計では収益・所得の減少といった影響が大きくなることが予想されるが、政府による休業補償などの支援策が期待されると述べた。
そのうえで、委員は、金融緩和の強化の手段について議論を行った。何人かの委員は、金融機関が仲介機能を十分発揮できるよう潤沢な資金供給を行うべきであると述べた。このうち一人の委員は、円の資金流動性に懸念があるとはみていないが、長期金利の上昇といった動きも生じており、積極的な国債買入れなどを通じて、一層潤沢な流動性を提供することが望ましいと述べた。また、この委員は、ドル資金の流動性供給に万全を期すことも重要であり、本日、先進国の中央銀行が協調してドルオペの拡充を決定したことの意義は大きいと指摘した。何人かの委員は、企業の資金繰りに万全を期すべく、企業金融面での十分な資金繰り支援が重要であると指摘した。ある委員は、金融機関向けに有利なレートで資金供給を行い、企業への貸出を促すことや、CPや社債買入れの増額は、企業金融を支援するのに有効な手段であると述べた。また、複数の委員は、ETF等の買入れ増額によりリスク・プレミアムの拡大を抑制し、金融市場の安定を確保するべきであると述べた。この間、一人の委員は、こうした対応においては、既存の政策スキームを活用し、金融仲介機能面での副作用にも配慮しつつ、時限的措置とした上で、状況に応じて柔軟かつ迅速に対応することが重要であると指摘した。
こうした議論を踏まえ、委員は、執行部が示した対応案は、パッケージとして適切なものであるとの認識で一致した。ある委員は、金融機関が仲介機能を十分発揮できるよう潤沢な資金供給を行う、企業の資金繰りに万全を期す、ETF等の買入れ増額によりリスク・プレミアムの拡大を抑制し金融市場の安定を確保する、という3つの角度から金融緩和を強化すべきであり、執行部が示した対応案はこれに沿ったものであると述べた。このうち、企業金融支援のための措置について、ある委員は、新たな企業金融支援特別オペは、厳しい経営環境の中でも取引先企業の資金繰り支援に積極的に取り組もうとする金融機関の後押しや、資金繰りが悪化した企業経営者の不安軽減に繋がると述べた。また、この委員は、CP・社債市場に今のところ大きなストレスは発生していないと認識しているが、CP・社債買入れの増額は、先行きの市場悪化を抑制する効果があるとの認識を示した。また、金融市場の安定を維持するための措置について、一人の委員は、ETFやJ-REITの年間買入れ額を倍増させるという思い切った措置は、市場の安定に寄与すると考えられるほか、「当面」としていることで状況に応じた柔軟性も確保できていると指摘した。
ある委員は、市場の状況に応じて一定の柔軟性を持つという現行の枠組みの強みを最大限活かし、金融市場全体の安定回復に努めることが重要との認識を示した。別の一人の委員は、経済・物価情勢によっては臨時会合開催も含めた機動的な対応も可能であるほか、長期国債も、残高の増加額年間約80兆円のめどまでは買入れうると述べた。この間、複数の委員は、こうした局面においては、政府や主要中央銀行との間で、緊密に情報共有しつつ、強固な協力体制を維持することが重要であると指摘した。このうち、一人の委員は、金融資本市場の安定の維持と企業金融の円滑の確保は、世界共通の課題であると述べた。そのうえで、委員は、新型コロナウイルス感染症拡大の帰趨や、それが内外経済へ与える影響の大きさや期間については、不確実性が大きく、経済・物価の下振れリスクが高まっていることを踏まえ、当面、新型感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの方針で一致した。
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。
以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。
「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」
これに対し、ある委員は、長期金利がある程度変動しうるとすることは、政策委員会が決定する金融市場調節方針として曖昧であるため、オペの運営次第では金利が必要以上に上昇し、現在のイールドカーブ・コントロールが想定している効果を阻害する惧れがあるとの意見を述べた。別のある委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとの意見を述べた。
長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。なお、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行うこと、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。これに加え、2020年9月末までの間、それぞれ1兆円の残高を上限に、追加の買入れを行うこと、が適当であるとの認識を共有した。
先行きの金融政策運営の考え方について、大方の委員は、(1)2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、(2)マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、(3)政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している、(4)当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの方針を共有した。
これに対し、ある委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとの意見を述べた。
内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
また、財務省の出席者からは、財務大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(13時35分中断、13時38分再開)。
財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、賛成多数で決定された。
金融市場調節方針に関する議案(議長案)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。
記
採決の結果
原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。
議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、資産買入れ方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、全員一致で決定された。
資産買入れ方針に関する議案(議長案)
長期国債以外の資産の買入れについて、下記のとおりとすること。
記
採決の結果
前記執行部説明を内容とする「『新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペレーション基本要領』の制定等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。
以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとの意見が表明された。
こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。
東日本大震災および平成28年熊本地震にかかる「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」に関して、復旧・復興に向けた被災地金融機関の取り組みへの支援をより安定的に継続する観点から、期限を付さない形で一本化のうえで、貸付条件等に所要の見直しを行うため、基本要領の一部改正等を行うこととしたい。
上記を内容とする「『被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション基本要領』の一部改正等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。本件については、会合終了後、公表することとされた。
議事要旨(2020年1月20、21日開催分)が全員一致で承認され、3月19日に公表することとされた。
以上
別紙
2020年3月16日
日本銀行
積極的な国債買入れなどのほか、(2)、(3)の手段も活用しつつ、当面、円資金の一層潤沢な供給に努める。
米ドル資金については、本日、日本銀行は、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行と協調して、資金供給オペについて、貸付金利を0.25%引き下げるとともに、これまでの1週間物に加え、3か月物を週次で実施することを公表した。これにより、米ドル資金の流動性供給にも万全を期す方針である1。
民間企業債務を担保(約8兆円<2020年2月末>)に、最長1年の資金を金利ゼロ%で供給する新たなオペレーション(残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算)を導入する。同措置は、2020年9月末まで実施する。
CP・社債等の追加買入枠を合計2兆円設け、CP等は約3.2兆円、社債等は約4.2兆円の残高を上限に買入れを実施する2。増額買入れは、2020年9月末まで継続する。
ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う3。
以上
(別紙)
以上