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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2020年12月17、18日開催分)

2021年1月26日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2021年1月20、21日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2020年12月17日(14:00~15:59)
 
12月18日( 9:00~12:06)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
  • 雨宮正佳 (副総裁)
  • 若田部昌澄(  副総裁  )
  • 櫻井 眞 (審議委員)
  • 政井貴子 (  審議委員  )
  • 鈴木人司 (  審議委員  )
  • 片岡剛士 (  審議委員  )
  • 安達誠司 (  審議委員  )
  • 中村豊明 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 新川 浩嗣 大臣官房総括審議官
内閣府 田和 宏 内閣府審議官(17日)
赤澤 亮正 内閣府副大臣(18日)
(執行部からの報告者)
  • 理事 内田眞一
  • 理事 清水季子
  • 理事 貝塚正彰
  • 企画局長 清水誠一
  • 企画局政策企画課長 飯島浩太
  • 金融市場局長 大谷 聡
  • 調査統計局長 亀田制作
  • 調査統計局経済調査課長 川本卓司
  • 国際局長 福本智之
(事務局)
  • 政策委員会室長 中島健至
  • 政策委員会室企画役 本田 尚
  • 企画局審議役 福田英司(18日)
  • 企画局企画調整課長 矢野正康(18日)
  • 企画局企画役 東 将人
  • 企画局企画役 土川 顕

1.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(10月28、29日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、国債買入れを行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

企業等の資金繰り支援のための措置として、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」のもとで、CP・社債等の買入れや、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペを実施した。また、金融市場の安定を維持する観点から、国債買入れやドルオペなどによる、潤沢かつ弾力的な資金供給を行ったほか、ETFおよびJ-REITの積極的な買入れを行った。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。翌日物金利のうち、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、-0.04~-0.02%程度で推移している。GCレポレート(オーバーナイト物)は、-0.10~-0.07%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、概ね横ばいとなっている。

株価(日経平均株価)は、米国大統領・議会選挙の通過やワクチン開発の進展等に伴い、市場センチメントが改善したことで、上昇している。長期金利は、長短金利操作のもとで、ゼロ%程度で推移している。国債市場の流動性について、11月の「債券市場サーベイ」をみると、8月調査と比べて、市場の機能度判断DI(「高い」-「低い」)は、概ね横ばいとなっている。為替相場をみると、市場センチメントが改善し、ドル安が進む中で、円の対ドル相場は、小幅の円高方向の動きとなっている一方、円の対ユーロ相場は、ユーロ高方向の動きとなっている。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、一部で感染症の再拡大の影響がみられるが、持ち直している。欧州各国は、感染症の新規感染者数の急増を受けて、外出制限や飲食店・小売店等の営業規制を含む公衆衛生上の措置を再導入した。もっとも、比較的厳しい措置を導入した英仏等でも、春先とは異なり、製造業や建設業等の経済活動は維持されたこと、11月末以降、新規感染者数が減少するもとで、措置が段階的に緩和されていることなどから、欧州での経済活動の落ち込みは、春先と比べ小幅であり、その影響は対面型サービス業に集中したものとなっている。また、同じく新規感染者数が急増してきた米国では、これまでのところ公衆衛生上の措置を強化した州は一部にとどまっており、経済全体の改善基調には大きな変化は窺われない。このように各国が、経済活動にも配慮するかたちで感染症拡大への対応を進めるもとで、グローバルにみて、企業の業況感は、製造業・サービス業ともはっきりとした改善を続けており、製造業の生産水準や貿易量は、感染症拡大前の水準に復しつつある。先行きの海外経済については、各国・地域の積極的なマクロ経済政策にも支えられて、改善していくとみられる。ただし、当面は、米欧を中心とした感染症の再拡大の影響もあって、改善ペースは緩やかで不均一なものとなる可能性が高い。また、感染症の帰趨や、それが海外経済に与える影響を中心に、引き続き、きわめて不確実性が大きい。

地域別に動きをみると、米国経済は、持ち直している。個人消費は、新規感染者数の増加が続くもとでサービス消費は引き続き落ち込んだ状態にあるものの、政府による既往の家計所得補填政策やペントアップ需要の顕在化もあって、財消費を中心に持ち直している。住宅投資は、住宅ローン金利が既往最低水準で推移するもとで、はっきりと増加している。企業部門をみると、業況感は改善が続いており、生産も持ち直している。こうしたもとで、設備投資は、建設投資はなお減少を続けているが、機械投資を中心に持ち直しつつある。

欧州経済は、感染症の再拡大を受けて、サービス業を中心に下押しされている。ユーロエリアでは、個人消費のうち、財消費は堅調を維持しているものの、足もとでは、公衆衛生上の措置の強化を受けて、サービス消費が下押しされているとみられる。企業部門をみると、業況感は、感染症の再拡大からサービス業では悪化しているが、製造業では改善が続いており、輸出や生産も持ち直している。こうしたもとで、設備投資は、企業収益の減少などから、全体としてみれば落ち込んだ状態にあるが、一部に持ち直しの動きもみられる。

中国経済は、回復を続けている。輸出は、増加している。個人消費は、一部で感染症の影響が残るものの、雇用・所得環境の改善などを受けて、増加している。固定資産投資は、積極的なマクロ経済政策の効果発現を受けて、公共関連等が増加しているほか、製造業にも政策効果が波及していることなどから、引き続き増加している。こうしたもとで、生産も増加を続けている。

中国以外の新興国経済は、経済活動再開の進展により、落ち込んだ状態から持ち直している。NIEs・ASEAN経済は、感染症の影響から内需が落ち込んだ状態が続いている先もみられるが、輸出を中心に持ち直している。インドやブラジル経済は、新規感染者数はなお高水準で推移しているが、全体としてみれば、経済活動の再開が続くもとで、持ち直しの動きが拡がっている。ロシア経済は、感染症の再拡大を受けて、下押しされている。

海外の金融市場をみると、先進国では、米国の政権移行を巡る不透明感の後退や有効性の高いワクチンの早期普及への期待の高まりなどを受けて、株価は米欧で上昇し、長期金利は米国で上昇している。為替市場では、米ドル安が進む中で、新興国の通貨は、全般的に上昇している。原油価格は、ワクチン開発の進展に伴う景気回復期待などを背景に上昇している。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、持ち直している。先行きについては、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、持ち直しを続けるが、当面は、対面型サービスを中心に感染症による下押し圧力が続く中で、そのペースは緩やかなものにとどまるとみられる。

輸出や鉱工業生産は、海外経済の持ち直しを背景に、増加を続けている。実質輸出を財別にみると、自動車関連は、ペントアップ需要に支えられた米欧中の自動車販売の回復を反映して、はっきりとした増加が続いている。情報関連は、データセンター向けやパソコン関連、車載向けの増加が続くもとで、新型スマートフォン向けの需要増も押し上げに作用し、増加が続いている。資本財は、世界的な生産活動や設備投資(機械投資)需要の回復を受けて、持ち直しに転じている。先行きの輸出や生産は、自動車関連のペントアップ需要の一巡から減速するものの、世界的な設備投資需要の回復やデジタル関連需要の堅調さなどに支えられて増加基調を続けるとみられる。

個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費は依然として低水準となっているが、全体として徐々に持ち直している。財消費については、自動車販売は、6月以降、増加しており、足もとは3月頃の水準を明確に上回っている。家電販売は、在宅時間の長期化により、底堅さを維持しているが、特別定額給付金による押し上げ効果の一巡もあって、増勢が鈍化してきている。食料品や日用品などは、ひと頃に比べて増勢はやや鈍化しているが、巣ごもり消費を背景に底堅さを維持している。サービス消費は、4~5月をボトムに徐々に持ち直しているが、対面型サービスを中心に依然として水準は低い。月々の動きをみると、夏場に感染者数の拡大から足踏みしたあと、9~10月は、感染者数の落ち着きにGo Toキャンペーンの効果も加わり再び持ち直すなど、感染状況に左右されやすい展開が続いている。外食は、夏場以降はGo Toトラベル・イートの需要喚起効果もあって、10月の水準は感染症による落ち込みの8割程度を取り戻している。旅行は、海外旅行が渡航制限の継続によりほぼ皆減の状態が続く一方、国内旅行は、10月にはGo Toトラベルに東京都発着分が追加されたこともあって、比較的はっきりとした持ち直しを示した。しかし、企業からの聞き取り調査などによると、11月中旬以降、感染症の再拡大を受けて、サービス消費は減速感が強まっているとみられる。先行きの個人消費は、基調としては持ち直しが続くとみられる。もっとも、当面は、感染症拡大への警戒感が続く中で、そのペースはかなり緩やかなものとなる可能性が高い。

雇用・所得環境をみると、感染症の影響が続く中で、弱い動きがみられている。雇用面では、労働力調査の就業者数は、対面型サービス業における非正規雇用者の減少を主因に、前年比-1%台前半の減少が続いている。一人当たり労働時間は、宿泊・飲食などではなお大きめのマイナスにあるが、全体としては、マイナス幅が縮小傾向にある。労働需給面では、有効求人倍率は、ここ数か月は求人数の持ち直しを主因に、下げ止まっている。短観の雇用人員判断DIは、6月に「不足」超幅が大幅に縮小したあと、12月は、経済活動の持ち直しを反映して、再び「不足」超幅が拡大している。労働力率は、4~6月に非労働力化した人々が再び労働市場に参入する動きが続いており、緩やかに上昇している。完全失業率は、緩やかな上昇傾向にある。名目賃金は、所定外給与の減少を主因に、下落している。先行きの雇用者所得は、当面、既往の企業業績の悪化にややラグを伴うかたちで、はっきりとした減少を続けると見込まれる。

企業収益や業況感は、大幅に悪化したあと、徐々に改善している。法人企業統計で7~9月の売上高経常利益率をみると、経済活動が再開するもとで持ち直している。12月短観の業況判断DI(全産業全規模)は、2四半期連続で改善しており、水準は、3月をなおはっきりと下回るものの、6月のマイナスの半分程度となっている。設備投資は、減少傾向にある。機械投資の一致指標である資本財総供給は、輸出・生産の増加を受けて持ち直しに転じている一方、建設投資の一致指標である建設工事出来高(民間非居住用)は、オリンピック関連の大型案件の一巡もあって、緩やかな減少傾向が続いている。機械投資の先行指標である機械受注は、製造業を中心に持ち直している一方、建設投資の先行指標である建築着工は、感染症の影響も受けた飲食・宿泊業等による店舗や宿泊施設の建設減少の影響が大きく、減少傾向が続いている。短観の2020年度の設備投資計画は、小幅ながら12月調査時点としては2009年度以来の減少計画となっている。このうち、ソフトウェア投資は、9月調査時点から下方修正されたが、デジタル関連投資の底堅さを反映して、引き続きプラスを維持している。先行きの設備投資は、サービス業の建設投資の弱さは続く一方、輸出・生産の回復を受けて製造業の機械投資が増加するため、全体では徐々に持ち直していくとみられる。

物価面について、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などにより、マイナスとなっている。先行きの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比も、当面、マイナスで推移するとみられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りに厳しさがみられるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっている。

予想物価上昇率は、弱含んでいる。

資金需要面では、感染症の影響を受けた売上げの減少や予備的な需要などによる資金需要は、大企業を中心に一服しているが、引き続き高水準となっている。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、総じて良好な発行環境となっている。企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、6%程度のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、ひと頃に比べて増勢は鈍化しているが、10%を超える高めのプラスで推移している。このように、日本銀行・政府の措置と金融機関の取り組みにより、外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されている。企業倒産も低水準で推移している。もっとも、企業の資金繰りは、緩やかに改善しているものの、感染症の影響を受けた売上げ減少などを背景になお厳しさがみられる。景気の改善が緩やかなもとで、先行きも企業金融へのストレスがかかり続けるものと予想される。

この間、マネタリーベースは、前年比で16%台半ばの伸びとなっている。マネーストックの前年比は、9%程度の伸びとなっている。

2.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、米国大統領選挙を通過したことやワクチンに関する前向きな動きもあって、センチメントが改善しているとの認識で一致した。もっとも、委員は、株式市場では、依然としてボラティリティ指標が感染拡大前よりも高めの水準で推移している点などを指摘したうえで、金融市場の不安定化に繋がりかねない要因として、感染症の状況を含め、様々な不確実性があるとの見方を共有した。何人かの委員は、為替市場では、幅広い通貨に対してドル安が進む中で、緩やかなドル安円高が続いており、為替をはじめとする金融市場の動向には引き続き注意が必要であると述べた。このうち一人の委員は、足もとのセンチメントの改善は、ワクチンへの期待が先行している面もあるため、株式市場の動向も注視していると付け加えた。この間、ある委員は、米国のクレジット市場では、リスクテイクが積極化しており、今後の市場の動きには留意が必要であると指摘した。

海外経済について、委員は、一部で感染症の再拡大の影響がみられるが、全体として持ち直しているとの認識で一致した。もっとも、何人かの委員は、海外経済の持ち直しの動きは、国ごとにばらつきがあるほか、産業ごとにみても、製造業はしっかりと持ち直す一方、非製造業、とりわけ対面型サービス業は、足もとの感染症の再拡大を受けて、業況悪化が懸念されるなど不均一であるとの見方を示した。海外経済の先行きについて、委員は、各国・地域の積極的なマクロ経済政策にも支えられて、改善していくとみられるが、当面は、米欧を中心とした感染症の再拡大の影響もあって、改善ペースは緩やかで不均一なものとなる可能性が高いとの認識を共有した。何人かの委員は、ワクチン関連の前向きな動きは朗報であるが、ワクチン接種や治療薬の普及には相応の時間がかかるとの見方を示した。また、多くの委員は、先行き、感染症の帰趨に加え、米中間の緊張関係、英国とEUの通商交渉などのリスク要因もあり、不確実性が大きいと指摘した。

地域別にみると、米国経済について、委員は、持ち直しているとの評価を共有した。複数の委員は、新規感染者数が増加する中でも、個人消費は財消費を中心に持ち直しているほか、製造業の生産や業況感は、改善を続けていると指摘した。また、複数の委員は、テレワーク等の普及もあって、住宅関連需要が底堅いと述べた。もっとも、何人かの委員は、感染症が再拡大するもとで、雇用の回復の勢いが鈍化していることが気がかりであると指摘した。

欧州経済について、委員は、感染症の再拡大を受けて、サービス業を中心に下押しされているとの見方を共有した。複数の委員は、経済活動の落ち込みは、春先と比べれば小幅であるものの、公衆衛生上の措置が強化されるもとで、10~12月期の成長率は下押しされるとみられると述べた。また、ある委員は、感染症の影響が長期化する中で、いわゆる「財政の崖」が生じないように、財政措置による必要な支援が継続するかという点にも注目していると付け加えた。

中国経済について、委員は、回復を続けているとの認識で一致した。一人の委員は、中国経済は、主要国の中で最も回復が鮮明であり、回復の動きが企業部門から家計部門へと波及しているとの見方を示した。ある委員は、世界経済の回復ペースが緩慢である中、米中間の緊張関係もあって、当面は内需を中心とした回復が続くとみられるが、先般、署名された東アジアでの包括的経済連携(RCEP)協定は、やや長い目でみて、中国経済にプラスに働くと述べた。この間、一人の委員は、国有企業のデフォルトが発生していることに触れつつ、今後の中国経済の動向は、回復の持続性や政策対応の観点から注目していくべきであると指摘した。

新興国経済について、委員は、経済活動再開の進展により、落ち込んだ状態から持ち直しているとの見解を共有した。ある委員は、新興国では、国によって感染症の拡大ペースや、政策対応余地が異なるもとで、今後の回復ペースも各国間で大きく差が生じることが予想されると述べた。

以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、持ち直しているとの認識で一致した。何人かの委員は、産業ごとのばらつきがみられる状況は続いているが、全体としては、財の動きに牽引されるかたちで、持ち直しの動きが続いているとの見方を示した。もっとも、多くの委員は、感染症の再拡大の影響から、対面型サービス業については、持ち直しの動きが鈍化しているとの見解を述べた。

景気の先行きについて、委員は、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿ると考えられるが、感染症への警戒感が続く中で、そのペースは緩やかなものにとどまるとの認識で一致した。また、委員は、その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済は更に改善を続けるとの見解を共有した。もっとも、多くの委員は、感染症の拡大が続く中で、対面型サービス業を中心に不透明感が強まるなど、回復ペースが一段と下押しされるリスクがあるとの警戒感を示した。同時に、何人かの委員は、政府が決定した経済対策は、先行きの経済を下支え、押し上げることが期待されるとの見解を述べた。

輸出や生産の現状について、委員は、海外経済の持ち直しを背景に、増加を続けているとの認識を共有した。何人かの委員は、自動車関連を中心に復調の動きが明確になっていると述べた。ある委員は、輸出の持ち直しの動きは予想を上回るペースであると指摘した。先行きの輸出・生産について、委員は、自動車関連のペントアップ需要の一巡から減速するものの、世界的な設備投資需要の回復やデジタル関連の需要の堅調さなどに支えられて増加基調を続けるとの見解を共有した。

個人消費について、委員は、飲食・宿泊等のサービス消費は依然として低水準となっているが、全体として徐々に持ち直しているとの認識で一致した。多くの委員は、感染症の再拡大により、サービス消費は下押しされているとみられると述べた。一方、何人かの委員は、巣ごもり消費などもあって、財消費はしっかりとしている点も指摘した。先行きの個人消費について、委員は、基調としては持ち直しの動きが続くとみられるが、当面は、感染症拡大への警戒感が続く中で、そのペースはかなり緩やかなものとなる可能性が高いとの見解を共有した。多くの委員は、感染症の再拡大により、忘年会や帰省を自粛する動きに加え、Go Toキャンペーンも一時停止となるなど、当面、持ち直しの動きは下押しされるとみられると述べた。このうち一人の委員は、年末年始の書き入れ時を控えている時期であり、影響が特に懸念されると指摘した。何人かの委員は、企業収益の減少がラグを伴って雇用者所得に波及してきており、家計のマインドへの影響を注意してみていると述べた。

雇用・所得環境について、委員は、感染症の影響が続く中で、弱い動きがみられているとの認識で一致した。複数の委員は、政府・日本銀行の政策の効果もあって、雇用の落ち込みは抑制されていると指摘した。ある委員は、感染症の再拡大は、雇用者数の多い対面型サービス業への影響が大きいため、注意してみていく必要があると述べた。先行きの雇用・所得環境について、委員は、当面、既往の企業収益の悪化にややラグを伴うかたちで、雇用者所得は、はっきりとした減少を続けると見込まれるとの見解を共有した。何人かの委員は、春先に非労働力化した人々が再び労働市場に参入する動きが続いており、完全失業率は、緩やかに上昇する可能性があるとの見方を示した。

設備投資について、委員は、減少傾向にあるとの認識を共有した。複数の委員は、感染症の影響が大きいサービス業は、当面、弱い動きが続くとみられる一方で、製造業の機械投資には、持ち直しの動きがみられており、設備投資にも、セクター間のばらつきが現れ始めていると指摘した。先行きの設備投資について、委員は、サービス業の建設投資の弱さは続く一方、輸出・生産の回復を受けて製造業の機械投資が増加するため、全体では徐々に持ち直していくとみられるとの見解を共有した。何人かの委員は、短観の設備投資計画は、リーマン・ショック時ほどの大幅なマイナスとなっていないが、12月調査でも下方修正されており、同じく下方修正されたソフトウェア投資の動向とともに、今後のスタンスの変化に注意してみていきたいとの考えを示した。この間、複数の委員は、緩和的な金融環境は、企業の設備投資マインドを下支えしているとみられるとの見方を述べた。

物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などにより、マイナスとなっており、予想物価上昇率は弱含んでいるとの認識で一致した。複数の委員は、エネルギー価格やGo Toトラベル事業による宿泊料の割引といった一時的な要因を除けば、消費者物価の前年比は小幅のプラスを維持しており、経済の落ち込みに比べると底堅いと述べた。また、多くの委員は、現時点では、デフレ期にみられたような、値下げにより需要喚起を図る価格設定行動は拡がっていないとの見方を示した。このうち一人の委員は、物価は、足もと弱めの動きが続いているが、加速度的に下落する状況には至っていないと指摘した。この間、複数の委員は、企業のインフレ予想は踏みとどまっているとの見方を示した。このうち一人の委員は、家計のインフレ予想も低調ながらも腰折れはしていないと述べた。

先行きについて、委員は、消費者物価の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などを受けて、マイナスで推移するとみられるが、その後は、経済の改善に伴い、物価への下押し圧力は次第に減衰していくことや、原油価格下落の影響なども剥落していくことから、プラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくとの認識を共有した。何人かの委員は、感染症による経済の下押しが当面続くことを考えると、2%の「物価安定の目標」の実現には、かなりの時間がかかることを覚悟する必要があると述べた。一人の委員は、企業収益の悪化や所得の減少によって、先行き、企業や家計の物価観が改善していくかどうかは予断を許さないと指摘した。別の一人の委員は、中長期のインフレ予想が弱含んでおり、デフレ再燃のリスクが残っていると述べた。この間、一人の委員は、需給ギャップも悪化しており、消費者物価が、近い将来に2%の目標に向けて上昇する姿を描くことは難しいとの見方を示した。

経済・物価見通しのリスク要因として、委員は、感染症の帰趨や、その影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きく、特に、このところの内外における感染症の再拡大の影響に注意が必要であるとの認識で一致した。更に、委員は、感染症の影響が収束するまで、成長期待が大きく低下せず、金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要であるとの見方を共有した。複数の委員は、ワクチンに関する明るい話題も聞かれるが、有効なワクチンが人々に広く行き渡るまでは、感染症が経済に与える影響を巡る不透明感がきわめて高い状況が続くと述べた。複数の委員は、先行き、設備投資や雇用の調整圧力が残る中、内外の感染症の再拡大が公衆衛生措置の強化や家計マインドの悪化を通じて景気下振れに繋がるリスクがあり、注意を要すると指摘した。また、複数の委員は、感染症による悪影響が長期に及ぶ可能性がある中で、金融機関の信用コストの発生状況には注意が必要であると述べた。このうち一人の委員は、金融機関の劣後ローンの実行が増加し、そのスプレッドが縮小していることが金融仲介機能に与える影響にも留意が必要であると付け加えた。

2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、日本銀行・政府の措置や民間金融機関による積極的な取り組みにより、外部資金の調達環境は緩和的であり、金融環境は全体として緩和した状態になっているとの認識で一致した。もっとも、委員は、依然、企業の資金繰りに厳しさがみられるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態にあるとの見解を共有した。何人かの委員は、感染症の状況次第では、対面型サービス業を中心に、再び資金繰りの悪化に直面する企業が増加する可能性があると指摘した。

3.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

今回、委員は、感染症の影響により、経済・物価への下押し圧力が長期間継続すると予想されるもとで、経済を支え、2%の「物価安定の目標」を実現していく必要があるという認識のもとで、当面の対応とやや長い目でみた対応について議論を行った。

まず、当面の対応について、委員は、現在、感染症への対応として行っている、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFなどの積極的な買入れ、の「3つの柱」に基づく金融緩和措置は、効果を発揮しているとの認識で一致した。もっとも、委員は、先行き、感染症への警戒感が続き、景気の改善が緩やかなもとでは、当面、企業等の資金繰りにはストレスがかかり続けるとの見方を共有した。こうした状況を踏まえ、委員は、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの延長を決定し、引き続き、企業等の資金繰りを支援することが適当であるとの判断で一致した。多くの委員は、感染症が再拡大し不確実性が依然として高いもとで、早めに特別プログラムの延長の方針を示すことは、同プログラムを利用する金融機関や借手企業等に対して安心感を与え、資金繰り面でのストレスを緩和することに繋がるとの認識を示した。何人かの委員は、政府が今回の新たな経済対策で、資金繰り支援も含め更に経済を支えていく方針を示していることを指摘した。また、何人かの委員は、特別プログラムの延長を機に、運用面で見直すべき点があれば、併せて行うことが望ましいと述べた。

こうした委員の意見を踏まえ、議長は、執行部に対し、特別プログラムの延長と運用面の見直しについて、どのような対応が考えられるか説明するよう指示した。

執行部は、次のとおり説明を行った。

  • 特別プログラムの期限については、(1)半年間延長し、2021年9月末までとすること、(2)今後の感染症の影響を踏まえ、必要があれば、さらなる延長を検討する旨も明らかにすること、が考えられる。
  • 特別プログラムの運用面の見直しとして、具体的には次の措置が考えられる。
    • CP・社債等の増額買入れについて、残存期間の長い社債残高が相対的に積み上がりやすいため、これまで、それぞれ7.5兆円としていた追加買入枠を合算して、市場の状況に応じて、CP等、社債等いずれにも配分し得るかたちにする。
    • 新型コロナ対応金融支援特別オペについて、民間金融機関が独自に行っている中小企業等への新型コロナ対応融資を一層積極的に支援するため、同オペの対象となる適格融資のうち、プロパー融資にかかる一金融機関当たりの上限1,000億円を撤廃する。

執行部の説明を踏まえて、委員は、特別プログラムの期限を半年間延長するとともに、提示された運用面の見直しを行うことが適当であるとの考えで一致した。

そのうえで、委員は、引き続き、「3つの柱」による金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要であるとの認識を共有した。また、委員は、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの考えで一致した。複数の委員は、足もとの市場センチメントの改善は、ワクチンへの期待が先行している面もあることから、金融市場が大きく変動するリスクには引き続き注意が必要であると指摘した。一人の委員は、今後も、政府と中央銀行、および主要中央銀行間の情報交換および協力を堅持して、金融市場、金融システムの安定性確保に十分留意しつつ、迅速かつ効果的な政策対応を行うことが重要であるとの意見を述べた。この委員は、政府とは、引き続き、それぞれの役割を踏まえてしっかりと連携していくことが必要であるとの考えを示した。

続いて、委員は、やや長い目でみた対応について議論を行った。何人かの委員は、感染症の影響により、2%の「物価安定の目標」の実現には時間がかかる可能性が高いとの見方を示した。何人かの委員は、感染症の抑制と経済活動の両立というウィズ・コロナのもとでの状況を踏まえ、2%の目標をどのように実現していくか、これまでの政策効果を改めて分析したうえで、総合的に検討することが必要ではないかとの趣旨を述べた。

委員は、2016年夏の総括的な検証を経て導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みは、現在まで適切に機能しており、その変更は必要ないとの認識を共有した。多くの委員は、この枠組みを前提に、資産買入れやイールドカーブ・コントロールの運営などの各種の施策について、点検を行うことが適当であるとの見解を示した。ある委員は、金融緩和の効果と副作用を点検し、必要に応じて持続性や効果を高める改善を図るべきであると述べた。一人の委員は、デフレに決して戻さないという決意のもとで、戦略、手段、コミュニケーションについて、海外中央銀行の取り組みや学術研究等も踏まえて、点検すべきであると付け加えた。

何人かの委員は、資産買入れやイールドカーブ・コントロールの運営について意見を述べた。ETFなどの買入れについて、複数の委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の一環として、これまで大きな役割を果たしてきており、引き続き必要な施策であるとの考えを述べた。このうち一人の委員は、いわゆる出口を検討するのは時期尚早であるとの見解を示した。複数の委員は、当面、積極的な買入れを維持するとともに、金融緩和が長期化する中、市場機能への影響や本行財務の安定性にも配意し、市場の状況に応じた柔軟な調整の余地を探るべきであるとの趣旨を述べた。別のある委員は、現在の資産買入れ方針のもとでも、市場の状況如何ではより柔軟な買入れも可能と考えるが、更なる工夫の余地がないかは検討に値すると指摘した。次に、イールドカーブ・コントロールの運営について、複数の委員は、柔軟な運営により持続性を高めつつ、起こり得る経済・物価・金融情勢の変化に対して、効果的に対応できるよう備えておくことが必要であると述べた。別の一人の委員は、国債増発に伴い需給の緩みが生じ得ることを踏まえる必要がある一方で、イールドカーブの緩やかなペースでのスティープ化は、金融緩和の長期化と金融システムの安定の両立の観点から望ましい面もあり、より丁寧できめ細かなイールドカーブのコントロールが必要となっていくとの考えを示した。

こうした議論を経て、委員は、2%の目標を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行うことが適当であるとの認識で一致した。何人かの委員は、今回の点検の目的が、2%の実現に向けて金融緩和を続けていくことにある点を明確にしていくことが重要であると強調した。大方の委員は、これまで日本銀行がコミットしている点、すなわち2%の目標やそれに向けたオーバーシュート型コミットメント、更に政策金利についてのガイダンスを見直すことは必要ないとの認識を共有した。そのうえで、委員は、点検の結果は、2021年3月の金融政策決定会合を目途に公表すること、また、点検の実施については、本日公表することが適当との意見で一致した。

この他、委員は、日本経済や企業の成長力についても議論を行った。複数の委員は、わが国の中小企業等は、生産性向上余地が大きく、デジタル化などにより経営改善を図っていくことは、日本経済の成長力強化の観点からも重要であるとの認識を示した。また、ある委員は、企業による付加価値の創出に向けた取り組みを支援するため、より多くの成長投資資金が企業に流れるよう、厚みのある社債市場をはじめとした直接金融の強化・整備が重要であり、企業の持続的な成長に向けた活動を後押しすべきであると述べた。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:
日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
   長期金利:
10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。」

これに対し、ある委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。なお、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行うこと、(2)CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年9月末までの間、CP等、社債等の合計で15兆円の残高を上限に、追加の買入れを行うこと、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、との考え方を共有した。

また、3月以降、日本銀行が新型コロナウイルス感染症の影響への対応として、導入・拡充してきた措置について、委員は、引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくとの認識で一致した。

当面の政策運営スタンスについて、委員は、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じることで一致した。そのうえで、大方の委員は、政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しているとの方針を共有した。

これに対し、ある委員は、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付け、具体的な条件下で行動することが約束されている内容に修正することが適当であるとの意見を述べた。

4.政府からの出席者の発言

内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 今月8日に閣議決定した総合経済対策は、感染拡大防止に万全を期すとともに、デジタル改革・グリーン社会の実現をはじめとする成長分野への民間投資の呼び込みや防災・減災、国土強靱化を推進していく内容となっている。実質GDPの押し上げ効果は3.6%程度、来年度中の雇用創出効果は60万人程度を見込んでおり、各種施策の速やかな実行により、民需主導の成長を実現していく。
  • 今回の特別プログラムの期限延長や運用面の見直しについては、政府の経済対策と連携しつつ、企業の資金繰り支援に万全を期すものであり、時宜を得たものと認識している。
  • 日本銀行には、引き続き、政府との緊密な連携をお願いしたい。また、感染症の経済への影響や金融資本市場の動向を注視し、適切な金融政策運営を行うことを期待する。

また、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 特別プログラムの延長等については、感染症の帰趨や政府の経済対策を踏まえて、日本銀行として、企業金融の円滑確保に万全を期すものと受け止めている。また、2%の物価安定目標を実現するためのより効果的で持続的な金融緩和の点検についても、適切に進めることを期待する。
  • 政府は、総合経済対策を実施するために、今月15日に令和2年度第3次補正予算を概算決定した。また、令和3年度予算についても、最終的な調整を行っている。来年度の税制改正については、ポストコロナの経済再生やデジタル社会、グリーン社会の実現などへの対応を行うこととしており、今月10日に令和3年度税制改正大綱として与党において取りまとめられた。
  • 総合経済対策に基づき、引き続き、政府は、日本銀行と強い緊張感を共有し、財政政策と金融政策の適切なポリシーミックスの下で緊密に連携する。日本銀行には、感染症の経済への影響を注視し、適切な金融政策運営を行うことを期待する。

5.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員、中村委員
反対:
片岡委員

片岡委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、資産買入れ方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

資産買入れ方針に関する議案(議長案)

長期国債以外の資産の買入れについて、下記のとおりとすること。

  1. ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。なお、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う。
  2. CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年9月末までの間、CP等、社債等の合計で15兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員、中村委員
反対:
なし

3.「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション基本要領」の一部改正等

上記の執行部説明を内容とする「『新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション基本要領』の一部改正等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。

4.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

6.議事要旨の承認

議事要旨(2020年10月28、29日開催分)が全員一致で承認され、12月23日に公表することとされた。

以上


  • (注)「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。」(本文に戻る)

別紙

2020年12月18日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. わが国の景気は持ち直しているが、新型コロナウイルス感染症への警戒感が続くなかで、先行きの改善ペースは緩やかなものにとどまると考えられる(別紙)。そうしたもと、当面、企業等の資金繰りにはストレスがかかり続けるとみられる。こうした情勢を踏まえ、日本銀行は、引き続き、企業等の資金繰りを支援していく観点から、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムについて、期限を半年間延長するとともに、運用面の見直しを行うこととし、本日の政策委員会・金融政策決定会合で、以下の決定を行った。なお、今後の感染症の影響を踏まえ、必要があれば、さらなる延長を検討する。
    1. (1)CP・社債等の増額買入れ(全員一致)

      CP・社債等の増額買入れの期限を半年間延長し、2021年9月末までとする。CP・社債等買入れについては、引き続き、合計約20兆円の残高を上限に買入れを実施するが、このうち、追加買入枠については、CP等と社債等の合計で15兆円とし、市場の状況に応じて、それぞれに配分することとする1

    2. (2)新型コロナ対応金融支援特別オペ(全員一致)

      新型コロナ対応金融支援特別オペの期限を半年間延長し、2021年9月末までとする。あわせて、民間金融機関が独自に行っている中小企業等への新型コロナ対応融資を一層積極的に支援するため、同オペの対象となる適格融資のうち、プロパー融資にかかる一金融機関当たりの上限(1,000億円)を撤廃することとする。

  2. 金融市場調節方針、ETFおよびJ-REITの買入れ方針については以下のとおりとする。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)
      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする2
    2. (2)ETFおよびJ-REITの買入れ方針(全員一致)

      ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う3

  3. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
    引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。
    当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)
  4. 新型コロナウイルス感染症の影響により、経済・物価への下押し圧力が長期間継続すると予想される状況を踏まえ、経済を支え、2%の「物価安定の目標」を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行うこととした。その際、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みは、現在まで適切に機能しており、その変更は必要ないと考えている。この枠組みのもとで、各種の施策を点検し、来年3月の金融政策決定会合を目途にその結果を公表する。

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員、中村委員。反対:片岡委員。片岡委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。(本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。(本文に戻る

  1. 従来、追加買入枠は、CP等、社債等、それぞれに7.5兆円としていた。なお、追加買入れ枠以外のCP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。(本文に戻る
  2. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。(本文に戻る
  3. ETFおよびJ-REITの原則的な買入れ方針としては、引き続き、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行い、その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。(本文に戻る

(別紙)

経済・物価の現状と見通し

  1. わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、持ち直している。海外経済は、一部で感染症の再拡大の影響がみられるが、持ち直している。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は増加を続けている。また、企業収益や業況感は、大幅に悪化したあと、徐々に改善している。設備投資は減少傾向にある。雇用・所得環境をみると、感染症の影響が続くなかで、弱い動きがみられている。個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費は依然として低水準となっているが、全体として徐々に持ち直している。住宅投資は緩やかに減少している。公共投資は緩やかな増加を続けている。わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りに厳しさがみられるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などにより、マイナスとなっている。予想物価上昇率は、弱含んでいる。
  2. 先行きのわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿るとみられる。もっとも、感染症への警戒感が続くなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などを受けて、マイナスで推移するとみられる。その後、経済の改善に伴い物価への下押し圧力は次第に減衰していくことや、原油価格下落の影響などが剥落していくことから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
  3. リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きい。特に、このところの内外における感染症の再拡大による影響に注視が必要である。さらに、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。

以上