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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2021年6月17、18日開催分)

2021年7月21日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2021年7月15、16日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2021年6月17日(14:00から15:38)
 
6月18日(9:00から12:23)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
  • 雨宮正佳 (副総裁)
  • 若田部昌澄(  副総裁  )
  • 政井貴子 (審議委員)
  • 鈴木人司 (  審議委員  )
  • 片岡剛士 (  審議委員  )
  • 安達誠司 (  審議委員  )
  • 中村豊明 (  審議委員  )
  • 野口 旭 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
  • 財務省 新川 浩嗣 大臣官房総括審議官(17日)
  • 中西 健治 財務副大臣(18日)
  • 内閣府 田和 宏  内閣府審議官
(執行部からの報告者)
  • 理事 内田眞一
  • 理事 清水季子
  • 理事 貝塚正彰
  • 企画局長 清水誠一
  • 企画局政策企画課長 飯島浩太
  • 金融市場局長 大谷 聡
  • 調査統計局長 亀田制作
  • 調査統計局経済調査課長 川本卓司
  • 国際局長 廣島鉄也
(事務局)
  • 政策委員会室長 中島健至
  • 政策委員会室企画役 本田 尚
  • 企画局審議役 福田英司(18日)
  • 企画局企画役 東 将人
  • 企画局企画役 門川洋一
  • 金融市場局市場調節課長 矢野正康(18日)

1.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(4月26、27日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、国債買入れを行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持の観点から、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」のもとで、CP・社債等の買入れや、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペを実施したほか、国債買入れやドルオペなどにより潤沢かつ弾力的な資金供給を行った。また、それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとで、ETFおよびJ-REITの買入れを運営した。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。翌日物金利のうち、無担保コールレートは、-0.04から-0.01%程度で推移しているほか、GCレポレートは、-0.10から-0.06%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、概ね横ばいとなっている。

株価(TOPIX)は、米欧の株価に連れて小幅に上昇している。長期金利は、長短金利操作のもとで、ゼロ%程度で推移している。国債市場の流動性について、5月調査の「債券市場サーベイ」をみると、市場の機能度判断DI(「高い」-「低い」)は、2月調査と比べて小幅に低下している。為替相場をみると、市場センチメントの改善が続くもとで、円の対ドル相場、円の対ユーロ相場ともに、円安方向に推移している。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。先進国では、ワクチン接種が進展するもとで、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は減少を続けた。経済活動の再開が進む中で、米国では3月の追加経済対策の効果も相まって、個人消費は改善傾向を強めているほか、欧州でもこれまで抑制されてきた対面型サービス業での持ち直しの動きが明確化している。この間、米国では、急速に需要が回復するもとで、原材料不足や物流遅延、対面型サービス業での人手不足感の強まりなど、一部で供給面でのボトルネックの兆しが窺われている。もっとも、この点については、現時点では経済活動の再開途上における過渡的な摩擦であるとの見方が多い。中国経済も、消費・投資ともしっかりとした増加を続けている。こうした先進国と中国の経済改善の好影響は、貿易チャネルを介して、広く新興国経済にも波及している。もっとも、新興国の中でも、インドやASEANの一部等では、新規感染者数の急増から、公衆衛生上の措置の強化を余儀なくされ、内需が下押しされている。先行きの海外経済については、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、総じてみれば回復を続けるとみられる。ただし、ワクチンの普及ペースの違いなどを背景に、そのペースは各国間で不均一なものとなる可能性が高い。また、感染症の帰趨や、それが世界経済に与える影響について、引き続き、不確実性が大きい。

地域別に動きをみると、米国経済は、回復している。個人消費は、ワクチン接種が進展し新規感染者数も減少するもとで、政府による経済対策の効果もあって、これまで抑制されてきたサービス消費も含め、増勢を強めている。住宅投資は、一部に資材不足等の影響がみられるものの、住宅ローン金利が低水準で推移するもとで、増加基調にある。企業部門をみると、業況感のはっきりとした改善が続いており、生産も増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は、機械投資を中心に増加している。物価面をみると、インフレ率(PCEデフレーター)は、総合ベース、コアベースともに、昨年の落ち込みによるベース効果に加え、経済活動の急速な再開に伴う一時的な供給面のボトルネックの影響もあって、前年比+2%を大きめに上回って推移している。先行きの米国経済は、経済活動の再開が進展するもとで、高めの成長を続けると考えられる。

欧州経済は、下押しされた状態から持ち直しつつある。個人消費は、ワクチン接種が進展し新規感染者数も減少するもとで、サービス消費も含め、下押しされた状態から持ち直しつつある。企業部門をみると、業況感は、サービス業を含め改善しており、輸出や生産も持ち直し基調を辿っている。こうしたもとで、設備投資は持ち直している。物価面をみると、インフレ率(HICP)は、総合ベースでは、昨年の落ち込みによるベース効果などからECBの目標(+2%未満かつ+2%近傍)近くとなっている一方、コアベースではこれを下回って推移している。先行きの欧州経済は、感染症の抑制が一段と進むもとで、回復していくとみられる。

中国経済は、回復を続けている。輸出は、増加している。個人消費は、一部で感染症の影響が残るものの、雇用・所得環境の改善などを受けて、増加している。固定資産投資は、内外の需要回復や堅調な企業収益を背景に、幅広い業種で増加を続けている。こうしたもとで、生産も増加を続けている。物価面をみると、インフレ率(CPI)は、本年の政府目標(前年比+3%前後)を下回って推移している。先行きの中国経済は、民間部門が主導する安定した成長経路に復していくと考えられる。

中国以外の新興国経済は、一部の国・地域では感染症の再拡大に伴い内需が下押しされているが、全体としては持ち直しの動きを維持している。NIEs経済は、輸出が増加するもとで、回復している。ASEAN経済は、一部の国では感染再拡大等を受けて内需への下押し圧力が強まっているが、輸出の増加に支えられて、総じてみれば緩やかに持ち直している。ロシア経済は、持ち直している。ブラジル経済は、輸出の増加が下支え要因となっているものの、感染再拡大の影響等から、内需を中心に持ち直しペースが鈍化している。インド経済は、春先以降の感染爆発を受けて、大幅に下押しされている。

海外の金融市場をみると、先進国において、長期金利は、米国のCPIの市場予想比上振れに伴い上昇する局面もみられたが、FRB幹部による情報発信から米国の金融緩和の長期化観測が浸透するもとで、期間を通してみれば、米国で幾分低下したほか、欧州では概ね横ばいで推移した。米欧の株価は、長期金利の上昇に伴い下落する場面もみられたが、経済再開を背景とした良好な企業決算を眺めて、期間を通してみれば上昇した。為替市場では、米国での金融緩和の長期化観測のもとで米ドル安が進み、多くの新興国の通貨は上昇した。原油価格も、グローバルな需要見通しの改善もあって、上昇した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。先行きについては、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復に向かうと予想される。ただし、当面の経済活動の水準は、感染症への警戒感が続くもとで、対面型サービス部門を中心に、感染拡大前に比べて低めで推移するとみられる。

輸出は、海外経済の回復を背景に、着実な増加を続けている。実質輸出を財別にみると、自動車関連は、半導体不足の影響などから、米国向け完成車を中心に、このところ増勢が鈍化している。情報関連は、幅広い需要が堅調に推移するもとで、はっきりとした増加を続けている。資本財は、世界的な機械投資の増加に加え、半導体製造装置の堅調さに支えられて、しっかりとした増加を続けている。先行きの輸出は、当面、半導体不足の影響による自動車関連への下押し圧力が続くものの、世界的なデジタル関連需要の堅調な拡大や設備投資の回復に支えられて、情報関連や資本財などに牽引された、着実な増加が続くとみられる。

企業収益や業況感は、対面型サービス業など一部に弱さがみられるものの、全体として改善している。法人企業統計の全産業全規模の経常利益(季節調整値)をみると、1から3月は、3四半期連続の改善となった。そうしたもとで、設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。機械投資の一致指標である資本財総供給は、企業収益の改善を背景に、デジタル関連財を中心とした増加が続いている。建設投資の一致指標である建設工事出来高(民間非居住用)は、緩やかな減少傾向が続いている。先行きの設備投資は、企業収益の改善に加え、緩和的な金融環境にも支えられて、増加傾向が明確になっていくと見込まれる。

個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力が強く、足踏み状態となっている。耐久財消費は、巣ごもり需要の拡大に加え、サービスからの需要シフトもあって、増加を続けている。非耐久財消費は、年明け以降、感染再拡大と公衆衛生上の措置に伴う需要減退を主因に再び減少している。サービス消費は、本年入り後、感染再拡大やGo Toトラベル事業の一時停止の影響から大きめの減少となったあと、3月にはいったん持ち直しに向かったが、4月は感染再拡大の影響から再び減速している。足もとにかけての個人消費の動きを、企業からの聞き取り調査や業界統計、人出の動きなどの高頻度データで窺うと、5月入り後は、公衆衛生上の措置が継続するもとで、サービス消費を中心に弱い動きが続いているとみられる。先行きの個人消費は、感染症の影響が続き、それに伴う公衆衛生上の措置が講じられている間は、対面型サービス消費を中心に下押し圧力は残り、低めの水準で足踏みした状態が続くとみられる。その後は、ワクチン接種が進み、感染症の影響も和らいでいくもとで、再び持ち直していくとみられる。

住宅投資は、下げ止まっている。新設住宅着工戸数をみると、消費税率引き上げの影響に感染症の影響が加わり減少してきたが、足もとでは持ち直している。先行きは、消費税率引き上げや感染症の影響による下押し圧力が剥落するもとで、緩和的な金融環境にも支えられて、持ち直しに向かうとみられる。

雇用・所得環境をみると、感染症の影響から、弱い動きが続いている。雇用面では、労働力調査の就業者数をみると、経済活動全体の持ち直し傾向を反映して下げ止まっているが、対面型サービス業の非正規雇用を中心に、依然低めの水準にある。一方、正規雇用は、昨年4月以降の同一労働同一賃金が下支えとなるもとで、人手不足感の強い情報通信や医療・福祉等を中心に緩やかな増加を続けている。労働需給面では、有効求人倍率は、1倍をやや上回る水準で横ばい圏内の動きが続いている。労働力率は、高齢者や女性などの労働市場への回帰の動きが一巡していることもあって、上昇が一服している。完全失業率は、振れを伴いつつも、3%前後で横ばい圏内の動きが続いている。名目賃金は、前年の落ち込みの反動に加え、一部業種における所定内給与の上昇の影響もあって、前年比プラスに転じている。先行きの雇用者所得は、経済活動の持ち直しや企業業績の改善を受けて、下げ止まりから持ち直しに向かうとみられる。

鉱工業生産は、内外需要の増加を背景に、着実な増加を続けている。先行きについては、当面、半導体不足の影響が下押しに作用するものの、デジタル関連需要の堅調さや世界的な設備投資需要の回復などに支えられて、着実な増加を続けるとみられる。

物価面について、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格は上昇しており、足もとでは0%程度となっている。先行きの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、目先、0%程度で推移すると予想される。その後は、携帯電話通信料の引き下げの影響などを受けつつも、景気の回復やエネルギー価格の上昇などを背景に、上昇率を高めていくとみられる。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、企業の資金繰りに厳しさがみられるものの、全体として緩和した状態にある。

資金需要面では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた予備的な需要などによる資金ニーズは全体として高水準となっているが、大企業を中心に手許資金を返済する動きもみられている。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、総じて良好な発行環境となっている。企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。こうした中、銀行貸出残高の前年比、CP・社債計の発行残高の前年比は、高めの伸びとなった前年のウラ要因などから伸び率が縮小し、それぞれ2%台前半、7%台前半となっている。日本銀行・政府の措置と金融機関の取り組みにより、外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されている。企業倒産も低水準で推移している。もっとも、企業の資金繰りは、一頃より改善しているものの、感染症の影響を受けた売上げ減少などを背景になお厳しさがみられる。

この間、マネタリーベースは、前年比で2割台前半のプラスとなっている。マネーストックの前年比は、8%程度の伸びとなっている。

2.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、ワクチン接種の進展に伴う世界経済の回復期待から、総じてみれば市場センチメントは改善傾向が続いているとの見方を共有した。そうした中で、一人の委員は、感染症の影響が早期に収束した場合の市場の過熱リスクや、マクロ的に脆弱な一部新興国からの資本流出リスクなどには警戒が必要であると指摘した。別のある委員は、米国の債券市場において、低格付け商品のスプレッドが歴史的な低水準にあることは気がかりであると述べた。

海外経済について、委員は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつも、総じてみれば回復しているとの認識で一致した。一人の委員は、不確実性、不均一性は残るものの、ワクチン接種の進展で世界経済の回復は一層明瞭になったとの見方を示した。ある委員は、国際機関は世界経済見通しを相次いで上方修正していると指摘した。もっとも、別のある委員は、国・地域によって、ワクチン接種の状況に差異がある点には留意が必要と述べた。海外経済の先行きについて、委員は、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、総じてみれば回復を続けるとみられるが、ワクチンの普及ペースの違いなどを背景に、そのペースは各国間で不均一なものとなる可能性が高いとの認識を共有した。そのうえで、多くの委員は、こうした見通しについては、様々なリスク要因があり、不確実性が高いとの見方を示した。具体的なリスク要因として、委員は、変異株を含む感染症の帰趨やワクチンの普及ペース、各国の積極的なマクロ経済政策の影響、米中関係を始めとする地政学的リスクなどを指摘した。

地域別にみると、米国経済について、委員は、回復しているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、経済活動の再開が進展するもとで、高めの成長を続けるとの見方を共有した。米国の物価動向について、何人かの委員は、大規模な財政出動やワクチン接種の進展などを受けて、個人消費を中心に急速に需要が回復している一方、一部の財・サービスでは供給が追い付いていないため、物価上昇に繋がっているとの認識を示した。このうちの一人の委員は、労働市場の回復が徐々に進み、供給面の制約が解消されていけば、物価上昇率は2%近傍に落ち着いていくとの見方を示した。もう一人の委員は、中長期のインフレ予想は相対的に安定しており、足もとのような物価上昇は一時的ではないかとの考えを述べた。

欧州経済について、委員は、下押しされた状態から持ち直しつつあるとの見解を共有した。何人かの委員は、足もとではワクチン接種が進展し、経済再開の動きが拡がっていると指摘した。先行きについて、委員は、感染症の抑制が一段と進むもとで、回復していくとの認識で一致した。一人の委員は、若年層の失業率が高止まりしている中で、「次世代EU」や各国政府の政策の実効性などには不確実性があり、先行きの回復ペースについては慎重にみていると述べた。

中国経済について、委員は、回復を続けており、先行き、民間部門が主導する安定した成長経路に復していくとの認識を共有した。一人の委員は、消費と投資を含む内需がしっかりとした増加を続けているが、米欧との政治的な対立がリスクであると指摘した。

新興国経済について、委員は、一部の国・地域では感染症再拡大に伴い内需が下押しされているが、全体としては持ち直しの動きを維持しているとの見方を共有した。もっとも、複数の委員は、新興国ではワクチン接種の本格化になお時間を要するとみられる中、一部の国・地域では感染者数が増加しており、内需に停滞の動きがみられる点は気がかりであると述べた。

以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直しているとの認識で一致した。一人の委員は、公衆衛生上の措置が続くもとで、対面型サービスでは下押し圧力が強いが、海外経済の回復などを背景に、対面型サービス以外の経済活動は相応に維持されているとの見方を示した。別の一人の委員は、ワクチンの接種ペースが加速するもとで、わが国経済は、前向きな循環メカニズムが働き始めていると指摘した。もっとも、ある委員は、わが国の景気の改善は、欧米に比べ、特に個人消費や設備投資で力強さに欠けると指摘した。また、別のある委員は、生産は感染症拡大前の水準を回復した一方で、個人消費は対面型サービスを中心に下押し圧力が続いているなど、引き続き、セクターごとに改善ペースが大きく異なっている点には注意が必要であると述べた。

景気の先行きについて、委員は、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられるとの認識を共有した。また、委員は、その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きな循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済はさらに成長を続けるとの見解を共有した。一人の委員は、足もとワクチン接種が急速に進捗しつつあるもとで、短期的には、飲食・宿泊等の対面型サービス消費のペントアップ需要の拡大等により、相応の回復が期待できるとの見方を示した。別の一人の委員は、公衆衛生上の措置が一部緩和される見込みにあり、今後とも感染が落ち着いた状況が続けば、サービス関連消費も徐々に回復ペースを取り戻していくとみられるほか、ワクチン接種の加速は先行きの経済にとって明るい話題であると述べた。ある委員は、ワクチン接種が進展し、感染症の影響が収束に向かえば、潜在成長率を上回る成長も期待できるとの見解を示した。別のある委員は、ワクチン接種が進展するにつれ景気が急速に回復した欧米の事例を踏まえると、わが国でも同様の回復が起こることが期待されると述べた。

輸出や生産の現状について、委員は、着実な増加を続けているとの認識を共有した。複数の委員は、輸出や生産は、自動車関連が一服しているものの、情報関連や資本財が全体を牽引していると指摘した。先行きの輸出・生産について、委員は、当面、半導体不足の影響による自動車関連への下押し圧力が続くものの、世界的なデジタル関連需要の堅調な拡大や設備投資の回復に支えられて、情報関連や資本財などに牽引された、着実な増加が続くとの見解を共有した。ある委員は、半導体不足の影響が生産を下押しする期間は、当初みていたよりも長引きそうであるとの見方を示した。

設備投資について、委員は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直しているとの認識を共有した。一人の委員は、製造業の設備投資は拡大しているが、非製造業の設備投資はなお弱いと指摘した。また、ある委員は、業況の厳しい先では、増大した企業債務が成長に向けた設備投資の重石となっていないか、企業や金融機関の対応状況の丁寧なモニタリングが重要であると述べた。先行きの設備投資について、委員は、企業収益の改善に加え、緩和的な金融環境にも支えられて、増加傾向が明確になっていくとの見解を共有した。一人の委員は、この20年間の欧米各国とのデジタル関連投資の蓄積の差は大きく、生産性向上の観点から、わが国企業がデジタル化を更に加速していくことが重要であるとの考えを示した。

個人消費について、委員は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力が強く、足踏み状態となっているとの認識で一致した。先行きの個人消費について、委員は、感染症の影響が続き、それに伴う公衆衛生上の措置が講じられている間は、対面型サービス消費を中心に下押し圧力は残り、低めの水準で足踏みした状態が続くとみられるが、その後は、ワクチン接種が進み、感染症の影響も和らいでいくもとで、再び持ち直していくとの見解を共有した。ある委員は、ワクチン接種が進展するもとで、5月の景気ウォッチャー調査の先行き判断DIは対面型サービス業を含めて幅広く上昇しているなど、消費の先行きに明るい兆しがみられると指摘した。また、多くの委員は、先行き、ワクチン接種の進展などに伴い感染症への警戒感が和らいでいけば、いわゆる「強制貯蓄」の取り崩しが個人消費を押し上げる可能性もあるとの見方を示した。もっとも、このうちの一人の委員は、感染症に対する有効な治療薬がない状況は続いており、個人消費の先行きをなお慎重にみていると述べた。

雇用・所得環境について、委員は、感染症の影響から、弱い動きが続いているとの認識で一致した。先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動の持ち直しや企業業績の改善を受けて、下げ止まりから持ち直しに向かうとの見方を共有した。ある委員は、名目賃金の前年比がプラスに転じている点を指摘したうえで、その要因の一部には非正規雇用の減少が平均値を押し上げている面もあるため、雇用・所得環境について丁寧に評価する必要があると述べた。

物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格は上昇しており、足もとでは0%程度となっているとの認識で一致した。また、予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移しているとの見方を共有した。一人の委員は、企業が値下げにより需要を喚起する動きは広範化しておらず、経済の落ち込みに比べて物価は底堅いとの認識を示した。複数の委員は、物価の基調を捉える指標はなお弱めの動きが続いており注意が必要であると述べた。

先行きについて、委員は、消費者物価の前年比は、目先、0%程度で推移すると予想されるが、その後は、経済の改善が続くことや、エネルギー価格の上昇、携帯電話通信料の引き下げの影響剥落などから、徐々に上昇率を高めていくとの認識を共有した。多くの委員は、国際商品市況の上昇を映じて国内企業物価も上昇しており、こうした動きが消費者物価の上押し要因になり得るとの見方を示した。このうち一人の委員は、ペントアップ需要が現れ始める本年後半から物価を巡る情勢が改善し、物価上昇率も高まっていくとの見方を示した。もう一人の委員は、国際商品市況の上昇や内需の改善が消費者物価の上昇に寄与するものの、予想インフレ率が上昇していないもとでは企業の価格転嫁の動きは限定的になると考えられ、物価上昇の勢いは力強さに欠けるとの認識を示した。別のある委員は、ワクチン接種の状況次第では物価が上振れる可能性もあるが、根強いデフレマインドもあって、物価上昇圧力は一時的なものにとどまるとの見方を示した。この間、一人の委員は、経済の回復が消費者物価の持続的な上昇に繋がるには、財政の支えがある中で緩和的な金融環境が維持され、家計と企業の余剰資金が消費・投資に向かうことが重要であると述べた。

経済・物価見通しのリスク要因として、委員は、感染症の帰趨や、その影響といった点について、不確実性が大きいとの認識で一致した。また、委員は、感染症の影響が収束するまでの間、成長期待が大きく低下せず、金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要であるとの見解を共有した。一人の委員は、ワクチン接種の進展により、当初みていたよりも早い時期に感染症の影響の収束が意識されるような景気展開になり得るとしたうえで、ペントアップ需要が顕在化する局面では、特にサービス価格が上振れる可能性があるとの見方を示した。同時に、この委員は、賃金動向の不透明感が高いもとでは、物価が下振れるリスクもあると述べた。別の一人の委員は、経済活動は、ワクチン接種の進展に伴い活発化すると考えられるが、変異株を含む感染症の帰趨と経済・物価の下振れリスクにも引き続き注意が必要であるとの意見を述べた。また、何人かの委員は、ワクチン普及に伴う世界経済の回復とそれに伴う需要拡大を背景に、幅広い品目の価格が上昇しているが、これが長期化し、価格転嫁が十分に進まない場合には、交易条件の悪化を通じて国内経済、更には物価の下押し要因になり得ると指摘した。ある委員は、わが国の予想インフレ率の形成メカニズムの特徴などを踏まえると、物価については、なお下振れリスクに注意すべき局面にあると指摘した。

2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、企業の資金繰りに厳しさがみられるものの、全体として緩和した状態にあるとの認識で一致した。企業等の資金繰りについて、委員は、一頃より改善しているものの、感染症の影響によりなお厳しさがみられるとの見方を共有した。この間、ある委員は、21年3月期の決算によれば、国内銀行は、感染症の影響により当初懸念されていた与信費用の急増に伴う大幅な収益悪化を回避できており、金融システムの安定性は維持されているとの見方を示した。

3.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

委員は、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)、(2)円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETF・J-REITの買入れ、の「3つの柱」に基づく金融緩和措置は所期の効果を発揮しているとの見解を共有した。当面の金融政策の基本的な運営スタンスについて、委員は、引き続き、この「3つの柱」による金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要であるとの認識を共有した。また、委員は、当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの方針が適当との考えを共有した。

委員は、本年9月末が期限となっている特別プログラムの延長について議論した。複数の委員は、銀行貸出残高の動向や各種のアンケート調査の結果などをみると、なお資金需要が根強いセクターが存在するように窺われると指摘した。一人の委員は、外部資金の調達環境は良好な状態を維持しているが、企業等の資金繰りは、対面型サービス業を中心になお厳しさが残っているとの認識を示した。委員は、感染症の影響の収束には暫く時間がかかると予想されるため、企業等の資金繰りには今後もストレスのかかる状況が続くとの認識を共有した。そうしたもとで、一人の委員は、感染症の影響の収束が確実になるまでは、現在の政策対応を着実に続けることが重要であるとの見解を示した。ある委員は、当面は、資金繰り懸念が生じるリスクが残るため、倒産件数の抑制に寄与してきた特別プログラムを延長することが適当であると述べた。別のある委員は、特別プログラムの延長を今回決定すれば、金融機関に早めに方針を示すことができ、融資を受ける企業等にも安心感を与えることができるとの考えを示した。こうした議論を経たうえで、委員は、今回の会合で特別プログラムの期限を来年3月末まで半年間延長し、引き続き、企業等の資金繰りを支援していくことが適当であるとの判断で一致した。

更に、委員は、気候変動問題に関する金融政策面での対応について議論を行った。何人かの委員は、気候変動問題は、中長期的に、経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼし得るため、中央銀行の使命にも関係するとの認識を示した。また、何人かの委員は、各国の中央銀行は、各々の使命のもとで、気候変動問題への対応を検討していると指摘した。多くの委員は、そうしたもとで、日本銀行としても、金融政策面からどのような貢献ができるか検討し、方向性を示す局面に来ているとの意見を述べた。

続いて、委員は、気候変動問題に関する金融政策面での対応を検討する際に考慮すべきポイントについて議論した。何人かの委員は、(1)日本銀行の使命に則したものであること、また、(2)市場中立性に配慮し、ミクロの資源配分への具体的な介入はできるだけ避けることが重要であるとの認識を示した。また、複数の委員は、(3)気候変動問題を巡る外部環境は流動的であり、そうしたもとでは柔軟な対応が可能な仕組みとするべきであるとの考えを示した。

日本銀行の使命との関係について、複数の委員は、中央銀行の立場から、民間における気候変動への対応を金融面から支援することは、長い目でみたマクロ経済の安定、ひいては物価の安定に資するものであり、「物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資する」という金融政策の理念と整合的であるとの見方を示した。また、一人の委員は、民間部門による気候変動問題への対応は、新たなイノベーションの機会を通じて、潜在成長率の引き上げに寄与する可能性があり、そうした動きを日本銀行が支援することは適切であると述べた。この間、ある委員は、気候変動問題に対する民間部門の取り組みや経済・物価への影響については、議論が尽くされていない点も多いため、政策を具体化する際には慎重に行う必要があるとの見解を示した。別のある委員は、気候変動問題に金融政策で対応する場合、それが物価などにどのように影響し得るのかについても、十分に検討していくべきであると述べた。

市場中立性への配慮について、何人かの委員は、日本銀行自身が個別の企業や事業がグリーンかどうかを判断することは、ミクロの資源配分に直接的に関与することになるため、できるだけ回避すべきであるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、ミクロの資源配分にまで踏み込んで気候関連政策を行うことは、基本的には政府・国会の役割であると指摘した。もう一人の委員は、気候変動問題は「市場の失敗」の性質を持つことから、政府や中央銀行が対応する余地があるが、その際には、政府と中央銀行の間で適切な分業を模索することが望ましいと述べた。

外部環境の変化への柔軟な対応という点について、何人かの委員は、タクソノミーなど気候変動を巡る国際的な議論は現在も続いており、また、今後、情勢が大きく変わる可能性もあると指摘した。一人の委員は、気候変動問題の経済・物価・金融などへの影響は中長期的に明らかになっていくものであることを踏まえると、この問題が影響を及ぼすメカニズムやタクソノミーなどに関する議論が収斂するまで待つのではなく、柔軟な対応が可能な仕組みとしたうえで、早めに対応することが望ましいとの認識を示した。

そのうえで、委員は、具体的な対応策について検討を行った。ある委員は、現行の成長基盤強化支援資金供給の考え方を援用し、金融機関自らが判断する多様な気候変動対応投融資に対して、日本銀行がバックファイナンスする仕組みであれば、ミクロの資源配分への直接的な関与を避けつつ、タクソノミーの変遷といった情勢変化に柔軟に対応できるとの考えを示した。複数の委員は、そのような仕組みとする場合、規律付けの観点から、金融機関に対して、気候変動対応投融資の状況等につき、対外的な情報開示を求めていくことが考えられるとの意見を述べた。こうした議論を経て、委員は、気候変動問題に関する金融政策面での対応として、金融機関の気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな仕組みを導入することが適当との判断で一致した。また、委員は、この新たな仕組みを、成長基盤強化支援資金供給の後継と位置付け、同資金供給の新規貸付は、来年6月の期限をもって予定通り終了することが適当であるとの見解を共有した。ある委員は、成長基盤強化支援資金供給の主な狙いは、成長力の強化に向けた取り組みの重要性を訴えることにあったが、導入から10年以上経過した現在、金融機関による取り組みは進展し、成長力強化が重要との認識も浸透したと述べた。

複数の委員は、民間金融機関の気候変動対応を支援する新たな資金供給の仕組みの詳細については、金融機関等の関係者との意見交換を踏まえて検討する必要があると述べた。そこで、委員は、新たな仕組みの導入について、今回の対外公表文で示したうえで、関係者との意見交換を踏まえ、7月の会合で、その骨子素案を公表することが適当であるとの認識を共有した。ある委員は、準備が整えば、年内に資金供給を開始することがひとつの目途になるとの認識を示した。

このほか、委員は、金融政策運営に関連する各種の留意点についても議論を行った。一人の委員は、国際的に、経済回復に向けた政策支援の継続の必要性に関しては認識が共有されていると指摘し、わが国でも、引き続き、粘り強く金融緩和を継続することが重要であると述べた。ある委員は、先行きの景気回復という追い風を捉えて緩和姿勢を強めることで、2%の「物価安定の目標」の達成に繋げることが重要であるとの見解を示した。また、一人の委員は、日本銀行の使命である2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、対外コミュニケーションを充実すべきであると述べた。別のある委員は、SNSなど国民に直接情報を伝えるツールが整ってきているもとでは、情報の受け手の置かれた多様な状況なども意識したうえで、丁寧に情報を発信していくことが一層重要になっているとの認識を示した。この間、一人の委員は、感染症の影響により遅れることとなった経済構造の変革を進めていくことが重要であり、日本銀行としても、ポストコロナ時代に向けた世界的な経済社会構造の変化を踏まえたうえで、わが国経済の健全な発展に資する政策対応について、様々な工夫を検討していく必要があると指摘した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。」

これに対し、ある委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、(1)ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行うこと、(2)CP等、社債等については、2022年3月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に、買入れを行うこと、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、との考え方を共有した。

また、昨年3月以降、日本銀行が新型コロナウイルス感染症の影響への対応として、導入・拡充してきた措置について、委員は、引き続き、(1)特別プログラム、(2)円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETF・J-REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくとの考えを共有した。

当面の政策運営スタンスについて、委員は、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの認識を共有した。そのうえで、大方の委員は、政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しているとの方針で一致した。

これに対し、ある委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとの意見を述べた。

4.政府からの出席者の発言

以上の議論を踏まえ、政府からの出席者から、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(11時36分中断、11時58分再開)。

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 「特別プログラム」の延長については、企業金融の円滑確保等に万全を期する姿勢を示すものと受け止めている。また、気候変動問題は、政府にとって重大な関心事であり、日本銀行が対応を検討することについては、前向きな動きと受け止めている。これらについて、適切にご検討頂きたい。
  • 本日、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太方針2021)」が取り纏められる予定である。政府は、感染症対応に万全を期したうえで、グリーンやデジタル等の成長分野への民間需要の喚起や労働生産性の向上、持続的な所得の増加等に取り組む方針である。また、歳出・歳入両面の改革に確りと取り組んで参りたい。
  • 日本銀行には、今後とも、政府との連携のもと、感染症への対応をはじめ、必要な措置を適切に講じることを期待する。

また、内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 昨日、9都道府県での緊急事態宣言解除等を決定したが、政府としては、ワクチン接種を迅速に実行するとともに、引き続き、感染拡大の抑制を最優先に対策を徹底したうえで、厳しい影響を受ける方々に対しては重点的・効果的に支援していく。
  • 骨太方針2021については、グリーン、デジタル、地方、子ども、の4つの課題に重点的な投資を行い、力強い成長を目指すこととしている。こうした取り組みによって、民間の大胆な投資とイノベーションを促し、経済社会構造の転換を実現してくという方向性を示している。
  • 今回の金融政策決定会合における提案については、時宜を得たものと認識している。日本銀行においては、引き続き、政府と緊密に連携し、適切な金融政策運営を期待する。

5.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。

採決の結果

  • 賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員
  • 反対:片岡委員
  • 棄権:政井委員

片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。

政井委員は、民間企業の取締役候補者であることが明らかになっているため、金融政策に関する意思決定の中立性・公正性をより明確にする立場から、自身の意思として議決権を行使しないこととしたい、として棄権した。なお、「2.資産買入れ方針」、「3.『新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション基本要領』の一部改正等」、「4.対外公表文(当面の金融政策運営について)」についても、同じ理由から棄権した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、資産買入れ方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

資産買入れ方針に関する議案(議長案)

長期国債以外の資産の買入れについて、下記のとおりとすること。

  1. ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
  2. CP等、社債等については、2022年3月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に、買入れを行う。

採決の結果

  • 賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員、中村委員、野口委員
  • 反対:なし
  • 棄権:政井委員

3.「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション基本要領」の一部改正等

新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの期限を延長するための「『新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション基本要領』の一部改正等に関する件」が採決に付され、賛成多数で決定された。

  • 賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員、中村委員、野口委員
  • 反対:なし
  • 棄権:政井委員

4.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、賛成多数で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

  • 賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員、中村委員、野口委員
  • 反対:なし
  • 棄権:政井委員

6.議事要旨の承認

議事要旨(2021年4月26、27日開催分)が全員一致で承認され、6月23日に公表することとされた。

以上


  • (注)「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。」(本文に戻る)

別紙

2021年6月18日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの延長(賛成8棄権1)(注1)
      • 企業等の資金繰りは、一頃より改善しているが、新型コロナウイルス感染症の影響からストレスのかかる状況が続くとみられる。こうした情勢を踏まえ、引き続き、企業等の資金繰りを支援していく観点から、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムについて、期限を2022年3月末まで半年間延長する。
    2. (2)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対1棄権1)(注2)
      • 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
        短期金利:
        日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
        長期金利:
        10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。
    3. (3)資産買入れ方針(賛成8棄権1)(注1)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. [1]ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
      2. [2]CP等、社債等については、2022年3月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に、買入れを行う。

  2. わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は着実な増加を続けている。また、企業収益や業況感は全体として改善している。設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。雇用・所得環境をみると、感染症の影響から、弱い動きが続いている。個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力が強く、足踏み状態となっている。住宅投資は下げ止まっている。公共投資は緩やかな増加を続けている。わが国の金融環境は、企業の資金繰りに厳しさがみられるものの、全体として緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格は上昇しており、足もとでは0%程度となっている。また、予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。
  3. 先行きのわが国経済を展望すると、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済はさらに成長を続けると予想される。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、目先、0%程度で推移すると予想される。その後、経済の改善が続くことや、エネルギー価格の上昇、携帯電話通信料の引き下げの影響剥落などから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
  4. リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響といった点について、不確実性が大きい。さらに、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。
  5. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。

    引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ-REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。

    当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注3)

  6. 気候変動問題は、中長期的に、経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼしうる。日本銀行としては、中央銀行の立場から民間における気候変動への対応を支援していくことは、長い目でみたマクロ経済の安定に資するものと考えている。その際、金融政策面での対応に当たっては、市場中立性に配慮しながら行うことが重要である。こうした観点から、日本銀行は、気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するため、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給の仕組みを導入することが適当と判断した。この新たな仕組みは、成長基盤強化支援資金供給制度の後継と位置付けるが(同制度の新規貸付は現在の期限である2022年6月をもって終了)、同制度の終了を待たずに、年内を目途に実施する。なお、その骨子素案を、7月の金融政策決定会合で公表する予定である。

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員、中村委員、野口委員。棄権:政井委員。なお、政井委員は、本公表文の採決についても、棄権した。(本文に戻る
  2. (注2)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員。反対:片岡委員。棄権:政井委員。片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。(本文に戻る
  3. (注3)片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。(本文に戻る