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金融政策決定会合における主な意見
(2019年6月19、20日開催分)1

2019年6月28日
日本銀行

1.金融経済情勢に関する意見

経済情勢

  • わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。先行きも、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。
  • わが国経済は、輸出と生産に海外経済減速の影響がみられるが、堅調な内需に支えられて、緩やかな拡大基調を維持している。市場には神経質な動きもみられるが、当面は各国の景気対策の効果を慎重に見極めることが必要である。
  • 世界経済の不確実性やリスクの高まりの中でも1~3月期の設備投資が増加したことは、日本経済の頑健性を示すものといえる。
  • わが国の景気は、基調としては緩やかに拡大している。海外経済は急激な減速を一旦回避出来ているものの、様々なリスクを抱えている点には注意が必要である。
  • 世界経済は、緩和的な金融環境や中国などにおける景気刺激策を背景に、本年後半以降、緩やかに持ち直していくと考えられる。ただし、海外経済を巡るリスクは大きく、わが国の企業・家計のマインドに与える影響を丹念にみていく必要がある。
  • 世界経済を巡るリスクは、前回会合対比で更に下方に厚くなっている。貿易摩擦と地政学的な緊張が高まった結果、企業マインドの更なる悪化がみられており、金融市場における投資家心理や各国の金融政策の方向性などにも影響を及ぼしつつある。
  • 世界経済の不透明感の高まりにより、FRBやECBも緩和的スタンスに立ち戻っており、世界的に10年物国債金利は低下している。こうしたもとで、現在、日本は、スイス、ドイツ、デンマークに次いで、主要国の中で4番目に長期金利が低い国になっている。
  • 米中貿易摩擦の激化やNo Deal Brexitの可能性等、海外経済の不確実性の増大が国内経済と人々の心理に影響し始めている。また、消費税率引き上げも経済・物価への下押し要因である。
  • 海外経済の減速が長期化し、減速幅も一頃の想定よりも大きい可能性が高まっている。国内景気については、米中貿易摩擦や消費税率引き上げなどの影響を踏まえつつ、より慎重にみていく必要がある。

物価

  • 消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
  • 人件費や原材料価格の上昇を背景に食料品等の値上げが拡がっているほか、長期化する労働需給の逼迫がサービス価格の上昇に繋がっている。物価は底堅さが感じられ、プラスの需給ギャップを原動力とした物価上昇の基本的なメカニズムが働いている。
  • プラスの需給ギャップが物価上昇を支え、消費者物価の前年比はプラスで推移している。今後、物価上昇率を高め、これを維持するためには、労働需給が相応にタイトな状態に維持され、更なる賃金上昇とその継続が必要である。
  • プラスの需給ギャップによる物価上昇圧力は維持されているが、企業の省力化投資などに伴う生産性向上による物価抑制効果に打ち消されるかたちで、物価上昇は遅れている。
  • コンビニエンスストア業界では、深夜アルバイトの賃金の高騰を受けて、深夜営業の取り止めを検討していると言われている。これは結果的に時間当たりの売上げの増加、即ち、生産性の上昇になるが、値上げには結びつかない。この様な事例が経済全体に数多く存在することで、物価上昇が遅れている可能性がある。
  • わが国では、米中貿易摩擦の影響が大きく、2%の「物価安定の目標」からまだ距離があり、物価上昇に加速の動きがみられない。
  • 需給ギャップが一本調子に拡大する可能性は低く、予想インフレ率も弱い状況が続いていることなどから、この先、物価上昇率が2%に向けて勢いを強めるとは判断できない。

2.金融政策運営に関する意見

  • 「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要である。
  • 海外経済の先行き不確実性は高いが、金融・財政のポリシーミックスが維持される中で、これまで以上に金融仲介機能や市場機能面の副作用に留意しつつ、現行の金融緩和政策を粘り強く続けることで、「物価安定の目標」の達成を目指すべきである。
  • 息長く経済の好循環を支えて、「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策運営方針を粘り強く継続すべきである。
  • 下方リスクに留意すべきだが、基調として緩やかな拡大を続けるという景気のメインシナリオも、2%に向けた物価のモメンタムも維持されているので、現在の金融政策運営方針を続けることが適当である。
  • 今後とも、金融緩和の持続性を高めるための措置を不断に検討していく必要がある。
  • 企業・家計のマインド悪化などが物価上昇のモメンタムへ与える影響について、しっかり点検する必要がある。モメンタムが失われるような状況が懸念される場合には、必要な政策を適切に実施していくことも考えなければならない。
  • 各国中央銀行が世界経済の減速と不確実性の高まりを警戒している中、物価見通しの基調に変調が起きれば何らかの政策対応を行うとの姿勢を維持することが、デフレ脱却のカギである。追加緩和手段として、長短金利の調整、マネタリーベース拡大ペースの加速、資産購入額の増額等、全ての政策手段を考慮すべきである。
  • 米欧で金融緩和期待が高まるなど外部環境が変化する中、日本銀行としても金融緩和を強化する必要がある。また、幅広い追加緩和オプションの実現可能性や効果と副作用について、さらに検討を深めておく必要がある。
  • 銀行の収益悪化が進む中、貸出金利の水準は、金融緩和の効果が反転し銀行貸出を減少に転じさせる「リバーサル・レート」に近付きつつあると考えられる。一段と貸出のベースレートが低下した場合には、金融政策の効果を実体経済へ波及させる重要なチャネルである銀行貸出が減少しかねない。
  • 中央銀行が金融機関に対してマイナス金利の資金供給を行うことは、経済・金融情勢次第では、銀行貸出の増加にはつながらない惧れや金利押し下げ圧力をもたらす懸念もある。

3.政府の意見

財務省

  • 「経済財政運営と改革の基本方針2019」について、とりまとめに向け議論を進めている。今後とも、「新経済・財政再生計画」に沿って、経済・財政一体改革を推進していく。
  • 先日の福岡G20では、議長国として日本が設定した優先課題について活発な議論が行われ、大阪サミットにつながる成果を得た。
  • 日本銀行が、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

内閣府

  • 21日に取りまとめる骨太方針では、グローバルな環境変化を強く意識した上で、Society 5.0実現の加速を前面に据えている。財政については、次世代型行政サービスを通じた効率と質の高い行財政改革を中心に位置付けた。リスクが顕在化する場合は、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行することも明記した。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向け、金融緩和を着実に推進していくことを期待する。

以上


  1. 「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。 本文に戻る