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第5章 決済と銀行2.預金と銀行

銀行預金を使った決済

次に、私たちが銀行預金という決済手段を利用する場合を考えてみます。前にもお話ししたように、銀行預金を決済手段として使うためには、預金者が銀行に「指図」(=指示)をせねばなりません。これは、おさつと違って、預金という決済手段が支払人の手元ではなく銀行に置かれていることによるものです。銀行に預金の移動を指示する手段には、振込依頼やクレジットカード、デビットカードなど色々なものがありますが、いずれにしても「支払人の預金口座の残高を減らして、受取人の預金口座の残高を増やせ」という指示が行われる点は同じです。

さて、いまAさんがB社に預金を振替えて決済を行おうとしているとします。このとき、Aさん・B社の両方がX銀行に預金を置いていれば、振替はX銀行の中で完結します。Aさんは「X銀行への預金」を払い出し、B社は同じく「X銀行への預金」を受け取っています。これは、AさんもB社も、おかねを預けておく場所としてX銀行を選んでいることによるものです。ところが実際には、Aさんが預金を置いている銀行とB社が預金を置いている銀行が異なる、ということが起こります。例えば、AさんはX銀行に預金を置き、B社はY銀行に預金を置く、という場合です。

銀行同士の決済が必要になる

こういうケースでは、Aさんが払い出す預金は「X銀行への預金」ですが、B社が受け取るのは「Y銀行への預金」です。つまり、X銀行がAさんの預金を減らし、Y銀行がB社の預金を増やすことでA・B間の決済が行われるわけです。このように銀行は、預金者が「私の預金バツバツ円を、よその銀行に口座を持つ○○さんに振替えてほしい」と指示してきた場合、その指示に従ってバツバツ円をよその銀行に届けなければなりません。つまり銀行は、銀行をまたがった預金の振替を指示された場合、今度は自分が銀行間の決済を行わねばならないのです。

銀行間決済が必要になることを示すイメージ図。銀行は、預金者から「預金バツバツ円を、よその銀行に口座を持つ○○さんに振り替えて欲しい」との指示を受けた場合、その指示に従ってバツバツ円をよその銀行に届けなければならない。

なお、銀行がよその銀行と決済を行うのは、顧客から別の銀行への振替を指示された場合に限りません。銀行は、自分自身のおかねを別の銀行に貸すとか、よその銀行から国債を買ってその代金を支払うなど、顧客の指示とは無関係な銀行間決済も行っています。顧客からの指示に基づく場合にせよ、基づかない場合にせよ、銀行はどのようにして銀行間決済を行うのでしょうか。実は、銀行が利用しうる決済手段も、「おさつ」と「よその銀行への預金」であり、私たちが利用する決済手段と基本的に変わりません。

もっとも、銀行間決済は一般に大口です――銀行間のおかねの貸し借りや銀行間の国債の売買は、平均すると1件が何十億円という大きさです。また、顧客の指示に基づく別の銀行への支払も、銀行間決済としては大口となっています。これは、顧客の指示に基づいて行う別の銀行への支払は、確かに1件1件は小口なのですが、これらを銀行間で決済するにあたり、銀行は1件1件バラバラに決済せず全体をまとめて決済するためです。このように大口の銀行間決済をおさつで行おうとすると嵩が張りますし、遠い銀行との決済ではおさつの運搬が大変です。このため、銀行がよその銀行との決済をおさつで行うことはほとんどなく、ふつうは預金の振替で行っています。