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第5章 決済と銀行4.リテール決済とホールセール決済

ここまでで、決済と銀行の基本的な関係がお分かりいただけたかと思います。銀行はおさつや預金という決済手段を取り扱うことで、決済の世界で大切な役割を果たしているのです。さて、決済の世界は、(1)個人や企業といった決済サービスのユーザー、(2)その下にいる銀行、(3)さらにその下にいる中央銀行、という3つの層から構成されています。人々や企業がおさつを使って決済するとき、これは(1)の層がダイレクトに(3)の層を利用していることになります。他方、人々や企業が銀行預金を用いて決済する場合、これは(1)の層が(2)の層を利用していることになります。また、銀行間決済が中央銀行で行われていることは、(2)の層が(3)の層を使って決済していると表現できるわけです。

このうち、(1)の層に属する人々や企業の間の決済を「リテール決済」と呼ぶことがあります。リテール決済は、銀行や中央銀行が提供する預金やおさつの利用者の間の決済ですから、この言葉には「利用者間決済」というニュアンスが込められています。また(2)の層に属する銀行の間の決済は「ホールセール決済」と呼ぶことがあります。ホールセール決済は、銀行預金という決済手段の提供者の間の決済ですから、この言葉には「提供者間決済」というニュアンスが込められています。「リテール決済」のことを小口決済、「ホールセール決済」のことを大口決済と呼ぶ人もいます。確かにリテール決済は個人や企業による決済が中心ですから、銀行間決済を中心とするホールセール決済に比べ1件1件の決済は少額となるのが一般的と考えられます。しかし、銀行間でもごく少額の決済はありますし、反対に企業が銀行預金を使って巨額の決済を行うこともありますから、「ホールセール」「リテール」はあくまで、決済が行われる「層」の違いによる分類だと理解しておくとよいでしょう。

リテール決済とホールセール決済の違いを示す概念図。決済の世界が、(1)決済サービスのユーザー、(2)銀行、(3)中央銀行、という3つの層から構成されていることなどを示す。詳細は本文のとおり。