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全国11支店金融経済概況 (2000年10月)

2000年10月10日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気をみると、一部には改善の動きがみられるものの、全体として足踏み状態が続いており、企業の景況感も総じて慎重なものとなっている。最終需要面では、民間設備投資が増加傾向を辿っているが、個人消費は一部に堅調な動きがみられるものの、全体では盛り上がりに欠ける展開が続いている。また、公共投資は徐々に減少しつつあるほか、住宅投資も概ね横這い圏内で推移している。こうしたなかで、企業の生産はこのところ伸び悩み気味となっているが、企業収益はリストラ効果等から増益基調を続けているほか、雇用情勢についても厳しい状況ながらも幾分改善の動きがみられている。

最終需要面の動きをみると、公共投資は、地方分を中心に12年度予算が前年を下回っている中、徐々に減少しつつある。

住宅投資は、持家が前年を上回って推移している一方、分譲マンションにはピークアウト感が窺われるなど、概ね横這い圏内の動きとなっている。

個人消費は、大型小売店等の売上げは前年割れを続けているほか、耐久消費財もパソコンや一部新型車以外は総じて伸び悩んでいるなど、全体としては盛り上がりに欠ける状況が続いている。この間、観光面では、団体ツアー客を中心に入込み客数は前年を下回って推移している。

設備投資については、電気機械や情報通信関連での能力増強投資等から、製造業、非製造業とも上方修正されるなど、増加傾向を辿っている。

企業の生産は、電子部品や自動車部品では国内・外からの需要好調を背景にフル操業を継続し、紙・パでも広告需要の増加等から総じて高操業にある。一方、鋳鍛鋼製品、木材・木製品等では民間需要の低調を映じ低操業を続け、建設関連資材でも官公需の減少等から頭打ち感が窺えるなど、全体では伸び悩み気味となっている。

企業収益については、売上げは小幅の増加に止まっているが、コスト削減効果等を背景に、引続き増益基調にある。

雇用情勢については、新規求人の増加を背景に、有効求人倍率がこのところ前年を上回っているなど、厳しい状況ながらも幾分改善の動きがみられている。

企業金融は、金融機関の融資姿勢の緩和等から、総じて落ち着いているが、企業倒産をみると、建設、卸・小売等を中心に件数は増加傾向にある。

金融面をみると、預金は、個人預金が堅調に推移しているものの、法人預金では預貸相殺等の動きが続いていること等から、全体では伸び率が鈍化傾向を辿っている。一方、貸出は、住宅ローンがなお高い伸びを示しているが、企業需資の低迷等を背景に、全体では低調に推移している。

以上

東北地区金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行仙台支店

東北地区の景気は、緩やかな回復が続いており、企業マインドも改善している。

すなわち、公共・住宅投資は低調に推移しているものの、個人消費の一部には明るい動きも窺われる。また、鉱工業生産は情報通信関連を中心に引き続き増加しているほか、設備投資も、こうした好調業種を主体に増加している。この間、雇用面は、総じて厳しい状況にあるが、労働需給を示す一部指標に改善の動きもみられる。

最終需要をやや詳しくみると、個人消費は、全体として今一つ回復感に乏しい状態が続いているものの、耐久消費財を中心に明るい動きもみられている。すなわち、大型小売店売上高は、高級ブランド品が堅調なものの、主力秋物衣料品の売行きが残暑の影響から鈍いほか、食料品も低迷しているため、前年を下回って推移している。もっとも、家電販売は、パソコン等情報通信機器が続伸しているほか、白物家電も堅調な販売が続いている。また、乗用車販売も、新車投入効果等から5か月連続して前年を上回っている。

公共投資をみると、請負金額は、ウエイトの高い県、市町村等での減少から前年を下回って推移している。更に先行きも、東北新幹線延伸等の大型プロジェクトはあるものの、財政難から抑制的なスタンスをとっている地方公共団体が多いこともあって、基調的には減少が見込まれる。

また、住宅投資は、着工戸数が主力持家の減少から前年を下回って推移しているほか、12年度第2回住宅金融公庫融資申込受理戸数も主力マイホーム新築分を中心に前年を下回るなど、低調な地合が続いている。

一方、12年度の設備投資計画(東北地区短観)をみると、製造業では、電気機械が一段の能力増強投資を行うほか、他の業種においても新製品開発投資等の動きがみられ、前年度を上回る伸びとなっている。この間、非製造業では、一部業種の大型投資一巡から前年度比やや減少しているが、小売等を中心に計画上積みを行う動きもみられており、設備投資全体としては前年度を上回る増加率となっている。

主要製造業の生産動向をみると、電気機械は、情報通信関連の受注好調持続を背景に、パソコン等完成品や半導体が高操業を継続しているほか、関連部品(液晶、コネクタ、コンデンサ等)も生産水準を一段と引き上げている。

輸送用機械でも、国内需要の持ち直しや対米輸出の好調持続等から、生産水準を引き上げる動きがみられる。

その他消費関連業種では、衣料品が減産を継続しているものの、食料品、印刷用紙、ダンボール原紙等は堅調な生産を継続している。

設備関連業種では、工作機械等が国内受注持ち直しから減産を緩和しているほか、半導体製造装置等も半導体メーカーの設備増強等を背景に高操業を継続している。

建設関連業種(セメント・同二次製品、鉄鋼二次製品、木材・木製品)では、大型プロジェクト向けが堅調なものの、公共投資の低迷から、全体としては低調な生産を続けている。ただし、一部民需(マンション等)には持ち直しの動きもみられる。

12年度の売上・収益計画(東北地区短観)をみると、公共投資関連業種(建設、木材・木製品、窯業・土石)では減収・減益となる一方、電気機械を中心とした多くの業種では、IT関連の好調持続やその他末端需要の持ち直し期待等もあって増収・増益を見込んでおり、全体としては回復基調を維持している。

雇用面をみると、有効求人倍率は、電気機械、小売、サービスなどの求人増加から、引き続き改善している。また、常用雇用者数も、こうした労働需給の改善を背景に、ここにきて前年比減少幅をやや縮小させている。

企業倒産件数をみると、建設、卸・小売関連の中小・零細企業を中心に、引き続き高水準で推移している。

金融面をみると、預金は、個人の伸び悩みや法人の減少を主因に増勢が鈍化している。一方、貸出は、個人向けが横這い圏内の動きとなっている中、法人向けがマイナス幅を縮小したほか、地公体向けも増加したため、前年比減少幅が縮小している。

以上

北陸地区金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行金沢支店

北陸地区の景気は、業種面でのばらつきがみられるものの、輸出の増勢持続や設備投資の一段の増加から、全体として緩やかながら回復しつつある。

最終需要面の動きをみると、まず、輸出は、合繊織物の増勢が鈍化しつつあるものの、電子部品等の電気機械が欧州、東アジア向けを中心に、工作機械も米国向けを中心に増勢を続けているほか、繊維機械や軸受でも改善が続くなど、引き続き増加傾向を辿っている。

また、設備投資は、製造業を中心に業種・企業規模の広がりを伴いながら一段と増加している。企業の設備過剰感はなお解消されていないものの、生産の増加や企業収益の改善が続く中で、需要好調な電子部品等の分野で積極的な能力増強投資が続いているほか、繊維や金属等の幅広い業種でITの活用や競争力向上等を企図した投資に踏み切る先が増えている(12年9月企業短期経済観測調査<北陸3県>、12年度計画前年度比、全産業+13.2%<前回6月調査時+9.6%>、うち製造業+19.0%<同+13.6%>、非製造業+2.0%<同+1.7%>)。

個人消費は、百貨店売上げが7、8月と2か月連続で前年割れとなるなど、今一つ回復の力強さには欠けるものの、家電や乗用車販売が増加傾向を持続しているほか、観光入り込み客数も下げ止まりつつあるなど、引き続き改善の動きが広がっている。

一方、住宅投資は足許では下げ止まり感が窺われるものの、公共投資は減少傾向を続けており、関連業界では業況面への影響を懸念している。

こうした最終需要動向を映じて、生産は、窯業・土石、アルミ建材等の公共・住宅投資関連や化学の一部で抑制基調ないし減少傾向を続けているほか、繊維も増勢が鈍化しつつある。しかしながら、紙・パルプ、繊維機械がフル生産を続けており、また、電子部品や工作機械などの増勢持続、工具や軸受での高操業の継続等から、全体としては引き続き堅調に推移している。なお、一部の電子部品メーカーや一般機械メーカーでは、部材の入手困難化などから生産の抑制を余儀なくされる先もみられている。

雇用面をみると、有効求人倍率(含むパート)は、パートを中心とした新規求人数の増加から緩やかな改善を続けている。また、雇用者所得は、所定外給与が生産増を映じた所定外労働時間の増加から増勢を示しているほか、所定内給与も緩やかな持ち直し傾向にある。

金融面をみると、預金のうち個人預金では、定期性預金が投信や国債へのシフトもあって伸び悩んでいるが、流動性預金が引き続き堅調なことから、全体では底堅く推移している。一方、法人預金は、財務リストラの継続等を映じて定期性預金の前年割れが続くなど、全体としては低調な動きとなっている。

貸出については、個人向けは、住宅ローンの増加を背景として前年を上回って推移している。一方、法人向けは、業況好調先等で前向きの設備資金需要などがみられるものの、既存貸出の返済分を上回るには至らず、全体では依然低調に推移している。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏の中で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済をみると、企業収益の改善等を受けて設備投資が引き続き増加傾向にあるなど、民間需要の自律的な回復メカニズムが作用してきている。最終需要面をみると、個人消費は、一部の品目では引き続き動意がみられるとはいえ、全般的には回復感に乏しい状態にあるほか、公共投資にも力強さが感じられない。しかしながら、住宅投資は引き続き堅調に推移しているほか、設備投資も回復傾向が強まってきている。また、輸出もアジア向けを中心に堅調に推移している。こうした状況下、県内企業の生産は、輸送用機械で生産水準を引き上げているほか、電気機械、素材業種等で生産が高水準となっているなど、全般的に持ち直しつつあり、企業収益も改善してきている。この間、労働需給面は改善傾向を持続しているほか、雇用者所得も下げ止まりの兆しが窺われる。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、乗用車新車登録台数は、新規投入車種やフルモデルチェンジ車種の販売好調から、回復傾向にある。また、家電量販店売上高は、猛暑の影響からエアコン販売が増加したほか、パソコン等情報関連機器の販売好調から、前年を上回る状況が続いている。一方、百貨店売上高は、猛暑の影響に伴う生鮮食料品や秋物を中心とした衣料品の売上低迷から、低調の域を脱していない。

設備投資を9月に実施した「企業短期経済観測調査(神奈川県分)」(以下「9月短観」と略称)でみると、県内企業の2000年度の設備投資計画は、非製造業で3年連続して前年を下回る抑制的な計画(前年比△7.4%)となっているものの、製造業で4年振りに前年を上回る計画(同+27.4%)となっていることから、全体では3年振りに前年を上回る計画(同+23.4%)となっている。また、製造業、非製造業ともに、前回(6月)調査に比べ上方修正されているなど、ここにきて回復傾向が強まってきている。

住宅投資は、住宅減税拡充策の効果等から分譲マンションを中心に高水準を持続している。一方、公共投資については、5四半期連続で前年を下回っており、依然力強さが感じられない。

輸出面では、アジア経済の好転等を背景とする自動車や半導体電子部品、鉄鋼、事務用機器等の増加から、横浜港の輸出額(通関ベース)は本年入り後の累計額および直近の8月実績とも前年を上回っているほか、9月短観でも県内企業の輸出額は3期連続(99年度下期、00年度上期および下期)で前年を上回る見通しにある。また、横浜港の輸入額(同)についても、原油・粗油や非鉄金属等の原材料、事務用機器等の増加から、本年入り後の累計額は前年を上回っている。

こうした需要動向の下、県内企業の生産をみると、全般的に持ち直しつつある。すなわち、完成車メーカーでは、モデルチェンジ車種等の販売好調に伴い増産を実施している先が一部にみられるほか、こうした動きを受けて自動車部品メーカーでも、生産水準引き上げの動きがみられている。また、汎用電子部品、移動体通信、半導体関連では、パソコン、携帯電話の販売好調を主因に繁忙感の強い状態が継続しているほか、工作機械でも、情報通信機器関連、自動車関連を中心とする内外需の回復から、全体として生産水準は回復感を強めている。化学、鉄鋼などの素材業種でも、韓国、タイなどアジア地域経済の持ち直し等を映じて生産水準が回復している。

企業収益は、リストラの進展および稼働率の上昇を反映して利益率が上昇するなど改善傾向を辿っており、これに連れて業況感も改善している。

雇用面をみると、企業の雇用過剰感は一頃に比べ弱まりつつあるほか、新規求人倍率、有効求人倍率とも昨夏来の改善傾向を継続している。この間、賃金についてみると、「きまって支給する給与」は今年に入って7か月連続で前年を上回っている(7月前年比+0.2%)。また、賞与が含まれる「特別に支払われた給与(6‐7月期合計額)」の前年比減少幅も縮小(98年前年比△5.0%→99年同△15.3%→2000年同△1.5%)してきているなど、全体として下げ止まりの兆しが窺われている。

金融面をみると、貸出面では、全般的に資金需要が低迷していることを主因に、前年を下回る状況が続いている。一方、預金面では、法人預金は低調に推移しているほか、個人預金は他の金融商品へのシフト等もあって伸び悩んでいることから、全体の伸び率は概ね横這い圏内で推移している。この間、企業倒産件数は、増加傾向を辿っている。

以上

東海地区金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、静岡、岐阜、三重)の最近の経済動向をみると、個人消費は依然低調ながら減少テンポが緩やかになっている。設備投資は持ち直している。また、輸出は増加しており、公共投資も高水準を維持している。一方、住宅投資は弱含んでいる。

こうした需要動向を背景に、生産は全体として増加している。また、雇用情勢の悪化には歯止めが掛かりつつある。この間、物価は横這い圏内で推移している。このような状況の下で、企業の景況感は製造業主導の形で着実に改善しており、東海地区の景気は、緩やかに回復していると判断される。

金融面をみると、資金需要は引き続き低迷しているものの、景気の回復を受けて、減退傾向には歯止めが掛かりつつある。こうした状況下、金融機関貸出の前年比マイナス幅は、縮小傾向にある。

個人消費・・・非耐久消費財支出については、衣料品や日用品を中心とした消費者の低価格指向から引き続き捗々しくない状況にある。一方、耐久消費財支出をみると、乗用車販売は、普通・小型車におけるニューモデル車の販売に弾みがつきつつあり、増加している。また、家電量販店の売上げは、パソコン関連製品を中心に前年を上回って推移している。この間、サービス支出でも、旅行関連が底固く推移している。

設備投資・・・製造業では、大企業の中に、中期的な国内需要の不透明感等を背景に、抑制的な投資スタンスを保持している先がみられる一方で、情報通信関連需要への対応や競争力の維持・向上を企図した案件などを積み増す動きが広がっており、全体として持ち直している。この間、非製造業でも、電力で大型電源設備投資が本格化しているほか、小売における旧大店法に基づく新規出店もなお続いている。

住宅投資・・・新規住宅着工をみると、ウエイトの大きい持家を中心に住宅金融公庫金利の低位抑制などの政策効果が一巡しており、全体として緩やかな減少傾向にある。こうした中、工事量も弱含んでいる。

公共投資・・・地方公共団体における2000年度当初予算額が前年を大きく下回ったことから、県、市町村分の今年度入り後の発注は低調に推移している。もっとも、既往の経済対策や第二東名・名神高速道路の関連で受注残が高めであることや、新規案件である中部国際空港関連の発注が本格化していることを背景に、建設業者の官庁関連の工事量は高水準を維持している。

輸出・・・ユーロ安に伴い欧州向けの一部(事務機器、電動工具)は伸び悩んでいる。しかし、アジア向けが、依然幅広い品目で増加を続けているほか、主力の米国向けも、自動車・同部品の高水準持続に加えて、情報関連財も活況を呈していることから、輸出は全体として引き続き増加している。

生産・・・加工業種では、自動車の生産が、新型車投入効果や輸出の堅調を映じて引き続き増加している。また、ICパッケージが輸出数量増から、ビデオカメラも内外の需要堅調から、それぞれ生産水準を引き上げており、工作機械やフォークリフトでも、受注の増加を背景に操業度を高めている。このほか、電子部品組立機で、内外の需要が好調なためフル生産が続いており、二輪車でも、欧米向けの堅調持続から高操業を続けている。一方、事務機器や電動工具については、輸出の伸び悩みから生産は頭打ちとなっている。
素材業種では、特殊鋼が、主力の自動車向けの増加に伴って、増産を続けている。また、紙・パルプも、パソコン等取扱説明書、チラシ向けの好調から高操業となっているほか、棒鋼では、大型商業施設やマンション向けを中心に、減産を緩和している。一方、普通鋼・鋼板類は、輸出の減速により増勢が鈍化している。また、住宅向け窯業製品の一部(瓦、衛生陶器)の生産が低調に推移しており、繊維製品も末端需要の低迷や安値輸入品の流入増から減産を継続している。さらに、洋食器でも、個人消費等の低迷や在庫調整のため、生産を抑制している。

雇用・・・常用労働者数は引き続き前年をかなり下回っているものの、所定外労働時間が生産の増加を反映して高い伸びとなっているほか、有効求人倍率も改善を続けている。

物価・・・消費者物価は、横這い圏内で推移している。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行京都支店

家計部門を取巻く雇用・所得環境はなお厳しい地合いにあるものの、輸出が増加傾向を辿っているほか、製品需要の回復等を背景に設備投資も大幅に増加している。生産は増加基調を辿り、企業収益や業況感が一段と改善をみるなど、管内景気は企業部門を中心に緩やかに回復している。

最終需要の動きをみると、まず、輸出については、欧米向けがパソコン・移動体通信機器用電子部品を中心に増加傾向を辿っているほか、東アジア向けについても、NIEs向けの半導体・情報通信関連製品やASEAN・中国向けの一般機械等が現地需要の回復を背景に増加しており、全体でも増加傾向を辿っている。

設備投資についても、IT(情報技術)関連業種における生産能力増強・新製品開発投資を一段と積極化する動きに加え、その他の製造業でも生産効率化投資や研究開発投資に着手する向きがみられている。また、非製造業でも大型小売店の新規出店投資のほか、販売チャネルの拡充に向けた前向きな投資案件も散見されるなど、本年度の計画は全体として前年を大幅に上回っている。

個人消費については、自動車販売が徐々に回復しているほか、パソコンの売行きも総じて好調に推移している。しかしながら、季節商品の売上げに関し、エアコン、冷蔵庫等が好調であった反面、衣料品は総じて盛上がりを欠いており、また、身の回り品等の動きも鈍いなど、個人消費全体でみると、なお回復感に乏しい状況が続いている。

この間、京都観光についてみると、観光客の低価格指向は引続き根強いものの、観光客によるホテル利用が増加するなど、入込客数は増加基調にある。

住宅投資については、住宅ローン減税の適用期限を控えた駆込み需要からマンションがそれなりの伸びをみているほか、持家も下げ止まりつつあり、全体でも横這い圏内での推移となっている。

公共投資については、本年度予算が抑制される中減少している。もっとも、9月補正予算の執行に伴い、目先持直しを期待する向きも窺われている。

生産面をみると、国内外のIT関連需要や一部国内資本財需要の回復を背景に、関連業界での在庫調整は概ね完了し、生産水準も増加傾向を辿っている。業種別にみると、電子部品や半導体製造装置では、欧米向けや、東アジアのアセンブリ拠点向けの輸出増加を受けて引続き増産基調にある。また、IT関連以外の業種でも、一般機械、金属製品、化学等、幅広い分野で、東アジア向け輸出や国内資本財需要の回復を受けて増産基調にある。この間、地場産業の和装関連では、消費者の嗜好に合致した低価格商品等では底固い販売地合いがみられるものの、全体では最終需要の不振を背景に引続き大幅減産を余儀なくされている。

企業収益をみると、経常利益(当店短観ベース)は前年度の4年振りの増益に続き、本年度も一段の増益が予想されている。

雇用・所得面をみると、企業の雇用スタンスが総じて慎重で常用労働者数がなお減少を続けるなど厳しい状況が続いているが、生産水準が上昇している製造業を中心に所定外労働時間が大幅に増加しているほか、有効求人倍率も改善するなど、緩やかな改善基調を辿っている。

企業倒産は、件数、負債金額とも前年を若干上回って推移している。

金融面をみると、民間金融機関貸出については、IT関連企業を中心として増加運転資金や設備案件が散見され始めているものの、企業の有利子負債圧縮の動きが続いているほか、資金需要も依然として盛上がりに欠けていることから、低迷を続けている。

預金については、法人預金は、高利の大口市場性預金の取入れ抑制のほか、企業のバランス・シート調整の一環としての預貸相殺が続いていることなどから伸び悩んでいる。一方、個人預金は流動性預金を中心に底固さを維持している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行大阪支店

管内の景気は、個人消費が総じて一進一退の状況にあるものの、輸出の増加が続いているほか、設備投資も増加しており、全体として緩やかな回復に向かっている。

最終需要面の動きをみると、輸出は、米国向けが情報通信関連財・消費財を中心に堅調を持続しているほか、東南アジア向けも生産財・資本財を中心に増加していることから、全体として引き続き増加している。

設備投資は、情報通信関連等成長分野に対する企業の積極的な投資姿勢が続いているほか、製造業を中心とした維持・更新、合理化投資もみられており、全体として増加している。

個人消費は、パソコン等情報通信関連や旅行関連の支出が増加しているほか、乗用車販売にも、新型車の受注が好調であるなど足許やや明るさが窺われるものの、スーパーの売上は低調であるほか、百貨店販売も依然回復感には乏しい状況にあり、総じてみれば一進一退の状況にある。

住宅投資は、概ね横這いで推移している。

公共投資は、足許緩やかな増加が続いている。

生産は、輸出の増加や堅調な情報通信関連財・資本財需要等に支えられて引き続き増加基調にある。

企業収益(経常利益)は、生産・出荷の増加や、コスト削減・事業再構築といった経営合理化・効率化の効果から改善しており、9月短観(近畿地区)でみると、12年度は製造業では前年比+30.8%、非製造業(除く電力・ガス)では同+10.7%の増益が見込まれている。

雇用・所得環境をみると、有効求人倍率の上昇や所定外給与の増加など、悪化傾向には歯止めが掛かってきているが、失業率はなお高水準で推移しているほか、常用労働者数は前年を下回って推移しており、全体としては依然厳しい状況にある。

物価は、横這いで推移している。

企業倒産件数は、増加している。

企業金融についてみると、ゼロ金利政策の解除を受け、企業の調達金利は総じてみると僅かながら上昇しているが、収益の改善基調が明確化している下で、金融機関の貸出態度の積極化もあって、全体として緩和基調にある。

金融面をみると、貸出については、企業部門において収益回復に伴うキャッシュ・フローの増加などを背景に、外部資金調達ニーズが引き続き低迷しているほか、借入金を圧縮する動きも続いていることなどから、低調な地合が続いている。金融機関の貸出態度は、総じてみれば依然慎重であるが、金融機関では資金繰り面や自己資本面からの制約が緩和されるなかで、中小企業向け貸出を積極化する動きを強めている。

預金については、個人預金、法人預金とも総じて堅調に推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行神戸支店

管内経済は、緩やかな回復局面にある。需要面では、個人消費が一進一退で推移しているものの、輸出が増勢を持続しており、設備投資も着実に持ち直している。生産面では、情報通信向け電子部品、鉄鋼のほか、設備投資関連等幅広い業種で操業度が上昇している。こうしたなか、企業収益が回復してきており、企業マインドも引続き改善している。雇用面ではなお厳しい状況が続いているが、新規求人数の増加など一部で改善の動きがみられている。

個人消費をみると、百貨店の売上高は、夏物のバーゲンセールや中元商戦が不冴えに終わったほか、秋物の出足も鈍く、前年を下回っている。また、スーパーでも依然として前年割れが続いている。一方、乗用車販売は、新型車投入効果等により前年を上回っているほか、家電販売でも、情報通信関連や各種デジタル製品が引続き好調に推移している。

観光関連では、淡路花博期間中の入込み客は当初計画を上回り、主要ホテルの稼働率を押上げたほか、旅行取扱高も海外旅行を中心に増加している。

企業の設備投資は、積極化する動きが広がりつつあり、投資内容も維持更新投資の増額や生産設備増強に踏切る動きがみられる。

住宅投資は、持家、貸家が減少しているが、分譲マンションの堅調に支えられて総じて横這い圏内で推移している。

公共投資では、神戸空港関連事業が増加しているものの、国、公団・事業団等が前年を下回っているため、全体では減少している。

生産動向をみると、鉄鋼がアジア向け輸出に加え、国内需要の一部持ち直しから高操業を持続しているほか、水晶振動子や半導体、住宅関連機器等でも高水準の生産を維持している。設備投資関連では、射出成形機が情報通信向けを中心にフル操業にあるほか、コンベアやコンデンサー、化学機械等でも操業度が上昇している。また、食肉加工が前年並みの生産水準となっているほか、惣菜でも高めの生産を続けている。

この間、地場産業では、一部に秋・冬物受注の増加がみられるものの、総じて輸入品との競合による単価下落や消費低迷を受けて、厳しい状況が続いている。

雇用面では、企業の雇用過剰感が根強いものの、新規求人数の増加を背景に有効求人倍率が緩やかながら上昇してきているほか、所定外労働時間が増加するなど、一部に改善の動きがみられている。

なお、消費者物価は、食料、家具・家事用品などの値下がりを受けて、軟調に推移している。

金融面をみると、貸出は、企業の有利子負債圧縮スタンスが根強く、前年を下回っている。企業の一部には設備投資を積極化する動きがみられるが、自己資金で賄うケースも多いため、減少傾向に歯止めがかかっていない。

貸出約定平均金利(総合ストックベース)は、ゼロ金利政策解除に伴う短期プライムレートの引上げ等により、足許はやや上昇している。

預金をみると、個人預金は堅調な伸びを示しているものの、法人預金が企業の財務リストラ等による預貸相殺等の動きが続いているため、全体では前年を僅かながら下回っている。

企業倒産件数は中小建設業を中心に前年を上回っているが、負債額は小口倒産中心のため、前年を下回っている。ただ、7月は、そごうグループの民事再生法の適用申請を主因に負債額が増加した。

以上

中国地区金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行広島支店

中国地区の経済情勢をみると、個人消費は回復感に乏しい状況が続いているほか、公共投資は減少している。一方、企業収益の改善もあって設備投資は増加しつつあるほか、輸出も増加傾向が続いている。企業マインドは足許横這いながら、こうした最終需要のもと、生産は在庫調整の進展等を映じて増加しており、景気は持ち直している。

最終需要の動向をみると、個人消費は、一部に引き続き明るい動きがみられるものの全体としては回復感に乏しい状況が続いている。パソコン販売は好調を持続しており、乗用車販売も前年を上回っている。一方、百貨店、スーパー売上高は低調に推移している。

設備投資を9月短観(中国地区)からみると、12年度計画は前回調査(12年6月)と比べ上方修正され前年度比+3.9%となっており、増加しつつある。

住宅投資について新設住宅着工戸数をみると、分譲が前年を上回っているものの、持家が低調なことから、全体としては緩やかな減少傾向にある。

公共投資は、公共工事請負額が概ね前年水準を下回って推移するなど、減少基調にある。

輸出(通関輸出金額を輸出物価指数で調整したもの)は、欧州向けが低調なほか、米国向けが前年を下回って推移しているものの、アジア向けが好調なことから、全体では増加傾向が続いている。

こうした最終需要のもと、生産は増加している。主要企業の生産動向をみると、縫製が総じて低調に推移しているものの、鉄鋼、造船のほか、電気機械が電子部品(半導体等)、情報家電(パソコン、MD、携帯電話)を中心に高操業を続けている。また、化学が海外需要の増加等から高水準の生産を継続しているほか、自動車はまずまずの操業度を維持している。

雇用環境をみると、常用雇用者数が前年を下回って推移しているなど、厳しい状態が続いているが、IT、福祉関連を中心に一部に改善の動きがみられている。

この間、企業収益を9月短観(中国地区)からみると、12年度計画は前回調査(12年6月)と比べ下方修正されたものの、前年度比+4.5%の増益の見通しとなっている。

企業マインドを9月短観(中国地区)からみると、足許の業況判断は横這いとなったものの、先行きは改善を見込んでいる(業況判断D.I.〈「良い」−「悪い」〉12年6月△19%→9月△19%→12月予測△15%)。

金融面をみると、貸出は引き続き低迷している。個人向けは、住宅ローンの推進もあって堅調に推移しているものの、法人向けは、設備・運転資金とも低調な地合いが続いている。

預金は伸びが鈍化している。個人預金は、概ね横這いとなっているものの、法人預金は、定期性を中心に低迷している。

以上

四国地区金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、緩やかに持ち直してきている。すなわち、公共・住宅投資が減少傾向で推移しているほか、個人消費も依然として回復感に乏しい状況となっている。もっとも、設備投資が情報通信関連企業を中心に能力増強投資を積極化する動きがみられ、全体として増加方向にある。こうしたなかで、企業の生産活動は情報通信関連や輸出関連を中心に、引続き増加基調で推移している。この結果、雇用・所得環境の悪化にも歯止めがかかりつつある。

需要動向

最終需要についてみると、輸出は欧米向け、アジア向けとも増加傾向が続いている。また、設備投資も引続き慎重なスタンスを維持する先が少なくない中、情報通信関連企業を中心に能力増強等を企図した大型投資を計画する動きがみられるなど、全体としても増加方向にある。一方、住宅投資が持家を中心に減少傾向を辿っているほか、公共投資も一部で高速道路網整備等の大型案件がみられるものの、全体としては減少傾向が窺われている。

この間、個人消費はパソコン等情報関連製品が引続き好調な販売となっているほか、乗用車販売もモデルチェンジ効果等から持ち直し傾向で推移している。もっとも、百貨店等の売り上げが衣料品等の販売不振を背景に依然低迷を余儀なくされており、全体としては回復感に乏しい状況が続いている。

生産

企業の生産活動をみると、電気機械(情報機器向けメモリー、マイコン、液晶表示装置等)、化学(合成樹脂、無機化学等)、紙・パ(特殊工業紙、チラシ用紙、段ボール原紙等)、非鉄(電気銅、電気ニッケル)では、国内外の情報関連分野における旺盛な需要やアジア向け輸出の増加等から高操業を持続、あるいは生産水準の一段引上げを図る動きがみられる。また、鉄骨加工(橋梁関係)では、公共投資関連の手持ち受注残の消化から、高目の生産水準を維持しているほか、住宅投資関連の金属製品(アルミサッシ)、木材・木製品(収納製品)等も、足許安定操業を継続している。

もっとも、鉄鋼や一般機械(建設用機械、産業・運搬機械等)では、需要低迷を背景に、引続き生産調整を余儀なくされているほか、繊維(タオル)でもギフト需要の長期低迷や輸入安値品の流入増もあって、多くの先で生産水準をさらに引下げてきている。

雇用

雇用情勢をみると、小売や一部サービス業等を中心に新規求人を増やす動きがみられるほか、有効求人倍率も緩やかに改善してきており、これまでの悪化傾向に歯止めがかかりつつある。

金融

金融面をみると、預金は個人預金を中心に底固い伸びを持続している。また、貸出は民間企業の資金需要の停滞を背景に低迷状態が続いており、依然として低調に推移している。

以上

九州地区金融経済概況

2000年10月10日
日本銀行福岡支店

九州経済は、全体として持ち直しの動きが続いており、民間需要面でも設備投資が引き続き増加するなど回復の方向にある。

すなわち、アジア向け輸出の増加等から生産が増加基調にあるほか、設備投資も増加を続けている。また、公共投資も前年度補正予算の執行に伴い堅調に推移しているほか、雇用面でも求人倍率が上昇傾向にあるなど改善の動きがみられる。ただ、こうした一方で、住宅投資は減少基調にあるほか、個人消費も全体としてみれば回復感に乏しい状態が続いている。

最終需要の動向をみると、公共投資は、足元、公共工事発注額は一服傾向ながら、年度末の大幅発注増加を受けて、生コン、合板といった公共関連材の出荷は堅調に推移している。

個人消費は、乗用車、家電といった耐久財の販売指標が底固く推移しているほか、旅行が個人向けパック旅行を中心に活発であるなど、一部で持ち直しの動きがみられるが、百貨店、スーパーの売上高は夏場商戦が振るわず低迷を 続けるなど、全体としてみれば依然回復感に乏しい状態が続いている。

住宅投資は、持家着工が引き続き減少していることに加え、堅調であったマンション着工にも頭打ち感がみられるなど、全体としては減少基調が続いている。

企業の設備投資は、依然抑制スタンスの先は多いが、半導体関連や通信では引き続き積極的な投資スタンスにあるほか、その他の業種でも、工場増設や設備の老朽化に伴う更新投資等がみられるなど、全体としてみれば増加を続けている。

この間、輸出は、ウエイトの高いアジア・北米向けが半導体等電気機械を中心に増加しており、全体としても増加を続けている。

企業の生産動向をみると、素材業種等一部で内需の低迷等を背景に低操業を継続しているが、アジア向け輸出の増加等から、IC、電子部品、鉄鋼等で高操業を継続しているほか、一般機械でも持ち直しの動きがみられるなど、全体としては増加を続けている。

雇用面をみると、全体としては依然厳しい状況が続いているが、生産の増加等に伴い求人倍率が上昇傾向にあるなど、労働需給面で改善の動きがみられる。

企業倒産をみると、建設業を中心に8月の倒産件数が本年入り後最多の発生をみるなど、倒産多発傾向に歯止めがかかっていない。

金融面の動きをみると、銀行預金は、個人流動性預金を中心に堅調な伸びを示している反面、銀行貸出は、一部に前向きな設備需資等が散見されるものの、全体としてみれば依然として資金需要の低迷基調を脱するには至っておらず、前年割れが続いている。

以上