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全国11支店金融経済概況 (2004年10月)

2004年10月18日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気は、横這い圏内の動きとなっている。すなわち、最終需要面の動きをみると、住宅投資は増加しているほか、民間設備投資も持ち直しつつある。一方、個人消費は低調に推移しているほか、公共投資も減少傾向が続いている。こうした中で、企業の生産は持ち直しているが、雇用環境は引き続き厳しい状況にある。

個人消費については、大型小売店の売上高は、猛暑による盛り上がりがみられたものの、その効果も一時的なものにとどまり、台風の影響などもあって、衣料品や身の回り品を中心に低調に推移している。一方、耐久消費財については、家電販売は冷房器具の売れ行きが好調であったことに加え、薄型テレビやDVDレコーダーが堅調に推移していることから、前年を上回っているほか、乗用車販売も普通車の増加などから、前年を上回っている。この間、来道者数をみると、ツアー客を中心に前年を下回っている。

公共投資は、国、道、市町村のいずれも減少傾向が続いている。

住宅投資は、分譲が減少している一方で、持家、貸家が増加していることから、全体としては前年を上回っている。

設備投資については、生産能力の増強や効率化などへの取り組みを背景として、製造業を中心に持ち直しつつある。

企業の生産は、建設関連資材(セメント、コンクリート二次製品、木材・木製品)では一部の製品を除き低調に推移している。一方、自動車部品、電子部品(情報通信機器向け等)では生産が増加しているほか、鉄鋼では自動車向けを中心に高めの操業となるなど、全体として持ち直している。

企業収益については、コスト削減などを背景に改善がみられている。

雇用情勢については、新規求人の増加などから改善傾向にあるものの、有効求人倍率は低水準にあるなど、引き続き厳しい状況にある。

企業金融は、優良企業向けを中心とする金融機関の積極的な貸出姿勢を背景として、総じて落ち着いた状況にある。この間、企業倒産については、件数、負債総額ともに低水準で推移している。

金融面をみると、預金は、個人預金が引き続き堅調である一方で、法人預金等が低調に推移していることから、また、貸出は、住宅ローンの増勢が一服しつつあることから、ともに前年並みの水準となっている。この間、貸出約定平均金利については、横這い圏内で推移している。

以上

東北地区金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行仙台支店

東北経済は、業種間格差を伴いつつ、全体としては緩やかながら持ち直しの動きが続いている。もっとも、デジタル関連需要の頭打ち懸念や原油高から、先行き不透明感も台頭してきている。

最終需要の動向をみると、個人消費は、猛暑効果やオリンピック需要による押し上げ効果が剥落した後は、再びやや弱めの動きとなるなど、全体では一進一退の状態を続けている。すなわち、大型小売店の売上は、猛暑効果の剥落に加え、主力の秋物衣料品の出足が鈍いことから全体として弱めの動きとなっているほか、家電販売も、オリンピック需要の反動もあって、デジタル家電の増勢が鈍化するなど、足もとやや弱含んで推移している。一方、乗用車販売は、新車投入効果などから回復の動きがみられている。また、旅行取扱高は、全体として持ち直し傾向にある。

公共投資は、予算規模の縮小から減少を続けている。

住宅投資は、地域により振れを伴いつつも、全体としては低調の域を脱し得ない状態となっている。

設備投資(2004年度東北地区短観、全産業)は、製造業を中心に、2年連続で前年度を大幅に上回る計画となっている。

生産は、デジタル関連の一部で増加テンポが幾分鈍化する動きもみられるが、基調としては増加傾向を辿っている。

  • 電気機械では、情報通信、デジタル家電向けの受注鈍化を映じ、増加テンポが幾分鈍化しているものの、引き続き高水準で推移している。
  • 輸送用機械では、堅調な輸出に支えられ高操業を続けている。
  • 設備投資関連では、工作機械、鋳物が自動車部品メーカーからの受注好調を映じ高操業を続けているほか、半導体製造装置、重電関連部品でも高操業を継続している。
  • 建設関連では、棒鋼が輸出好調から高操業を続けているものの、セメント、コンクリート二次製品が公共工事削減の影響から、木材・木製品が住宅着工の低迷から、それぞれ低操業を続けている。
  • 消費関連では、紙・パが洋紙、段ボールとも高操業を継続しているほか、食料品も総じて堅調な生産を続けている。一方、繊維等では、引き続き低操業を継続している。

企業の事業計画(2004年度東北地区短観、全産業)は、売上高は前年度を若干上回るものの、経常利益は減益の計画となっている。

雇用情勢をみると、生産の増加等を背景に労働需給は改善の動きが続いている。一方、所得面をみると、所定外給与は増加しているものの、依然として企業の人件費抑制スタンスに変化は窺われないことから、捗々しい改善をみていない。

企業倒産は、件数、金額とも前年を下回って推移している。

金融面をみると、預金は、法人預金が低調なものの、個人預金が堅調に推移していることから、全体としては底固い動きとなっている。一方、貸出は、企業の資金需要が乏しいことを主因に、引き続き低調に推移している。

以上

北陸地区金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行金沢支店

北陸の景気をみると、引続き着実に回復しているものの、そのテンポは幾分緩やかなものとなっている。

最終需要面

輸出は、主力の電気機械を中心にここへきて増勢テンポが幾分鈍化しているものの、全体としては引続き増加基調を辿っている。

設備投資は、当地企業の2004年度計画(北陸短観2004年9月)をみると、電気機械、一般機械、繊維など製造業を中心に大幅増加計画となっているほか、ここにきて上方修正の動きもみられている。

個人消費は、猛暑効果は剥落したものの、乗用車販売が小型車における新型車投入効果等から大幅な伸びを示しているほか、美術品等高額品の販売や海外旅行が引続き好調を持続していることもあって、全体として、持ち直しの動きが続いている。

公共投資は、国、県等の公共工事関連予算が抑制的なことから、前年を幾分下回って推移している。

住宅投資は、低水準横這いで推移している。

生産・雇用面

生産は、旺盛な内外需を背景に増加基調を辿っているが、増勢テンポは主力の電気機械を中心に幾分鈍化している。

雇用は、有効求人倍率が上昇するなど、総じて改善傾向を辿っている。この間、所得面をみると、所定外労働時間の増加等から、名目賃金に持ち直しの動きが窺われている。

金融面

預金は、個人預金における他の預かり資産へのシフトや公金預金の減少もあって、前年を下回って推移している。

貸出は、個人向けは住宅ローンを中心に高い伸びを続けているものの、法人向けが引続き前年割れとなっていることから、前年を幾分下回っている。なお、法人向けの資金需要については、このところ幾分持ち直し傾向にある。

以上

神奈川県内金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済は、回復の動きが広がっている。

最終需要面をみると、公共投資が減少を続けているほか、住宅投資についても、力強さがみられない。また、個人消費については、雇用・所得環境が一進一退の状況にあり、全体としては弱めの基調が続いている。

一方、輸出が、アジア向けを中心に堅調な動きを持続しているほか、設備投資も、回復している。

こうした需要動向を反映して、県内企業の生産は、全体として緩やかに増加している。すなわち、工作機械では、情報通信関連の一部やデジタル関連企業の設備投資増加から、増産を続けているほか、鉄鋼においても、建設機械、造船、自動車向け需要が国内・国外(中国、東南アジア向け)ともに引き続き堅調なため、高操業を継続している。また、輸送用機械は、首都圏における排ガス規制強化に伴う特需が一巡したため、操業度がやや低下したものの、輸出の堅調に支えられ、その後は横這いで推移している。

なお、電気機械では、デジタル家電を中心に夏場以降増勢がやや鈍化している。

雇用・所得環境については、勤労者一人当たりの給与が下げ止まってきたものの、常用雇用者の減少傾向が変わらないなど、回復は一進一退の状況にある。

この間、企業倒産は、件数、負債総額ともに減少傾向にある。

県内金融機関の貸出をみると、個人向けが住宅ローンを主体に増加を継続しているほか、事業法人向けが下げ止まりの兆しをみせている。他方、預金は緩やかな伸びを続けている。

以上

東海地区金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、静岡、岐阜、三重)の景気は、足許幾分テンポを緩めつつも着実な回復を続けている。

最終需要の動向をみると、輸出は、海外経済の成長を背景に、増加を続けている。国内需要は、設備投資が業種や企業規模の広がりを伴いながら着実な増加を続けているほか、個人消費、住宅投資も底固く推移している。一方、公共投資は減少している。

こうした中、生産は、一部に増産余地が乏しくなりつつあることや一部IT関連の在庫調整の動きもあってテンポが緩んでいるが、増加を続けている。この間、企業収益も着実な改善を続けており、雇用・所得も持ち直しつつある。一方、物価は弱めの動きを続けている。

先行きについては、為替相場や海外景気の動向、一部IT関連の在庫調整の動きが輸出、生産等にもたらす影響や、原材料価格の上昇が企業収益や企業活動に及ぼす影響を注意深く見極めていく必要がある。また、雇用・所得面の動向とそれが個人消費に与える影響にも、引き続き注視が必要である。

金融面をみると、管内の金融機関(国内銀行+信金)の預金は前年を上回っている一方、貸出は前年を下回って推移している。

個人消費・・・各種売上指標をみると、家電量販店売上高は、パソコンが依然として低調な中、デジタル家電は引き続き堅調であり、総じてみれば横這い圏内の動きとなっている。また、乗用車販売台数は、新型車投入効果もあって持ち直している。一方、百貨店売上高、スーパー売上高は、他業態との競合が激化する中で、天候不順等もあってそれぞれ弱めの動きとなっている。この間、旅行取扱高は横這い圏内で推移している。

設備投資・・・製造業では、自動車、電気機械、一般機械、窯業・土石を中心に幅広い業種で着実に増加している。製造業中堅・中小企業における更新投資や新製品対応投資にも広がりがみられている。また、非製造業では、運輸・倉庫、小売、対事業所サービス、リース等で前向きな取り組みがみられている。非製造業中堅・中小企業でもサービスの一部等に前向きな動きが窺われる。

住宅投資・・・新設住宅着工戸数をみると、持家、貸家が底固く推移している。また、分譲は、戸建が堅調な動きを続けているほか、マンションも横這い圏内の動きを続けている。

公共投資・・・発注の動きを示す公共工事請負金額は、地方公共団体の予算規模縮小が続き、プロジェクト関連の新規発注もほぼ終息する中で、均してみれば減少している。大型プロジェクト関連の工事量は、大規模工事が終盤にさしかかる中で、公共投資全体への下支え効果は薄れている。

輸出・・・品目別にみると、自動車・同部品は、海外自動車販売の好調や自動車関連企業の海外生産拡大を背景に増加を続けているほか、工作機械も、海外における設備投資需要の増加等から緩やかに伸びている。また、ICパッケージも、携帯電話の世界需要が伸びる中で、増加を続けている。一方、デジタルカメラは海外販売における競合激化から、ビデオカメラは海外販売の低調を背景にそれぞれ緩やかに減少している。この間、鉄鋼も減少している。

仕向地別にみると、米国向けは、自動車・同部品が増加しており、全体でも持ち直している。アジア向けは、工作機械等資本財や電子部品等が増加する中、全体でも緩やかに増加している。また、欧州向けも、自動車・同部品の増加を主因に全体でも増加している。

生産・・・加工業種では、自動車関連が輸出の好調を主因に緩やかな増加を続けているほか、工作機械、電動工具、電子部品組立機も、生産水準を引き上げている。また、ICパッケージや液晶関連、半導体集積回路も高操業を継続している。一方、ビデオカメラは、輸出の低調から減少しているほか、デジタルカメラも輸出向けの競合激化を主因に増加テンポを緩めている。この間、二輪車は、概ね横這いの動きとなっている。

素材業種では、化学製品が海外需要の好調から、鋼板、特殊鋼は自動車・家電向けの堅調から、それぞれ高水準の生産を続けている。また、洋食器は、国内販売の持ち直しから生産水準を幾分引き上げている。しかし、繊維製品が輸入品との競合激化等を背景に減少しているほか、住宅向け窯業製品(瓦、衛生陶器、タイル)も、全体としては弱含んでいる。この間、棒鋼、紙・パルプは、横這い圏内で推移している。

雇用・所得・・・生産の増加や人材派遣等サービスでの労働需要の高まりを背景に、所定外労働時間は緩やかな増加基調を持続し、新規求人数は高水準横這い圏内の動きとなっている。一方、新規求職件数は、雇用リストラの落ち着きを反映して減少基調となっている。こうした中、有効求人倍率は高水準で横這い圏内の動きとなっており、常用労働者数も持ち直してきている。この間、一人当たり名目賃金は、生産の増加や企業収益の改善を背景に、持ち直している。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行京都支店

管内の景気は、回復を続けている。

個人消費は、全体としてみるとなお盛り上がりを欠いているものの、一部に持ち直しの動きがみられている。また、輸出の増加が続いているほか、設備投資は、投資スタンスを積極化させる先が製造業のほか非製造業の一部にまで広がっている。企業の生産については、一般・精密機械、電子部品等を中心に高水準の生産を続けており、雇用面の改善傾向も持続している。

こうした状況下、管内企業の業況判断についてみると、最近の原油価格上昇が企業収益の下振れ要因になると懸念する先が増えていることもあり、改善テンポに一服感が窺われる。

最近の最終需要面の動きを、まず個人消費関連についてみると、食料品を中心にスーパーの売上が奮わないほか、百貨店でも天候不順の影響から秋物衣料品の販売が伸び悩んでいる。また、家電販売も、薄型テレビやDVD等が好調を持続しているものの、パソコンが不振なほかエアコン販売も猛暑需要が一巡し伸び悩んでいる。一方、新車販売については、新型車投入効果もあって普通車の販売が堅調に推移している。

京都観光をみると、当地を主題にしたドラマ放映効果の持続や外国人観光客の増加もあって、京都市内ホテルの稼働率は高めに推移している。もっとも、オリンピック放映や台風などの天候不順の影響から、日帰り客を中心に入り込み客が伸び悩んだため、土産物販売等の関係業者の売上は低調に推移している先が少なくない。

この間、設備投資(9月短観ベース)は、製造業では電子部品等IT関連業種の大企業で生産能力増強投資を積極化しているほか、中堅・中小企業でも維持・更新投資のほか、工場増設を行う先がみられている。

また、非製造業でもサービス業や不動産業などの一部の先で土地投資を含む新規出店等を行う先が出始めている。

住宅投資は、貸家が伸びを高めているものの、持家、分譲住宅が伸び悩んでおり、全体としては横這い圏内の動きとなっている。

公共投資は、予算規模の縮小を背景に、減少基調にある。

輸出は、一般・精密機械関連では、東アジアを中心とした海外における設備投資の増加を受けて、液晶・半導体製造装置や環境関連の計測機器等が増加傾向を強めている。また、電子部品等のIT関連業種でも、東アジア向けを中心に増加傾向を持続している。

企業収益(9月短観ベース)をみると、最近の原油価格上昇が企業収益の下振れ要因になると懸念する先が増えているものの、製造・非製造業ともに増収効果や既往のリストラ効果の顕現化等もあって、増益基調を維持している。

雇用・所得面をみると、電気機械や輸送用機械のほか一般機械からの新規求人も高い伸びとなったこともあって、有効求人倍率は高水準を持続している。この間、所定外労働時間も高めの伸びを続けている。

企業倒産をみると、建設業等の小規模事業先の倒産が増加したことから、件数では低水準の前年を上回っているものの、負債金額は前年を下回っている。

金融面をみると、貸出については、全体としてはなお盛り上がりに欠けているものの、設備の維持・更新投資等に伴う資金需要が一部にみられるほか、住宅ローンも引き続き堅調に推移していることから、前年比マイナス幅の縮小傾向が持続している。

預金は、投信等他の金融商品へのシフトが引き続きみられるものの、個人預金を中心に緩やかな伸びを持続している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良・和歌山県)金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行大阪支店

管内の景気は、輸出や生産の伸びが幾分鈍化しているものの、設備投資の増勢が続いているほか、個人消費も緩やかに持ち直しており、全体として回復を続けている。

最終需要面の動きをみると、輸出は、米国向けの消費財や、アジア向けの電気機器関連部材など一部の品目で伸びが鈍化しているものの、全体では引き続き増加基調を維持している。

設備投資は、全体として増加している。製造業は、戦略分野での投資積み増しや、維持・更新投資の動きの一段の広がりから増加しており、非製造業は、都心部再開発案件、物流拠点の整備などから、下げ止まっている。

個人消費は、百貨店やスーパーはやや弱めの動きとなっているが、家電がデジタルAV製品を中心に堅調に推移しているほか、自動車も新車人気を背景に持ち直しており、全体では緩やかに持ち直している。

住宅投資は、分譲、貸家が横這い圏内で推移する中、持家が緩やかに減少していることから、全体としては緩やかに減少している。

公共投資は、減少している。

生産は、輸出の伸びの鈍化を受けて、増加テンポが幾分鈍化しているものの、工作機械や電気機械などを中心に、引き続き増加している。

企業収益(経常利益)は、これまでの輸出増加に加え、内需回復により売上が持ち直す中、リストラ効果も相俟って、改善している。

雇用・所得環境をみると、賃金面では依然として厳しい状況にあるが、雇用面では、企業の求人ニーズを背景に常用労働者数が底固く推移しているなど、悪化傾向に歯止めがかかっている。

物価をみると、企業の製品価格は、素材品目で原材料価格等のコスト上昇分を転嫁する動きが強まっているほか、加工品目の一部でも価格転嫁の動きが広がりつつあり、全体として強含んでいる。この間、大阪市消費者物価指数(総合除く生鮮食品)は、依然として前年割れが続いている。

企業倒産件数は、減少している。

企業金融は、業績低調な先では、なお厳しい状況が続いているが、全体としては、企業収益の改善等もあって、一段と落ち着いた地合いとなっている。

金融面をみると、貸出は、事業性資金を中心に減少している。こうした中、金融機関では、引き続き住宅ローンの推進や貸出先企業の新規開拓に積極的に取組むなど、資金需要の掘り起こしに注力している。

預金については、個人預金を中心に堅調に推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行神戸支店

管内の景気は着実に回復している。需要面をみると、輸出と設備投資は増勢を続けているほか、個人消費も強弱交錯しつつ底固く推移している。住宅投資はこのところ増加が目立つ一方、公共投資は低調に推移している。こうした状況下、企業の生産は増加しており、雇用も緩やかに改善している。また、9月短観における企業の景況感は、製造業を中心に幅広い業種で改善した。

個人消費は、強弱交錯しつつ底固い動きとなっている。百貨店売上高は、秋物衣料の滑り出しが今一つであるほか、天候不順(台風接近等)により客足が鈍っていることなどから、全体では前年割れが続いている。スーパー売上高は、衣料品の落ち込みに加えて、主力の食料品が振るわず、全体では低調に推移している。家電販売は、デジタル家電や多機能・高性能の白物家電の好調は続いているものの、エアコン特需の剥落もあり、全体では前年を下回っている。乗用車新車登録台数(含む軽)は、普通車が新型車投入効果やミニバンの需要堅調に支えられて大きく伸びているほか、小型車や軽自動車も増加していることから、全体では好調に推移している。この間、神戸市内のホテル客室稼働率は、団体需要がやや低調であるほか、高水準の前年の反動(SARSによる国内回帰の動き)もあり、このところ前年を下回っている。

設備投資は、製造業では、鉄鋼、IT関連、ゴム製品などで能力増強や効率化投資、老朽化設備の更新投資を積み増す動きが拡がっているほか、非製造業でも、物流・営業拠点の新設や拡充に踏み切る先がみられるなど、全体として増勢を続けている(9月短観16年度設備投資計画:全産業前年度比+10.8%、製造業同+12.8%、非製造業同+5.3%)。

住宅投資は、分譲マンション、分譲戸建てを中心にこのところ増加している。

公共投資は、県や国等でこのところ大型案件の発注がみられているが、基調としては低調に推移している。

輸出は、中国向けが高い伸びを続けているほか、欧米向けも好調に推移しており、全体では引き続き増加している。

生産・出荷の状況は、増勢が続いている。

造船 … プロダクトタンカーやLNG船の新規受注がみられるなど、各社とも概ね3〜4年分の受注残を抱え、高水準の操業度を維持している。

鉄鋼鋼板類は、薄板が自動車や家電向けに、厚板が造船、建設機械向けを中心に能力一杯のフル操業を続けている。この間、高炉メーカーでは、高炉改修等の設備投資を検討している。条鋼類(棒鋼、形鋼等)は、アジア向け輸出のほか、国内民間設備投資向けも堅調なことから、高めの生産水準を続けている。特殊鋼は、自動車や建設機械向けの需要が好調で、フル生産を続けている。

一般機械建設機械射出成形機は、中国向け輸出が減少しているものの、米国や国内需要が依然好調なことから、全体とすれば高水準の生産を続けている。物流機械は、食品や家電などから物流センター向けの汎用機やプラント案件の受注が増加しているほか、化工機も、化学業界を中心に引合いが依然根強く、堅調に推移している。

電子部品半導体半導体検査用部品は、携帯電話やデジタル家電製品(デジカメ、DVD等)の需要堅調からフル生産を続けているほか、液晶表示装置も、携帯電話やカーナビ、パソコン向けの需要が大幅に増加しており、フル操業に移行している。コンデンサーは、自動車、家電、鉄道車両向けに加え、設備投資関連からの引合いも好調なことから、高水準の生産を維持している。

食品惣菜は、新商品の投入効果や販促キャンペーンなどが奏効して好調に推移している。食肉加工は、ハム・ソーセージはやや不冴えとなっているものの、生肉が豚肉を中心に堅調に推移していることから、全体の出荷量は持ち直している。

地場産業豊岡鞄は、海外旅行の回復を反映して、旅行鞄の受注が持ち直すなど、一部に動意が窺われる。一方、真珠は南洋真珠の持ち直しの動きがやや一服してきているほか、日本酒ケミカルシューズなどは低調の域を脱していない。

雇用情勢は、有効求人倍率や新規求人数が改善傾向にあるなど、緩やかに改善している。

企業倒産件数は、引き続き前年を下回って推移している。

金融面をみると、貸出は、住宅ローンが好調を持続しているものの、企業の資金需要が依然として乏しいことから、全体では低調に推移している。

貸出約定平均金利は、短期はやや上昇しているが、長期は引き続き低下している。

預金は、個人預金が底固いことなどから、全体では堅調に推移している。

以上

中国地区金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行広島支店

概況

中国地区の景気は、輸出・生産が好調に推移するなかで、設備投資が増加しているほか、個人消費にも一部持ち直しの動きがみられるなど、全体として回復している。

(前回<3か月前>との比較)

  • 改善がみられる項目…
    1. 個人消費は、一部に持ち直しの動きがみられる。
    2. 雇用・所得環境は、改善の動きがみられる。
  • 概ね変化がみられない項目…
    1. 設備投資は、増加している。
    2. 住宅投資は、横這い圏内で推移している。
    3. 公共投資は、減少傾向にある。
    4. 輸出は、増加している。
    5. 生産は、高水準となっている。
    6. 企業マインドは、改善傾向にある。
    7. 企業収益は、増益計画となっている。

1.実体経済

(1)最終需要の動向

個人消費は、一部に持ち直しの動きがみられる。

百貨店およびスーパーの売上高は、引き続き前年を下回っているものの、家電販売は、薄型テレビやDVD等が堅調であるほか、乗用車販売台数や旅行取扱高も持ち直しつつある。

設備投資は、増加している。

9月短観(中国地区)における16年度設備投資計画(全産業)をみると、能力増強投資等を実施する先に業種・規模的な広がりが窺われることなどから、前回(6月)調査に比べ若干上方修正され、前年比+13.0%の増加計画となっている。

住宅投資は、横這い圏内で推移している。

新設住宅着工戸数をみると、基調としては横這い圏内で推移している。

公共投資は、減少傾向にある。

公共工事請負額をみると、地方公共団体での投資的経費の圧縮スタンスが続いていることなどから、減少傾向にある。

輸出は、増加している。

輸出(通関輸出金額を輸出物価指数で調整したもの)をみると、自動車が北米・欧州向けを中心に増加しているほか、一般機械や化学もアジア向けが堅調に推移しているなど、全体としては引き続き増加している。

(2)生産の動向

生産は、高水準となっている。

業種別にみると、輸送用機械や化学、電気機械が高水準の生産を持続しているほか、一般機械では操業度を高めている。一方、繊維等その他製造業では低水準の操業が続いている。

(3)雇用・所得環境の動向

雇用・所得環境は、改善の動きがみられる。

有効求人倍率は、足許、若干低下しているものの、派遣・請負などのサービス業や製造業等からの求人が堅調に推移している。また、常用労働者数にも改善の動きがみられる。

(4)企業の動向

企業マインドは、改善傾向にある。

9月短観(中国地区)における企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)をみると、足許、若干改善し、先行きは横這いの見通しとなっている(全産業:16年6月△9%ポイント→16年9月△7%ポイント→16年12月予測△7%ポイント)。

企業収益は、増益計画となっている。

9月短観(中国地区)における16年度収益計画(全産業)をみると、前回(6月)調査に比べ若干上方修正され、前年比+10.8%の増益計画にある。

2.金融動向

(1)貸出の動向

貸出は、総じてみれば弱めの動きが続いている。

内訳をみると、個人向けは、住宅ローンの推進などから底堅く推移している。一方、法人向けは、運転・設備資金ともに資金需要が乏しいことから低調に推移している。

(2)預金の動向

預金は、前年を上回って推移している。

内訳をみると、個人・法人預金とも前年を上回って推移している。

以上

四国地区金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概観

四国地区の景気は、地域間や業種間で格差がみられるものの、総じてみれば、緩やかな持直しの動きを続けている。

企業部門では、輸出や国内設備投資の増加を受けて、生産水準は緩やかに上昇している。収益も増加傾向にあるが、原材料価格上昇の影響が一部にみられる。こうした中、業況感は緩やかに改善している。また、域内の設備投資は、製造業中心に引続き回復の動きが続いている。

家計部門をみると、生産水準の上昇や企業収益の増加を映じて、雇用・所得環境に持直しの動きも窺われる中、個人消費では一部に明るい動きもみられるが、総じてみれば横這い圏内の動きとなっている。一方、住宅投資はこのところ前年水準を上回って推移している。

この間、公共投資は引続き減少している。

1. 需要

輸出は、一部に中国における投資抑制策の影響が窺われるものの、引続き中国向け、米国向けを中心に増加している。

設備投資については、生産設備増強のほか、新規出店やリニューアルなど、投資上積みの動きが続いているため、全体としては引続き回復傾向を辿っている。この間、一部に鋼材価格上昇を眺め建築投資を先送りする動きもある。

個人消費をみると、雇用・所得環境の一部に持直しの動きがみられる中、デジタル家電(薄型テレビ、DVDレコーダー)がアテネ五輪後も堅調を持続しているほか、乗用車販売も新型車投入効果から前年を上回って推移しているが、百貨店・量販店が衣料品を中心に低調な販売となっており、全体としてみれば横這い圏内の動きとなっている。

住宅投資は、住宅ローン特別減税減額前の適用を受けるための駆込み着工がみられた持家を中心に、このところ前年水準を上回っている。

公共投資は、厳しい財政事情を反映して、引続き減少している。

2. 生産

生産水準は、企業・業種間のバラツキを伴いながらも、輸出や国内設備投資の増加などを受けて、緩やかな上昇傾向を辿っている。

すなわち、輸出の増加を受けて、IT関連で電気機械(液晶表示装置・同部品、半導体)、化学(電子部品、各種光学フィルム)、紙・パルプ(コンデンサ用絶縁紙)が好調に推移している。また、輸送用機械(外航船)、一般機械(建設用機械)、鉄鋼(特殊アロイ、鋳鋼)、化学(家禽飼料原料、化学繊維原料)も高操業を継続している。

内需関連では、輸送用機械(自動車用ベアリング)が好調なほか、一般機械(産業用機械)、紙・パルプ(印刷用紙)、金属製品(アルミサッシ)等が堅調に推移している。一方、窯業・土石(生コンクリート、土木資材関連製品)、鉄鋼関連の一部(棒鋼、建築用鋼管)、木材・木製品(製材品、型枠用合板)等は低操業となっている。

この間、鉄鋼(特殊アロイ、鋳鋼)、一般機械(建設用機械、産業用機械)、化学(化学繊維原料)等で原材料価格上昇分の製品価格転嫁が進められたほか、価格転嫁の動きは輸送用機械(造船)等にも拡がりをみせている。

3. 雇用・所得

雇用・所得環境は、依然として厳しい状況にあるものの、一人当り現金給与がこのところ前年を上回って推移するなど、一部に持直しの動きも見受けられる。

4. 金融

預金は、公金預金の減少などから、全体では引続き前年を下回っている。貸出金も、企業からの資金需要低迷を受け、引続き前年を下回って推移している。この間、貸出約定平均金利は、低下している。

以上

九州地区金融経済概況

2004年10月18日
日本銀行福岡支店

九州の景気は、製造業を中心に回復を続けている。

輸出、設備投資が製造業を中心に増加を続けており、生産も、一部に受注伸び悩みの動きもみられるが、なお増加基調にある。また、住宅投資はやや強めの動きとなっている。一方、個人消費は、総じてみると底堅い動きが続いているが、台風襲来などの特殊要因の重なりもあって、売上げを落としている先が目立っている。こうした中、企業の業況判断をみると、製造業では引き続き改善しているが、非製造業では足踏み状態となっている。

先行きについては、輸出や設備投資の増加を背景に、生産も伸びが鈍化しつつも引き続き増加基調を維持していくと見込まれる。もっとも、所得面の明確な改善が窺われない中、個人消費は緩やかな回復にとどまるとみられる。

最終需要をみると、個人消費は、総じてみると底堅い動きが続いているが、台風襲来などの特殊要因の重なりもあって、売上げを落としている先が目立っている。コンビニエンス・ストアの売上高や旅行取扱高は、前年を上回って推移しているほか、郊外型商業施設が高い集客力を示しているものの、百貨店やスーパーなどの売上高や乗用車の新車登録台数は、前年を下回って推移している。

住宅投資は、持家が低価格物件を中心に増加しているほか、分譲も福岡市内を中心としたマンション着工が大幅に増加しているなど、やや強めの動きとなっている。

公共投資は、減少傾向にある。発注の動きを示す公共工事請負高をみると、大型工事の発注がみられたことなどから、夏場にかけて一時的に前年を上回ったものの、国や地方自治体の関係予算が削減されている中、ならしてみれば引き続き減少傾向にある。

輸出は、引き続き増加している。地域別にみると、アジア向けが一般機械や電気機械、鉄鋼などを中心に大幅に増加しているほか、EU向けが自動車を中心に増加傾向にある。一方、北米向けでは、主力の輸送用機械が、前年の出荷調整に伴う反動の影響から一時的に増加しているが、先行きは一部メーカーの現地生産化もあって、減少の方向にある。

設備投資は、非製造業が前年をやや下回る計画となっているが、電気機械が投資を積極化しているほか、鉄鋼、精密機械、食料品などでも前年を大幅に上回る投資を計画しており、全体としてみると製造業を中心に増加している。

生産は、引き続き増加している。一般機械では、半導体製造装置や数値制御ロボット、船舶用部品などの生産が増加しているほか、自動車・船舶など輸送用機械が高操業を続けている。電子部品・デバイスでは、PDP(プラズマ・ディスプレー・パネル)やCCD(電荷結合素子)を中心に引き続き高操業を続けている。もっとも、この間、半導体集積回路については、デジタル家電向け等の需要の一服から、一部に受注伸び悩みの動きもみられる。

雇用面は、緩やかな改善傾向が続いている。新規求人数は、人材派遣・業務請負会社などのサービス業を中心に増加傾向を辿っており、有効求人倍率は緩やかに改善している。また、常用雇用者数も、減少傾向に歯止めがかかりつつある。

もっとも、雇用者所得面をみると、企業の人件費抑制姿勢が続いており、現金給与総額はなお前年割れとなっている。

物価面をみると、消費者物価(九州地区、除く生鮮食料品)は、前年をやや下回る水準で推移している。

企業倒産をみると、件数、負債金額ともに前年を下回っており、落ち着いた基調となっている。

金融面をみると、銀行預金(譲渡性預金を含む)は、流動性預金を中心に前年水準を上回って推移している。

銀行貸出は、前年水準を下回っている。住宅ローンが前年を上回っているほか、一部にアパート建設や医療・福祉施設の建設・改築などの設備資金がみられているものの、企業の借入抑制姿勢の継続もあって、運転資金は減少傾向にある。

以上