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地域経済報告―さくらレポート―(2016年10月)*

  • 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2016年10月17日
日本銀行

目次

  • III.地域別金融経済概況
  • 参考計表

I.地域からみた景気情勢

各地域からの報告をみると、東海で、「幾分ペースを鈍化させつつも緩やかに拡大している」としているほか、残り8地域では、「緩やかな回復を続けている」等としている。この背景をみると、新興国経済の減速の影響などがみられるものの、所得から支出への前向きな循環が働いていることや、熊本地震の影響が和らいでいることなどが挙げられている。

各地の景気情勢を前回(16年7月)と比較すると、中国から、生産面の下押し要因が緩和しているとして、また、九州・沖縄から、熊本地震の影響が和らいでいるとして、それぞれ判断を引き上げる報告があった。一方、東海から、個人消費の一部に弱めの動きがみられるとして、判断を引き下げる報告があった。残り6地域では、景気の改善度合いに関する判断に変化はないとしている。

表:地域からみた景気情勢
【16/7月判断】 前回との比較 【16/10月判断】
北海道 緩やかに回復している 不変 緩やかに回復している
東北 生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている 不変 生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている
北陸 一部に鈍さがみられるものの、回復を続けている 不変 一部に鈍さがみられるものの、回復を続けている
関東甲信越 輸出・生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、緩やかな回復を続けている 不変 輸出・生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、緩やかな回復を続けている
東海 自動車関連での工場事故や熊本地震の影響から輸出・生産面で振れがみられるものの、基調としては緩やかに拡大している 右下がり 幾分ペースを鈍化させつつも緩やかに拡大している
近畿 輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに回復している 不変 緩やかに回復している
中国 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復基調を続けている 右上がり 緩やかに回復している
四国 緩やかな回復を続けている 不変 緩やかな回復を続けている
九州・沖縄 熊本地震の影響により急速に下押しされた後、観光面などで弱い動きが続いているものの、供給面の制約は和らいできており、緩やかに持ち直している 右上がり 熊本地震の影響が和らぐもとで、緩やかに回復している
  • 前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、右上がりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。

公共投資は、3地域(北海道、北陸、関東甲信越)が「増加」という表現を用いているほか、東北は「高水準で推移」としている。また、2地域(四国、九州・沖縄)が「持ち直し」という表現を、3地域(東海、近畿、中国)が「下げ止まり」という表現を、それぞれ用いている。

設備投資は、7地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国)が「増加」という表現を用いているほか、北海道では「高水準で推移している」としている。一方、九州・沖縄では、「高めの水準ながら減少している」としている。
この間、企業の業況感については、3地域(東北、四国、九州・沖縄)が「改善」という表現を用いている。また、2地域(北陸、関東甲信越)が「総じて良好な水準を維持しているが、一部にやや慎重な動きもみられている」等としているほか、3地域(東海、近畿、中国)が「横ばい」という表現を用いている。一方、北海道は「幾分悪化」としている。

個人消費は、5地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿)が「一部に弱めの動きがみられる」等としつつも、全体としては、2地域(北海道、九州・沖縄)が「回復」という表現を、2地域(北陸、四国)が「持ち直し」という表現を、5地域(東北、関東甲信越、東海、近畿、中国)が「底堅く推移している」という表現を、それぞれ用いている。

百貨店販売額は、天候不順の影響もあって、多くの地域から「高額品販売を中心に弱めの動きがみられる」、「衣料品などに弱めの動きがみられる」等の報告があった。また、スーパー販売額は、一部の地域から天候不順や消費者マインド慎重化の影響についての報告もあったが、多くの地域からは、「堅調に推移している」、「基調としては改善の動きが続いている」、「持ち直している」等の報告があった。このほか、コンビニエンスストア販売額は、多くの地域から「増加している」、「堅調に推移している」等の報告があった。

乗用車販売は、多くの地域から「持ち直している」、「下げ止まっている」等の報告があった一方、「前年を下回っている」等の報告もあった。

家電販売は、「堅調な動きが続いている」、「底堅く推移している」等の報告があった一方、天候不順の影響から「前年を下回っている」等との報告がみられるなど、地域によって区々となっている。

旅行関連需要は、多くの地域から、国内旅行を中心に「堅調となっている」、「底堅く推移している」等の報告があった一方、「弱めの動きとなっている」等の報告もあった。この間、「熊本地震による観光地の被災や消費者マインドへの影響が続いているものの、各種観光支援策もあって回復している」との報告があった。また、外国人観光客は、引き続き「増加している」との報告もあった。

住宅投資は、2地域(北陸、中国)が「増加」という表現を用いているほか、東北が「高水準で推移している」としている。また、6地域(北海道、関東甲信越、東海、近畿、四国、九州・沖縄)が「持ち直し」という表現を用いている。

生産(鉱工業生産)は、4地域(北海道、東海、近畿、九州・沖縄)が「増加」という表現を用いている。また、3地域(東北、北陸、中国)が「横ばい圏内の動き」等としている。一方、四国は「持ち直しが一服している」、関東甲信越は「足もと弱めの動きがみられる」としている。

雇用・所得動向は、全ての地域が「改善している」等としている。

雇用情勢については、全ての地域が「労働需給が着実な改善を続けている」、「引き締まっている」等としている。雇用者所得についても、全ての地域が「着実に改善している」、「緩やかに増加している」等としている。

需要項目等

表:需要項目等
公共投資 設備投資 個人消費
北海道 緩やかに増加している 高水準で推移している 雇用・所得環境が着実に改善していることを背景に、回復している
東北 震災復旧関連工事を主体に、高水準で推移している 緩やかに増加している 一部に弱めの動きもみられるが、底堅く推移している
北陸 北陸新幹線敦賀延伸関連の工事の進捗などを反映して、増加している 電力・ガスのインフラ投資や、需要好調業種の能力増強投資を中心に、着実に増加している 一部に鈍さがみられるものの、持ち直している
関東甲信越 増加している 増加している 一部に弱めの動きもみられるが、底堅く推移している
東海 下げ止まっている 大幅に増加している 一部に弱めの動きもみられるが、底堅く推移している
近畿 下げ止まりつつある 増加基調にある 一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境が改善するもとで、底堅く推移している
中国 下げ止まっている 緩やかに増加している 底堅く推移している
四国 持ち直している 緩やかに増加している 緩やかに持ち直している
九州・沖縄 大型案件の発注増等から持ち直している 大型投資の一巡もあって、高めの水準ながら減少している 各種観光支援策の効果もあって観光面が回復しているほか、被災地における耐久財を中心とした買い替え需要が続いており、全体として回復しつつある
表:需要項目等
住宅投資 生産 雇用・所得
緩やかに持ち直している 緩やかに増加している 雇用・所得情勢をみると、労働需給は着実に改善している。雇用者所得は回復している 北海道
高水準で推移している 横ばい圏内の動きとなっている 雇用・所得環境は、改善している 東北
持家を中心に前年を上回るなど、増加している 横ばい圏内で推移しており、高水準を保っている 雇用・所得環境は、着実に改善している 北陸
着実に持ち直している 輸送機械における生産体制の見直しの影響等もあって、足もと弱めの動きがみられる 雇用・所得情勢は、労働需給が着実な改善を続けているもとで、雇用者所得も緩やかに増加している 関東甲信越
振れを伴いつつも、持ち直しの動きが続いている 自動車関連の挽回生産等から、緩やかに増加している 雇用・所得情勢をみると、労働需給が引き締まっているほか、雇用者所得は着実に改善している 東海
持ち直している 緩やかな増加に転じている 雇用・所得動向をみると、雇用者数が増加し、労働需給が改善を続けるもとで、名目賃金も緩やかに上昇している。このため、雇用者所得は一段と改善している 近畿
緩やかに増加している 横ばい圏内の動きとなっている 雇用・所得環境は、着実な改善を続けている 中国
持ち直している 持ち直しが一服している 雇用・所得情勢をみると、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直している 四国
振れを伴いつつも緩やかに持ち直している 熊本地震被災企業の操業再開や挽回生産実施などにより操業度を高める動きが広がっているほか、海外向けの増産効果もあって着実に増加しており、地震前を上回る水準となっている 雇用・所得情勢をみると、労働需給は着実に改善しており、雇用者所得は振れを伴いつつも持ち直している 九州・沖縄

II.地域の視点

各地域におけるインバウンド観光の動向と関連企業等の対応状況

1.インバウンド観光関連需要の動向

(1) 外国人旅行者数と消費額の動向
  • 訪日外国人旅行者の消費動向をみると、1人当たり消費額は、為替円高や中国の関税率引き上げ等を背景に、本年入り後、前年を下回っているとする企業等が多い。一方、旅行者数は、為替円高等から伸びは鈍化しつつも、ビザ発給要件の緩和、LCCの就航やクルーズ船の寄港の増加等によるアクセスの向上、官民の振興策の奏功等から、国・地域の広がりを伴いながら、前年を上回って推移しているとの声が多い。このため、訪日外国人旅行者の全体の消費額は、伸びは鈍化しつつも、堅調に推移しているとみられる。
  • もっとも、そうした中にあって、熊本地震で被害を受けた地域などでは、依然として厳しい状況にあるとの声も聞かれている。
(2) 最近の外国人旅行者の需要の特徴点
  • 外国人旅行者の需要の中身についてみると、以下の通り、訪問先等の多様化を指摘する声が多く聞かれている。
    1. (1)訪問先は都市部から地方へ
      • リピーターの増加、SNS等による口コミの広がり、都市部の宿泊料金の上昇、国内交通網の整備等を背景に、東京、大阪、京都等の都市部以外の地方を訪れる外国人が増加しているとの声が多い。
    2. (2)モノ消費の中心が高額品から比較的安価な日用品へ
      • 為替円高や中国の関税率引き上げ等の影響から、海外ブランド品等の高額品の販売が鈍っている一方、化粧品や菓子等の比較的安価な日用品の販売は、わが国の免税対象品目の拡充もあって、好調に推移しているとの声が多い。
    3. (3)モノ消費からコト消費(体験型・交流型観光)へ
      • リピーターの増加等を背景に、各地の自然や伝統文化等の体験、サイクリング等のアクティビティ、アニメの聖地巡り等を志向する外国人旅行者が増加しつつあるとの声が聞かれている。
(3) わが国経済への波及効果
  • こうした需要の変化に伴い、わが国経済への波及効果にも広がりと深まりがみられる。まず、売上増加の形で直接的な恩恵を受ける先が広がっている。また、海外ブランド品から国産の化粧品などへの需要のシフトが、国内生産の増加に繋がっているとの声も聞かれる。その結果、このところ、ホテルなどの非製造業に加えて、化粧品などの製造業でも、設備投資や雇用拡大に踏み切る動きがみられている。このほか、輸出全体に占めるウェイトはまだ小さいながらも、外国人旅行者を通じた海外での認知度向上もあって、化粧品や日本酒等の輸出が増加傾向にあるとの声が少なからず聞かれている。

2.インバウンド観光関連需要の獲得に向けた関連企業等の取り組み

(1) 関連企業等の基本的な取り組みスタンス
  • 従来、いわゆる「爆買い」に依存していた先では、経営戦略を見直す動きがみられる。また、インバウンド需要は海外情勢等により大きく変動しうることなどから、引き続き慎重な取り組み姿勢にある先もみられる。もっとも、全体としては、訪問先等の多様化を背景に、地方も含めて課題の把握と解決に向けた前向きな対応が広がっている。
(2) 課題についての認識と解決に向けた対応
  • 課題としては、語学力を備えた人材を中心とした人手不足は各地域でほぼ共通しているが、その他の点では、インバウンド観光振興の進展度合い等の違い等によって、地域間で違いが窺われる。大まかな傾向としては、いわゆるゴールデンルート上の都市など需要獲得の面で先行している地域では、観光資源、PR、アクセス、受入態勢の面で既に相応の水準にあるとみられ、一段の高度化が意識されている。一方、その他の地域では、受入態勢もさることながら、そもそも魅力的な観光資源を確立できていないといった声が少なくない。
  • 関連企業等の対応をみると、地方も含めて課題解決に向けた前向きな動きが広がっており、特に先行地域では、これまでの訪日外国人客対応の経験も活かした、進化した対応が目立つ。
    1. (1)観光資源については、地方では強みである自然環境等を活かした体験型・交流型観光の企画に注力する動きが、都市部では強みのあるショッピングの魅力向上等に取り組む動きが、それぞれ目立つ。
    2. (2)PR面では、地方も含め、海外の旅行代理店への働きかけやSNSを活用したPRの動きが広がっている。さらに先行地域では、訪日歴のある顧客について帰国後も越境EC(国境を跨いだ電子商取引)等を通じて需要獲得を図る動きや、外国人旅行者の移動経路や購買履歴等のビッグデータを収集・分析し、販促等に活かす動きもみられ始めている。
    3. (3)アクセス面については、都市部ではLCCの就航の拡充等の動きが、一方、地方では広域連携や二次交通の整備等により改善を図る動きが、それぞれ目立つ。
    4. (4)外国語・異文化対応の面では、地方も含め、多言語表記や、留学生の登用等による人材確保の動きのほか、宗教上の要請等に対応した食事の提供等の動きが広がっている。さらに先行地域では、翻訳機能付きのタブレットの導入も広がりつつあるほか、外国人旅行者に対する日本式マナーの手ほどきなどを通じてよりスムーズな接客を図る動きもみられる。
    5. (5)その他の面では、地方も含め、宿泊施設や無料Wi-Fiの整備等の動きが広がっている。さらに先行地域では、モバイル決済サービスの導入等も広がりつつある。
  • 各地域の自治体等では、海外向けのPR活動や受入態勢の整備のほか、地域内の企業・金融機関や他の自治体との連携を通じて、インバウンド観光振興に取り組んでいる。また、地域金融機関では、こうした連携に参画し、地域経済に関する情報力・取引先ネットワークや融資機能といった強みを活かす動きがみられるほか、海外カードが利用できるATMの設置等による金融・決済サービスの向上にも取り組んでいる。

3.中長期的な見通し

  • 先行きについては、政府による観光立国実現に向けた施策や空・海の玄関口の拡充もあり、少なくとも2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでは外国人旅行者の増加傾向が続くと見込む先が多い。今後も継続的に外国人旅行者を増やしていくために、各地域が外国語対応等の態勢整備を着実に進めるとともに、固有の観光資源により一層磨きをかけることにより、わが国全体として多様な魅力を発信していくことが期待される。

日本銀行から

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