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(論文)「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ第1回「わが国の物価変動の特徴点」の模様
日本銀行は、物価の安定と金融システムの安定を目的とする、日本の中央銀行です。
ホーム > 調査・研究 > 日本銀行レポート・調査論文 > 調査論文 1998年 > 通貨統合後の欧州のペイメントシステムについて
1998年 8月28日
大橋千夏子※1
本論文中で示された内容や意見は筆者個人に属するもので、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
以下には、全文の冒頭部分(はじめに)および目次を掲載しています。
全文(本文、図表)[PDF 146KB]
なお、本稿は日本銀行調査月報8月号にも掲載しています。
欧州では、1999年1月1日のeuro導入に伴い、EU域内におけるeuroのクロスボーダー決済システムである「TARGET1」が稼働開始する予定となっている。本稿では、EMI(European Monetary Institute<欧州通貨機構>)2、ECB(European Central Bank<欧州中央銀行>)およびEU加盟国中央銀行が中心となって計画してきたTARGETシステムの概要を紹介する。また、これと並行して計画されているその他のeuro決済サービスを巡る動きを整理し、通貨統合後の欧州におけるペイメントシステムの姿を考えるための材料を提供する。
予め要旨をまとめると以下の通り。(1)EUでは、99年 1月の通貨統合に伴い、各国のRTGS3システムをリンクしたTARGETが稼動開始する。TARGETは、ESCB(European System of Central Banks<欧州中央銀行制度>)による金融政策のインフラとなるとともに、euroのクロスボーダー決済サービスを提供する。TARGETの稼働時間は、7:00〜18:00の11時間であり、休日は、土日およびEU域内共通の休日であるクリスマスと元日の2日となる。また、利用料金は、利用件数に応じて1件当たり0.80〜1.75 euroの間に設定することが決定されている。
(2)通貨統合後のeuroのクロスボーダー決済については、(a)TARGET等のRTGSシステムのほか、(b)民間や中央銀行が運営するネット決済システム、(c)コルレス方式による決済等複数のルートが利用可能であり、今後は、システムの特性等に応じた利用ルートの選別が進むものと考えられる。
(3)証券決済システムについては、(a)ESCBの金融調節に関与する証券決済システムのミニマム・スタンダードの制定や、(b)ESCBの金融調節等の担保適格証券のクロスボーダー利用を可能とする仕組み等証券決済のインフラ整備が進められている。これまでのところ、TARGETのように各国システムをリンクする構想の実現は遅れ気味であるが、個々の決済システムにおいては、euro導入を契機に役割拡大を目指す動きもあり、今後の動向が注目される。