このページの本文へ移動

業務継続体制の整備状況に関するアンケート(2006年12月)調査結果

2007年3月29日
日本銀行金融機構局

はじめに

  • 日本銀行は、今般、2002年、2004年に続き、第3回目の「業務継続体制の整備状況に関するアンケート調査」を行った。
  • アンケート調査の対象金融機関は、決済システムにおける取引金額シェアの高い日本銀行取引先84先である。
  • アンケート調査の目的は、対象金融機関の現状を把握するとともに、日本銀行が金融機関と業務継続について広く議論していくうえでの足がかりとすることである。
  • 日本銀行では、今回のアンケート調査などを参考にしながら、わが国金融システムにおける業務継続面での対応力強化に向けて、考査やオフサイト・モニタリング等の場を通じて金融機関との間でさらに議論を深め、一層の連携強化に努めていく考えである。

調査結果の概要

1.業務継続推進体制の整備

  • 業務継続体制の整備状況については、全体で8割弱の先が『整備済み』としており、前回調査(7割弱)との比較でも、『整備済み』とする先の比率が増加している[該当箇所=1.(1)]。
  • 業務継続計画の策定・改訂を統括する部署の設置状況については、8割弱の先が『設置済みで、統括責任者は役員』としている。もっとも、統括部署の機能として、『各担当部署が作成した計画の検証を実施したうえ、全体の整合性の検証も実施』とする先は5割強にとどまっている[1.(3)]。

2.業務継続計画の策定

(1)前提条件の明確化

  • 被災シナリオについては、9割の先が「被災シナリオの特定」を『実施済み』としている。また、「被災シナリオ発現による影響度評価」については、8割方の先が『実施済み』としている[2.(1)イ]。
  • 被災シナリオの具体的内容については、前回調査に比べ幅広い脅威が想定されている。ただし、新型疫病(鳥インフルエンザ等)への対応を図るための業務継続計画について、『計画を策定済みであり、必要な経営資源も確保済み』とした先は2割にとどまっている[2.(1)ロ・ハ]。
  • 結果事象からみた被災シナリオの想定については、「システムが使用できず、バックアップ・システムで業務を継続するシナリオ」、「システムが使用できず、手作業で業務を継続するシナリオ」に関し、それぞれ9割、8割弱の先が『想定済み』としている。
    一方、「広域被災や立入制限の行政措置等により、地域へ立入れなくなるシナリオ」に関しては、『想定済み』とする先は5割弱にとどまっている[2.(1)ニ]。
  • 「重要業務」の特定については、9割の先で『特定済み』としており、前回調査(9割弱)との比較でも、『特定済み』とする先の比率が増加している。もっとも、3割強の先が『特定済みだが、定期的な見直しは未実施』としているほか、『全ての「重要業務」について、具体的な復旧目標時間を設定済み』とする先は4割強にとどまっている[2.(1)ホ・ト]。

(2)業務継続対応に必要な資源の整備・確保状況

  • 業務継続要員については、半数の先が『要員の見積りはできているが、任命等による個別伝達は未了』ないし『要員の見積りは今後の課題』としている[2.(2)イ]。
  • バックアップ施設の確保については、9割弱の先がバックアップ・センターを、8割弱の先がバックアップ・オフィスを『確保済み』としている[2.(2)ロ]。
  • 「重要業務」に対するバックアップ・オフィスおよびバックアップ・センターのカバレッジについては、双方とも4割程度の先が、『「重要業務」の90%以上がバックアップ施設での継続対象業務である』としている[2.(2)ハ]。

(3)個別「重要業務」における復旧目標時間

  • 最優先の「重要業務」における復旧目標時間については、7割弱の先が『4時間以内』としている[2.(3)]。

(4)個別「重要業務」におけるバックアップの方法等

  • バックアップ・システムの能力については、6割強の先が『メイン・システムと同等の処理能力を確保』としている[2.(4)ハ]。
  • もっとも、バックアップ・システムを起動するのに必要な「バックアップ・データからの取引データの戻し」および「取引データの補正」に係る所要時間の見積り状況については、『データ戻し、データ補正とも所要時間を見積り済みで、業務継続計画との整合性も検証済み』とする先は5割程度にとどまっている[2.(4)ロ]。

(5)業務継続計画発動時の意思決定・連絡体制の整備

  • 権限委譲の体制、重要な関係先への連絡方法については、8割の先が『整備済み』としているが、重要な関係先が業務継続計画を発動した場合の連絡体制を『整備済み』とする先は、5割程度にとどまっている[2.(5)]。

(6)マニュアルの整備状況等

  • 「重要業務」遂行のためのマニュアル整備については、『業務の全プロセス(データ後追い入力や手作業処理等を含む)について、マニュアル化されている』とする先は3割弱にとどまっている[2.(6)イ]。

3.訓練の実施と計画の見直し

  • 業務継続のための訓練の実施状況については、9割弱の先が『定期的に実施』としている。ただし、『全ての「重要業務」に対し実施』としている先は4割程度にとどまっている[3.(1)ロ・ハ]。
  • 訓練の実施環境については、8割方の先が『業務継続計画発動時に実際に使用するシステム・機器を使用』としている。 訓練内容は、『緊急時の連絡訓練』や『バックアップ・センターへの切替訓練(システム部門のみ)』が中心となっており、『営業店も参加したバックアップ・センター切替訓練』や『バックアップ・センター切替に伴う欠落取引の反映訓練』まで実施している先は2〜3割にとどまっている[3.(1)ニ・へ]。
  • 訓練結果を踏まえた業務継続計画の見直しについては、6割弱の先が『業務再開までの目標時間の達成可否や、改善すべき点を検証し、経営陣に報告したうえで、「業務継続計画」を見直している』としている[3.(2)]。
  • 他の金融関係機関が主催する共同訓練については、ほぼ全先が『参加したことがある』とし、また、訓練内容の更なる充実の必要性を肯定している[3.(3)イ・ロ]。

4.全体を通して

  • 業務継続のフィージビリティ確保状況については、『確保されている』とする先は全体の1割強にとどまっており、6割強の先は『一部不確かな部分は残っているが、概ね確保されている』としている[4.(1)]。
  • 業務継続への取組みにおける当面の最重要課題については、7割弱の先が『業務継続計画の拡充ないし精緻化』、5割方の先が『バックアップ施設の拡充』としている[4.(2)]。

本件に関する照会先

日本銀行 金融機構局

システム関連考査担当(03-3664-4333) 山崎博良、白石実

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。
転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。