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わが国におけるプライベート・エクイティ・ファンドの可能性―アイデアとコミットメントのあるファイナンスへの期待―

2020年12月11日
日本銀行金融市場局
鷲見和昭

要旨

わが国企業は、人口減少の逆風にさらされる中、グローバル化やデジタル化、ポストコロナ時代の経済構造変化に適応することが求められている。1990年代後半以降、企業は負債の圧縮を進め、自己資本比率を高めてきた。これにより危機への耐久力を高めた一方、事業改革に資本を有効活用できているかというと疑問が残る。また、経営者の高齢化が顕著に進む中で、多くの企業で事業承継が喫緊の課題であり、これを機に企業再編が広範に進む可能性が高まっている。こうした下、事業改革のアイデアとコミットメントを有する金融の役割が一層重要になる。本稿では、そうした機能を提供する主体の一つとして、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の可能性に注目したい。

わが国におけるPE市場は、欧米に比べ歴史が浅く、投資案件のトラックレコードが少ない。このため、PEファンドを通じた企業再編の効果の実証分析は非常に限定的であった。もっとも、ごく最近の先行研究および本稿における実証分析によれば、限られたサンプルながらも、PEファンドを通じた企業再編は、総じて、従業員数を削減することなく、売上高を増加させる形で、従業員一人当たりの付加価値の増加が期待できることが示唆される。分析結果は、個々のケースによるため幅を持ってみる必要があるが、これまでの投資実績において、コストカットだけではなく、投資先企業におけるビジネスのやり方を改善することで、付加価値の向上が達成されたことを映じているとみられる。こうした取り組みが拡がれば、わが国経済の生産性向上にも資すると考えられる。そのためには(1)PEファンドがもたらしうる経済メリットに対する認知度向上やデータ分析の蓄積、(2)機関投資家によるPEファンドへの投資拡大、(3)事業再編にかかるプロ人材の確保・育成、に取り組んでいくことが必要であろう。

日本銀行から

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