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ゼロ金利下における社債市場構造〜リスク評価姿勢の異なる複数の投資家層〜

2004年 8月31日
金融市場局
西岡慎一
馬場直彦

日本銀行から

 日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (rev04j04.pdf 51KB) から入手できます。

要旨

 1997年から98年の金融不安期以降、金融緩和効果の浸透を受けて、わが国社債市場では社債スプレッドが大きく縮小した。社債スプレッドの縮小余地の低下とともに、スプレッドの反転(拡大)リスクが高まってきていることが債券投資家の行動に影響を及ぼしている可能性がある。理論的には、リスク評価姿勢の厳格さによって大きく3つのタイプの投資家層を想定できる。第1のタイプは、分散リスクに加えて、低い確率ではあっても、スプレッドの反転によって大きな損失を被るリスクがあることも十分に考慮したうえでスプレッド水準を評価する、リスク評価姿勢が最も厳格な投資家である。第2のタイプは、分散リスクを考慮してスプレッド水準を評価する投資家、第3のタイプは、平均的なスプレッド水準のみに主眼を置いて行動する投資家である。わが国社債市場では、相対的に格付の低い社債を中心に、スプレッドの縮小とともにリスク対比で十分なリターンを確保できなくなってきていることから、海外投資家に代表される第1のタイプの投資家や、有力機関投資家をはじめとする第2のタイプの投資家の投資姿勢が慎重になっている可能性がある。