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ニューケインジアン・フィリップス曲線:粘着価格モデルにおけるインフレ率の決定メカニズム

2005年 4月 7日
国際局 加藤涼
金融研究所 川本卓司

日本銀行から

 日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (rev05j06.pdf 93KB) から入手できます。

要旨

 近年、マクロ経済学者や中央銀行エコノミストの間で、「ニューケインジアン・モデル」が景気循環・金融政策分析を行う際の標準ツールとして急速に普及しつつある。その基本モデルは、(1)総需要の実物的側面を表す「新しいIS」曲線、(2)総需要の金融的側面を表すLM曲線ないし金融政策ルール、(3)経済の総供給サイドを集約するフィリップス曲線という3つの要素から構成される(日銀レビュー2004-J-8)。本稿では、その3番目の構成要素である「ニューケインジアン・フィリップス曲線(New Keynesian Phillips Curve、以下NKPC)」について、より掘り下げた考察を行う。

 伝統的フィリップス曲線は、インフレ率とGDPギャップの間に観察される経験則に過ぎず、背後に理論モデルを想定したものではなかった。これに対し、NKPCにおけるインフレ率とGDPギャップの関係は、不完全競争市場において自社製品の価格を頻繁には変更できない企業の利潤最大化行動の結果として導出される。こうしたミクロ的基礎を持つNKPCによれば、インフレ率は過去のGDPギャップではなく、将来のGDPギャップに依存する。

 NKPCの登場により、インフレ率と実体経済の関係や金融政策に関する研究は大きく進展したものの、NKPCには現実に観察されるインフレ率の緩慢な動きを捉え切れない弱点がある。今後は、このNKPCの弱点の克服を当面の課題として、インフレ率の決定メカニズムを巡る理論的・実証的研究を更に推し進めていくことが望まれる。