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米欧における労働市場と銀行貸出市場の調整

2010年1月20日
国際局国際経済調査担当

要旨

米欧経済は、2009年半ば頃から、景気回復に向けて動き出しているが、依然、下振れリスクに直面しており、そのリスクの顕現ルートの一つとして、労働市場と銀行貸出市場の動向がある。大幅な雇用調整が実施されてきた米国では、過剰債務を抱えた家計部門の所得が急減し、ローンの延滞率の上昇につながっている。これが銀行のバランスシートの劣化圧力の一因として作用し、貸出の絞込となって、銀行借入依存度の高い中小企業の行動を制約している。一方、ユーロエリアでは、雇用調整が小幅で、時間当たり賃金の伸びはむしろプラス幅を拡大するなど、家計部門の所得急減が回避されている。しかし、その分だけ企業収益が圧搾され、企業の資金制約はタイトになっている。さらに、ユーロエリアでは、企業の資金調達に占める銀行借入の割合が(米国に比べ)高いため、収益改善の遅れた企業に対する銀行の厳格な融資姿勢が、企業の資金調達環境の改善を遅らせ、支出活動を制約している。このように、米欧では、労働市場の調整の違いから、所得減少が家計にしわ寄せされるのか、それとも企業にしわ寄せされるのかそれぞれ異なるが、いずれにおいても、銀行貸出の減少を経由して、景気回復テンポを遅らせている側面がある。こうした状況は、バブル崩壊によって、銀行貸出と名目GDPが大幅に減少した日本の1990年代以降の経験に類似している。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。
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