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金融危機以降の米国短期金融市場における期待形成

金利キャップを用いたインプライド確率分布に基づく分析

2010年9月30日
金融市場局 菊池健太郎 *

  • 現金融研究所

要旨

オプションの市場価格から、原資産価格に対する市場参加者の期待形成に関する情報を、確率分布の形で抽出できることが知られている。本稿では、金利キャップと呼ばれるオプション性を有する金利デリバティブの市場価格を用いて、金融危機以降の米国短期金融市場について、先行きの米ドルの銀行間取引金利に焦点を当て、その期待形成の変化を分析する。分析の結果、(1)2007年夏〜2008年12月には、金融システム不安が高まる中で、先行きの銀行間取引金利の期待のばらつきは拡大し、先行きの金利上昇リスクが意識された、(2)様々な政策対応により、2009年初には、銀行間取引金利の期待のばらつきの拡大に歯止めがかかり、先行きの金利上昇リスクへの警戒感が和らいだ、(3)2010年春以降、欧州財政問題の深刻化や、それを受けたグローバル経済の停滞懸念を背景に、低金利政策が維持されるとの見方が強まった一方で、将来の金融機関の信用リスクに対する警戒感が高まり、先行きの金利上昇リスクが意識された、(4)2009年以降、短期金利が先行き急上昇するシナリオに賭けたポジション構築の動きがみられるとの指摘が聞かれたが、これが市場全体の動きにまでは拡がらなかった、ことなどがわかった。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

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