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日本の国債市場の機能向上に向けて

1999年 6月 1日
白川方明

日本銀行から

日本銀行金融市場局ワーキングペーパーシリーズは、金融市場局スタッフ等による調査・研究成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、学界、研究機関などの関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、 論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融市場局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問合せは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (kwp99j03.pdf 226KB) から入手できます。

要旨

 国債は信用リスクの小さい「リスク・フリー」の金融資産であり、また発行残高が大きいことから、多くの国において最も市場流動性の高い金融資産として機能している。日本の国債の市場流動性を海外主要国と比較すると、全体として流動性の程度が低いことは否めない。また、相対的に流動性の高い国債が期間10年程度の長期ゾーンに集中していることも特色のひとつとして挙げられる。
 市場流動性の高い国債が短期から超長期まで幅広い期間に亘って存在することは、国債の発行コストの低下に繋がるという直接的なメリットを政府にもたらすだけでなく、経済・金融市場全体に幅広いメリットを及ぼしていく。例えば、流動性の高い国債市場は参加者の金利リスク・ヘッジを容易にすることを通じて、社債市場の発達を促す効果を有している。また、海外からの投資の安全な受け皿や市場参加者のリスク管理の基準となる金利を提供することによって、金融システムの安定にもプラスの影響を及ぼす。さらに、国債は他の金融資産に比べ、金利から市場参加者の予想をスムーズに抽出することが出来るため、金融政策の判断に必要な情報の提供という面でも貢献する。
 これまで日本の国債市場の流動性が低かった理由を考えると、直接的には税制や発行市場等の面で流動性を阻害する制度的要因が存在していたことが挙げられる。しかし、より本質的な理由としては、金融機関等の破綻を意識しなくても良い状態が長く続いたため、国債というリスク・フリーの資産市場の流動性の重要性について現実的な形で理解されなかったことに求められるように思われる。
 近年、日本でも国債市場の改革に向けて様々な努力が払われてきたが、海外主要国と比較すると、税制を含めなお多くの制度的な差異が存在する。今後、そうした差異が市場流動性を低下させる要因となっていないかどうかを検討し、制度変更に伴うコスト、ベネフィットを比較衡量した上で、具体的な市場改革を急ぐ必要がある。

キーワード:
国債市場、市場流動性