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英国におけるベンチャー・キャピタル市場の現状について

1999年12月29日
廣島鉄也

日本銀行から

海外事務所ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行海外事務所スタッフ等によるリサーチ活動の成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、研究者等、有識者の方から幅広くコメントを頂戴する事を企図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは各海外事務所の公式見解を示すものではありません。

以下には、(はじめに)を掲載しています。全文は、こちら (owp99j01.pdf 128KB) から入手できます。

はじめに

 近年の米国経済の好調を論じる際に、ベンチャー企業への活発な投資とハイテク部門の高成長に注目する考え方がしばしば聞かれており、この点を踏まえ、各国においてベンチャー振興に向けた活発な議論や取組みが行われている。この点に関して、英国のベンチャー・キャピタル市場は、投資金額で見て米国に次いで世界第2位の規模を誇っているものの、内容的には、期待されるような創業期のハイテク企業への投資が伸び悩んでおり、モデル・ケースとしての米国市場との差異が大きい事が知られている。しかしながら、その一方で、事業リストラクチャリングを容易とするようなMBO(Management Buy-Out<現マネジメントによる企業買収>)を中心としたBuy-out市場の発展が見られており、その点を評価する声も多い。本稿では、英国における、ベンチャー・キャピタル市場の現状について、米国市場との比較を適宜交えながら紹介する事とする。

 なお本稿の構成は以下の通り。まず2.ではベンチャー・キャピタルに関連する幾つかの概念を整理すると共に、英国のベンチャー・キャピタル市場を概観する。次に3.で、英国のベンチャー・キャピタル市場の構造を規定している諸要素についてやや詳しく説明し、最後に4.で若干のインプリケーションを述べる。