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資本ストック統計の見方

市場評価資本ストックの試算

2000年 2月
増田宗人

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (cwp00j05.pdf 318KB) から入手できます。

要旨

 我が国の資本ストック統計には、経済企画庁による「国民経済計算(純固定資産)」、「民間企業資本ストック」、「国富調査」の3つがあるが、それぞれに問題点を抱えている。

 「国富調査」は政府、民間別、産業別、品目別に実地調査から直接的に資本ストックを把握するという点で、最も優れた方法であることは疑いないが、1970年を最後に中断されたままとなっており、データの陳腐化が進んでいる。

 「民間企業資本ストック」は、資本の摩耗や老朽化に伴う「減耗」が考慮されていないため、資本ストックを過大ないし過小に計測する危険がある。特に、90年代後半には、新規の設備投資が抑制される一方で、80年代後半の投資ブーム期に蓄積された資本ストックの老朽化が進み、我が国の資本ストックのビンテージが古くなったと見られ、過大評価の問題が深刻化している可能性が高い。

 「国民経済計算(純固定資産)」では、資本の「減耗」が考慮されているが、減耗率は税法上の減価償却率を機械的に適用したものであるため、資本の減耗度合いを正確に反映していない可能性がある。また、「民間企業資本ストック」では、四半期データや業種別データが利用できるのに対し、「国民経済計算(純固定資産)」は年次データしかなく、業種別データも作成されていないなど、分析上の制約も多い。

 定期的な「国富調査」が復活すれば、現行の資本ストック統計に関する様々の問題をかなり解消することができるが、当面その実現性は低い。本稿では、こうした問題意識の下で、既存統計の問題点を改めて整理するとともに、資本ストックのより正確な推計に向けた試みの1つとして、税法上の減価償却率の代わりに、中古品の市場価格の低下パターンを利用して資本ストックの減耗分をより現実的に推計した結果──市場による減耗度合いの評価を反映しているという意味でこれを「市場評価資本ストック」と呼ぶ──を紹介する。「市場評価資本ストック」を既存の「民間企業資本ストック」と比較してみると(下図参照)、(1)前者は後者の8~9割程度の水準にあり、(2)90年代入り後、前者の伸び率が後者の伸び率を0.5~1.0%程度下回っているとの、結果が得られた。

  • 各種資本ストックの伸び率のグラフ。市場評価資本ストック、SNAの純固定資産、民間企業資本ストックについて、前期比年率の推移を1980年から1998年まで示している。詳細は本文の通り。

以上