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マクロ生産関数に基づくわが国のGDPギャップ

−統計の計測誤差が与える影響−

2000年10月
鎌田康一郎
増田宗人

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (cwp00j15.pdf 401KB) から入手できます。

要旨

 潜在GDPとは労働や資本といった生産要素をフル稼動させて得られる生産の上限であり、GDPギャップは実際のGDPと潜在GDPの乖離率として定義される。しかし、生産要素の統計に計測誤差があると、ソロー残差(実質GDPのうち資本や労働によって説明できない部分)からTFP(total factor productivity、全要素生産性)をうまく推計できなくなり、潜在GDPやGDPギャップの推計に歪みを発生させる可能性がある。

 本稿の第一の目的は、生産要素の稼働率の誤推計や生産要素の質的変化によって発生する統計の計測誤差が、潜在GDPやGDPギャップの推計に与える影響を理論的に整理することにある。この結果、(1)生産要素の質的変化がソロー残差に混入している場合には、それをソロー残差に含めたままでも、潜在GDPやGDPギャップを正確に推計できる一方、(2)生産要素の稼働率に計測誤差がある場合には、その影響をソロー残差から除去する必要があることが明らかになった。特に、わが国には非製造業の資本稼働率に関する統計がないので、これがGDPギャップの推計を歪める可能性がある。

 この問題に対処するため、本稿では次の2つのアプローチを採用し、そのパフォーマンスを比較した。第1の方法(従来型GDPギャップ)では、非製造業の資本稼働率を100%に固定した上で、ソロー残差にトレンドを当てはめ、トレンド部分をTFP、残差部分を非製造業資本稼働率の推計誤差と考えた。一方、第2の方法(修正型GDPギャップ)では、電力需要に基づいて非製造業の資本稼働率を直接推計した。この場合、ソロー残差をそのままTFPとみなすことになる。

 2つのGDPギャップのパフォーマンスを景気基準日付や日銀短観の業況判断DI等との整合性という点で比較すると、従来型GDPギャップよりも、修正型GDPギャップの方が優れており、また、フィリップス曲線の推計に際しても、従来型GDPギャップよりも、修正型GDPギャップの方が、パラメータの安定性の面で優れていることがわかった。

 以上の結果からすると、経済のスラックを測るには、本稿で推計した修正型GDPギャップをみていくことが有用と思われる。