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地域の活力を発掘・育成する試み

---- 英国の「金融サービスからの疎外」(Financial Exclusion)対策を題材に

2002年12月 5日
小林伸

日本銀行から

海外事務所ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行海外事務所スタッフ等によるリサーチ活動の成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、研究者等、有識者の方から幅広くコメントを頂戴する事を企図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは各海外事務所の公式見解を示すものではありません。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (owp02j03.pdf 70KB) から入手できます。

要旨

  1. 英国では、地域が荒廃した結果、「金融サービスからの疎外」(Financial Exclusion)といわれる状況に至るケースが各地で発生してきた。こうした事態への対応として、従来から政府の施策や民間金融機関の関与(公共事業や支援機関を通じた公的資金の拠出、有識者による提言、及び関連基金への寄付等)がみられてきたが、その効果はなお改善の余地を少なからず残すものであった。
  2. こうした状況を踏まえ、最近、地域の再生を図るためには、何よりもそこに住む住民や地元企業の自助努力と関連情報の共有が優先されるべきとの認識に基づき、(1)ロール・モデル(目標となり得る成功事例)となる企業の育成、(2)「生きた企業経営情報」の継承、(3)民・官それぞれの強みの活用、といった点をポイントとする、新しいタイプの起業・経営支援策がみられるようになり注目されている。以下では、それら2つの事例を紹介したい。
  3. ▼ The Inner City 100(新興企業ビジネス・コンペ)

    • 都市部(inner city)の荒廃地域(deprived area)に拠点を有する新興企業のうち、短期間で大幅に売上げを伸ばした先を大々的に表彰することで、知名度の向上や、新興企業間のネットワーク構築といったメリットを企業に付与するビジネス・コンペ(2000年にスタート、年1回開催)。これらの企業をロール・モデルと位置付けることで起業を奨励している。
    • 個々の参加企業から得られる生の起業体験情報を調査・分析し、公表することにより、後続の起業家に有益なノウハウを提供するいわば公共データ・ベースとしての機能も果たしつつある。

    ▼ Bridges Community Development Venture Fund(地域振興ベンチャー・ファンド)

    • 荒廃地域の再生を目的として民・官共同の形で立上げられたベンチャー・ファンド。新興企業に対し、資金だけでなく、成功企業やベンチャー・キャピタルの専門家が有する経営ノウハウを提供することで、荒廃地域における起業・経営を支援し、地域のロール・モデルを作り出していこうとする取組みである。
    • 民間からの出資が半分を占めることにより、同ファンド運営に当っては、収益性の追及という市場メカニズムも機能する仕組みとなっている。
  4. 上記の取組み及びその背景にある発想は、地域再生、新興企業の育成策を検討している日本にとっても参考となるものと思われる。