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非上場企業に「追い貸し」は存在したか?*1

2005年10月
福田 慎一*2
粕谷 宗久*3
中島 上智*4

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
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以下には[要旨]を掲載しています。全文は、こちら(wp05j09.pdf 261KB) から入手できます。

  1. *1本稿の作成にあたっては、統計研究会金融班・支笏湖コンファレンスの参加者の方々、日本銀行調査統計局のスタッフの方々、および熊倉修一氏から有益なコメントをいただいた。とくに、櫻川昌哉氏には「追い貸し」の理論的な側面を、また藤原裕行氏には金融統計に関してさまざまなご教示をいただいた。なお、本稿で述べられた意見、見解は、筆者個人のものであり、日本銀行あるいは調査統計局のものではない。
  2. *2東京大学 e-mail: sfukuda@e.u-tokyo.ac.jp
  3. *3調査統計局 e-mail: munehisa.kasuya@boj.or.jp
  4. *4東京大学

要旨

 本稿では、1990年代から2000年初頭にかけての日本経済において中堅企業に対して「追い貸し」が観察されたかどうかを、非上場企業の財務データやその取引先銀行の情報を使って考察した。中堅・中小企業向け金融では、「貸し渋り」や「貸し剥し」と呼ばれるクレジット・クランチが幅広く観察されてきた。しかし、その一方で、中堅・中小企業向けであっても、経営再建の見込みが乏しい先に貸出を継続または拡大する「追い貸し」が行われていた可能性は先験的には否定できない。貸出関数を推計した場合、借り手企業のバランス・シートが各非上場企業の貸出量に対して非線形な影響を及ぼすことが観察された。しかし、上場企業とは異なり、過剰債務に陥った非上場企業に対する追い貸しは、ごく一部の企業に限られた。ただし、1990年代後半以降でも、特に金融危機期に、メイン・バンクの不良債権の増加は、貸出を有意に増加させていた。これらの結果は、非上場企業では、借り手のバランス・シート悪化による追い貸しは限定的であった反面、金融危機の結果、貸し手の不良債権が増加した場合に、いくつかの非上場企業に対して追い貸しが行われた可能性を示唆するものである。