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ヘッジファンドの生存分析

2006年 3月
馬場直彦*1
郷古浩道*2

全文は英語のみの公表です。

要旨

本稿は、Lipper TASS データベースに登録されている個別ヘッジファンド・データを使用して、ヘッジファンドの生存分析を行っている。具体的には、ノン・パラメトリックな手法、投資戦略ごとに固有の脆弱性(shared frailty) をコントロールしたコックス比例ハザード・モデル、ロジット・モデルなどの手法を用いることにより、個々のファンドの属性やパフォーマンス指標のダイナミックな推移が、ヘッジファンドの生存確率に与える影響について分析している。分析結果を要約すると以下のとおり。

  1. (1)収益率、運用資産規模に関して、以下の性質を持つファンドは生存確率が有意に高い。(1)収益率が高い、(2)運用資産が大きい、(3)直近の資金流入が大きい、(4)収益率・運用資産の分散/歪度が小さい/大きい。
  2. (2)インセンティブ構造(報酬体系)はファンドの生存確率に有意な影響を与える。ただし、与える影響は個々のスキームにより異なる。すなわち、業績連動報酬比率が高いファンドは生存確率が低い一方で、ハイ・ウォーターマーク方式を採用しているファンドは生存確率が高い。
  3. (3)ヘッジファンドの解約条件(流動性)は生存確率に有意な影響を与える。すなわち、解約通知期間や解約サイクルが長いなど、投資家に強い流動性制約を課しているファンドは生存確率が高い。
  4. (4)ファンドの総数が多くなると、ファンドの生存確率は有意に低下する。
  5. (5)レバレッジの大きさは、ファンドの生存確率に有意な影響を与えない。
キーワード :
ヘッジファンド、生存分析、ハイ・ウォーターマーク、業績連動報酬、生存、分析、パネル・ロジット
  1. *1日本銀行金融研究所兼金融市場局
    e-mail: naohiko.baba@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融市場局
    e-mail: hiromichi.gouko@boj.or.jp

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