このページの本文へ移動

地方債の対国債スプレッドと近年の環境変化

2006年11月
大山慎介*1
杉本卓哉*2
塚本満*3

要旨

 近年——特に2006年入り後——、地方債を取り巻く環境や市場の動態に変化がみられ始めている。本稿では、地方債のうち市場公募債の対国債スプレッドに焦点を当てて、動態や背後にある環境変化を分析する。

 分析結果によると、2006年春以降、市場公募債の市場は、全銘柄のスプレッドを押し上げる要因と、財政状況に対する評価が相対的に低い銘柄のスプレッドを拡大させる要因の影響を受けている。これらの要因は、地方債を取り巻く環境——地方公共団体の財政状況、地方債の引受構造、地方債の債務履行に関する法制度——の変化、あるいは先行きの変化の予兆などに起因していると考えられる。

 今後、国と地方の役割分担や地方財政のあり方が広範に見直されていく中、地方債を取り巻く環境も継続的に変化していくとみられる。そうした変化が、地方財政などを巡る広範な議論の中でバランスのとれたかたちで進んでいくのか、それを市場参加者がどのように受け止めていくのか、といった点に留意しつつ、今後とも地方債の市場動態を観察していく必要がある。

本稿の作成に当たって、多くの市場参加者の方々、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。特に今川玄氏(野村證券)、江夏あかね氏(日興シティグループ証券)、柿本与子氏(スタンダード・アンド・プアーズ)、河合祐子氏(日本銀行)、河野圭志氏(同)、肥後雅博氏(同)からは暫定稿に対する建設的なコメントを頂戴した。この場を借りて深く感謝の意を表したい。文中に残る誤りは、すべて筆者の責任である。また、本稿における意見などはすべて筆者の個人的な見解であり、日本銀行および金融市場局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融市場局 Email: shinsuke.ooyama@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融市場局 Email: takuya.sugimoto@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融市場局 Email: mitsuru.tsukamoto@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。