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3メガ行のクレジット・スプレッドの決定要因

厳密最尤法によるCDSプレミアムの分析

2007年7月
稲葉圭一郎*

要旨

 本稿は、2004年度から2006年度までの3年度間における、3メガ行の日次ベースのクレジット・デフォルト・スワップ(以下、CDS)のプレミアムにつき、その決定要因を定量的に分析している。企業や銀行のクレジット・スプレッドに関する既存の実証分析は、それらがオプション価格理論と整合的に変化していると主張している。ところが、先行研究では、総じて、重回帰モデルの当てはまりが悪く、過少定式化の疑いが残る。過少定式化の下では、最小2乗推定値は不偏性も一致性も失ってしまう。この点、本稿は、先行研究に倣って構築した重回帰モデルを、先行研究とは異なる手法、すなわち厳密最尤法(Exact Maximum Likelihood Method)で推定することにより、一致性を有し、かつ分散最小の推定値を得ている。そして、それらは、3メガ行各々のCDSプレミアムが、オプション価格理論の含意と整合的に、各行の資産価値、リスク・フリー金利、不確実性、および景気見通しと連動していることを示唆している。このことは先行研究の主張を補強する。また、本稿が見出した他のファクトのうち、以下2つは興味深い。第1に、景気見通しが良いときに、3メガ行のCDSプレミアムが小さい、という連関は、CDSの対象債権がシニア物である場合に比べて、劣後物の場合により強くなる。第2に、わが国では、米国とは異なり、イールドカーブが示唆する先行きの短期金利引上げペースは、3メガ行のCDSプレミアムの重要な決定要因とはなっていない。本稿の分析手法は、先行研究の手法に比して、統計的により好ましい性質をもつ推定値をもたらすため、分析者の目的次第では、クレジット・スプレッド定量分析の1つの代替物になるかもしれない。

日本銀行金融機構局での研究発表および同僚諸氏との質疑応答に加えて、大山慎介氏(同金融市場局)との議論や同氏より頂戴したコメントは、本稿の作成にとって大変有益なものであった。記して感謝したい。ただし、本稿で示されている意見は日本銀行あるいは金融機構局の公式見解を示すものではない。また、あり得る誤りは全て筆者に属する。

  1. 日本銀行金融機構局大手銀行担当 Email: keiichirou.inaba@boj.or.jp

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